セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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3話 並行世界の天羽奏

回想

 

 星矢達が対面した並行世界の奏はある出来事を思い出していた。

 

奏『…あの運命のライブの日をあたしは今でも夢に見る。翼はあの絶望を前にしても、折れず、負けず、その命を燃やして唄いーーそして、散って逝った。あの日からあたしは、両親の仇と共に翼の仇をとる事だけを胸に、戦い以外の歌を捨て、復讐のためだけに生きてきた…。…あれから後悔しなかった日は一日もない。ただ狂おしいほどの公開と、奴等への怒りだけが際限なく増していく。落ちる所まで落ちたあたし。もう、翼と唄い、夢を見ていたあたしなんてどこにもいない。心にあるのはただ、ノイズへの怒りと憎しみ。そう…奴等への復讐心だけが、今のたしを動かしている。……翼は、いまのあたしを見たら何ていうのだろう。失望されるだろうか、拒絶されるだろうか…。でも、あたしは……片翼だけじゃ飛ぶ事ができないんだよ。だから、翼にはいまのあたしを見てほしくない…。翼が描いていたあたしは、もう…』

 

 

 

市街地

 

 並行世界で奏との想わぬ再会を果たした翼の心境は喜びでいっぱいだった。

 

翼「奏…、奏ぇ…」

 

奏「翼…」

 

マリア「(あれが、天羽奏…。そうか、さっき出会った王虎やアイザックと同じ並行世界の可能性…。『天羽奏が死ななかった世界』もあり得るという事ね…)」

 

響「奏さん…翼さん…よかったよぉ…。うっ、うっ…」

 

 翼が再び奏と会えた事に響は嬉しくて涙を流していた。

 

マリア「…ねえ、そんなに翼にとって天羽奏は大きい存在だったの?」

 

星矢「そりゃ、当然だろ?マリアだって死んだ妹が大切な存在であるように、翼にとって奏は」

 

奏「離れろっ!」

 

 奏から拒絶された事に翼は今までにない程のショックを受けていた。

 

翼「え…?奏…」

 

奏「うるせぇっ!翼は死んだ、お前が翼のはずがないっ!誰だ、てめえらは…!」

 

翼「私が死んだ…?」

 

氷河「何を言っている、奏!目の前にいる翼は」

 

奏「黙れっ!それ以上言うのなら…!」

 

 いかにも怒っている奏は槍の矛先を翼に向けていた。そんな折、通信が入った。

 

???『待て、奏』

 

奏「なんだよっ!?」

 

???『そこにいる者達を、本部まで連れてきてくれ』

 

奏「はあ?何でだよっ!こんな偽者なんてっ!」

 

???『…ただの偽者に、ギアが纏えるとは思えない。詳しい話を聞きたい。頼む…』

 

奏「ちっ…わかったよ」

 

 いかにも不機嫌そうに渋々了承した。

 

奏「おい、お前ら。ついてこい。弦十郎のダンナが話したいんだと…」

 

 そう言って奏はリディアンの方へ向かった。

 

星矢「紫龍、聞いたか?」

 

紫龍「この世界にも司令がいるのか」

 

王虎「お前達の世界にも弦十郎がいるのか?」

 

氷河「その通りだ。俺達の世界にもいる」

 

響「あの…やっぱり行き先はリディアンの地下なんですかね。ねえ、翼さん…翼さん?」

 

 奏に拒絶された事のショックが大きく、翼は放心状態だった。

 

翼「奏…」

 

マリア「…ほら、翼。いつまでも呆けてないで。行きましょう」

 

翼「あ、ああ…。すまない…」

 

 対面した奏の様子に星矢は不満であった。

 

星矢「それよりも、あの奏の態度はとんでもねえな。初めて会ったばかりの頃の翼よりも荒れてるぜ」

 

アイザック「…すまんな、奏は3年前からずっとあんな風らしい」

 

氷河「王虎とアイザックもノイズ退治の助っ人として呼ばれたのか?」

 

アイザック「その通りだ。奏1人では限界があると判断した司令がアテナと話して決まった事だ」

 

王虎「だが、奏は俺達を仲間として受け入れようとしなかった。それどころか、俺達の強さに嫉妬して連携さえままならない状況だ」

 

星矢「だから、お前達も奏の話をあまりしないのか…」

 

王虎「そうだな」

 

アイザック「俺達聖闘士と装者が連携しなければどうにもならない敵がいるというのにな…」

 

紫龍「聖闘士と装者が連携しなければ手に負えない敵だと?」

 

王虎「そこは司令のいる所で話す。ついてきてくれ」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 並行世界の二課の本部へ来た響達だが、翼を見た二課のメンバーは驚いていた。なお、二課のメンバーは全くといったいい程変わっていないが、弦十郎の服装は赤いスーツであった。

