セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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31話 哲学兵装ムラマサ

S.O.N.G潜水艦

 

 ノイズを放っておけないために瞬は並行世界に残り、クリス達は一旦、元の世界に帰る事にした。

 

弦十郎「戻ったか。それで、向こうはどうだった?」

 

クリス「ああ、異変らしきものは確認してきた。向こうの人々を放っておけないから、瞬は残ったけどな」

 

沙織「そうですか。それで、あなた達はもう異変を特定したのですか?」

 

切歌「ばっちりデス!」

 

弦十郎「ならば報告を聞こう。頼む」

 

クリス「ああ。あそこであった事だけど…」

 

 クリスは並行世界で起こった異変などを報告した。

 

弦十郎「…なるほど。ムラマサ、そしてそれと同化した武者ノイズ、そしてまさかのウェル博士とはな…」

 

クリス「多分、その武者ノイズを全部倒せば今回の異変は収まるんじゃねーか?そういや、前の時も聖遺物の欠片とノイズが同化してたよな?」

 

切歌「クジラ型デスね」

 

調「ポセイドン型とイカ型も」

 

クリス「そうそう。ノイズが聖遺物と同化するってよくあるのか?」

 

エルフナイン「いえ、普通は起こりえる事ではないのですが…前の場合も今回も、聖遺物の性質によるものかと思います」

 

調「聖遺物の性質?」

 

エルフナイン「はい。あれから細かく調べたのですが、以前にクジラ型と同化していた聖遺物は『トリアイナ』と呼ばれる物でした。『トリアイナ』はギリシャ神話ではポセイドンの持つ武器。そしてポセイドンは海と地震の神とされています」

 

クリス「けど、あたしらの見たポセイドンはそんなトリアイナに反応しなかったぞ」

 

沙織「恐らく、ポセイドンは聖戦の中でトリアイナから、より強力な三又の槍を武器として扱うようになったのでしょう」

 

エルフナイン「そして今回のはムラマサ…。ムラマサは『人を殺すために作られた刀』です。この二つの聖遺物の共通点は、『多くの命を奪った武器』であるという事、これが『人を殺すために作られたノイズ』と親和性を持ち、ノイズと同化してしまったのだと思います。以前にもお話ししましたが、ノイズに聖遺物を取り込むような性質はありません。ですので今回も、前回の島で起きた事象と同じく、聖遺物側の影響によるものとみて間違いありません」

 

クリス「ったく、厄介な話だな…」

 

切歌「ムラマサがノイズと同化したのはわかったデスけど、一番の問題は…」

 

調「武者ノイズのあの強さ…」

 

切歌「かなり苦戦したデス…」

 

クリス「なあに、瞬不在でもいざとなりゃイグナイトで戦えば何とかなるだろう」

 

沙織「それで解決できればよいのですが…」

 

クリス「ん?何か問題でもあるのか?」

 

エルフナイン「いえ…これまでアラートが鳴ってから行った並行世界では、必ずカルマノイズが出現していましたよね?」

 

切歌「デース!カルマノイズが出たらイグナイトは使えないデスよ」

 

エルフナイン「はい。ただ、今回も必ずそうなるという確証はありませんが…」

 

調「その可能性は十分にある…」

 

クリス「イグナイトだよりは危険って事か…」

 

エルフナイン「…そのムラマサの欠片ですが、今ありますか?」

 

切歌「あるデスよ。これデス」

 

 切歌はムラマサの欠片をエルフナインに渡した。

 

エルフナイン「これがそうなんですね。少し時間をください。僕の方で調べてみます。もしかしたら、対策のヒントになる何かが得られるかも知れません」

 

調「お願い。…あとこれはドクターから。向こうで持っていたムラマサの資料だって」

 

エルフナイン「ありがとうございます。必ず成果を出してみせます」

 

クリス「あんまり気負いすぎるなよ」

 

 

 

