セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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33話 それぞれの戦い

市街地

 

 それは、ウェルに呼び出された事から始まった。

 

クリス「…なんであたし達がこんな事しなくちゃなんねーんだ!」

 

切歌「これも大事な事デスよ」

 

調「自衛隊の人達に戦い方をレクチャーすれば、ノイズの被害に遭う人達が減ると思えば」

 

クリス「そりゃわかってるけど…」

 

瞬「でも、僕としては教えた所でこの世界にはシンフォギアがまだ実用化されてないから、そうなるまではどうしようもないと思うよ…。それに、僕達が異変を解決してから帰った後の事はとても難しい問題だね…」

 

 その言葉に一同は沈黙した。そう言ってるうちにウェルの待っている場所に来た。

 

ウェル「いや~、遠路はるばるご苦労様です。皆さんの事を心からお待ちしてましたよ!」

 

切歌「ドクターだけ…デスか?」

 

瞬「他の人はどこにいるんですか?」

 

ウェル「まあまあ、とにかくこちらへ」

 

調「どういう事?直接兵士の人達に教えるって話じゃ?」

 

切歌「…何を企んでるデスか?」

 

ウェル「ふふ、来ていただければわかりますよ…」

 

調「怪しいね…」

 

切歌「あ、怪しいデス…」

 

瞬「何があるのかわからないけど、万一の時は僕に任せて」

 

 その先にはシミュレータールームがあった。

 

調「これって、シミュレータ…ルーム?」

 

ウェル「以前に聞いたそちらの世界の訓練方法から、この僕が設計し、急ピッチで作らせたものです!どうですかこの出来は!素晴らしいでしょう!」

 

瞬「(確かに、こうも短期間でこの部屋を設計して作り上げるなんて、ウェル博士は紛れもない天才だ。僕達の世界のウェル博士でも、英雄といった名声にこだわらずに普通の善良な科学者としての生き方を全うしていれば、星矢の怒りを買って3回も殴られたりしなかったのに…)」

 

 1回目は響の件で、2回目は未来の件で、そして3回目はマリアの気持ちを踏み躙った件で元の世界のウェルは星矢に殴られたのであった。しかも、1回目はペガサス流星拳で顔がグチャグチャ、2回目はアトミックサンダーボルトで顔が原型を留めていないほか、全身の骨が粉々になって世界一周、3回目は殴られたウェルが壁を何枚も突き抜けるほどの渾身のパンチを受けた事で全身の骨が砕けた上、頭から出血した他、何度も星矢に殴られて死にかけた事が強烈なトラウマになるという、その悪事の報いを受けたのであった。

 

切歌「それで、どうするデスか?」

 

ウェル「僕としては皆さんのために作った物なので、ボンクラの軍人風情に使わせるのは非常に不本意なのですが…、せっかくのシミュレータですから、これからの訓練にも使う予定になっていましてね。つきましては皆さんにそのお手本と、このシミュレータが本当に対ノイズ戦に役立つか確かめてほしい、という事です」

 

クリス「…そういう事なら、アックしてないで先に言えってんだ。要は普通にシミュレータで戦えばいいんだろ?楽勝だっての」

 

切歌「デス!作文は一見さんお断りデス!」

 

調「百聞は一見にしかず、だよ切ちゃん」

 

切歌「お、おおうデス…」

 

ウェル「では、早速ですがよろしくお願いします」

 

瞬「僕はウェル博士と一緒に見ておくよ」

 

 早速、ウェルが設計したシミュレータの性能をクリス達は確かめる事となった。そして…

 

ウェル「いやあ、いつ見てもほれぼれしてしまう戦いぶりです。それで、シミュレータの感じはいかがでしたか?」

 

調「特に問題は見当たらなかったと思う。私達の世界のものと遜色ない」

 

切歌「あたしもそう思ったデス。いつも使っているシミュレータとそっくりデス」

 

クリス「ああ、これならノイズ戦のシミュレータとしては申し分ないと思うけどな」

 