 

朔也「…つ、翼さん…?」

 

あおい「本当に…どうして…?」

 

弦十郎「…翼、なのか…?」

 

翼「…驚いた。こちらでも二課は二課なんですね…」

 

弦十郎「こちらでも…?どういう事だ?その…翼、でいいのか…?」

 

翼「…はい、おじさま。私は確かに風鳴翼ではありますが、あなた達の知る風鳴翼ではありません」

 

弦十郎「俺達の知る翼ではない、だと?」

 

紫龍「はい、その通りです。それは」

 

了子「もしかして、パラレルワールド、かしらね?」

 

 了子の登場に一同は驚いていた。

 

響「りょ、りょりょりょ…了子さんっ!?」

 

了子「はあ~い。あら、私ったら別の世界でも有名なのかしら」

 

星矢「(この世界の了子はフィーネかどうかはわからないけど、何だか苦手だなぁ…)」

 

 元の世界でフィーネの猛烈な怒りと憎しみでボコボコにされたため、星矢は了子に苦手意識を持っていたのであった。

 

翼「櫻井女史…」

 

弦十郎「…済まないが情報を整理させてくれ。君達は並行世界、パラレルワールドから来たというのか?」

 

マリア「ええ、そうよ。そして、私達が来た理由は」

 

 そんな中、ノイズの警報が鳴った。

 

朔也「高質量のエネルギー反応を検知っ!」

 

あおい「ノイズです!場所は」

 

弦十郎「く…こんな時に…」

 

了子「まったく、無粋よね~」

 

奏「あたしが出る!」

 

了子「待って奏ちゃん!出るなら、もう一度LiNKERを打っていきなさい」

 

奏「わかってるよ!」

 

 そのまま奏は出撃した。

 

翼「奏!くっ、私も行く!」

 

 奏を追いかけ、翼も出撃した。

 

マリア「翼!ああ、もう…」

 

弦十郎「一つ聞かせてくれ。君達は、装者なのか?」

 

マリア「ええ、そうよ。この子も私もね。ガングニールとアガートラームの装者よ」

 

弦十郎「アガートラーム?」

 

マリア「(…この反応、こちらではアガートラームは見つかってない、という訳ね…)」

 

朔也「翼さんはともかく、全員装者…?」

 

あおい「そんな…装者がそんなにいるだなんて…」

 

アイザック「そして、そこの3人は黄金聖闘士だ」

 

 その言葉にまたしても二課のメンバーは衝撃を受けた。

 

弦十郎「何だとっ!?アイザックと王虎が連れてきた3人は聖闘士の頂点といわれる黄金聖闘士なのかっ!?」

 

星矢「その通りだぜ。その証がこの黄金聖衣だ」

 

 星矢達の背負っている黄金の聖衣箱が何よりの証拠だった。

 

弦十郎「俺達は途方もなく頼もしい助っ人に来てもらったな…。すまないが、君達にも協力してもらえないだろうか?…我々には奏以外の装者がいないんだ」

 

響「もちろんですっ!私達に任せてください、師匠!」

 

弦十郎「師匠…?ま、まあとにかく、よろしく頼む」

 

了子「ふふ、これは面白くなってきたわね~」

 

氷河「行くぞ!」

 

 星矢達は出撃した。

 

 

 

道路

 

 響達や星矢達によってノイズは全滅した。

 

マリア「…ノイズの撃退は完了ね」

 

 並行世界から来た響達や星矢達の実力に奏は驚きを隠せなかった。

 

奏「(翼の、天羽々斬……。いやあたしの知ってるそれよりも数段強い…。あの金ピカ鎧の奴等も手品みたいな技でノイズを全く寄せ付けねえ強さだ…!それに…あいつのギアは…あたしと同じ…)」

 

 響のギアが自分と同じガングニールである事に奏は衝撃を受けていた。

 

響「ん?どうかしましたか、奏さん?」

 

奏「…何でもない」

 

 しかし、実際は同じギアなのに響と力の差がある事に動揺していた。

 

奏「(ガングニール…なのに、どうしてあたしより…。どうなってるんだよ、一体!)」

 

翼「奏…あの、大丈夫だった…?」

 

奏「…黙れ。あたしに干渉するな」

 

翼「…ごめんなさい」

 

奏「ちっ…戻るぞ」

 

 奏の冷たい態度に翼は傷ついていた。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 響達は帰還した。

 

弦十郎「助力、感謝する…」

 

翼「いえ、ノイズから人々を守る剣となるのが私達の役目ですから」

 

弦十郎「…やはりお前は翼なんだな」

 