飲食店

 

 そして、クリス達は響達を会話していた。

 

クリス「向こうの世界はこっちとほとんど変わらなくてさ、あんまり別世界って感じがしなかったな」

 

調「でも、聖遺物研究が遅れているせいでシンフォギアがなくて、装者もいないっていうのには驚いた」

 

切歌「それなのに、ドクターはいたから驚きデス…」

 

星矢「ウェルのクソ野郎だって!?」

 

マリア「(やっぱり、星矢はまだ根に持っていたのね…)」

 

紫龍「(星矢は響や未来と特に仲がいい。だからこそ、未来の想いを踏み躙ったウェルの事が俺達の中で最も許せないのだろう…)」

 

 星矢のウェルに対する怒りにマリアと紫龍は納得していた。

 

調「…もやもやした気分はあるけど、今の所は協力的だし、瞬さんのネビュラチェーンにも反応はないから悪い事は考えてないみたい」

 

切歌「でもやっぱり気持ち悪いデス!」

 

星矢「そう思うよな。でも、瞬のチェーンに反応がないなら、悪い事は考えてないだろうな。だが、悪事をするような事があれば、すぐに俺が出向いてブン殴ってやる!」

 

クリス「(やっぱ、星矢はそう言うと思ったよ…)」

 

氷河「信用できるかどうかはともかく、悪意に反応するチェーンを持つ瞬がいるからどうにかなると思うが…」

 

切歌「あたしは信用できないのデス!」

 

調「うん。だけど、こっちの世界のドクターとあっちの世界のドクターは別人だし…」

 

響「それでも協力してくれるって言うなら、私は信じたいって思います!」

 

未来「もう、響ったら…」

 

翼「ふ、立花らしい考え方だな。だがいう通り、最初から疑ってかかる事もないだろう」

 

マリア「そうね。でも、あの性格だから考えが読めない所はあると思うわ。瞬と共に警戒だけは怠らないようにしておきなさい」

 

調「うん」

 

切歌「はいデース!」

 

 そんな中、ノイズ警報が鳴った。

 

調「ノイズ!」

 

翼「ゆっくり食事をする事もままならないな!」

 

マリア「迎撃しましょう!」

 

 紫龍は端末を見ていた。

 

響「どうしたんですか?紫龍さん」

 

紫龍「今回は俺達が出張らずとも、装者達だけで倒せる数だ。俺達は未来の護衛も兼ねて避難誘導にあたる」

 

星矢「けど、カルマノイズのようなやばい奴が出たらすぐに駆け付けるからな!」

 

未来「星矢さん…」

 

氷河「安心しろ。響達に何かあればすぐに俺達も向かう」

 

翼「行くぞ!」

 

 今回は紫龍の意見で星矢達が出向くまでもないと判断したため、星矢達は未来の護衛も兼ねて避難誘導を行い、装者達が迎撃に向かった。

 

 

 

市街地

 

 そして、紫龍の考え通りに装者達だけで出現したノイズは片付いたのであった。

 

マリア「周辺からノイズの反応はなくなったみたいね」

 

翼「…いや、待て!この気配は…」

 

 現れたのは、武者ノイズであった。

 

切歌「な、なんであいつがこっちの世界にもいるデス!?」

 

翼「こっちの世界にも?…そうか、あれがお前達の言っていた」

 

調「はい。私達が向こうの世界で戦った、武者ノイズです」

 

マリア「並行世界の繋がり、ね…。全く、厄介なものだわ」

 

翼「両手に太刀…なるほどな、まさしく武者ノイズ。なかなかよいネーミングセンスだな」

 

 翼のセンスにクリス達は沈黙していた。一方、住人の避難を終えた星矢達の所にも武者ノイズが現れた。

 

未来「星矢さん、あれは…?」

 

星矢「わかんねえが、どうやら普通のノイズじゃなさそうだな」

 

