セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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23話 翳り裂く閃光

道路

 

 未来は響を救おうとしていた。

 

未来「響、目を覚まして!響ーーっ!」

 

クリス「くそ…全然届いてないみたいだぞ。何とかする方法はないのか、オッサン!」

 

弦十郎『カルマノイズの呪いを吸収して負の感情が増大している上、ガングニールとの融合進行が暴走状態を助長しているようだ。相乗効果で響君の身体への負担は計り知れん…。このままだと確実に…』

 

クリス「そんな事効いてるんじゃねえ!あいつを助ける方法はないのかっていう話だ!」

 

マリア「もうこうなったら神獣鏡でギアを完全消滅させるしかないでしょう」

 

クリス「それをしたら今度は呪いで死ぬだろーが!」

 

響「(ああ…やっぱり、そうだ…。この真っ暗な場所が、私の居場所…。結局私は独り、誰も助けてなんてくれない…。だから…全部…ぶっ壊してやる!)ドケエエエッ!」

 

 暴走した響はマリア達を吹っ飛ばした。

 

マリア「きゃーーーっ!?」

 

クリス「くそーーっ!?ちくしょう!あいつ、街中の方に!」

 

未来「みんな、大丈夫!?」

 

クリス「いいから、あのバカを追え!」

 

未来「でも、あの怪物もいるのに…」

 

クリス「あたしらに任せとけ!あいつを助けられるのはお前と星矢だけなんだからよ!」

 

マリア「ええ…私達で何とかするわ」

 

???「2人の言う通りだ」

 

 そこへ、翼が来た。

 

未来「翼さん…大丈夫なんですか!?」

 

翼「ああ、心配ならば無用だ。それよりこの場は3人もいれば十分。お前はあいつを…立花を救ってやってくれ」

 

未来「…わかりました。絶対に助けます!」

 

翼「頼んだぞ、小日向…」

 

 未来は響を追った。

 

クリス「ったく。病み上がりなのに無茶しすぎだ」

 

翼「防人の剣たるこの身…これしきで折れる程、柔な鍛え方はしていない」

 

クリス「怪我抜きでもきつい状況だがな」

 

弦十郎『日が沈むまでもう少し、それまで耐えるんだ!準備はできている!』

 

翼「準備…?」

 

マリア「こちらの秘策よ。うまくいってくれれば、チャンスはある。…日没まで耐えられれば、の話だけどね」

 

翼「なるほど。ならば、それまで身命を賭してこの場を護り抜くとしよう…」

 

クリス「1人で命賭けてるんじゃねーよ。この場にいるのは3人なんだからな」

 

マリア「そうね。3本の矢はまとめると決して折れないっていうの。あなた達の国の逸話だったかしら?」

 

翼「毛利の3矢の教えだな。よく知っている。だが、この状況としてはなかなかよい例えだ。我ら3本の矢…決して折れるまいぞ!」

 

 3人はゴライアスに向かっていった。

 

 

 

???

 

 カルマノイズの発生源がある場所では、一輝と瞬によってその場にいたカルマノイズやカオスビーストは大半が消滅し、残るはわずかな個体と発生源と思わしき怪物のみであった。

 

一輝「瞬、後は残り僅かな敵と発生源を叩き潰せばこの一連の事件は終わりだ!」

 

瞬「うん!急いでカルマノイズや発生源とみておかしくない怪物を倒そう!」

 

 2人は突撃した。カルマノイズやカオスビーストは向かったが、2人に一蹴されたのであった。

 

怪物「グオオオン!」

 

 怪物はビームを発射したが、2人はあっさりとかわした。

 

一輝「動きが単調で話にならん!ネビュラストーム!」

 

瞬「鳳翼天翔!」

 

 2人の攻撃で発生源と思わしき怪物はカルマノイズ達と一緒にあっけなく消滅したのであった。

 

瞬「これで終わったかな?」

 

一輝「それを確かめに行くぞ」

 

 怪物が消滅した事で結界も消え、一輝と瞬はその場を去った。

 

 

 

道路

 

 未来は必死で響を追っていた。

 

