セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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和装乱舞編
30話 武者ノイズ


公園(並行世界)

 

 並行世界の聖域での戦いからしばらく経った後、新たに並行世界と繋がったため、今回はクリス達がその世界へ向かう事となった。

 

クリス「着いたな、ここが今度の世界か…」

 

切歌「あんまり違いはないデスね」

 

調「うん、本当に並行世界に来たのかな?」

 

瞬「僕もあまり実感はわかないけど、色々と違いは出るものだと思うよ」

 

クリス「(しかし、今回はあたしら4人で調査か…)」

 

 クリスは4人で調査に出る事になった事を思い出していた。

 

 

 

回想

 

 それは、再びギャラルホルンのアラートが発生した事だった。

 

弦十郎「今朝方、ギャラルホルンのアラートが発生した…。すまないが調査に…」

 

切歌「はいデス!あたし達に行かせてほしいデス!」

 

調「私達に行かせてください」

 

弦十郎「調君、切歌君…やる気は買うが…」

 

マリア「2人共…」

 

切歌「…あたし達もみんなの役に立ちたいんデス」

 

調「装者として、仲間として…できる事をやりたい」

 

沙織「そうですか。でも、あなた達は並行世界での経験が多くありません。せめて、それなりに並行世界での経験がある装者と黄金聖闘士クラスの聖闘士1人は必要です」

 

エルフナイン「僕もそう思います。並行世界の調査は不確定要素が多く、苦戦が予想されます。今までもカルマノイズを始めとした、強力なノイズの出現もありましたし、戦力的に装者3名、黄金聖闘士クラスの聖闘士1人は必要だと思われます」

 

紫龍「カルマノイズ大量発生を考慮すれば、最低でも俺達の誰か1人は必要か…」

 

マリア「それなら私が…」

 

切歌「クリス先輩!一緒に来てほしいデス!」

 

クリス「お、おう…」

 

調「クリス先輩、お願いします」

 

切歌「デスデス!先輩に来てほしいのデス!」

 

クリス「ま、まあ…後輩にそこまで頼まれたら…」

 

マリア「切歌…調…?」

 

瞬「今回の並行世界へは僕も行きます」

 

星矢「あ、そういや、瞬は今までお留守番ばかりで一度も並行世界へ行った事がないな」

 

氷河「瞬は割と落ち着いてるし、ネビュラチェーンが攻撃や防御、探索など色々な事に使えるし、人柄もいいから向こうの世界の人間と無用な衝突は避けられそうだ」

 

弦十郎「わかった。では今回の調査は瞬、クリス君、調君、切歌君の4人で行ってくれ」

 

調「了解です」

 

切歌「了解デース!」

 

瞬「わかりました」

 

 

 

クリス「それにしても、何であたしなんだ?あいつ、ちょっと泣きそうに見えたぞ…」

 

切歌「マリアには少し休んでほしいんデス。ずっと任務任務でゆっくりもできなくて…」

 

調「それに、マリアは私達に優しすぎるから…」

 

切歌「デス。ついマリアに甘えてしまうデス…。もっと強くなって、あたし達もマリアを支えたいんデス」

 

クリス「なるほどな、それで先輩として一番頼りになるあたしを選んだってわけか」

 

調「マリアは翼さんと仲がいいし、響さんには未来さんが…」

 

切歌「クリス先輩、1人で寂しいんじゃないかと思ったんデスよ」

 

クリス「1人で悪かったな!」

 

瞬「みんな、そんな事をしに来たんじゃないよ。僕達の目的は並行世界の異変の調査なんだ」

 

 瞬が仲裁する中、警報が鳴った。

 

クリス「おい、これは…ノイズか!」

 

瞬「急いで向かおう!」

 

 

 

道路

 

 瞬達は現場に到着した。

 

調「やっぱり、ノイズが!」

 

切歌「こっちの装者はまだ着いてないデスか!」

 