翼「…司令?」

 

弦十郎「いや…すまんな。どうしても俺の知る翼と重なってしまう…」

 

奏「ふざけるなっ!重なるもんか!翼は…翼は…っ!」

 

アイザック「落ち着け、奏。今は話の最中だ」

 

奏「ちっ!」

 

 不機嫌な様子で奏はその場を離れた。

 

弦十郎「すまなかったな…」

 

翼「…気にしないでください」

 

了子「そ・れ・よ・り~、速くそっちの世界の事を聞かせてくれないかしら?興味あるわ」

 

マリア「…もちろんよ。こちらも色々と聞きたい事があるわ」

 

了子「それじゃあ、情報交換と行きましょうか」

 

 早速、情報交換を行った。

 

弦十郎「なるほど。君達はその完全聖遺物の力でこちらに渡ってきたという事か…」

 

星矢「ああ。俺達聖闘士は装者と違っては最初は並行世界へ行けるかどうかわからなかったから、一応おまけとしてだけどな」

 

翼「そして、ギャラルホルンが世界を繋ぐ要因となった異常の解決を目的としています」

 

紫龍「この世界にその異変や異常を教えてください」

 

了子「異変や異常ね。あるわよ~。もう、ありすぎるくらい」

 

響「そ、そんなに…?」

 

弦十郎「…出現するノイズの一部に、通常のノイズとは特徴が異なる個体を観測している。それが恐らく異変の元凶だろう…」

 

氷河「(アルカノイズか…?だが、まだ断定はできん)」

 

翼「特徴が異なる…?それはどういったものなのですか?」

 

了子「ノイズは人に触れると炭素分解を起こす。これは知っているわよね?」

 

星矢「もちろんだぜ」

 

了子「でもそのノイズは人間だけを分解させるのよ。無尽蔵に」

 

響「…え?」

 

紫龍「(人間だけを無限に分解するだと?そんな特徴はアルカノイズには存在しない。新種のノイズだろう…)」

 

了子「つ・ま・り。人だけを分解し、自分は分解されないの。触った相手だけを次々に分解させちゃうわけ」

 

翼「そんな…それでは犠牲者が…!」

 

弦十郎「…ああ。このノイズ1体でいくらでも人を殺せる。しかも、今までのノイズとは比べ物にならない戦闘力もある。だからこそ、沙織お嬢様に連絡を入れて聖闘士にノイズ退治の助っ人に来てもらったんだ」

 

響「それが、王虎さんとアイザックさんが二課に来ていた理由だったんですね?」

 

王虎「その通りだ」

 

アイザック「地上の愛と平和を守るのが聖闘士の使命。ノイズ退治も古来よりやっていたからな」

 

弦十郎「我々は、何らかの原因でノイズに状態変化が起き、特性が変わったものだと見ている。それをノイズの『カルマ化』と呼んでいるが、詳しい詳細はまだわかっていないのが現状だ」

 

翼「…ノイズの『カルマ化』…」

 

星矢「その個体のノイズがお前達の言ってた『聖闘士と装者が連携しなければどうにもならない敵』なのか?」

 

王虎「その通りだ。もっとも、俺達の言っている敵はその個体の更なる変異種だがな」

 

氷河「この際、その変異種のノイズは『カルマノイズ』と言おう」

 

アイザック「そうだな。その変異種のノイズの名はカルマノイズに決定だ」

 

弦十郎「…君達がこの解決に協力してくれるというなら、我々も心強い。是非、力を貸してほしい…」

 

響「もちろんです!どーんと任せてください!」

 

星矢「並行世界だって守備範囲だからな」

 

翼「…この身に代えても、そのカルマノイズとやらを討ち取って見せます」

 

 その言葉に奏が激怒した。

 

奏「ふざけんな!」

 

アイザック「落ち着け、奏!」

 

奏「この身に代えても?軽々しく口にしてんじゃねぇよっ!第一、この世界の事はこの世界の奴がやるべきだろっ!どこの馬の骨かも知らない余所者や他の世界の奴の手を借りるなんて…あたしは反対だっ!」

 

 かなり怒っている奏はその場を去った。

 

了子「…奏ちゃん、ご機嫌斜めね~」

 

弦十郎「…奏にも割り切れない思いはあるのだろう。すまない。今日はこれくらいにしよう。我々のセーフハウスを一つ提供するから、こちらにいる時は自由に使ってくれ」

 

響「はい、ありがとうございます」

 

了子「ね、ところで、あなた達のいる世界にこっちから行く事は自由にできるのかしら?」

 

翼「自由に…というと語弊はありますが、通ってきたゲートを使えば、いつでも戻れるようです」

 

了子「それなら行ってみたいあぁ~、連れて行ってくれない?」

 