未来「速い…、私の足では…」

 

???「遅くなってすまん、未来!」

 

 そんなところへ星矢が駆け付けたのであった。

 

未来「星矢さん!」

 

星矢「未来、俺にしっかり掴まれ。一気に飛ばしていくぞ!」

 

 未来は星矢にしっかり掴まり、星矢は一気にスピードを飛ばしたのであった。その頃、ようやくマリア達はゴライアスを倒す事に成功した。

 

マリア「…向こうの様子は?」

 

弦十郎『かなりまずい状況だ。暴走状態の響君はカルマノイズの呪いと聖遺物融合の相乗効果でとてつもないエネルギーを帯びている状態だ。通常の人間では近づいただけで命を落としかねん。このまま市街地へと到着されたら、多くの犠牲者が出てしまう可能性がある』

 

翼「小日向はどうしているのです?」

 

弦十郎『頑張って追跡しているが…、暴走状態の響君を捕捉する事は困難な』

 

 そんな中、新たな反応が出た。

 

弦十郎『たった今、未来君が猛スピードで響君に追いつこうとしている!』

 

翼「小日向が急にスピードを上げた?」

 

クリス「もしかすると、星矢じゃねーか!?」

 

弦十郎『そうかも知れん。だが、未来君がギアを破壊する事ができぬのなら…その時は倒すしか、その足を止める方法はあるまい』

 

クリス「それであのバカが助かるかよ!」

 

弦十郎『それは…』

 

翼「その時は…私が…やる。刺し違えてでも…」

 

マリア「翼…」

 

翼「それがこの世界の装者の役目というものだ」

 

マリア「待って!あの子は星矢と共に今も助けようと必死になってる。あの子が諦めない限り、私達も諦めたりはしない!」

 

 

 

 

 星矢に掴まってる未来は響が発する熱に気付いていた。

 

未来「響、すごい熱…。こんなに遠くからでもわかるくらい…。」

 

星矢「街に出られたら、大変な事になるぞ!それに、もうすぐ着く!」

 

 星矢の猛スピードであっという間に響に追いついた。

 

星矢「着いたぞ!」

 

未来「響には誰も傷つけさせたりはしない!」

 

 未来は扇からビームを放ったが、響はあっさりとかわした。

 

未来「響、お願い止まって!」

 

響「ウるサい…ウるサいウるサい!ダれモ、タスケテくレない…ダレモ!殺ス…壊ス…こノ拳ハ、そノ為のモノなンダーー!」

 

 そのまま響が殴りかかったが、星矢が受け止めた。

 

星矢「響、お前の壊すためだけの拳では俺には全く効かない!」

 

 星矢は再び未来の盾となり、響の全ての攻撃を受け止め続けたのであった。

 

未来「(速い!神獣鏡の力を収束させないと、ギアは分解できない…。どうにかして、響の動きを止めないと…。でも、どうすれば…?響の意識を…記憶を、一瞬でも取り戻させれば…)」

 

 ふと、未来はこの世界の響と星を見る約束をした事を思い出した

 

未来「(こっちの響はあの場所を知らない…。だけど、精神が同調しているのなら…)星矢さん、あの場所へ、星がよく見えるあの場所へ!」

 

星矢「あの場所…?」

 

 あの場所とだけではピンとこなかったが、星がよく見えると聞いて、そこがどこなのか思い出した。

 

星矢「わかった。けど、俺にしっかり掴まれよ!」

 

未来「こっちだよ、響!」

 

 未来を掴まらせ、星矢は星がよく見える場所へ向かい、対する響もそこへ向かった。

 

 

 

平地

 

 星がよく見える場所へ来ると、響の動きが止まった。

 

未来「(響の動きが止まった…?)」

 

響「グゥゥゥ…」

 

星矢「こういった所は頼むぞ、未来」

 

未来「はい。この間、約束したよね。星が綺麗に見える場所に一緒に行こうって…。この場所はね…私にとって、思い出の場所なんだ」

 

響「(約束…思い出…?)グ…ガアアアアッ!?」

 