瞬「そもそも、装者自体がいない可能性もある。僕達がやるしかない!」

 

切歌「行くデス!」

 

調「待って、あそこに人が!」

 

 調の視線の先には自衛隊に護られている人がいた。

 

クリス「自衛隊に護られてるな…」

 

切歌「誰かこっちの要人デスかね…?白衣みたいなのを着ているように見え…」

 

 ところが、切歌は悪寒がした。

 

切歌「うひぃっ!?な、なんですかこの悪寒は…」

 

調「切ちゃんも?私もさっきから鳥肌が…」

 

瞬「(あの人は遠くからだとよくわからないけど…、どこか見覚えはある…!)」

 

クリス「あたしは何も感じねーけど…。とにかく助けに入るぞ!」

 

 クリス達はギアを纏い、瞬は聖衣を纏ってノイズと応戦した。

 

瞬「ネビュラチェーン!」

 

 瞬はチェーンでノイズを次々と倒していき、クリス達もノイズを倒していった。

 

自衛隊員A「ノイズが、倒されていく…?」

 

自衛隊員B「そんな、彼女達は一体何者なんだ…」

 

女隊長「戦闘の際に気を抜くな!気を抜けば命取りになる!警戒を怠るな!」

 

 女隊長の叱りに隊員達は気を取り直して警戒を続けた。そして、ノイズは全滅した。

 

調「この辺りにノイズはもういないみたい」

 

切歌「あたし達にかかればお茶の子さいさいデース!十二宮での戦いであたし達はさらに強くなったのデース!」

 

クリス「まあ、この程度のノイズなら楽勝だな。黄金聖闘士の実力を嫌って程、十二宮の戦いで再び経験したからカルマノイズが大した事なさそうに思えるぞ」

 

瞬「あなた達は自衛隊の方ですか?」

 

女隊長「ああ、そう…」

 

 女隊長は瞬の顔を見て、思わずきつい美人の表情を崩し、顔を赤くしてしまった。

 

女隊長「あ、あなたの名前は何ですか!?」

 

瞬「瞬ですけど…」

 

女隊長「瞬君というのね…。と、とてもあなたの顔は男の人とは思えない美しさね…。そ、それこそ100万人に一人の確立でしか現れないような美男子よ…」

 

瞬「は、はぁ…」

 

クリス「なぁ、あの女は何で瞬にデレデレしてるんだよ…」

 

自衛隊員A「隊長は任務の際は一切の私情は挟まずに常に最善の指揮を心がけているんだが、学生時代から無類のイケメン好きで、特に女っぽい顔の男には目がないんだ…」

 

自衛隊員B「任務中にそういった男に会った時は理性で抑え付けているんだけど、任務が終わってしまうとタガが外れてああなってしまって…」

 

クリス「…ああいった女には苦労してるんだなぁ…」

 

 瞬にデレデレしていた女隊長だが、しばらくして我に返った。

 

女隊長「あ、おほん!気を取り直して、あなた達は何者なのですか?」

 

瞬「その前にお聞きしたい事があります。特異災害対策機動部二課はあるのですか?」

 

クリス「(ナイスだぞ、瞬!)」

 

調「(瞬さんがいれば交渉はうまくいくかも…)」

 

女隊長「そのような組織は存在しない」

 

切歌「な、何デスと!?」

 

自衛隊員A「さっきからこいつら、何をわけのわからない事を言ってるんだ?」

 

自衛隊員B「…こいつら、怪しくないか?拘束した方が…」

 

女隊長「お前達、あの少年と少女達は怪しい者ではない」

 

自衛隊員B「しかし、いくら隊長が無類のイケメン好きであっても、あの少年も…」

 

女隊長「私のイケメン好きという私情の件に関しては言い訳はしない。だが、イケメンである事を抜きにしてもあの少年や一緒にいる少女達は怪しいようには感じない。博士、あの少年少女達の保護をお願いします」