紫龍「恐らく、あれがクリス達が見たという武者ノイズなのだろう」

 

氷河「だったら、すぐに片付けるまでだ!」

 

星矢「一気に行くぞ、ペガサス流星拳!」

 

 星矢の流星拳は武者ノイズの反応速度を遥かに超えたスピードで放っており、武者ノイズはかわす事も切り払う事もできずにあっけなく倒されたのであった。

 

星矢「ま、ざっとこんなもんだ」

 

 しかし、道路に穴が開いたのであった。

 

未来「道路に穴が!」

 

紫龍「星矢、なぜ流星拳を1発外している!?人がいたら危なかったぞ!」

 

星矢「俺はそんなつもりで撃ったんじゃねえ!全て武者ノイズに命中させるように放ったんだが…」

 

氷河「そんなミス自体、星矢は今までした事がないのに、なぜこんなミスを…?」

 

紫龍「気になるな…」

 

 星矢が全部命中させるように放ったはずの流星拳が敵がかわしたわけでもないのに1発外れてしまった事に本人はもちろん、紫龍達も疑問に思ったのであった。一方、装者一同も武者ノイズに苦戦していた。

 

クリス「やっぱ、全員で一気に畳みかけるしかないな」

 

翼「待て、雪音。ここは私が行く」

 

クリス「いや、無茶だろ!さっきまでの見てなかったのか?」

 

翼「私が切り崩す。雪音はその隙を突いてくれ」

 

クリス「はあ!?ちょっと、待てって」

 

翼「行くぞ、はああああっ!!」

 

 翼が斬りかかったが、武者ノイズはかわした。

 

翼「甘い!」

 

 しかし、すぐに攻撃を加え、武者ノイズの体勢を崩した。

 

翼「今だ!雪音!」

 

クリス「くそっ、やってやらあ!」

 

 翼が作ってくれた隙を突いてクリスは武者ノイズに攻撃し、武者ノイズを倒す事に成功した。

 

クリス「やったのか…?」

 

響「すっごいよ、クリスちゃん!」

 

切歌「さっすが先輩デース!」

 

クリス「い、いや…あたしは別に…。どうなってやがんだ」

 

翼「……」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 全員、帰還する事となった。

 

エルフナイン「皆さん、お疲れ様でした…」

 

調「何かわかったの?」

 

エルフナイン「はい、今からそれを説明します。ムラマサについてですが、これは聖遺物ではなく、哲学兵装になります」

 

星矢「哲学兵装?」

 

氷河「聞きなれないな」

 

紫龍「老師から聞いた事がある。哲学兵装とは、長い時を経て積み重なった言葉の力が宿った代物だと。わかりやすく例えるなら、迷信などが積み重なって生まれた特殊な力を持つ呪いのアイテムだと思えばいい」

 

エルフナイン「紫龍さんが哲学兵装を知っていたのは驚きです」

 

紫龍「俺も修業していた頃に老師から聞いただけで、実際に哲学兵装の存在を知ったのは今回が初めてだ」

 

切歌「紫龍が説明してくれて、わかったのデス」

 

星矢「エルフナイン、哲学兵装はわかりやすく言えば呪いのアイテムだって紫龍が言ってくれたけど、そのムラマサの呪いってのは何だ?」

 

エルフナイン「ムラマサに込められた呪いについてですが…。これは、今までにこの地からで命を奪われた人達の呪いだと思われます。そして命を奪われた者、その人達の多くは使用者も含めて『侍』です。このムラマサにはその侍達の強い念が込められているようなんです」

 

調「お侍さん達の怨念?」

 

切歌「なるほどデス。つまり、あの武者ノイズはお侍さん達の強い念により強くなっているんデスね」

 

エルフナイン「はい、さらにそれだけではありません。『不幸をもたらす刀』という逸話の流布により、さらに呪いの力は高まってしまっています」

 

響「という事は、あのノイズは強い上に不幸まで撒き散らすって事?」

 