ウェル「そうでしょう…そうでしょう!やはりこの僕が設計しただけの事はある!」

 

切歌「…この自画自賛っぷり、やっぱりあっちのトンデモと一緒デスね…」

 

 クリス達は最後まで付き合う事となった。そして、データがとれたために一同は帰る事となった。が、瞬は少し踏みとどまってこっそりウェルの独り言を聞いていた。

 

瞬「(ウェル博士は何を企んでいるのだろう…?僕達の世界では悪意全開だったからチェーンが反応したけど、この世界のウェル博士にはチェーンが全く反応しないから、大したものではないはずだけど…)」

 

 そう思い、瞬は帰ったのであった。

 

 

 

住居

 

 クリス達は戻ってきた。

 

クリス「…さってと、戻ってきたはいいが、中途半端な時間だな」

 

切歌「はいはいはい!提案があるデス!」

 

瞬「提案?」

 

切歌「街を探検してみたいデス!」

 

調「切ちゃん、ナイス提案。こっちの世界に来てから、ゆっくり見て回ったりしてなかったし…」

 

クリス「そうだな。よし、それじゃあ街を探索してみるか!」

 

瞬「僕について来るんだよ」

 

クリス「あたしが、って言いたいけど、瞬の方が落ち着いてるからな」

 

 

 

市街地

 

 瞬達は市街地を探索していた。

 

切歌「調、調、こっち見てみるデス!可愛いペットがいっぱいデス!」

 

調「あのお洋服…マリアに似合いそう」

 

瞬「切歌、調!」

 

クリス「いい加減にしろ!勝手に歩き回るなー!」

 

切歌「あ…こんな風に街を歩き回るの久しぶりだったものデスから」

 

調「それに、私達の世界にあるお店とほとんど同じだから歩きやすくて」

 

クリス「そういや、そうだよな。言われないと並行世界なんて気づかないな」

 

切歌「寝ている間に連れてこられたりしたら、きっと勘違いしたまま過ごしちゃうデス!」

 

調「…あ、CD屋さんにチャートが張ってある」

 

切歌「もしかして、マリアとか翼さんが入ってるデスか?見てみるデス!」

 

 瞬達はチャートを見てみた。

 

瞬「この世界のチャートには、マリアさんも翼さんも載ってないようだね」

 

切歌「こっちの世界じゃ、人気がないデスかね…」

 

調「違うと思う。過去のチャートも見てみたけど、やっぱり2人の名前は見当たらないし…」

 

クリス「そもそも、こっちの世界には装者がいないしな。…あいつら、デビューすらしてないんじゃないか?」

 

切歌「この世界の人はマリアや翼さんの歌を知らないんデスね。何だか、残念デス…」

 

瞬「そろそろ帰ろうか」

 

 街を見回った後、瞬達は帰る事にした。

 

 

 

 

 そして翌日、現れたノイズの群れと武者ノイズを倒したクリス達はムラマサの欠片を納めた。

 

調「これでよしっと」

 

切歌「お疲れ様デース!」

 

 しかし、クリスは浮かない顔をしていた。

 

瞬「どうしたんだい?クリス」

 

クリス「ああ、いや。この世界って、装者がいないだろ?あたしらが来なかったら、どうなってたのかなって」

 

瞬「多分、この世界では自衛隊の人達がノイズと戦って、みんなを護るのが当たり前なのだろうね」

 

切歌「ギアもなしにあの武者ノイズと戦うなんて無茶デス!」

 

調「うん、それは戦ってみた私達が一番よく知ってる」

 

クリス「それでも、戦わなきゃなんねーんだよな…」

 

切歌「このまま欠片を集め終えて、あたし達が帰ったら、こっちはどうなるんデスかね…」

 

瞬「とても難しい問題である事に変わりはないから…」

 

 

 

住居

 

 その後、瞬達は女隊長とウェルから話を聞いていた。

 

クリス「で、実際、こっちの世界じゃムラマサの事故前にどれくらいの頻度でノイズは出現してたんだ?」

 