 

???「承知しました」

 

 その声に切歌と調は警戒し、瞬も反応した。

 

ウェル「彼女達は我々の恩人!そう、この場を救った英雄なのですよ!このドクター・ウェルとあなた方の隊長に免じて、この場は抑えてください」

 

瞬「やっぱり…、ウェル博士か…」

 

女隊長「博士、彼女達の事はお願いします。私は報告等に赴き、それが終わってから来ますので」

 

ウェル「承知しました」

 

女隊長「各員、あの少年と少女達はウェル博士に一任する事でよいな?」

 

隊員達「了解!」

 

自衛隊員A「(いいのか、あんな対応で…)」

 

自衛隊員B「(でも、うちの隊長は無類のイケメン好きというアレな部分はあれど、人を見る目は確かだ。隊長の判断は間違いではないだろう)」

 

瞬「隊長さん、僕達に配慮をしてくださってありがとうございます」

 

女隊長「い、いや、私は揉め事を大きくして小競り合いを起こしたくなかっただけだ」

 

切歌「ありがとうデス!」

 

クリス「ほんと、話のわかる奴にすぐ会えて助かったよ」

 

 

 

住居

 

 そして、一同はウェルの案内に従った。

 

ウェル「楽にしてください。いやぁ、それにしてもさっきの戦いは素晴らしかった」

 

クリス「あ、ああ…(瞬、ウェルの様子はどうなんだ?)」

 

瞬「(さっき、チェーンには何の反応もなかった。僕達の世界のウェル博士は邪心に溢れていたからチェーンが反応したけど、この世界のウェル博士は悪人ではないようだ)」

 

ウェル「…おや?どうしました?あの少年の背後に隠れて…?」

 

 3人は瞬の背後に隠れていた。

 

切歌「寄るなデス!」

 

ウェル「何か嫌われるような事でもしましたか?そう邪険にされると悲しいのですが…」

 

調「ごめんなさい。でも、もう少し…心の準備ができるまで待ってください」

 

ウェル「はぁ、構いませんが…。ともあれまずは自己紹介をさせていだだきましょう。僕こそ、聖遺物研究の第一人者、ドクター・ウェルです!あなた達がさっき纏っていた物、それこそまさに聖遺物ですね!」

 

クリス「ああ、そうだけど…」

 

ウェル「やはり!この僕の目に狂いはなかった!聖遺物を起動させ、纏う技術…これは興味深い!そして何よりあの戦う時の歌…あの歌について聞かせていただきたい!さあ、さあ!」

 

瞬「博士、落ち着いてください!」

 

女隊長「はしたないですよ!」

 

 ウェルへの対応はお人好しな瞬が主にする事となった。

 

切歌「この世界にあたし達はいないんデスね…」

 

調「それどころかシンフォギア自体がないのかも。二課がないくらいだし。でもこのグイグイくる強引さ…。私達の師ってるドクターと本当にそっくり」

 

クリス「瞬、済まねえ…」

 

ウェル「素晴らしい…素晴らしいですよ!君の鎧についてももっともっと見せてください!そして聞かせてください!さあ!」

 

瞬「博士、きちんと説明するので落ち着いてください!(悪い人じゃなさそうだけど…、ここに来たのが僕でよかったのかも知れない…。特にウェル博士への敵意が強い星矢だったら、アトミックサンダーボルトや彗星拳を叩き込みかねないし…)」

 

 もしも、この世界に星矢が来てしまったら、未来の件で特にウェルへの敵意が強いため、すぐにウェルを殴る事が瞬には容易に想像できた。そして、瞬はクリスと共にウェルと話がわかると判断した女隊長に並行世界の事を教えた。

 

ウェル「並行世界…まさかそんな世界があるとは。そしてシンフォギアシステムに櫻井理論…」

 

女隊長「聖闘士に小宇宙、聖衣も夢物語のようで実物がなければ私も信じられなかったでしょう」

 