星矢「そうだとしたら、俺の流星拳が1発外れたのも…」

 

紫龍「不幸を撒き散らす呪いのせいだろうな…」

 

星矢「じゃ、じゃあ未来も一緒に戦っていたら…!」

 

 未来のギアの神獣鏡は聖遺物を分解する力があるため、不幸の呪いによって味方に誤射してしまい、シンフォギアを完全に分解してしまうという最悪のシナリオが星矢達はおろか、未来本人にも容易に想像できた。

 

未来「今回は正式な装者になっていなくてよかったかも…」

 

マリア「哲学兵装の影響を受けたノイズ…。そんなのが増えたらたまったもんじゃないわね」

 

クリス「なあ、それだけじゃあ、強いってのをただ再確認しただけじゃないのか?スピードとパワーがノイズとは桁違いな聖闘士じゃなきゃまともに戦えねえぞ」

 

翼「いや、星矢達が不在でも十分対策はできる」

 

マリア「翼…?」

 

翼「奴の太刀筋、間合いの詰め方…」

 

エルフナイン「」はい、モニターで武者ノイズを確認したところ、戦闘スタイルが翼さんに近いという事がわかりました

 

翼「ふっ、そういう事だ。どうやら今回の件は私が適任のようだな。次は私が並行世界へ」

 

切歌「ちょっと待ってほしいデス!今回はあたし達が受けた任務デス!」

 

調「うん、途中で放り出すのはしたくない」

 

クリス「お前ら…」

 

マリア「2人共…」

 

クリス「へっ、そういうこった。先輩には悪いが、今回は最後まであたし達にやらせてくれ」

 

翼「しかし、武者ノイズ対策はどうする?戦い方の指導はできるが、一朝一夕でコツを掴めるものではないぞ、せめて同行はさせて」

 

紫龍「翼、今回は3人とまだ向こうに残っている瞬に任せよう」

 

翼「紫龍まで?だが…」

 

エルフナイン「一つだけ、あの武者ノイズに対抗する方法があります。もちろん、容易ではありませんが…」

 

切歌「一体なんデスか!?その方法は!?」

 

エルフナイン「それは、ギアを相手に合わせて適応させる方法です」

 

星矢「適応か…」

 

氷河「その手があったな」

 

響「なーるほど!お侍相手には、こっちもお侍になればいい!」

 

紫龍「心象でギアを適応させれば、あの太刀筋や不幸を撒き散らす呪いに対抗できるかも知れない」

 

マリア「だけど、エルフナインが言うように容易にできるものではないわ。一体どうやって」

 

切歌「そ、それは…、ひたすら翼さんと戦って『サキモリ』の戦い方を心に刷り込むとかデスかね?」

 

調「そんな時間あるかな…」

 

弦十郎「…それなら、俺にいい考えがある」

 

調&切歌「本当です(デス)か!?」

 

 

 

市街地

 

 それから、2日が経過した。響達はノイズ迎撃に向かい、全滅させたのであった。

 

氷河「これで通常の奴は全部響達が倒したな」

 

紫龍「気を抜くな。また武者ノイズが現れるかも知れんぞ」

 

 そう言ってると、武者ノイズが出現した。

 

響「あ、あれってもしかしてこの間の…」

 

翼「武者ノイズ!?なんてタイミングだ」

 

星矢「まずいぞ、紫龍!響達は疲れてて戦う力が残っていない!」

 

紫龍「流石に俺達が行かなければならないようだな…」

 

 そう言って星矢達が前に出た。

 

紫龍「この場は俺達がやる」

 

翼「紫龍…」

 

氷河「行くぞ、武者」

 

クリス「ちょーっと待ったーっ!」

 

 そこへ、自信満々にクリス達が来た。

 

調「ここから先は」

 

切歌「某達に任せるのでござるデス」

 

クリス「ヒーロー参上だ!」

 