未来「お願い響!帰ってきて!あなたは、そんな暗い所にいちゃいけない!」

 

響「グアアアアアーッ!!…はぁ、はぁ……チガウ!そんな思い出、ワタシにはない!ヤクソクだって…」

 

未来「響…。私の声聞こえる?」

 

響「クダラナイ…。コンナトコロで星を見たって、ナニもなりはしない」

 

未来「そんな事はない!約束があるんだ…響は独りじゃない!」

 

響「ヤクソク…ワカラナイ…」

 

未来「約束って、1人じゃできないんだよ?」

 

響「……」

 

未来「小さな約束が降り積もって、大切な思い出が出来ていくの。辛い時でも心の中で輝き続ける、星になるの。だから…響、わかって。あなたはもう独りじゃないって。翼さんだって、弦十郎さんだって、響の事を心配してる。あなたの想いに、不安に寄り添ってくれる人達がいる。約束を結ぶ事から…心と心の繋がりから、目を背けないで。星矢さんの言う通り、全てを諦めないで。握った拳で周りの物、全てを壊すような真似はやめて。響の拳は、そんな事をするための物じゃないんだから…」

 

響「…ダマレ!勝手な気持ちを押し付けるナ!ワタシは、ワタシの拳はゼンブ、ゼンブ壊すタメの力ー!」

 

未来「違うよ!いつだって響は、困っている人を助けずにはいられない優しい子なんだから…。自分の気持ちに素直になって!本当の心を誤魔化さないで!」

 

響「アンタにワタシの気持ちの名にがワカル!アンタだってワタシをタスケテくれなかったじゃないか!ワタシを見捨てたアンタなんかに…ナニガ!」

 

未来「響、自分の両手を見てみて!武器を持たないあなたのその両手が、誰よりも手を繋ぎたいと想っている証拠…。その手こそが、立花響のアームドギアなんだから!」

 

響「コノ手が…ワタシの…、アームドギア…?」

 

未来「それにね…もう一つ、響は間違ってるよ…」

 

 未来は響のメディカルチェックの結果を思い出していた。

 

未来「(大丈夫、私は信じてる。神獣鏡を…私の歌を…。奇跡を起こして必ず、響を救えるって。だから、何があっても…)小日向未来は絶対に響を見捨てたりなんかしない!絶対に!(響、私に力を貸して…)」

 

 響を救うため、未来は絶唱を唄った。それには星矢も驚いた。

 

星矢「絶唱だって!?」

 

響「ソレハ…絶唱…」

 

星矢「響、未来はお前を救うために絶唱を唄っているんだぞ!お前も未来のために何かするんだ!」

 

響「(そうだ、それは唄っちゃダメだ!そんなの唄ったら…。……なんで、私なんかのために…。どうせ誰も助けてくれない…。みんな一緒、私の事なんて誰も…、なのに…。違う、小日向未来は…いっつも私の事を想って、傍にいて、助けてくれる人。そして、私も未来の事が…大好きだった。そうして、そんな当たり前の事を忘れていたんだろう…)」

 

 響は今まで未来の事を忘れていたと自覚したのであった。

 

響「(星矢さんの言う通り、助けなきゃ…。未来を助けないと!)」

 

 未来を助けるため、響は絶唱を唄った。そして、2人の絶唱が不思議な光を生み出したのであった。

 

星矢「これは…!」

 

 一方、マリア達と一輝兄弟は合流していた。

 

翼「あの2人はどこへ?」

 

一輝「チェーンの反応ではこっちだ。急ぐぞ!」

 

翼「待て!これは、小日向と立花の歌…。まさか…絶唱!?」

 

 その光を一輝達も目の当たりにした。

 

翼「なんだ、この光は?一体何が起きてー!?」

 

瞬「でも、とても綺麗だよ」

 

クリス「あれはまさか、S2CA!どうなってんだ!あのバカがいないのに、なんでS2CAが!?」

 

マリア「恐らく、あの子の差し出した手を、やっと立花響が握ったんだと思うわ。私達の知ってる立花響もこちらの立花響も本質的には同じだったって事。誰よりも人と手を繋ぎたいと思っている子だもの」