女隊長「全く出現してないわけじゃないけど、それこそ通り魔に遭遇する確率よりもさらに低くて、私達もこれまで見た回数は1年の間に1、2回程度しか見なかったわ」

 

ウェル「それが、偶然なのか…、今回の異変を期に出現頻度が上がってしまったようです」

 

調「これまではギアもないのに、どうやってノイズを倒していたの?」

 

女隊長「単純な物量作戦よ」

 

ウェル「基本的にノイズに通常攻撃は効果ありませんが、それを覆す手段が一つだけある事は我々も理解していましたので」

 

切歌「それってつまり、バカスカ撃って無理矢理倒すやり方デスか?」

 

女隊長「そうよ。私達自衛隊の大量火器を使った一斉攻撃でノイズを強引にこっちの世界に定着させ、ダメージを与えるやり方。でも、ノイズ1体に対して、山ほどの火器が必要になる、非効率的なやり方だけどね」

 

瞬「それまではノイズの出現も1年に1、2回程度だったのでどうにかなったんですね?」

 

女隊長「ええ」

 

ウェル「それが今回、あの武者ノイズの出現で一変したんです。だからこそ、皆さんの参戦は僕達にとっては福音だったわけですよ!たとえどんなノイズが現れようとも、あなた達が倒してくれるのですから!」

 

クリス「だけど、あたし達だって永遠にこっちにいられるわけじゃない」

 

女隊長「そこは承知しているわ。だからこそ、あなた達が来る以前から私達自衛隊や各国の軍隊もウェル博士ら聖遺物研究者を始めとした英知を集め、対ノイズ用の兵器の開発を急がせているの」

 

調「私達が帰った後は、どうするつもりなの?」

 

女隊長「当面は以前のようにだけど、対ノイズ用の兵器が完成すれば犠牲は大いに減らす事ができるはずよ」

 

ウェル「当然ノイズも脅威ですが、今は武者ノイズというそれ以上の脅威がいる。あの武者ノイズを野放しにした場合の被害は、ノイズの比ではありませんから。ですので、まずはムラマサの回収が最優先事項です」

 

瞬「そうすれば、武者ノイズは出現しなくなるね」

 

ウェル「はい、政府の連中も今回の事に懲りて、聖遺物の実験はより慎重なものとなるでしょう」

 

女隊長「それにこの異変が収まれば、ノイズの出現も異変前の1年に1、2回程度に戻るかも知れないわ」

 

調「それじゃあ、私達のすべき事は…」

 

切歌「急いで欠片を全部回収して、武者ノイズを根絶する事デス」

 

クリス「ああ、少なくとも武者ノイズだけは全てぶっ潰してやらないと」

 

ウェル「聖遺物の欠片の回収、よろしくお願いいたします」

 

調「回収するのは聖遺物ではなく、哲学兵装」

 

ウェル「え?」

 

 クリス達は哲学兵装の事を話した。

 

ウェル「聖遺物に哲学兵装…。なるほど、実に興味深いですね。こちらの世界では、特にそういったカテゴライズはされておりませんから。それと、ノイズと欠片の同化…。確かにノイズには物を取り込むような性質はありませんからね。貴重な情報、感謝いたしますよ」

 

 そう言ってると、ノイズ警報が鳴った。

 

調「ノイズがまた…」

 

クリス「いい所でやってきてくれるじゃねーか!欠片の回収に向かうぞ!」

 

 住人の避難誘導を女隊長率いる部隊に任せ、クリス達は出撃した。

 

 

 

荒野

 

 クリス達はあっという間に雑魚を蹴散らし、後から現れた武者ノイズはムラマサの欠片を多く取りこんでいたために装者達は苦戦したものの、倒す事に成功した。

 

切歌「はあ、はあ、はあ……。つ、疲れたデス…」

 

調「何とか、倒しきれたみたい…」

 

クリス「なんだったんだ、こいつは…!」

 

 今回、現れた武者ノイズが落としたムラマサの欠片は一つではなかった。

 

瞬「…持っているムラマサの欠片は一つじゃない?」

 