響「クリスちゃん!」

 

マリア「調、切歌!」

 

クリス「行くぞ!後輩ども!」

 

調「はい!」

 

切歌「はいデス!」

 

 3人はギアを纏った。すると、いつもと違うギアになった。

 

クリス「よっしゃあ、成功だ!」

 

切歌「ひたすら時代劇アクション映画を見続けたかいがあったデス!」

 

調「うん、これなら戦える」

 

響「うわ~、すごいよ!3人とも!」

 

星矢「まさか本当に成功しちまったなんてな…」

 

紫龍「だが、喜ぶのは武者ノイズを倒してからだ」

 

クリス「へっ、かかってきやがれ!今ならだれにも負ける気はしねえ!あたしの番だ、撃ち抜け~!」

 

 クリスは矢を放ったものの、あっけなく武者ノイズに切り払われた。

 

クリス「なっ!?」

 

切歌「調、あたし達も行くデス!」

 

調「うん」

 

 今度は切歌と調が向かっていったが、2人の攻撃も切り払われてしまった。

 

切歌「なんデスと!?」

 

調「切ちゃん、危ない!」

 

 呆然とした切歌を庇い、調が武者ノイズの攻撃を受けてしまった。

 

星矢「おいおい、全然ダメじゃねえか!」

 

響「なんか、すごい苦戦しているように見えるんですけど…」

 

マリア「事実、苦戦しているわね」

 

紫龍「(ギアを適応させたのに苦戦しているとは…。今のクリス達には何かが足りないのではないのか…?)やむを得ん、俺が行こう」

 

 翼と共に今のクリス達に何かが足りないと判断した紫龍は向かう事にした。

 

クリス「どーなってやがる…?これじゃあ馴れてる分、普通のギアの方がマシじゃねーか」

 

調「逆に動きにくくなってる」

 

切歌「こ、こっちに来るデスよ!どうす」

 

紫龍「ここは俺に任せろ!」

 

 そう言って紫龍が前に出た。

 

紫龍「武者ノイズ、俺が相手だ!」

 

 紫龍はそのまま突っ込んでいき、パンチを打ち込んだ。紫龍のパンチは武者ノイズには反応できない速度であるため、そのまま倒されたのであった。

 

響「武者ノイズを瞬殺しちゃった…」

 

翼「だが、雪音達には課題ができたな…」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その後、星矢達は帰投した。

 

クリス「一体どういう事だ!?」

 

調「うまくギアを変化できたのに…」

 

切歌「全然弱っちかったデス…」

 

エルフナイン「武者ノイズとの戦闘データからは、受けるダメージや呪いの防御には効果が出ているように見受けられました」

 

 実際にエルフナインはモニターで戦闘データを見せた。

 

沙織「であるなら、一概に失敗とは言い切れませんね…」

 

クリス「結果、戦えてねーんだから失敗だろ?」

 

紫龍「いや、失敗とは言えないだろう。お前達のギアの変化自体は成功しているとみて間違いない」

 

調「だけど…あの武者ノイズには全く効果がありませんでした」

 

氷河「紫龍、あいつらのギアの変化自体が成功してるのなら、武者ノイズに苦戦したのは何か別の問題でもあると思うのか?」

 

紫龍「俺はそこが引っかかっていた。今のクリス達には何かが足りないと思っている。翼も俺と同じ意見なのだろう?」

 

翼「ああ。一つ聞くが、先程の戦い、あの武者ノイズに追い込まれた時、紫龍が来なければ何をしようとした?」

 

切歌「相手が強すぎて、一旦逃げよとしたデス…」

 

翼「防人は人類守護の砦。決して敵に背を向けてはいけない」

 

クリス「…まさか、それじゃあ」

 

翼「そうだ。確かに、ギアを変化させる事には成功した。だが、ただそれだけだ。見た目が変わっただけ。防人…いや、武士の心構えも、ただ、見ただけで全てを心に刻めたと勘違いをしている」

