セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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39話 フィーネの追憶

市街地(並行世界)

 

 響達のフォニックゲインと星矢達の小宇宙でウェルが腕に仕込んだネフィリムの細胞が目覚めたのであった。

 

紫龍「ウェル、お前がこの場に現れたのは、腕に仕込んだネフィリムを目覚めさせるためだったのか!」

 

ウェル「この力で!」

 

 ウェルはノイズを攻撃したのであった。

 

響「ネフィリムの腕だけでノイズを!?」

 

ウェル「…素晴らしい!あなた達のお陰ですよ!」

 

翼「聖遺物が腕と同化しているとはいえ、それだけで!?」

 

ウェル「あなた達にありがとう!そして、僕の才能にありがとう!」

 

 そのままウェルはノイズを次々と蹴散らしていった。

 

調「ドクター…?」

 

星矢「イマイチ信用できねえがウェル、お前は俺達の味方なのか?」

 

ウェル「何をいうのです。僕は本当にあなた達に!」

 

フィーネ『完全聖遺物ネフィリム。確かF.I.Sにいた頃、そいつをいつまでも起動できなかった事で左遷されたそうね』

 

ウェル「最高の気分に水を差さないでほしいものですね…。連中はフォニックゲインの必要性すら理解できなかったので、僕自ら蹴ったのですよ!」

 

フィーネ『それで、その子達を利用したと』

 

ウェル「ふん。お前こそ、この強大なフォニックゲインを利用しようとしたんじゃないか」

 

フィーネ『ふふ…どうかしらね』

 

星矢「紫龍、どうする…?俺としちゃ、どっちも信用できねえが…」

 

紫龍「お前の思った通り、双方に警戒した方がいいだろう」

 

ウェル「何を言うのですか!小僧達はいけ好かないのですが、さっきのは本当に感謝しているんですよ。僕はあなた達の味方です!」

 

響「星矢さん、あの人は味方だと…」

 

星矢「俺は完全に信用しちゃいねえ」

 

ウェル「そんなに信用できないのか!?小僧!だったら、味方だと証明してやる!」

 

 そう言ってウェルはノイズを片付けていった。

 

星矢「あのバカとは付き合ってられねえな」

 

紫龍「そこは俺も同感だ…。とにかく、この場のノイズを一掃しよう」

 

 ウェルにはついていけないと思う星矢と紫龍であったが、この場のノイズは一掃したのであった。

 

黒服A「あの小僧たち、手品みたいな技でノイズを倒しやがったぞ…!」

 

黒服B「神闘士もやられた上、撤退命令が出た。退くぞ!」

 

 黒服達は逃げ出した。

 

 

 

隠れ家

 

 戦闘後、星矢達は隠れ家に戻ってきた。

 

フィーネ「入りなさい」

 

ウェル「ふん、ここがあなたの隠れ家ですか」

 

響「了子さん、ここから通信してたんですね」

 

翼「我々の知る隠れ家とは、赴きが違った感じだな」

 

ウェル「はっきり言ってあげたらどうです。地味でつまらない隠れ家ですねぇ~!と」

 

紫龍「隠れ家は地味な方がいいと俺は思うぞ。逆に派手だったら、目立って隠れ家にならなくなる」

 

フィーネ「あなたみたいな自覚のない喜劇役者なんて、本当は招待したくなかったんだけれど」

 

ウェル「僕だって魔女の住処になんて、必要なければ足を踏み入れたりしたくありませんよ」

 

フィーネ「あなたはいちいち私に喧嘩を売らないと話せないの?器が知れるわよ?」

 

ウェル「ふん。胡散臭いあなたに僕の器がどうこうなどと言われたくありませんね」

 

 フィーネとウェルの愚痴喧嘩に星矢達は呆れていた。

 

紫龍「やれやれ、大人がこれではまとまるものもまとまらなくなるぞ」

 

星矢「ほんと、どっちも信用できねえ。この場に弦十郎でも居りゃ、あっという間にまとまるんだけどな」

 

調「…ややこしい味方陣営」

 

響「でも、2人ともすごく頼もしいよ!」

 

星矢「そうか?フィーネならともかく、ウェルの方は頼もしくは思えねえな」

 

調「その前向きさ、ある意味感心します」

 