切歌「たくさん入ってたデス」

 

クリス「1体に複数の欠片が同化してる事もあるのかよ…。だから強くなってたのか?」

 

ウェル「皆さん、お疲れ様でした。どうやらノイズによって保有する欠片の数が異なるみたいですね」

 

調「ドクター…それって、多くの欠片と同化したノイズはそれだけ強くなるって事?」

 

ウェル「そうなるでしょう」

 

クリス「そうそう、楽はあせてもらえないみたいだな。ったく、面倒くせぇ…」

 

切歌「あれだけ再生されたら大変デスよ…。まるでカルマノイズみたいデス」

 

調「一度戻ってエルフナインに相談した方がいいかも」

 

クリス「それもそうだな。瞬、お前は残るんだろ?」

 

瞬「うん、クリス達が戻っている間に武者ノイズが現れたら大変な事になるからね」

 

ウェル「それでしたら!次はぜひ、僕もご一緒させてはもらえないでしょうか!?皆さんの世界…興味はつきません!」

 

瞬「博士、残念ですけど、並行世界へ渡るにはシンフォギア装者と聖闘士、そして神でないと渡る事ができないんです…」

 

ウェル「なんと…くっ!そんな落とし穴があるとは…!」

 

瞬「申し訳ありません…」

 

クリス「それじゃ早速戻るか。瞬、あたしらがいない間は頼むぞ」

 

瞬「任せて」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 再び並行世界に瞬が残る形でクリス達はまた帰還したのであった。

 

エルフナイン「複数の欠片と同化したノイズですか…」

 

調「うん、こちらの攻撃が効きにくかった…」

 

切歌「動きも速くて手ごわかったデス」

 

エルフナイン「同化している欠片の量が、戦闘力に影響を与える…」

 

調「何かいい対策があれば教えてほしい」

 

エルフナイン「残念ですが、今の段階では何とも…」

 

切歌「そうデスか…」

 

沙織「ですが、あなた達はその強力なノイズを倒す事ができましたね。どうやって倒しましたか?」

 

切歌「3人で協力してデスけど…」

 

クリス「付け焼き刃ではあるけどな」

 

弦十郎「だったら、やる事は決まってるだろう?」

 

調「3人での連携…」

 

切歌「そうデスよ!あたし達が本気で協力すれば瞬不在でもあんな奴どうって事ないデス!」

 

氷河「結局、瞬はまだ残っているんだな?」

 

クリス「ああ」

 

弦十郎「ところでだが、向こうの様子はどんな感じなんだ?今の所、ノイズへの対抗手段が乏しいようだが…」

 

調「まだ対ノイズ用の兵器は開発中で、ノイズに対してやっぱり決定的な手段はないみたいです」

 

クリス「こっち以上に、自衛隊や米軍の負担は大きいみたいだな」

 

切歌「あ、そうデス!向こうに櫻井理論やギアの事を教えてあげたらどうデスか?」

 

沙織「それはいけません、切歌さん!確かに、それを教えれば対抗手段はできますが、私や司令の意見を言わせてもらえば反対です」

 

切歌「何でデスか?」

 

弦十郎「櫻井理論、そしてシンフォギアは世界のパワーバランスを崩しかねないものだ。安易に伝えるのは危険すぎる」

 

エルフナイン「僕も同感です。それを伝えた先の政府が隠匿し、独自に利用する可能性もあります」

 

沙織「それに櫻井理論ですが、現時点の第一人者であり、現代のフィーネとなった櫻井了子の師である麻森博士でさえ理解できる箇所は7割程度に留まっています。特にシンフォギア・システムに関しては麻森博士の頭脳を以てしても半数近くがブラックボックス状態であり、修復はできても新たに作り出す事はできません」

 

エルフナイン「なので、例え櫻井理論を提供しても、理解する事は難しいと思います」

 

弦十郎「無理に時計の針を進めれば、必ず歪みが出るだろう。向こうの世界には、向こうの世界の歩みがある。それを我々が無理矢理進める事は、果たして正しい事だろうか…」

 