 

紫龍「なるほど、俺が思っていたクリス達に足りない何かとは、武士の心構えだったのか」

 

星矢「だったら、あんなに苦戦するのも無理はねえな」

 

クリス「あたし達がやったのは…、上辺だけの変化って事かよ…」

 

翼「結果は明らかだ。やはり、ここは私が…」

 

切歌「(今回はあたし達でやるって決めたデス…。なのに…結局、あたし達だけじゃ…)」

 

調「(また、マリアや翼さんにも迷惑をかけて…)」

 

翼「お前達に防人の心構えをその身体に叩き込んでやろう」

 

 その言葉にクリス達は驚いた。

 

翼「嫌とは言わせないぞ、このままでは命を捨てに行くようなものだからな」

 

クリス「あ、いや…てっきり、『私が行く』って言うのかと…」

 

星矢「今回の任務はお前達3人でやると決めたんだろう?だったら、最後までやり通すのが筋ってもんじゃねえのか?」

 

クリス「星矢…」

 

美衣「では、クリスさん達には翼さんの防人講座を受けなければならないようですね」

 

沙織「翼さん、お願いできますね?」

 

翼「はい」

 

クリス「頼む」

 

 早速、クリス達は翼の防人講座を受ける事となった。

 

マリア「だ、大丈夫かしら…?」

 

響「きっと大丈夫ですよ!翼さん、すごい自信だったじゃないですか」

 

マリア「逆にそれが心配なのよ」

 

響「え?どういう事ですか?」

 

弦十郎「…まあ、マリア君の言わんとしている事もわかるが…(翼には悪いが、防人の話に興味を持つ同世代の子なんてまずいないだろう。それが今回思う存分語れる。張り切るなというのは無理な気もするが…)」

 

響「それにしても翼さん、すごいいい笑顔でしたね!あれなら何も心配いりませんよ!」

 

星矢「そうだな。案外、うまく行くんじゃねえか?」

 

響「そうですよね~、星矢さん!」

 

マリア「はあー……」

 

紫龍「(まぁ、効果は期待できるだろう。効果だけはな)」

 

 これから起こる事が想像できる事が容易にマリアと弦十郎には想像できた。

 

 

 

市街地(並行世界)

 

 クリス達が元の世界に戻っている間、並行世界に残っている瞬は親しくなった女隊長が率いる自衛隊の部隊と連携してノイズの迎撃をやっていた。

 

女隊長「住人の避難は完了しているわ!瞬君、思う存分に暴れなさい!」

 

瞬「ありがとうございます!これで心置きなく戦えます!」

 

 ノイズの群れに瞬は向かっていった。

 

瞬「ネビュラチェーン!」

 

 素早く動く鎖で次々とノイズ達は貫かれていき、あっという間にノイズは全滅したのであった。

 

自衛隊員A「あ、あっという間にノイズを蹴散らしちまった…」

 

自衛隊員B「なんて華麗な鎖捌きなんだ…?」

 

 瞬本人はその気ではないのだが、その美貌とノイズを全く寄せ付けず、チェーンを華麗に操る戦いぶりは自衛隊の女性隊員を魅了しており、親しくなった女隊長に提供してもらった住居の近くの女性住人の間でもちょっとした話題になる程であった。

 

瞬「(僕は特別な事なんかしてないのに、女の人の隊員から声援を浴びたり、近所の人から親し気に声をかけられたりして何でこんなに話題になるのかなぁ…?)」

 

女隊長「お疲れね、瞬君。撤収してゆっくりしてらっしゃい」

 

瞬「わかりました」

 

 戦いが終わったため、瞬は住居に戻る事にした。その後、女隊長は別の部隊の隊長から色々と言われていた。

 

隊長「そこの君、どうして君は得体の知れない少年や少女達に任せっきりにできるんだ?我々の使命や誇りを忘れたのか?」

 