ウェル「天才たる僕が味方にいる限り、あなた達の勝利は最初から決まっているも同然です」

 

フィーネ「負け戦なら最初から挑む必要がないわ。…それで、状況を整理したいのだけれど、いいかしら?」

 

翼「ああ、構わない」

 

フィーネ「それじゃそこの自称英雄さん。あなたの部隊の戦力はどれぐらいあるの?」

 

ウェル「志願して僕についてきた『英雄部隊』が10名。僕の英雄としてあふれ出す人望が人を寄せ付けたのでしょう!そして何より!このネフィリムの力を手に入れた僕という真の英雄があなた方に協力しましょう!更に更に!僕はあなた達の怪我などを診る事も可能!流石は僕!もう僕一人で全てOKという事です!」

 

調「やっぱりドクターはどこでもドクターなんだ…」

 

ウェル「それで、あなたにはどんな戦力が?まあ、僕の前ではどんな戦力もかすむでしょうけど…」

 

フィーネ「こちらに手駒はないわね」

 

ウェル「クク…手駒の一つもないとは…。さすが魔女。人望の欠片もないわけですねぇ…」

 

響「で、でも了子さんにはネフシュタンと科学者としての腕がありますよ!」

 

フィーネ「そうね。私は二課及び米国側のシステムにも通じているわ。ハッキングと合わせて各種オペレーションは少数であるこちらにとって有利に立ち回る手段となるはずよ」

 

調「情報は大事」

 

ウェル「…ふん。ならその能力とやらでせいぜい僕の役に立つ事ですね」

 

フィーネ「あなたもね。鳥合の衆じゃないって所を見せてくれるのを期待してるわ」

 

響「え、ええっと、そのくらいに…」

 

翼「…私達は見ての通りだ。シンフォギアと装者3名。そして黄金聖闘士2人とまだ療養中の神闘士1人。戦闘能力についても私達装者は見た通りと思ってくれればいい」

 

ウェル「シンフォギアシステム…ふふ、大変興味深い…。素晴らしい装備ですよ、いつの間に実用化されたのです!?」

 

響「言っちゃっていいんです?」

 

翼「…そうだな。共闘する以上、こちらの素性も明かしておこう」

 

 星矢達は自分達は並行世界から来た事を教えた。

 

ウェル「並行世界!?並行世界と言いましたか!?」

 

フィーネ「理論上はすでに存在は予言されていたはず。研究の第一線にいたあなたが驚く事でもないでしょう?」

 

ウェル「た、確かに論文はいくつか読んだ事がありますが…。ふむ…別の可能性の世界ですか…!そこではきっと僕はこんな状況ではなく、もっと英雄的な活躍をしているんでしょうねえ…!」

 

星矢「ま、俺達の世界のお前は悪事をやらかした挙句、俺を怒らせて3回もタコ殴りにされたけどな」

 

ウェル「なっ…どういう事ですか!?」

 

フィーネ「そのあたりに確認はこれぐらいでいいでしょ」

 

ウェル「くっ…まぁ、おいおい詳しい事も聞かせてもらいましょうか…」

 

星矢「言っとくけど、余計な事はすんなよ。したら…全身骨折程度では済まないと思え」

 

フィーネ「話を戻すけど、こちらの戦力を把握した所で、相手、敵の部隊についてだけど…。私は神闘士達を雇っている連中は恐らく、異端技術の奪取を目的として米国が送り込んだ実行部隊だと考えているのだけど、どうかしら?」

 

ウェル「二課の保管庫で、F.I.Sと同様の聖遺物分類マーカーが付けられていましたよ。あちらには研究員も送り込んでいるようですね」

 

調「私達を捕らえた兵士の銃も、F.I.Sが使っていたものと同じでした。こちらのF.I.Sと同じとは限りませんけど」

 

フィーネ「あなた達の世界の事はわからないけど、武器やその他についてはそう変わらないと仮定しましょう。そうなると、敵は米国F.I.Sの精鋭部隊、研究員まで連れてきてるって事は、狙いは異端技術研究と聖遺物でしょうね」

 

翼「米国と事を構えねばならないとは…」

 