 

クリス「まさか、この光をあいつが…?」

 

 2人が起こした奇跡により、未来は神獣鏡のエクスドライブモードを起動させる事に成功した。

 

未来「これ…この力…。(感じる…暖かくて力強い力…。これは…私の、響への想いの力…)」

 

星矢「これは奇跡だ…。未来の純粋な響への想いと2人の友情が起こした奇跡だ!」

 

 未来が起こした奇跡に星矢は未来の想いの強さを感じ取っていた。

 

響「グ…ガアアアアッ!ヤメロ…ソノ光で、ワタシを照らすな!」

 

未来「響…私に教えて…。あなたの本当の望みを、願いを!」

 

響「グゥゥ…」

 

未来「私は、響のためなら何だってできる…。何だって叶えてあげるんだから!」

 

響「望みナンテナイ!ワタシをヒトリにして…(違う!独りはもう嫌だ!暗い所に独りでいるのは嫌!)ドウセダレモタスケテくれない。ダッタラ初めからヒトリがいい…(…望んだってムダ、助けを求めても誰も助けてはくれない…。そんな事はわかってる!でも…、この人なら、2人なら私を救ってくれる気がする。だからもう一度だけ…)」

 

 遂に響は勇気を出した。

 

響「お願い…。私を、助けて…」

 

未来「響…、やっと答えてくれた。やっと聞けた、響の本当の声。うん、助けるよ。約束」

 

響「グッ、ガ、ガアアアアッ!」

 

未来「響…、あなたの手を離したりはしない!絶対に絶対!!」

 

 かつて、フロンティア事変で謎の暴走をした際に響が言った事を今度は未来が言った事に星矢は感心していた。そして、暴走状態の響とエクスドライブモードの未来がぶつかろうとした途端、謎のビームが未来目掛けて放たれたが、星矢が弾いた。

 

未来「星矢さん!」

 

星矢「未来は響を救う事を優先させろ!邪魔者は俺が片付ける!」

 

未来「はい!」

 

 未来は響を助ける事に専念し、邪魔をしてきた発生源と思わしき怪物とカルマノイズの群れは星矢が片付ける事となった。

 

星矢「お前らのせいで響は命の危機に晒されてるんだぞ!これ以上、犠牲を出さないためにもこの場で絶対に叩き潰す!」

 

 星矢の光速の動きにはカルマノイズの群れや怪物は一切ついていけず、絶大なパワーで蹴散らされた。

 

星矢「アトミックサンダーボルト!!」

 

 アトミックサンダーボルトでカルマノイズの群れは一掃された。

 

怪物「グオオオン!!」

 

 怪物はビームを放ったが、星矢にはスローモーションに見えるために全く当たらず、逆に星矢に圧倒されていたのであった。一方、エクスドライブモードの未来は暴走状態の響とも真っ向から渡り合えていた。

 

響「ガアアアアッ!」

 

未来「響、痛いけど必ず助けるから我慢してね!」

 

 未来は響が攻撃を仕掛けるタイミングでビームを放ったり、攻撃を翻して即座に扇を叩き込んだりするなどして響を追い詰めていった。そして、2人とも勝負を決めようとした。

 

星矢「これで終わりだ!コズミックスターアロー!!」

 

 星矢は黄金の矢に自身の小宇宙を込め、怪物目掛けて矢を放った。星矢の小宇宙が込められた矢は眩い光を放ちながら飛んでいき、怪物を貫いて消滅させたのであった。

 

未来「私の想い…みんなの想い…。あなたを大切に思う、みんなの気持ち…届いて!!響の心を蝕む闇を、振り払って!」

 

 星矢がコズミックスターアローを放つのとタイミングを同じくして未来は扇を展開して狙いを定め、暁光を放った。

 

響「ああああああーっ!?」

 

 響は暁光に呑まれた。しかし…

 

響「痛く、…ない…?なんなの、……この、光は…(ああ…、温かい…、まるで…)」

 

未来「響ーーーっ!」

 