ウェル「どうやらあなた達の世界は僕達の世界と比べ、聖遺物研究が著しく発展した世界のようですね」

 

瞬「あなた達の反応を見れば、こっちの世界にはシンフォギアシステムも装者も存在しないようですね」

 

ウェル「その通りです。そもそも、こちらの聖遺物研究の第一人者である僕が知らない以上、装者もいるはずがありません。それにしても、まさか聖遺物が歌と反応する性質を持っていたとは…素晴らしい!これこそロマンですよ!」

 

切歌「それより、装者も二課もないならさっきみたいにノイズが出たらどうするんデスか?」

 

女隊長「それはさっきの通りです。我々自衛隊と米軍が迎撃しています。対処できない訳ではないのですが、あなた方のように効率的とは言えないのが現状です」

 

ウェル「…ただ、先日のとある事件以来、異変が起きていまして」

 

調「異変って…?」

 

クリス「一体何が起きたんだ?その事件って…」

 

 そんな折、ノイズ警報が鳴った。

 

切歌「な、なんおアラームデスか!?カップラーメンのタイマーとかデスか!?」

 

瞬「そんな訳ないよ!これはノイズ警報だ!」

 

調「場所はどこですか?」

 

女隊長「今、隊員達に調べさせている!それより、本当に戦ってくれるのですか?」

 

切歌「当たり前デス!」

 

ウェル「皆さん…やはり僕の目に狂いはなかった!あなた達こそが、僕の求める最高の!」

 

クリス「あああっ!女隊長、場所はわかったのか!?」

 

女隊長「判明した。出現場所は以下の通りだ!我々は住人の避難誘導にあたる!」

 

 女隊長は端末を瞬達に見せた。

 

瞬「わかりました!では、行ってきます!」

 

ウェル「僕も直接行きます!」

 

瞬「博士、それは危険です!」

 

ウェル「溢れ出るこの探究心は誰にも止められません!一番近くであなた達の戦いを見せてもらいますよ!」

 

瞬「…仕方ないですね。でも、あまり前に出ないでくださいよ」

 

 住人の避難誘導を自衛隊に任せ、瞬達はノイズの出現場所へ向かった。

 

 

 

道路

 

 そして、瞬達はノイズと応戦した。瞬達の戦いぶりにウェルと護衛をしている自衛隊員達と女隊長は感心していた。

 

ウェル「素晴らしい…やはり素晴らしいですよ!皆さんは最高です!」

 

クリス「あたし達のギアの力があれば、ざっとこんなもんだな。伊達に地獄の十二宮の訓練を潜り抜けたわけじゃねーぞ!」

 

調「シンフォギアはノイズを倒すための力だから」

 

切歌「この程度なら、楽勝デス!」

 

女隊長「では、聖闘士は…」

 

瞬「聖闘士はノイズだけでなく、この世の邪悪な敵と戦う使命があります」

 

女隊長「ノイズはその邪悪だから、戦うというのね」

 

瞬「はい。ところで、さっき言ってた異変は何ですか?」

 

ウェル「それはノイズの中に他のノイズとは明らかに違う特質な…」

 

 そこへ、猫が通り過ぎていった。

 

調「黒猫がすごい勢いで横切って行った…」

 

クリス「今は猫なんてどーでもいいだろ、そのおかしなノイズってのはどんな」

 

 そこへ、普通のノイズとは異なる姿のノイズが現れた。

 

切歌「ん?またノイズデスか…?」

 

ウェル「まさか…あ、あの個体は!」

 

瞬「あれが、あなた達の言っていたおかしなノイズなのですね?」

 

女隊長「その通りです」

 

クリス「はっ、たかがノイズ!こいつで終わりだ!」

 

 クリスは銃弾を放ったが、おかしなノイズに切り払われた。

 

クリス「なっ!あたしの攻撃が!?」

 