紫龍「俺としては、F.I.Sも注意しなければならないが、それより警戒すべきはドルバルとその一派だ。奴等の戦力はF.I.Sを上回っているから、俺達でないと太刀打ちする事はできん」

 

響「うぅ、なんで人間同士で争わなくちゃいけないんだろう…」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 ルングとファフナーは戻ってきた。

 

ドルバル「お前達もダメだったか…」

 

ルング「申し訳ありません…」

 

ドルバル「そうか…」

 

ファフナー「ドルバル教主、金色の鎧の戦士2人に対抗するためにあのオーディーンサファイアを使うというのはどうでしょうか?」

 

ドルバル「奴等の協力を得て完成したあのオーディーンサファイアか…。よかろう」

 

ファフナー「では、調整に入ります」

 

 ファフナーはその場を離れた。そして、ドルバルはヒルダを監禁している部屋に入った。監禁されているヒルダは黒いオーディーンサファイアが埋められた手錠を付けられていた。

 

ドルバル「ヒルダよ、その黒いオーディーンサファイアが埋め込まれた手錠を嵌められては小宇宙も使えないであろう。そして、それによって何もできないのは悔しかろう」

 

ヒルダ「ドルバル、あなたは私を殺してオーディーンの地上代行者になりたいはず。なぜ、このようなマネを?」

 

ドルバル「決まっているだろう。ヒルダ、お前を殺すのはお前を慕う神闘士達の死を見せつけ、とびっきりの絶望を味あわせてからだ。それまでは不安で震えているがいい。ふははははっ!!」

 

 高笑いし、ドルバルは部屋を出た。

 

ヒルダ「(ジークフリート、私はドルバルが独自に開発した黒いオーディーンサファイアのせいで小宇宙を通し、無事を伝える事ができません。どうか、無事でください…)」

 

 

 

隠れ家

 

 そして翌朝…。

 

フィーネ「(使いづらいとはいえ、戦力が増えたのは勿怪の幸いと言っていい。後は…)カギがどこにあるか、ね…。あれがなければ始まらない。ネフシュタンを手に入れた次は、あれを起動しなければ…」

 

 そう思っていると、警報が鳴った。

 

フィーネ「どうやら網にかかってくれたみたいね。ふふ…こそこそとどこへ運ぶつもりなのかしら。何もかも見られているとも知らず(偽装トラックでの聖遺物移送…行き先は港湾か。既に船も待機して準備のいい事)いい手際ね。この私に気付かれてなければ、だけど。決まったわね、次の一手は…」

 

 

 

 

 響達は港についていた。

 

響「了子さん、港に着きました」

 

フィーネ『すぐ近くからノイズの反応があるわ。探してみてちょうだ』

 

翼「…ノイズの気配など感じられないが?」

 

響「みんな落ち着いた雰囲気ですけど…」

 

フィーネ『必ず遭遇するわ。埠頭方面へ向かいなさい』

 

調「埠頭って、普通に積み込み作業をしてる人達だけで…」

 

星矢「そうもいかないようだぞ…」

 

 警戒している星矢と紫龍の2人が思った通り、ノイズが出た。

 

翼「来たか!」

 

紫龍「ノイズ…!」

 

フィーネ『私の言った通りでしょう。さぁ、状況に対処するといいわ』

 

調「急に現れた?どういう事…?」

 

 

 

隠れ家

 

 隠れ家でフィーネは敵の様子を見ていた。

 

フィーネ「(相手は彼女達が装者である事を知っている。それと黄金聖闘士2人までもあれを奪いに来たとわかれば、当然防衛するでしょうね)」

 

 

 

 

 星矢達はノイズと応戦した。

 

作業員A「な、何だ?金ピカ鎧の奴が指を光らせたらノイズが…」

 

星矢「あんたら、ボサッとしてる暇があるのなら、すぐに避難しろ!死にたいのか!?」

 

 星矢に言われ、作業員たちは避難した。装者よりも遥かに強い黄金聖闘士の星矢と紫龍がいる事もあり、ノイズはあっという間にわずかとなった。

 

フィーネ『付近で高エネルギー反応よ、聖遺物が起動しているわ』

 

響「どこに…!え、あれって!」

 

 そう、起動した聖遺物はデュランダルであった。

 

翼「デュランダル!既にアビスより持ち出されていたのか!」

 