星矢「残念だが、ゲートは装者や聖闘士じゃないと通れないんだぜ」

 

了子「あら、そうなの?残念だわぁ~」

 

 一方、奏は翼と出会った事で抱いたすさまじい不満が爆発していた。

 

奏「ちくしょう…どうして」

 

翼『…この身に代えても、そのカルマノイズとやらを討ち取ってみせます』

 

奏「あいつの顔で、あいつの声でそんな事言うなっ…。あたしは絶対に認めねえ…そんなの許さねぇっ!」

 

 未だに目の前にいる並行世界の翼の事を認められない奏であった。

 

 

 

セーフハウス

 

 星矢達は提供されたセーフハウスでアイザック達と一緒に寝ていた。

 

星矢「紫龍、奏は俺達が聞いた話とは違った奴だな」

 

紫龍「俺もそう思っていたが、俺達が奏と対面したのは今回が初めてな上、今まで聞いた奏の話は翼や司令の視点からだ。奏の本当の姿は俺達も知らなくて当然さ…」

 

アイザック「俺も翼に会った時は奏の話に比べたら思っていたよりも違ってたからな」

 

王虎「やはり、聞くより自分の目で見た方がありのままの姿を見られる」

 

氷河「後、思っていたよりも奏と翼は似ているな」

 

星矢「あん時の翼は響が『奏さんの代わりになります』って言っただけで当たり散らしていたしな。俺達の世界でも翼ではなく奏が生き残っていたらあんな感じになってたか?」

 

紫龍「そう考えるのが自然だろう。それに、俺達の世界の奏は家族の仇をとるために装者になったんだ。この世界でも同じ理由で装者になったのなら、翼という相棒を見つけてやっと復讐以外の生き方も見つかった矢先に翼が死んでしまってああなってしまうのも無理はない」

 

星矢「これから、どうなるんだろうな…」

 

 奏の事で悩む星矢達であった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 そして翌日、

 

弦十郎「昨日はゆっくり休めたか?朝から集まってもらってすまない」

 

響「ばっちりです、師匠」

 

弦十郎「師匠…?」

 

響「あわわ、気にしないでください」

 

弦十郎「あ、ああ…?さて、とにかく昨日の続きだ。君達の目的は聞いたし、こちらで起きている異変については共有できたと思う。他に聞きたい事はあるだろうか?」

 

マリア「…そうね。それなら一つあるわ。こちらの風鳴翼について話してくれるかしら?」

 

奏「なっ…!」

 

紫龍「(この奏の反応、もしや、この世界の翼は…!)」

 

 奏の反応にこの並行世界の翼がどうなったのかを紫龍は察したのであった。

 

翼「マリア…?」

 

響「こっちの翼さん…?」

 

マリア「あなた達は私達と会った時、翼を見て驚いていたわね。つまり、こちらの翼も装者なのでしょう?」

 

星矢「(言われてみりゃ、そう考えるのが自然だな)」

 

弦十郎「…その通りだ。翼は二課所属の装者だった」

 

響「装者…だった?」

 

弦十郎「順を追って話そう。翼は奏と共にアーティストユニットを組んでいた」

 

氷河「ツヴァイウイング…だろう?」

 

弦十郎「…そうか、そこはそちらの世界でも同じなのか。なら話が早い。事件はそのファーストライブの会場で起きた。ライブ当日、大量のノイズが会場に現れた。その中に、カルマ化したノイズが混じっていた…。あの個体が観測されたのは、恐らくそれが初だ。翼と奏は奴と戦い、瀕死の重傷を負った。そしてその時…、翼は奴を倒すために絶唱を唄い、天羽々斬のギアが砕け散る程の一撃で奴を倒した。その身すらも犠牲にしてな…」

 

 その話に奏は忌まわしい過去を思い出していた。

 

弦十郎「これが、我々の世界の翼の話だ…」

 

マリア「…興味深いわね。そこが恐らくこの世界と私達の世界の分岐点よ。そうでしょう、翼?」

 

翼「…ああ」

 

了子「分岐点…という事はそっちでは何が起きたのかしら?」

 

響「…奏さんが、絶唱を使って…」

 

王虎「生き残ったのは翼になったのか」

 

マリア「後は、こちらではそんなおかしなノイズは現れてないわ。…代わりに、後から凄いのが出たけどね(フィーネという、星矢達でも苦戦した化け物がね…)」

 

了子「ん?何かしら?」

 

マリア「(櫻井了子…フィーネは宿っていないのかしら…?念のため、フィーネの事は少しぼかしておくべきね)…何でもないわ。ライブの後にこちらであった事だけど」

 