切歌「じゅ、銃弾が全部真っ二つにされたデスよ!?」

 

調「信じられない…」

 

クリス「ちっくしょう!なら、こいつでどうだ!」

 

 銃弾だけでなく、ミサイルまでおかしなノイズは切り払ってしまった。

 

クリス「おい…冗談だろ…。これも斬られるなんて…」

 

切歌「デェース!」

 

調「同時なら!」

 

 しかし、2人は何もない所で転んでしまった。

 

クリス「お前ら、何もない所で転ぶな!」

 

切歌「ちょっと油断しただけデス!行くデス、調!」

 

調「うん!」

 

瞬「(何もない所で転ぶ?何かがおかしい…)」

 

 瞬と同じ疑問を調も思いつつ、切歌と同時攻撃を仕掛けたが、おかしなノイズに切り払われた。

 

切歌「これでもダメデスか!?」

 

調「攻撃が全部見切られてる?」

 

クリス「…生意気な事しやがって!ふざけんな!」

 

 熱くなるクリスを瞬が制止した。

 

クリス「瞬、邪魔すんな!」

 

瞬「クリス、切歌、調、ここは僕に任せて!」

 

 今度は瞬が相手をする事となった。

 

瞬「(例えノイズが切り払う事ができたとしても、それ以上のスピードとパワーの攻撃を行えばいいだけだ!)ネビュラチェーン!」

 

 瞬のチェーンによる攻撃は装者達の攻撃よりも格段に速く、威力が高いためにノイズは切り払う事ができずに刀ごと折られ、消滅したのであった。

 

女隊長「あの厄介なノイズを…あっけなく倒してしまった…?」

 

切歌「流石デス!」 

 

調「今回は瞬さんがいなかったら負けてたかも…」

 

切歌「あのノイズなんて瞬がいればチョチョイのチョイデス!」

 

瞬「いや、僕に頼りっきりにならない方がいい。僕がいない時にあのノイズが現れたら君達は倒せるのかい?」

 

 その言葉に切歌は沈黙した。

 

瞬「それに、僕があのノイズを倒せたのは単に圧倒的な力と速さの差で勝てただけだ。もしも、僕と力量が互角であれば、僕は勝てなかったかも知れない」

 

クリス「なぁ、あのノイズの動きはどこかで見たような気がしなかったか?瞬」

 

瞬「動き…?」

 

 瞬はノイズの動きを思い出していた。

 

瞬「確かに、言われてみれば誰かに似てるような気がする…」

 

調「瞬さん、他にも私達が何もない所で転んだのもおかしくないですか?」

 

瞬「言われてみれば、僕もそこはおかしいと思っていたんだ。一体、何なのか…」

 

 そう思っていると、切歌が何かを見つけた。

 

切歌「ん?これ…何デスか?」

 

クリス「…なんだそれ。ノイズの破片…ってわけでもなさそうだな」

 

調「でも、あのノイズが消えた所から出てきたし、無関係とは思えないです…」

 

瞬「僕もそう思う。だって、チェーンがかすかに反応してるんだ」

 

調「瞬さんのチェーンの反応は何だろう…?」

 

ウェル「いやあ、素晴らしいものを見せてもらいました、皆さん。すべて見ていましたよ、余すところなくすべてをね!」

 

切歌「うぅ…。何だかすごく気持ち悪いデス…」

 

調「切ちゃん、しっかり」

 

 そこへ、瞬達と知り合いになった女隊長率いる部隊以外の自衛隊と米軍が到着した。

 

ウェル「おや?自衛隊と米軍も到着したようですね。全く、役に立たない連中だ…」

 

自衛隊員「博士!この場に現れたノイズは!?」

 

女隊長「その場に現れたノイズなら、この少年少女達が倒した」

 

自衛隊員「倒した?このおかしな恰好の少年少女達が…?」

 