クリス「…だけど、それじゃ向こうでのノイズの犠牲はどうなるんだ?」

 

紫龍「…難しい問題だな…」

 

星矢「どうにもならねえのは、辛いよな…」

 

 そして翌日…

 

紫龍「よし、お前達を鍛え上げるぞ!」

 

クリス「ああ、何だってやってやる」

 

調「うん、このギアにももっと慣れないと」

 

切歌「それに、あたし達のスペシャルなコンビネーションプレーの練習もしないとデスね」

 

 そこへ、響達が来た。

 

響「あ、クリスちゃん達!戻ってたんだね!」

 

翼「どうやらうまくいっているようだな…」

 

マリア「戦い方にどんな変化が起きたのか、ちょっと気になるわね…」

 

弦十郎「ちょうどいい所に来たな。誰か、クリス君達と模擬戦をしてみてもらえないか?」

 

響「模擬戦ですか?」

 

翼「教えた立場として、ぜひやらせてほしい」

 

星矢「案外、いいんじゃねえか?」

 

紫龍「それもそうだな。翼、やってみろ」

 

翼「ありがとう、紫龍。雪音達、模擬戦の相手は私だ!」

 

切歌「こ、これは…強敵デス!」

 

調「…ノイズよりかなり強敵」

 

クリス「いいじゃねーか。それでこそ和装型のテストができるってもんだ!」

 

 早速、模擬戦を行った。

 

翼「さすがに私1人では無理か…」

 

クリス「そりゃそうだろ。あたしらを舐めすぎだっての」

 

マリア「肩慣らしはこれくらいでいいでしょ。それじゃ私も参加させてもらうわ」

 

切歌「ま、マリアもデスか!?」

 

調「強敵」

 

響「あ、私も参加したいです!」

 

星矢「これで3対3になったな」

 

氷河「人数が同等になったら、どうなるのやら」

 

 今度は3対3で行った。

 

響「いや~、クリスちゃん達強かった~」

 

美衣「いい勝負でしたね。ギアの調子はいかがですか?」

 

クリス「すごぶる快調だ!」

 

紫龍「…だが、お前達のコンビネーションはまだまだだな。拙い連携のままではいずれ戦場で敵に遅れをとるぞ」

 

翼「ああ。私も同じ意見だ。雪音達はもう少し互いに気を配った方がいいと思う」

 

クリス「くっ、…まあ確かに、それは否定できねーけど」

 

切歌「もっともっと精進するデス」

 

調「3人で頑張ります」

 

クリス「さてと、それじゃ早速向こうへ行くとするか!今頃、瞬が1人で頑張ってるからな」

 

 

 

公園(並行世界)

 

 早速クリス達は並行世界へ行ったが、早々にノイズが出てきた。

 

切歌「戻って早々、ノイズが出てくるデスか!」

 

調「でも、私達が戻る前だったら、きっと大変な事になってた!」

 

 そこへ瞬がやってきて合流した。

 

瞬「その通りだよ!この先にノイズがいる!」

 

 しかし、その場には自衛隊がいた。

 

切歌「な、なんデスか…?」

 

自衛隊員「ここから先へ作戦区域である!速やかに撤収されたし!」

 

クリス「は…はああっ!?お前ら、まだそんな事…、あたしらの」

 

 クリスが言い終わる前に瞬が止め、代わりに瞬が説得する事にした。

 

瞬「あなた達の言いたい事もわかります!しかし、僕達もあなた達が死んでいく姿を見たくないんです!だから、ここを通してください!」

 

自衛隊員「…これ以上、関係のない者達に好き勝手させるわけにはいかない!」

 

瞬「いいえ、関係なくはありません!僕達は誰に強要されている訳でもなく、自分達の意思でみんなを護るために戦っているんです!僕達と親しい隊長さんのポリシーの通り、犠牲を最小限に留めるためにも僕達が行かなければなりません!」

 

自衛隊員「…それこそ、我々の恥だ…!」

 