 マリアは紫龍と共にこれまでの戦いの事を話した。

 

弦十郎「…そうだったのか。ルナアタックにフロンティア事変、さらには魔法少女事変とは…」

 

了子「こちら以上に戦いだらけの世界ねぇ~。しかもこの世界に来ている星矢君達の他にも黄金聖闘士クラスの聖闘士があと2人もいる上に装者が6人?もう、大盤振る舞いじゃないの~」

 

星矢「そっちにも瞬と一輝はいるのか?」

 

アイザック「ああ。一輝はいつもの別行動で瞬は別の任務があって来ていない」

 

響「こちらでは翼さんと奏さん以外にいないんですか?」

 

弦十郎「…ああ、見つかっていない。もしかしたら、こちらの世界の君達を見つければ、装者になれるのかも知れないが…」

 

マリア「…難しいわね。私のアガートラームは見つかっていないのでしょう?大きく変化したのがそのライブからだってだけで、他にも細かな違いはあるはずよ。装者の資質だってわからないわ」

 

了子「ま、そうでしょうね~。ところでそうそう、そのアガートラームなんだけど~。私にじ~っくり見せてくれないかしら?」

 

 了子はマリアに近寄った。

 

マリア「え?」

 

了子「もう、見た事ない聖遺物だから気になって気になって~。ね、いいでしょ?ほらほら、遠慮しないで~」

 

 強引に了子はマリアを引っ張っていった。

 

マリア「あ、あの、ちょっと!ひ、引っ張らないでってば…!」

 

了子「弦十郎君、後は任せたわ。私はこの子と向こうでイイコトしてくるわね~」

 

マリア「イイコトって…!?」

 

 了子の言ってる事は元の世界で了子のセクハラを何度も受けた響には簡単に予想できた。

 

紫龍「(災難だな、マリア…)」

 

弦十郎「…お手柔らかにな、了子君」

 

響「…なんか、落ち着きます。了子さんは了子さん…ですよねっ!」

 

翼「…ああ」

 

弦十郎「…どういう事だ?」

 

響「何でもありません!それより師匠…って、違う違う…」

 

弦十郎「…それなんだが、すまないがどうして君は俺を師匠と呼ぶんだ?そちらでは俺は君の師匠なのか?」

 

響「はい、武術の師匠なんです!」

 

弦十郎「…俺は人に武術を教えるなんてできないぞ。最低限の護身術程度しか修めていない」

 

響「またまた~。素手でも私達装者より強いくせに~」

 

星矢「それも、小宇宙は使えないけど白銀聖闘士クラスの強さだぜ。素手で凍結リングを砕いたり、震脚でアスファルトをひっくり返したりできるんじゃないのか?」

 

弦十郎「…それは本当に人間か?」

 

 これまた衝撃の発言に星矢達は驚いた。

 

響「え?その…できないんですか?」

 

奏「…なにわかんねーこと言ってるんだ。弦十郎のダンナが戦えるはずないだろ?」

 

星矢「マジかよ!」

 

弦十郎「ああ、そんな事は逆立ちしたってできやしないさ」

 

奏「…どうやら、そっちは思ったよりこっちと違うらしいな」

 

翼「奏…(…なら、奏にとっての私、こちらの風鳴翼は…?)」

 

響「そうですね…びっくりです!まさか師匠が普通の人だなんて…」

 

弦十郎「俺としては、そんな事ができるというそっちの俺の方がびっくりなんだが…」

 

奏「…なぁ、お前ら」

 

響「はい?」

 

奏「…お前達の方でのあたしは」

 

 そんな折、ノイズ警報が鳴った。

 

朔也「高質量のエネルギーを検知、ノイズです!」

 

弦十郎「…奏、王虎、アイザック、それに並行世界の装者と聖闘士達…。頼んだぞ!」

 

 星矢達は出撃した。

 

 

 

市街地

 

 目的地に到着した星矢達はとても数が多い方を星矢達が担当し、他を装者が担当した。王虎とアイザックはノイズを一掃していた。

 

氷河「やるな、アイザック!」

 

アイザック「いや、セブンセンシズを常に維持できるようになった氷河の方が凄いぞ。俺はまだ常時維持ができないから、どうしてもムラがある」

 

氷河「それでも、修行していた頃は俺のいた世界でもこの世界でも俺より先を行ってたじゃないか」

 

アイザック「…そうだな」

 

 兄弟弟子同士が肩を並べて戦う事に氷河とアイザック、紫龍と王虎は内心とても喜んでいた。

 

星矢「兄弟弟子が力を合わせて共に戦うのは嬉しいと思うけど、とっととノイズをやっつけちまおうぜ!」

 