フィーネ『奪取しなさい。起動した完全聖遺物を敵の手には渡せないでしょう?』

 

紫龍「確かに。俺達はF.I.Sだけでなく、ドルバル一味とも戦わなければならない。デュランダルがドルバルの手に渡れば大変な事になる可能性も高い。星矢、お前がデュランダルを確保するんだ!俺達はノイズの対処にあたる!」

 

星矢「任しとけ!」

 

 光速の動きで敵の包囲網を突破し、星矢はデュランダルを確保した。

 

星矢「デュランダル、確かに俺が確保したぞ!」

 

響「流石星矢さん!」

 

紫龍「デュランダルを確保した以上、もうここに用はない。一気に片付けるぞ!」

 

調「はい!」

 

 フィーネが来た頃にはノイズは全滅し、黒服達も星矢と紫龍にパンチ一発で顔が変形するほどの攻撃を受けて気絶していた。

 

フィーネ「あらあら、出番がなくなっちゃったわね」

 

星矢「この場に現れたノイズは俺達が全滅させたからな。神闘士の邪魔も入らなかったし、楽勝だったぞ」

 

紫龍「フィーネ、デュランダルはこれからどうするんだ?こんな物は保管方法を誤れば、大惨事を引き起こす代物だ」

 

フィーネ「心配しないで、私はそんなヘマはしないわよ」

 

 そう言ってると、今度はウェルも来た。しかし、とっくに戦いが終わっていたため、ウェルは落ち込んだ。

 

ウェル「ぐうう…もう少し早く現場入りできれば、僕の活躍が英雄史に刻まれたものを…」

 

星矢「付き合ってられねえなぁ…」

 

翼「それより、回収したデュランダルをどうするつもりだ。それになぜデュランダルがこんな場所に…」

 

ウェル「船便で順次、米国へと聖遺物を移すつもりなんでしょう。完全聖遺物から優先でね」

 

フィーネ「恐らくはその通りでしょうね。ノイズはその護衛目的じゃないかしら」

 

ウェル「二課の管理している聖遺物をこの混乱に乗じて奪い、米国のF.I.S施設へと移す、まあそんなところでしょう」

 

調「F.I.Sは異端技術の独占を狙っているんですね」

 

翼「ノイズという人類共通の敵がいるのだから、共同戦線を敷けばいいものを…」

 

ウェル「それで納得しないのがあの国ですよ。僕の研究も全く理解せず、軍事利用への方向転換ばかりを要求されたのですから。ところでそのデュランダル、僕に預けてくれませんか?」

 

星矢「お前がか?」

 

ウェル「ええ。人類救済のための研究の第一人者である僕が、責任をもって完全聖遺物デュランダルの保管を」

 

フィーネ「それは無理ね。デュランダルは私が保管するわ」

 

ウェル「な!ふざけるな!こんな魔女に不滅不朽の剣を渡せるわけがないでしょう!」

 

フィーネ「私は二課の所属よ。そしてデュランダルは二課の保有する完全聖遺物。既に二課から完全聖遺物ネフィリムを盗み出した前科があるマッドサイエンティストと立場が違うのよ」

 

ウェル「う、うるさい!起動したデュランダルをお前に持たせるなど、火薬庫に爆弾を投げ込むに等しい!それにデュランダルといえば伝説にある英雄ローランの剣!で、あれは同じ英雄である僕が持つのが相応しいだろう!」

 

フィーネ「自称英雄と神話にある英雄を同じに扱えるわけないでしょう。とにかく、これは私が」

 

ウェル「いいんですか皆さん!この魔女なんかを信じて!僕の言う事の方が絶対に正しいんですよ!」

 

響「えええ、ど、どうすれば…」

 

調「どちらも怪しいけど、私達だけでは管理しきれない…」

 

翼「フィーネとウェル博士の2択…くっ、どうすれば…」

 

紫龍「…やむを得ん、フィーネに渡すしかないな…」

 

星矢「俺もフィーネとウェルの2択なら、フィーネしかないな…」

 

フィーネ「黄金聖闘士の2人は賢明な判断ね。堂々と私物化すると言ってるのよ、そこのおかしな自称英雄さんは。なら、私の方がいいでしょ?」

 

翼「確かに無理だな」

 