 瞬の頼みを拒否した自衛隊員だが、その返事ははっきりしたものではなく、思い悩んでいる様子であった。

 

クリス「今はそれを気にしてんじゃねえよ!瞬の言う通りにしろよ!」

 

切歌「そうデス!今は瞬の言う通りにした方が正しいのデス!」

 

調「…瞬さんの言う通りにしてください」

 

自衛隊員「…我々は役立たずなのか…?」

 

クリス「…それは…」

 

 しかし、ノイズによって次々と自衛隊員が炭化していく様子が目前に迫っていた。

 

切歌「急ぐデス!」

 

調「そうだね!」

 

 やむなく瞬達は現場へ急いだ。

 

自衛隊員「ちくしょう…ちくしょう…!」

 

 自分達ではどうしようもない事に自衛隊員は悔しさでいっぱいだった。一方、ノイズの進行に自衛隊は押されていた。

 

隊長「これ以上の進行は民間人に危害が及ぶ!なんとしてもこの防衛線を死守するんだ!」

 

 しかし、目前にノイズが迫っていた。

 

隊長「ノ、ノイズ…いつの間にこんな近くに…。う、うわああっ!」

 

 ノイズによって炭素分解されそうになった隊長だったが、突如として鎖がノイズを貫き、ノイズは消滅した。

 

隊長「あの鎧の少年か…!」

 

 何とか瞬が先行して駆け付け、チェーンでノイズの攻撃から自衛隊員を護っていた。そして、クリス達も来た。

 

クリス「瞬!」

 

瞬「僕は自衛隊の皆さんを護るためにこの場から動けない!だから、ノイズを頼む!」

 

切歌「任せるのデス!」

 

調「だから、瞬さんは防衛に専念して!」

 

 ノイズへの攻撃はクリス達が担当した。

 

クリス「(くそっ、あたしらじゃあいつらを役立たず扱いしかできねえ!頼む、瞬…!)」

 

瞬「皆さん、この場から離脱してください!」

 

隊長「だ、だが…」

 

 渋っていると、女隊長が来た。

 

女隊長「悔しいけど、あの子達に任せるしかないわ。人の命は失ってしまったら戻らないもの…」

 

隊長「くっ…!」

 

 隊長の悔しい思いを汲みつつも、女隊長は離脱を促し、その隊長が率いる部隊は離脱した。そして、クリス達はノイズを倒し終わった。

 

クリス「…何で、あたし達は協力し合えないんだ…。どうして、無駄な犠牲を増やしちまうんだよ…」

 

調「クリス先輩…」

 

切歌「みんなで協力できたら…こんなに犠牲は出なくても済んだかも知れないデス」

 

調「…うん、そうだね。戦えないのに、どうして戦おうなんて…」

 

クリス「あたしの…せいなのか?ううん、あたしのせいだ…」

 

瞬「クリス…」

 

女隊長「少し違うわね」

 

 そこへ、女隊長とウェルが来た。

 

瞬「隊長さんに博士!」

 

クリス「違うってどういう事だよ?」

 

女隊長「瞬君以外が役立たず扱いしたっていうのもあるけど、この前言ったようにあなた達のような年端もいかない少年少女達に護ってもらうのが嫌なのよ」

 

クリス「そんな理由で!?」

 

瞬「やっぱり、そうでしたか…」

 

ウェル「ええ、そんな理由です。本来護るべき対象である少年少女達に護られているんですから」

 

調「……」

 

ウェル「あなた方は確かに強い。ですが…無敵ではない。圧倒的な強さを持つ君でさえも」

 

瞬「はい。僕はクリス達より圧倒的に強いだけです」

 

ウェル「あなた方が怪我をしながら戦っているのに、指をくわえて見ているだけなんて、彼等には耐えられないのでしょう」

 

調「隊長さんも…」

 

女隊長「…これも前に言った通り、私も本音は彼等と同じよ」

 

切歌「あたし達は…ただ、みんなを護りたいだけデス…」

 

女隊長「ええ、それは私達自衛隊も一緒よ。戦っているあなた達の事も私達は護りたいと思っている」

 