星矢『響!』

 

沙織『響さん!』

 

響「(未来が…星矢さんが…、夢で星矢さんと一緒にいた女の人が…私に、手を延ばして…)星矢さん…、星矢さんと一緒にいる人…、未来…未来ーーー、!」

 

 光の中で響は星矢と沙織、そして未来に手を延ばした。

 

響「(…もう1人の私が言った事、今ならわかる。そうだよ…未来は、私のとっての…)未、来…ごめん…ね…」

 

未来「へいき、へっちゃら、だったでしょ?」

 

響「うん…ありが、と…」

 

未来「おかえりなさい、響…」

 

 未来が起こした奇跡により、響を蝕むガングニールとカルマノイズは響の体内から完全に消滅したのであった。そして、倒れている響を星矢はおぶった。

 

星矢「終わったな…」

 

未来「星矢さんがいてくれたおかげで、私は諦めずに奇跡を起こせたんです」

 

星矢「そうか。よし、帰るとするか」

 

未来「はい!」

 

 ちょうど一輝達も来て、星矢達は帰った。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして翌日…。

 

弦十郎「もう帰るのか…」

 

未来「今までお世話になりました」

 

弦十郎「こちらこそ、大変な事態を解決してくれてありがとう。お礼といっては何なのだが、その神獣鏡をお礼代わりとして君にあげよう」

 

未来「この神獣鏡を?」

 

翼「しかし…」

 

弦十郎「神獣鏡はもともと廃棄処分の予定のものを未来君に託したんだ。それに、神獣鏡がないと未来君は元の世界に帰れないのだろう?だから、お礼代わりとしてあげよう」

 

未来「ありがとうございます!」

 

一輝「これで一段落したから、俺は行くぞ。達者でな、星矢」

 

星矢「一輝、瞬とエスメラルダがついてきてるようだけどお前は群れるのが嫌いじゃなかったのか?」

 

一輝「ふっ、別に群れたくなった訳じゃない。勝手に瞬とエスメラルダがついてきてるだけだ」

 

 勝手に2人がついてきてると言ってはいるものの、一輝の表情は嬉しそうであった。

 

エスメラルダ「私達も今までお世話になりました!」

 

瞬「それでは、お元気で!」

 

星矢「3人ともこの世界の俺にもよろしく頼むぞ」

 

 一輝はエスメラルダと瞬を連れて旅に出たのであった。

 

マリア「それでは、私達も帰りましょうか」

 

クリス「ああ、そうだな」

 

星矢「早く帰ろうぜ、元の世界に」

 

 星矢達も元の世界に帰ったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 こうして、星矢達は無事に帰ってきたのであった。

 

クリス「終わったんだよな…?」

 

星矢「そうだろ?響は救われたし、カルマノイズやその発生源、ゴライアスもぶっ潰せたんだからな」

 

エルフナイン「お帰りなさい。みなさん」

 

弦十郎「お疲れさん、よく無事に帰って来てくれた」

 

クリス「なんだよ。2人してまた首を長くして待ってたのか?」

 

エルフナイン「いえ、ギャラルホルンのアラートが治まったので、そろそろ戻ってくる頃だと思っていました」

 

マリア「そう…無事、アラートも止まったのね。よかったわ」

 

クリス「これで止まってなきゃ、お手上げだな」

 

弦十郎「今回も厳しい戦いだったようだな…。ご苦労だった、4人とも。ゆっくり休んでくれ」

 

未来「あの、それより響の容態は…?」

 

???「響さんなら元気になりましたよ」

 

 沙織が元気になった響を連れてきた。

 

響「お帰り、未来!」

 

未来「響…、響ーーー!!」

 

 響が元気になった事で、2人は互いに抱き付いたのであった。

 

響「未来、よかった~。無事に帰ってきてくれて」

 

未来「響こそ…元気になって…本当によかった…」

 

エルフナイン「アラートが治まったのとほぼ同時に意識を取り戻して、今までの衰弱が嘘のように見る間に回復していきました」

 

未来「響、どこも痛くない?」

 