調「無理です…」

 

響「了子さん、ふつつかなデュランダルですが、よろしくお願いします!」

 

フィーネ「ふふ、わかったわ」

 

ウェル「なッ…なんでこんな胡散臭い女に!くっ…これも英雄たる僕への試練という事か!」

 

紫龍「こんな代物の私物化は許さんぞ」

 

響「了子さんは二課に戻すと言ってましたし」

 

星矢「迷う余地は本当はなかったな…」

 

ウェル「くっ、後悔しても知りませんよ!」

 

 

 

隠れ家

 

 翌日の事であった。

 

フィーネ「(ネフシュタンもデュランダルも既に押さえた。どちらも、並行世界から来た装者達のフォニックゲインと黄金聖闘士の小宇宙によって起動済み。その装者達と黄金聖闘士とも協力関係にある。あの子達は私を疑いはするだろうが、状況が訣別を許さない。そして、黄金聖闘士もこの世界をよく知らない上、ドルバル派の神闘士がいる以上、私と協力せざるを得ない。ジョン・ウェイン・ウェルキンゲトリクス…。彼の存在も、多角的な意味でむしろ好都合。疑惑の目くらましとなると同時に戦力の底上げにも繋がる。F.I.Sの動き、神闘士の動き、カルマノイズと呼称されるノイズの変異体の出現、あらゆるイレギュラーが私に味方している。まさに千載一遇、これ以上はないと言っていい程の追い風…だけど…)そう…だけど、私は…(いえ、関係ないわ。目的より優先すべき事などない)ふう。この機は逃せない。余計な考えは捨てて、さらに手を進めなくてはね…」

 

 そして、響達はノイズと交戦した。

 

響『こっちは何とかできました!了子さん、他にも反応が出てるんですよね?』

 

翼『避難の困難な、優先順位の高い箇所から教えてくれ。順次対処する!』

 

フィーネ「次は高架付近へ。位置は端末に送信するわ」

 

響「わかりました!」

 

調「街の避難が完了していても、道路が襲われるかも知れない…!」

 

フィーネ「(ソロモンの杖は厄介な代物だが、装者の戦力は対ノイズに限れば圧倒的な上、黄金聖闘士ともなれば攻防速共に装者を遥かに凌ぐ戦闘力を誇る。懸念要素はない。後は、どのタイミングで二課を解放するか…)」

 

 しかし、眠気がフィーネを襲った。

 

フィーネ「ん…眠気がする…。またとない機運を得て、根を詰め過ぎたかしら…。あの子達が戦っているうちに少し…」

 

 フィーネは少し寝る事にしたのであった。

 

 

 

 

 寝ているフィーネはこれまでの事を思い出していた。

 

フィーネ『(自身のバックアップとして、レセプターチルドレンを使った実験をしていた頃の事。上層部からシンフォギアシステムの開発凍結を告知され、より安易で直接的な異端技術の兵器利用を命じられた。聖遺物を限定的に起動し兵器とする事は簡単だが、高レベルのフォニックゲインなくしては私の悲願に届かない。私はF.I.Sから逃亡、聖遺物に関する情報提供を取引材料とし、日本の特異災害対策機動部二課で匿ってもらう事となった。『櫻井理論』の提唱者、その当人と知れば、相応の待遇で迎え入れてくれた)』

 

了子「あらぁ、まさか学院の地下にこんな大がかりな施設を隠してるなんて。日本の研究所もすごいのねぇ~」

 

フィーネ『(別に演技はしていなかった。櫻井了子の人格は、私の人格で上書きされたものの、統合されて同時に内在したから、私は櫻井了子であり、フィーネであった。自意識は別個のものではなく、ある時から私の中に並列して存在した)』

 

二課スタッフ「こちらです。櫻井博士」

 

了子「ありがとー」

 

 部屋へ入ると、了子は歓迎された。

 

弦十郎「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」

 

フィーネ『(ああ、そうだった。私はこうしてこの場所に…特異災害対策機動部二課にやってきたのだった)』

 

了子「…これはこれは、熱烈歓迎ありがとう。えっと…?」

 

弦十郎「俺は風鳴弦十郎、ここの責任者をしている。よろしく、了子君!」

 

了子「フランクなノリの現場で助かるわぁ、こちらこそよろしく」

 