ウェル「失礼な!この素晴らしさが」

 

 ウェルと自衛隊員の間に女隊長が仲裁に入った。

 

女隊長「信じられないとは思うが、目の前の少年少女がノイズを倒したというのは紛れもない現実だ」

 

自衛隊員「は、はぁ…」

 

女隊長「一応、あの少年少女達が纏うおかしな鎧は古代遺跡から発掘された、古代文明がノイズに対抗するための開発した鎧だ。上官に聞かれたらさっき言ったように答えてほしい。これより、帰投を開始せよ」

 

自衛隊員「了解しました!」

 

 女隊長の命に従い、自衛隊員達は帰投した。一応、シンフォギアと聖衣を古代文明の遺産という形で誤魔化し、並行世界の事をうまく隠したのであった。

 

切歌「…うう、あっちから嫌な視線を感じるデス」

 

調「私達がノイズを倒したって、信じてない顔してる…」

 

女隊長「済まない…。彼等は実際の光景を見ていないが故に信じたくても信じられないのだから、彼等の気持ちもわかってあげてほしい」

 

瞬「あなたのおっしゃる事もわかります」

 

クリス「気にすんな。信じるも信じないもあいつらの自由だ」

 

調「クリス先輩が言い返さないなんて…」

 

切歌「槍でも降るデスか!?」

 

クリス「…そうかそうか。お前ら、あたしの事をそういう目で見ていたんだな」

 

 クリス達の話を瞬は傍で聞いていた。

 

瞬「(クリス、調子に乗ってるなぁ。後で大惨事にならなきゃいいんだけど…)」

 

クリス「ところで、異変ってのはさっきのノイズなんだろ?それじゃこれで終わりって事か?」

 

女隊長「いえ、そうはいきません。先程のノイズは1体だけではないんです」

 

調「他にもいるって事?」

 

ウェル「ええ、そうなります」

 

切歌「瞬が1体倒したのに、あと何体いるんデスか?」

 

ウェル「そうですね…。恐らくですが、数十はいるでしょうか」

 

クリス「はぁっ!?瞬じゃなきゃまともに倒せねえのが数十もだと!?」

 

調「そんな…」

 

切歌「じょ、冗談じゃないデス!どうしてそんなのが!?」

 

ウェル「あのノイズはとある聖遺物の破片を取り込んだノイズなのですよ。その欠片の数が恐らくそのくらいの数に…」

 

瞬「欠片…?まさか、さっきのが!」

 

 手に入れた欠片がそれではないかと瞬は思ったのであった。

 

切歌「こ、これの事デスか?」

 

ウェル「それは……、やはりそうです。これは『ムラマサ』の欠片です」

 

調「ムラマサ?」

 

 

 

神社

 

 瞬達は神社へ向かった。

 

ウェル「わざわざ移動してもらい、すみません。えつめいするためにも、現場を見てもらうのが早いと思いまして」

 

クリス「現場?どういう事だ?」

 

ウェル「その社こそ、その『ムラマサ』が納められていた場所なのです。ムラマサ、村正でもいいのですが、これは刀工村正によって打たれたとされる、妖刀の事です」

 

切歌「よ、妖刀デスか?」

 

ウェル「ええ、そうです。歴史こそ他の聖遺物に比べて浅くはありますが、かの徳川家を呪ったとされる曰く付きのものです」

 

調「有名な刀だから聞いた事はあるけど…。妖刀、呪われた刀…」

 

ウェル「はい、とにかくムラマサは強い呪いを有した刀です。しかもここにあったものはその最初の一振り。どれだけ多くの命を奪ったかもわからない、正真正銘の呪いの刀です。そして、周囲にも不幸をもたらす、不吉な刀でもあります」

 

瞬「(不幸…?戦闘中のアクシデントとは無関係ではなさそうだ…)」

 

調「不幸…、もしかして、戦いの最中に調子がよくなかったのも、刀の影響?」

 