女隊長「私達上官はいかに隊員の犠牲をなくし、民間人を守るための指揮をとる事が大切です。今回もあの少年少女が戦いやすいように支援を行う事が隊員や民間人の被害を防ぐ最善の方法だと考えたからです。使命や誇りは忘れておりませんが、それらよりも大切なのは隊員や民間人を含め、いかに犠牲を出さないようにする事ではないでしょうか?」

 

隊長「君は以前から指揮能力も優秀な上、任務中は私情に流されずに常に犠牲をなくす、または最小限に抑える指揮を取り続けてきた。だが、君は国防を預かる立場でありながら、年端もいかない子供達にそんな事をさせて何とも思わないのか?私は君のようには割り切れない!」

 

 本人達が望んでいるとはいえ、ノイズの迎撃を瞬やクリス達に任せている女隊長に別の部隊の隊長は大人びた瞬はともかく、明らかに年端もいかない子供だと見た目でわかるクリス達を戦わせている女隊長への不満を語ったのであった。

 

女隊長「(年端もいかない…ねえ。まともなノイズへの有効な対抗手段がなくて、不甲斐ないがためにあの子達に頼らざるを得ない私もダメな隊長ね…。国防を預かる立場としての使命と誇りが泣くわ…)」

 

 女隊長もまた、隊員や民間人の被害を出さないようにする最善の手段とはいえ、瞬やクリス達に頼らざるを得ない自分が不甲斐ない上、国防を預かる立場としての使命と誇りが泣いていると思っていたのであった。

 

 

 

住居

 

 それから、女隊長は瞬に差し入れの弁当を持って住居に来た。

 

女隊長「瞬君、差し入れを持って」

 

 しかし、この時の瞬はシャワーを浴び終わって着替えている最中であり、まだシャツを着ていない瞬の上半身裸を見た女隊長はイケメン、特に瞬のような美少年の上半身裸には免疫がないがために鼻血を吹いてしまい、倒れた。

 

瞬「隊長さん、そんなに鼻血を吹いてどうしたのですか!?」

 

 慌てて瞬は鼻血を吹いた女隊長を介抱したのであった。それから…

 

女隊長「ご、ごめんね。私は美男子の上半身裸を見てしまうとのぼせて鼻血を吹いてしまいがちで…」

 

瞬「これ、隊長さんの差し入れですか?」

 

女隊長「ええ。瞬君はいつもノイズ退治でお疲れだから、感謝の気持ちも込めてね」

 

瞬「それじゃあ、いただきます!」

 

 瞬は女隊長の差し入れの弁当を残さずに食べたのであった。

 

瞬「あなたの作った差し入れはおいしかったです。ごちそうさま」

 

女隊長「ありがとう。瞬君の滞在がいつまでになるかわからないけど、また差し入れを作って持ってくるわね」

 

 女隊長は瞬の住んでいる住居を後にしたのであった。

 

瞬「(クリス達は来るのが遅いなぁ…、向こうで何かあったに違いないけど、ノイズによる自衛隊や民間人の犠牲者を出さないためにもこの世界を離れるわけにはいかない。僕は待っているからね、クリス、切歌、調)」

 

 この世界の人々を放っておけず、ノイズの迎撃をしながらクリス達を待ち続けている瞬であった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は武者ノイズの取りこんでいたものが哲学兵装のムラマサである事、そしてクリス達はギアを適応させたものの、適応させたギアをうまく扱う事ができずに翼の防人講座を受ける羽目になるまでを描きました。
星矢が流星拳を1発外したシーンは、武者ノイズの不幸を撒き散らすもので、他にも未来が一緒に戦っていたら誤射でシンフォギアを完全に分解してしまう最悪のシナリオまでも想像できてしまうシーンも挿入しました。
次の話はようやくクリス達が和装ギアをまともに扱えるようになります。

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