フィーネ『(本気でノイズと命がけの戦いをしているとは到底思えない、笑いと活気のある場所。それが第一印象だった)』

 

了子「やっぱりこっちでゼロから新しいシステムを組むのは骨が折れるわねぇ…」

 

あおい「お疲れ様です。あったかいもの、どうぞ」

 

了子「あったかいものって?」

 

朔也「まぁ、飲んでみてくださいよ。ここの定番ですから」

 

 試しに飲む事にした。

 

了子「…ん、あらほんと。おいしいわね。染み渡るわぁ」

 

フィーネ『(私は櫻井了子として二課のメンバーの1人となり、聖遺物やそれにまつわる研究を進め、同僚と共に時を過ごした)』

 

 それからしばらく経った後…

 

了子「カ・ディンギル建造計画は既に動き出した。あとはデュランダルを起動できるフォニックゲインの確保を…」

 

フィーネ『(櫻井了子として働きながら、私はフィーネとしての目的も秘密裡に進めていた)』

 

弦十郎「ここにいたのか。了子君」

 

了子「あら、私に何か用?」

 

弦十郎「なに、今日は仕事がはけたら一杯どうかと思ってね。こちらに来たばかりでいい店も知らないだろう」

 

了子「デートのお誘いかしら?とっておきの店に招待してくれるなら付き合うけど」

 

弦十郎「ふ、いいだろう。歓迎会の時に思ったが、君はかなりイケる口のようだしな。俺のいきつけの店にエスコートしよう」

 

了子「決まりね。あったかいものもいいけれど、大人のアフターにはキューっと効くのがないとね」

 

弦十郎「ああ。今夜は飲み明かそうじゃないか」

 

フィーネ『(…いささかの迷いはあったが、バラルの呪詛を破壊する目的に勝るものがあるはずもない。私は、今一度あのお方と言葉を交わすために着々と計画を進めていった…)』

 

弦十郎「了子君、いいかな」

 

了子「あら。今日の私はちょっと片付けちゃいたい仕事があるから」

 

弦十郎「カ・ディンギルという名称に聞き覚えは?」

 

了子「…藪から棒に、一体何の話かしら?」

 

弦十郎「いくつかの不可解な行動から、情報部に了子君を張らせていた。まさかとは思ったが、もうこれ以上は…」

 

了子「そう…気付いてしまったのね。誤魔化す意味はなくなったと」

 

弦十郎「いつまでも誤魔化していてほしかったという想いもあるがね」

 

了子「正直、これほど早く気付かれるとは思っていなかったわ…」

 

 了子は正体を現した。

 

フィーネ「例え何者であれ、私の邪魔はさせない!」

 

弦十郎「それでも俺には、君を止める義務がある!」

 

 その後、フィーネはネフシュタンの鎧を纏い、戦闘となった。

 

フィーネ「たかが生身の人間1人で何ができる!」

 

弦十郎「できるさ!色々とな!」

 

 フィーネは攻撃したものの、弦十郎の圧倒的な力はフィーネの想像を遥かに超えていた。

 

フィーネ「なっ…空気を打つ衝撃波のみで凌ぐだと!?」

 

弦十郎「了子君、もうやめるんだ!」

 

フィーネ「私をまだその名で呼ぶか!」

 

 弦十郎の攻撃はフィーネでは防ぎ切れなかった。

 

フィーネ「なに!?防ぎ切れない!?(日本の最終兵器、風鳴弦十郎。ただの噂と思ってたが、まさか小宇宙が使えないのに並の白銀聖闘士を凌駕するこんなデタラメな戦闘能力を有していたとは!)くうぅーっ!心臓を潰してくれる!」

 

 しかし、結局は弦十郎に敗北したのであった。

 

フィーネ「ば、バカな…これが人間の力だというのか…!?」

 

弦十郎「…了子君、もうやめるんだ」

 

フィーネ『(あり得ない。私はこの男の圧倒的な力の前に敗れた。ただ一人の男のために、入念に事を運んできた計画を粉砕されたのだ)』

 

フィーネ「…殺すがいい。次の転生に機会を求めるだけだ」

 

弦十郎「それが君にとっては救済となるのかも知れないが…俺にはできない」

 