 星矢達は光速の動きを始めとする圧倒的な強さでノイズを全く寄せ付けなかった。一方、響達の方もノイズを寄せ付けず、マリアは剣を蛇腹状に伸ばし、ノイズを切り刻んでいた。

 

翼「立花、マリアに続くぞ!」

 

響「わかりました!てりゃあああっ!!」

 

 響と翼もノイズを一掃していた。

 

響「やりましたね!」

 

翼「ああ。だが、どうやらまだ終わりではないようだ…」

 

 まだノイズの増援は続いていた。

 

響「うわわっ、まだこんなにたくさん!」

 

紫龍「臆するな。落ち着けば何とかなる」

 

マリア「…本当は彼女も私達と連携してくれるといいんだけれど…」

 

翼「…すまない」

 

氷河「翼が謝る事じゃない」

 

アイザック「戦いの時はクールに徹するんだ」

 

翼「(…奏)」

 

 奏は1人でノイズと戦っていた。

 

奏「(何なんだ…何なんだ何なんだっ!金ピカ鎧の連中の手品みたいな技、ガングニールの奴の爆発力、見慣れないギアの奴の冷静さ、そして天羽々斬…翼のあの強さはっ!あたしがノイズを一匹倒す間にあの8人はあたし以上に多くのノイズを倒してやがる…背中を預けられる相手がいるって、そんなに)」

 

 星矢達の圧倒的な強さや響達の強さに奏は猛烈な劣等感を抱いていた。

 

奏「(違うっ!それは弱さだ!翼が死んだのは、あたしが翼を守れなかったからだ!)認め…られるかぁぁっ!!」

 

 響達に負けじと奏はノイズを倒し続けた。

 

響「凄い…さすが奏さん…」

 

マリア「…適合係数の低いギアであれだけの動き。さすが、翼のパートナーだけの事はあるわね…」

 

翼「奏…(そうだ、あれが奏だ…。誰よりも強く、いつも私を護ってくれた奏の姿だ…)」

 

響「翼さん、新手ですっ!」

 

翼「何だとっ!?」

 

 またしてもノイズの増援が来た。しかし、どれだけノイズが大量に出ても星矢達の前では一瞬で塵と化したのであった。

 

奏「ちっ、まさかここまで大量に出るなんてな!(…あの日、あたしがこれを使うのを躊躇したばっかりに翼が…!)」

 

 ノイズの増援を見た奏は忌まわしい過去の出来事を思い出していた。

 

奏「もう遠慮はなしだ!聞かせてやるよ、これがあたしの絶唱」

 

翼「ダメええええーーっ!」

 

 もう奏の死ぬ姿を見たくない翼は奏の絶唱を止めた。

 

奏「な…お前っ、邪魔すんな!」

 

翼「使わせない…こんな所で散るなんて許さない!(私は奏を護る…今度こそっ!)」

 

奏「うるせぇっ!鎧の連中の手品みたいな技がないのにあの大量のノイズをどうするつもりだ!絶唱を使わなきゃ」

 

翼「…私達がやる。立花、マリア、抜剣だ!」

 

奏「抜剣…?」

 

響「了解です!」

 

マリア「ええ、やりましょう!」

 

響達「イグナイトモジュール、抜剣!」

 

 響達はイグナイトモジュールを発動させた。

 

奏「なっ!?ギアが…変化した!?」

 

 イグナイトモジュールに奏は驚愕していた。そして星矢達ほどではないにしろ、響達は圧倒的な力でノイズを一掃したのであった。

 

翼「…殲滅完了だ(…護れた…。奏に絶唱を使わせないで済んだ…)」

 

 翼は奏を護れた事を喜んでいたが、奏の方は途方もない劣等感に苛まれていた。

 

奏「(…そんな、こんな力まで…。あたしには絶唱以外の手立てなんてなかった…。こいつら、一体どれだけの力、どれだけの奥の手が…)」

 

響「終わりましたね~。それじゃ、みんなで帰りましょう!」

 

マリア「ええ、そうね」

 

奏「(…こいつらはあたしより強い…。ただのノイズなんて、ものともしないだけの力がある…。なら、あたしは…必要なのか…?)」

 

 奏の様子を紫龍達は察した。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 本部へ帰還後、奏は了子の元に来ていた。

 

奏「了子さん」

 

了子「あらあら、どうしたのかしら~?穏やかじゃないわね~」

 

奏「あたしに、もっと力をくれ!あの力…イグナイトとかいったあれをあたしにも」

 

了子「…それは無理ね。単なる出力アップなら、時間があればできなくもないけど…」

 

奏「どうして!同じガングニールだってあったろ!」

 

了子「あのイグナイトの機能は、他の聖遺物をコアとして発動させているものなの。だから、それがないとお手上げ」

 