調「ノイズは自分達が戦って倒せばいいって思ってた、だけど…」

 

クリス「あいつらの事、何も考えてなかった…」

 

瞬「僕も護る事に気を取られすぎて、隊長さんに自衛隊の事を任せすぎていたよ…」

 

女隊長「あまり気にし過ぎないで。瞬君の優しさは他の部隊の人にも伝わっていたわよ」

 

切歌「これからどうすればいいんデスか…?」

 

クリス「…あたし達が変わるんだ。あいつらだって戦ってる、だから、それを認めなきゃ」

 

調「うん…」

 

切歌「デス…」

 

ウェル「どうやら、話はまとまったようですね」

 

調「ドクター…」

 

ウェル「何ですか?」

 

切歌「なんか気持ち悪いデス」

 

瞬「切歌、そんな事を言っちゃ…」

 

ウェル「ええっ!?」

 

 この事にウェルはショックを受けたのであった。

 

 

 

市街地

 

 そして夕方…、ノイズ出現の連絡が入った。

 

ウェル『すみません皆さん…まさかノイズがあんな場所に現れるとは思いませんでした』

 

クリス「いいから状況を知らせろ!」

 

調「…ノイズがライブ会場に出たって本当なの?」

 

切歌「そんな場所にノイズだなんて、大変な事になるデスよ!」

 

ウェル『はい、まさかそんな場所に現れるとは…。会場ではちょうど今日、大きな音楽フェスが開かれています。前売券、当日券共にSOLD OUT。つまり会場は満員の観客で埋め尽くされています』

 

クリス「ちっ、最悪の状況じゃねーか…」

 

瞬「3人とも急いで向かおう!早くしないと、3年前のツヴァイウイングのライブの時の悲劇の再来になってしまう!」

 

調「そんな事態にだけはなっちゃダメ!」

 

切歌「急ぐのデス!」

 

ウェル『お願いします、皆さん。しかし、この絶望的な状況でこそ、皆さんが真に輝くためのステージでもあるのです!』

 

クリス「なにわけわかんねーこと言ってんだ!けど、ノイズはあたし達の専門だ!任せとけ!」

 

 4人はライブ会場へ急いだ。

 

 

 

ライブ会場

 

 途中から瞬が先行して観客を護り、3人は遅れてやってきた。

 

クリス「くそ!出遅れたか!」

 

切歌「ノイズがたくさんデス!」

 

調「観客の人達は…何とか瞬さんが護り抜いているけど……、護る事に専念してて、攻撃ができない…」

 

切歌「許さないデス!」

 

ウェル『皆さん、そのままノイズの対処をお願いします』

 

クリス「ああ、言われなくても」

 

切歌「デス!」

 

調「これ以上やらせない!」

 

 観客の防衛で攻撃ができない瞬に代わり、クリス達がノイズと応戦した。ところが…観客が戻ってきたのであった。

 

クリス「な、何だ!?客が戻ってきてる…?」

 

 自衛隊も来たのであった。

 

隊長「いたぞ、ノイズだ!各隊、油断するな、攻撃を開始する!」

 

 ノイズに攻撃したものの、効果はなかった。

 

調「自衛隊の人達がなだれ込んで来る…」

 

切歌「避難も終わってないのにデスか!?」

 

クリス「また意地かよ…。そうじゃねー…そうじゃねぇだろ!ちっきしょう!」

 

 いつもなら瞬が説得に向かうのだが、瞬は防衛で手が回らないため、クリスが向かった。

 

調「クリス先輩!?ステージに上がって何を!?」

 

クリス「間違えるな!」

 

 大声に自衛隊の隊長も怯んだ。

 

切歌「すごい、声デス!」

 

クリス「やるべき事を違えないでくれ!…人の命を、それを救うためにできる事があるだろ!あたし達にできるのはノイズを倒す事だけで、瞬が出来る事はそれに加え、鎖で防御する事だけだ。でも、お前らは違う!あたしらに協力的な隊長のように目の前の民間人を救えるだろ!だから頼む、力を貸してくれ…。これ以上、ノイズの犠牲になる人をなくすために!瞬が必死になって護っている人達を助けてくれ!!」