ウェル「はい、間違いないと思います。実際、あれに接触した者達は何らかの不幸に見舞われています」

 

切歌「うう…、何だか本当に恐ろしい刀デス…」

 

クリス「ビ、ビビってんじゃねーよ、そんな、の、呪いくらいで…」

 

調「そのムラマサがどうしてノイズに影響を…」

 

ウェル「…わかりません。ただ、起動実験に失敗した直後から、あの特殊なノイズも現れるようになりました」

 

切歌「失敗って…何やってるデスか!」

 

ウェル「僕は反対したのです!しかし、野蛮で愚鈍な政府の連中が欲に目がくらんで無理矢理起動させようとするから!」

 

瞬「それで、失敗してムラマサは砕けた、という訳ですね?」

 

ウェル「ええ。結果としてムラマサが暴走、次の瞬間には砕け散ってしまいました。砕けた欠片はかなりの広範囲に四散…。実験をこの僕に任せていれば。コホン、話が反れましたね。ムラマサの影響を受けたノイズ、つまりムラマサの欠片を持ったノイズ…。あれを我々は『武者ノイズ』と呼称しています。あのノイズについては対処の方法が皆無で、離脱するか犠牲による炭化を待つしかなかったのですが…、あなた達のお陰で光明が見えました!あなた達こそ、真の」

 

切歌「真の…何なんデスか?」

 

ウェル「…いえ、まだ時期尚早ですね。とにかく、こちらの経緯はそんなところです」

 

調「それにしても、武者ノイズって名前…」

 

切歌「わかるデスけど、なんというか…安直デスよね」

 

ウェル「名前は上層部の人間が勝手につけた名前なので…。上の顔を立てるという意味でしょうがなくそう呼んでいます」

 

クリス「あー、つまり武者ノイズっつーのは、ムラマサの影響を受けていて、それが原因であんなに強くなってるって事だな」

 

ウェル「はい、他に考えられる原因はありませんので」

 

クリス「…なあ、これが今回の異変って奴じゃないのか?」

 

切歌「きっとそうに違いないデス!」

 

調「私もそう思います」

 

瞬「僕はもっと慎重に調べる必要があると思う。今まで、ギャラルホルンがアラートを発した際に繋がった並行世界にはカルマノイズがいたんだから、カルマノイズがいる可能性も考えて異変を調べて収束させなければいけない」

 

ウェル「並行世界からの来訪者だという事は重々承知の上で、恥を忍んでお願いします。僕らに力を貸してくれませんか?」

 

瞬「わかりました。僕達は元々、並行世界の異変を解決するためにこの世界に来たんですから」

 

 瞬の言葉にクリス達は頷いた。

 

ウェル「ありがとうございます!やはりあなた達は僕が見込んだ通りの人物です!ふふ…」

 

瞬「ムラマサは今の段階ではわからない事も多いから、もっと調べる必要があると思う。だから、クリスは切歌と調を連れて一旦元の世界に戻ってほしい。その間、僕がこの世界のノイズ迎撃を行うよ」

 

クリス「あんま無理すんなよ、瞬」

 

 クリス達を報告に行かせ、瞬はこの世界に残ってノイズの迎撃を行う事にしたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はクリスが切歌と調、そして瞬と共に並行世界へ行き、武者ノイズと遭遇するのを描きました。
和装乱舞では自衛隊が登場しますが、今回登場した女隊長は当初からクリス達の話がわかる自衛隊の隊長がいてもいいのでは?と思ったために出したのと、瞬の美少年設定の再確認のために無類のイケメン好きというのも加えてギャグもシリアスもこなせる人物として考えました。
今回登場した変異種のノイズである武者ノイズは、今の所は瞬でないとまともに太刀打ちできないのですが、次の話でクリス達も武者ノイズへの対処法を見に付けて行く事になります。
次の話は武者ノイズが元の世界に現れる話になります。

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