奏「ちくしょう…!」

 

 失意のうちに奏はその場を離れた。

 

了子「本当、穏やかじゃないわね~。それにしても、あのイグナイトってやっぱり…人為的に引き起こした暴走、よね。例えギアが改修できても、今の奏ちゃんが使おうとしたら、恐らく…」

 

 この並行世界においても驚異的な頭脳は健在の了子であった。

 

奏「(…ルナアタック、フロンティア事変、魔法少女事変…。超先史文明期の巫女にして元黄金聖闘士、同じ装者同士や完全聖遺物、更には錬金術師との戦い…)」

 

 翼達のいた世界の出来事を奏は思い出していた。

 

奏「 あいつらの…翼の強さはそうやって磨かれたのか…。あたしだって、戦い続けてきたんだ!戦ってきた時間は変わらない!(そうだ…だからあたしにだって、ギアさえあれば)」

 

 そこへ、王虎とアイザックが来た。

 

奏「鎧の奴等か…」

 

王虎「奏、お前は力を求めているようだな。だが、今の状態で求めるのはやめておけ」

 

奏「どういう事だ!?」

 

アイザック「未熟な心で力を得てもその力に振り回されるだけだ。他人の力を欲しがるぐらいなら、自分の心を、腕を磨いて本当の強さを手に入れろ」

 

奏「あたしに説教するな!あんたらはあたしらと違ってただ体を鍛えただけでノイズを倒せるようになったんだからな!それに男共は例えこじれても殴り合えば分かり合えるけど、あたしはあんたらみたいに単純じゃねえんだよ!」

 

 不機嫌な様子で奏はその場を離れた。そして入れ替わるように星矢達が来た。

 

氷河「ダメだったか…?」

 

アイザック「…ああ」

 

星矢「今のあいつじゃイグナイトが使えても、使いこなせないからな」

 

紫龍「力を得る事自体は意外と簡単だ。だが、強大になればなるほど、その制御は難しくなる」

 

王虎「そして、その力のリミッターになるのが心。強大な力と強い心があってこそ、本当の強さになる」

 

星矢「難しいのは、本当の強さを得る事だからな」

 

 厳しい修行に耐え、様々な激しい戦いを経験したからこそ、今の星矢達の強さになったのであった。通路を通っている奏であったが、響と対面した。

 

響「あ、奏さん」

 

奏「…お前は」

 

響「あのですね、少しだけお時間いいでしょうか?」

 

奏「…何だよ」

 

響「あの時は助けてくれてありがとうございましたっ!」

 

奏「…は?何の事だ…?」

 

響「あのライブの火、私は奏さんに助けられたんです」

 

奏「それはそっちの世界の話だろ。あたしはあんたを助けた事なんてないよ」

 

響「それでも、奏さんは奏さんですから。…一度でもいいから、お礼を言いたかったんです」

 

奏「…おかしな奴だな、お前」

 

響「はい、よく言われます!…それに、私が装者になれたのは、奏さんからガングニールを貰ったおかげですから」

 

奏「あたしが…?」

 

響「はい!私は奏さんに救われて、奏さんのガングニールを受け継いで装者になったんですっ!」

 

奏「…そうか」

 

響「だから、ありがとうございますっ!」

 

奏「…ああ」

 

 その後、奏はシミュレーターで訓練をしていた。しかし、気は晴れなかった。

 

奏「(あたしはどうしたら強くなれる…。あいつらのように…いや、あいつら以上に…)」

 

アイザック『自分の心を、腕を磨いて本当の強さを手に入れろ』

 

 悩んでいるとアイザックが言った事が思い浮かんだ。

 

奏「(男共の言った事なんてあてにできない。ギア…あたしのガングニール…。でも違う、同じガングニールでもあいつのは…)」

 

 ちょうどシャワー室を通るとしていた所、音がした。

 

奏「ん?ああ、あいつらがシャワー浴びてるのか…。ったく、服もギアも適当に放り出して…」

 

 ふと、奏は思いついた。

 

奏「(…ギア。そう…ガングニール…)…機能は違っても、あたしが適合したガングニールなのは変わらない…」

 

 そして、響はシャワーを浴び終わった。

 

響「あ~、さっぱりした~」

 

 しかし、あるものがなくなっている事に気付いた。

 

響「……あれ?私のガングニール…。おかしい…、ここに置いておいたはずなのに…!」

 

 そんな中、ノイズ警報が鳴った。

 

奏「ノイズかっ!?」

 

弦十郎「来たか、奏。…ああ、大量のノイズ反応が検知された」

 

奏「わかった、あたしが出る!」

 

 奏は出撃した。

 