響「うん、もうだいじょう…」

 

 しかし、響は腹を痛そうにしていた。

 

星矢「どうした?」

 

 そこへ紫龍達が来た。

 

紫龍「響は食べすぎてしまったのが原因で腹が痛いそうだ」

 

氷河「全く、腹八分っていうのに、そんなに食う奴がいるか!」

 

瞬「適度にしておかないと、逆に体を壊すよ」

 

未来「もう、響ったら…」

 

マリア「はあ…、驚くくらいいつも通りね。あんなに苦労したのが嘘みたい」

 

 いつも通りの響に一同は呆れていたのであった。そんな中、弦十郎は沙織と話していた。

 

沙織「今後の未来さんの事については私が話しておきます」

 

弦十郎「だが、俺の口からでも…」

 

沙織「いえ、私が話した方が納得してもらえると思います。なので、私がやります」

 

弦十郎「…わかった」

 

 

 

 

 未来は港で空を眺めていた。

 

未来「(これで、私はただ、響の帰りを待つだけでなく、一緒に…)」

 

 そこへ、星矢と沙織が来た。

 

未来「沙織さん」

 

沙織「未来さん、申し上げにくいのですが…今後の事で重大な話があります」

 

未来「何ですか?」

 

沙織「未来さんは響さんと一緒に戦いたいと思っていると思いますが…、未来さんは安易に出撃、特に並行世界へ行かせる事ができないんです…」

 

 沙織から告げられた事に未来はショックを受けた。そんな未来を励ますように星矢が手を置いた。

 

星矢「未来、安易に出撃できないのは色々と面倒な事が多いだけじゃなくて、沙織さんが戦いの中で未来を死なせたくないからさ。俺だってあんまり納得はいかないけど、きちんと訓練を受けてギアの扱いに慣れておくべきだと思うんだ。俺達だって聖闘士になるのに数年かかったからな」

 

未来「星矢さん…」

 

沙織「まだ未来さんはまともな訓練を受けておらず、経験もほとんどありません。なので、訓練に関しては参加が認められています。それに…未来さんには訓練を重ねながらじっくり考えてもらい、正式な装者になるかならないかを決めてもらいたいのです。もしも、未来さんが勢いで正式な装者になってしまっては、絶対に後で後悔すると私と司令は判断したからです」

 

未来「じっくり考える…」

 

星矢「ま、訓練を重ねてよーく考えて答えを出せば沙織さんは未来を正式な装者にするって言ってるんだ」

 

沙織「約束します。なので、今後は訓練をしっかり受け、じっくり考えてください。尚、その期間中でもやむを得ない場合は出撃させますので」

 

未来「ありがとうございます!」

 

 そこへ、響が来た。

 

星矢「響か」

 

響「星矢さん、私と星矢さんって…何だか出会う運命にあったんじゃないですか?」

 

星矢「さぁ、どうだろうな?」

 

未来「私はそうとは思えないけどなぁ…」

 

響「う~…、未来の意地悪~!」

 

 騒いだが、沙織は響と星矢の出会いが運命的かどうか思っていた。

 

沙織「(星矢と響さんの出会いが運命的ですか…。本当にそうなのかはわかりませんが…、神としての直感では、あの2人は何か共通している宿命を持ち合わせているのかも知れません…)」

 

 

 

公園(並行世界)

 

 そして、星矢達が帰った後…。

 

響「(この手…)この手は壊すためのものじゃない…だよね、未来…。(誰かと手を繋ぐ事…この手は、誰かに繋がってる…)私は独りじゃないんだ…。一度繋がれたあの手は、離れても繋がってる…(だから、大丈夫。もう私はへいき、へっちゃらだよ…)」

 

 響は星矢達が通っていったゲートを見ていた。

 

響「…そう言えば、ここから帰ったんだっけ。また、会えるかな…。それに、星矢さんに夢に出たあの紫の髪の女の人についても聞きたかったし…(無理…かな。向こうの世界での暮らしがあるんだから。でも、いつかきっと、また会える日が…)」

 

 そんな折、ノイズ警報が発せられ、ノイズが目の前に現れた。

 