 

調「クリス先輩…」

 

切歌「クリス先輩…」

 

 自衛隊の隊長はクリスの言葉と必死になって観客を護っている瞬の姿に心を打たれ、ある決断をした。

 

自衛隊員「…隊長?」

 

隊長「…我々はノイズをけん制しつつ、民間人の避難誘導を行う!急げ!」

 

???「避難誘導は私の部隊も手伝うわ!」

 

 そこへ、瞬達に協力的な女隊長も来た。

 

隊長「君は…」

 

女隊長「無駄話は禁物よ。瞬君が必死に護っている人達を避難させるのが最優先。あなた達、ノイズの撃破は頼むわよ!」

 

 ノイズの撃破を頼み、自衛隊は民間人の避難誘導を行った。

 

クリス「ああ、任せとけ!そっちはあたしらが引き受けた!」

 

切歌「デス!」

 

調「お互いにやれる事をやりましょう」

 

隊長「…ふ、全く生意気なお嬢さん達だ」

 

女隊長「年相応というべきでしょ?」

 

クリス「さて、後はあたしらの仕事だな。ノイズ共をまとめてぶっ潰してやる!」

 

調「全部切り刻んであげるから!」

 

切歌「デストロイなのデス!」

 

 そして、ノイズを全滅させたのであった。

 

クリス「ふぅ、何とかなったか…」

 

切歌「観客の人達の避難も無事に終了したデス!」

 

調「瞬さん、1人で観客の人を護って疲れが出てるんじゃ…?」

 

瞬「流石にいつもよりは疲れたよ…」

 

 そこへ、自衛隊の隊長が来た。

 

調「…あ、自衛隊の隊長の人」

 

切歌「何の用デスかね…?」

 

瞬「どうしたんですか?」

 

隊長「…助かった。君達のお陰で民間人を護る事ができた。君達の言葉や行動に気付かされた。我々は大切なものを見失っていた。…ありがとう」

 

クリス「うえっ!?い、いやその…。わ、わかりゃあいいんだよ!」

 

瞬「わかってくれて何よりです」

 

隊長「これからは優先順位を間違えたりはしない。何よりも人の命を尊び、戦えない人々の盾として…ノイズとの戦いの先頭に立ち続けるつもりだ」

 

クリス「うんうん…ん?って、はあああっ!?まだ戦うつもりなのかよ!?」

 

隊長「当然だ。我々も大人だからな。君達のようないたいけな少年少女達に凶暴なノイズを任せきるともりはない」

 

切歌「こ、懲りてないデス!この人懲りてないデスよ!」

 

調「驚いた…」

 

クリス「そんなんでまた危険な事を…」

 

隊長「するだろう。我々には先人たちがそうして戦ってきた志があり、護るべきものを護るために戦う責務があるからな。では、またどこかでな。…君達の助力に感謝する」

 

 そう言って撤収したのであった。

 

クリス「な、なんだったんだ…?」

 

切歌「すっごい石頭デス!」

 

調「でも、私達の事を認めてくれたみたい」

 

女隊長「そうみたいよ。戦うって言っても、私達には直接ノイズと戦う以外にも住人の避難誘導などといった私達でないとできない戦いがあるのだからね」

 

瞬「これからは他の部隊の人達とも協力し合えるかも知れませんね」

 

女隊長「そうね」

 

 クリス達の様子をウェルはみていた。

 

ウェル「すーっばらしい!やはり僕の目に狂いはなかった!今回の一件で確信めいたものを僕は感じた!これは神が計画を推し進めると言っているに違いない!ふふ、ふははははは!理想郷はもうすぐそこまで来ている…!」

 

 何やら、ウェルの野望が動き出していた。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は前回に引き続き、クリス達と自衛隊の確執とその和解を描きました。
次の話では自衛隊との親睦を深める事となりますが、思わぬ強敵が現れます。
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