フィーネ「どういう事だ」

 

弦十郎「…同じ時間を過ごしてきたんだ。そのすべてが嘘だったとは、俺には…」

 

フィーネ「ふん…甘いわね」

 

弦十郎「性分でな。二課には君に力が必要だ」

 

フィーネ「ははは、必要だと?私の知識がほしいだけだろう」

 

弦十郎「無論、それもある。だがそれ以上に、一緒に飲みに行く相手がいなくなるのは寂しいからな」

 

フィーネ「……」

 

弦十郎「戻ってきてほしい。どうだ、了子君」

 

フィーネ「なんとも甘い考え、私がお前を殺さないとでも思っているのか!?」

 

弦十郎「やれるものならやってみろ。その度に俺が叱ってやる」

 

フィーネ「…お前は何を言っている」

 

弦十郎「立てるか。メディカルルームまで肩を貸そう。君が望むなら、おぶっていっても構わないんだが?」

 

フィーネ「…それぐらい、自分で歩ける」

 

弦十郎「それはよかった」

 

フィーネ『(異常なまでの圧倒的な力。理解できない思考。数千年連なるフィーネとしての記憶の中で、風鳴弦十郎という奇妙な男は類似のない存在だった)』

 

 それからしばらく後…。

 

了子「デュランダルの数値は予想の範囲内。まだ起動には届かない…」

 

弦十郎「流石だな、了子君」

 

了子「それは皮肉?」

 

弦十郎「いや、本心だ。俺達二課は完全聖遺物を保有してはいたが、その研究においては大きく米国に後れをとっていた…。しかし、君が来てからというもの、多くの聖遺物の研究が実際の起動までも視野に入る程、飛躍的に進んだ。だから、流石だ、と思ったのさ」

 

了子「当り前よ。私がどれだけ聖遺物の件宮を続けてきたと思っているの」

 

弦十郎「頼もしい限りだ。あれから…二課での生活はどうだ」

 

了子「力尽くで連れ戻しておいて…、さあ、どうかしらね」

 

弦十郎「この場所は君にとってもそう悪い場所じゃないだろう」

 

了子「ふん…所詮は仮初めの…」

 

弦十郎「この場所は、俺の大切な場所だ。特異災害たるノイズから人類を護る砦という役割以上に俺はここを大切に思っている。人の命を護るため、ともに日夜働いてくれる二課の者達…彼等は全員、俺の家族だと思ってる程に」

 

了子「家族…ふん、遠い話ね。なら、私はあなたに逆らった不良娘か何かかしら?」

 

弦十郎「そんな大きい娘がいる歳じゃないつもりだが…そうだな、手の焼ける妹くらいでどうだ?」

 

了子「馬鹿馬鹿しい。何でも構わないわ。…けれど、私はいつかあなたを殺して、私の目的を遂行するわよ。聖遺物の研究もそのための手段にすぎない」

 

弦十郎「それなら、まだまだ殺されてやるわけにはいかないな。俺が生きている間は、君はここにいてくれるんだろう?」

 

了子「…本当に理解しがたい。どこまでも食えない男ね」

 

弦十郎「どうかな。多分、俺は了子君が思うより、ずっと単純な男さ。じゃあ、約束だ。君は俺を殺したら好きにするといい。ただし、それまでは二課の研究員として一緒に働いてもらう」

 

了子「いいわ。少しでも隙を見せれば、私はお前を殺す」

 

弦十郎「それでいい。さて、研究に一段落ついたのなら、久しぶりにあの店で一杯やらないか」

 

了子「神話には酒を飲ませて敵を討つ物語た数多くあるけど、あなたの命を狙う私を酒席に誘うなんてね」

 

弦十郎「差操作。大人のアフターには、キューっと効くのがないといけないんだろう?」

 

了子「…ふっ…そうね。いいわ、でもせいぜい隙を晒さないようにね?」

 

弦十郎「わかっている」

 

フィーネ『(そうして私は、フィーネとしての正体を明かしたまま、櫻井了子として二課に勤める、奇妙な時間を過ごし始めた…)』




これで今回の話は終わりです。
今回は星矢達がデュランダルを確保するのと、フィーネの回想を描きました。
次の話は紫龍達が二課へ潜入する事となります。
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