弦十郎「待てっ!翼、お前達も頼む!」

 

翼「はい、心得ました」

 

 翼達も出撃したのであった。

 

 

 

 

 今回も大量のノイズが出ていた。

 

マリア「これはまた随分とたくさんね」

 

星矢「おい、響はどうしたんだ?」

 

奏「(この力があれば、あたしも…)」

 

 奏の持っているガングニールは響のものであった。

 

奏「行くぞ、ノイズ共!」

 

 奏は戦いの歌を唄った。しかし、異変が起こってギアを纏えなかった。

 

奏「ぐっ!な、なんだ」

 

翼「…奏?」

 

奏「ぐあああっ!どうなってやがる。ギアが纏えない…。身体が、裂けそうだ…」

 

マリア「これは…一体どうしたっていうの?」

 

アイザック「(まさか…!あのバカ、俺の言った事を無視して…!)」

 

王虎「この場は俺達に任せて、奏を下がらせろ!」

 

翼「わかった!」

 

 奏を下がらせるまで星矢達がノイズの相手をする事になった。そして、翼とマリアも合流してノイズを全滅させた。

 

氷河「これで最後のようだな」

 

翼「奏…」

 

奏「(…あたしに、これを扱う資格がないって事か?)」

 

 そんな中、黒い霧が発生して黒いノイズと黒と金ノイズが出てきた。

 

奏「!?あれは…現れやがった!」

 

紫龍「あれが…カルマノイズか…」

 

王虎「気を付けろ。奴は他のノイズと比べても小宇宙への耐性が高い上、黒と金の奴は俺達の攻撃でも少ししかダメージを受けない上、再生するぞ!」

 

紫龍「黒と金の奴はゴールドカルマノイズと名付けよう!」

 

星矢「だったら、先手必勝だぜ!アトミックサンダーボルト!!」

 

 隣で戦っているマリア達の攻撃を軽々とかわしたカルマノイズだが、ゴールドカルマノイズは光速の星矢達の動きを見切る事ができずにアトミックサンダーボルトをまともに受けた。しかし、ゴールドノイズ以上に小宇宙への耐性が高いゴールドカルマノイズにはあまりダメージはなく、そのダメージも回復してしまった。

 

星矢「やっぱり、王虎やアイザックの言った通りだ!」

 

王虎「普通のカルマノイズなら何とかなるが、このゴールドカルマノイズはスピードや攻撃力は大した事はないが、あの防御力が厄介でな…。俺達聖闘士よりも装者の方がダメージが通りやすいんだ」

 

氷河「聖闘士と装者が協力しなければならないといったのは、ゴールドカルマノイズの事だったのか!」

 

星矢「だったら、もっと小宇宙を燃やしてぶち込んでやるまでだ!」

 

奏「…あたしには無理だってのかっ!?そんなの認めてたまるか!あたしにだって…」

 

翼「奏?」

 

 再びギアを纏おうとしたが、やはり纏えなかった。

 

奏「ぐあああっ!!はぁ、はぁ、はぁ…なんで、なんでなんだよ!」

 

翼「奏…一体どうしたというの?」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 奏の異常は本部でも確認されていた。

 

朔也「奏さんの適合係数に異常は見られません。出撃前にもLiKERの投与を確認しています」

 

弦十郎「では、なぜギアを纏う事ができない!?」

 

響「…あれはもしかして、私のガングニール?」

 

弦十郎「なんだとっ!どういう事だ!?」

 

響「奏さん…」

 

 まさか奏にガングニールを盗まれていた事に響はショックを受けていた。

 

 

 

 

 奏は響のガングニールを纏う事ができなかった。

 

翼「奏、無理はしないで。ここは私達が」

 

奏「うるさいっ!あたしだって、やれる!」

 

マリア「バカな事を言わないで!そんな苦しそうな状態で、何ができるっていうの?」

 

奏「く……そ……」

 

 負荷に耐えられず、奏は倒れた。

 

翼「奏!奏!」

 

アイザック「落ち着け、翼。気絶しただけだ。それより」

 

 星矢達が小宇宙を高めている間にカルマノイズとゴールドカルマノイズは姿を消してしまった。

 

星矢「消えただと…?」

 

紫龍「王虎とアイザックが仕留められないのも、これが原因なのか?」

 

王虎「そうみたいだ。だが、今回は助かったとみていいようだな」

 

 王虎の視線の先には倒れた奏の姿があった。




これで今回の話は終わりです。
今回は並行世界の奏との対面と並行世界の状況、そしてカルマノイズの出現を描きました。ゴールドカルマノイズに聖闘士の攻撃が効きにくいのは装者にも活躍の場を作るためです。
次の話はカルマノイズの特徴が明らかになります。
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