響「ノイズ!(どうしよう…。もう、私には戦う力がない…。ここで…終わりなの…?)」

 

 ノイズが目の前に現れ、体内のガングニールが消えた事で戦う力がなくなってどうにもならない状況になってしまった響であった。しかし…。

 

???「生きるのを諦めるな!」

 

響「(こ、この声…?)」

 

???「ペガサス流星拳!」

 

 閃光が走ると共に、ノイズは全滅した。そして、閃光が収まると、いつの間にか響は駆け付けた男にお姫様抱っこされていた。

 

響「(黄金の鎧じゃない…。それにこの光景、まるで…、夢の通りだ…!)せ……星矢さん!!」

 

 そう、響を助けたのはこの世界の星矢であった。まだ黄金に昇格していないため、纏っている聖衣はペガサスのままであった。そして、精神同調した際に見た夢が正夢になった瞬間でもあり、助けてくれた星矢に響は涙を流したのであった。

 

星矢「何で俺の名前を知ってるんだ?」

 

響「えっと…」

 

???「どうして星矢の名前を知っているのですか?」

 

 尋ねた女性は夢の通りであった事に響は驚いた。

 

響「あ、あなたは…」

 

沙織「私は城戸沙織と申します。あなたは…立花響さんでしたね。あなたに会わせたい人がいます」

 

響「会わせたい人…?」

 

 沙織が響に会わせたい人とは、未来の事であった。

 

響「未来…。なんだ、まだこっちにいたの?」

 

未来「響…響!ずっと、会いたかった…」

 

響「こないだ別れたばかりで、そんな大げさな…」

 

星矢「何を寝ぼけてるんだ?」

 

響「寝ぼけて…?(…あれ?何かが…違う?)」

 

未来「ごめんね…あの後、響にお別れも言えずに引っ越しちゃって」

 

響「えっ…?」

 

沙織「未来さんはずっとあなたに会いたがっていたのですよ。手紙を出したのに返事も来なくて、何度か会いに行ってもどこにも響さんがいなくて困っていたのです。私達はその事で困っている未来さんの手助けのために、グラード財団の情報網を駆使してあなたの居場所を見つけ出し、ここまで来たのです」

 

響「星矢さんと沙織さんが…未来を…」

 

未来「ごめんね。響が一番辛い時に傍にいてあげられなくて、私…。でも…、やっと会えたよ…響…」

 

響「(未来…、温かい…。ああ…そうだ。私、あの時、思い出したんだ…。未来はずっと私の陽だまりだったんだって…)そうだよ。やっと、見つけた。私のいるべき場所はここだったんだ…」

 

星矢「どうして俺の名前を知ってるのかはわからんけど、ここで会ったのも何かの縁だ。俺と沙織さんは困った時に力になるぞ」

 

沙織「何か辛い事があれば、連絡してください」

 

響「星矢さん…、沙織さん…、未来……」

 

 この世界においても、星矢と沙織は響にとっての恩人であった。




これで今回の話は終わりです。
今回は並行世界の響が救われるのと、星矢達が帰った後に並行世界の星矢と沙織と未来が並行世界の響の前に現れるというのを描きました。
話の最後辺りにあった未来は安易な出撃ができないのは、XD本編ではイノセントシスターで語られましたが、そうするくらいなら早い段階でやった方がいいと判断し、翳り裂く閃光編の最後でそれが語られる事にしました。もっとも、今後も未来が響達と一緒に訓練を受けたり、やむを得ないために出撃する話は描きますし、後に未来が正式な装者になる前振りもきちんと描いています。
並行世界の響が見た星矢に助けられる夢は、今小説の前日弾にあたる『13番目の黄金聖衣』で元の世界の響が星矢に助けられた経験が元になっており、並行世界の響が星矢に助けられるという、今まで見てきた夢が現実になるシーンも描きました。
次の話は原作の黄金聖闘士が並行世界の同一人物として登場する話になり、響達シンフォギア装者が並行世界の聖域へ行きます。どのような展開が待っているかはお楽しみに。

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