特異災害対策機動部二課
二課の本部に戻った奏の心は更に暗く沈んでいた。
奏「(…無様だ。無様すぎるだろ…。人のギアを盗んでおいて、制御すらできないなんて…!)」
そこへ、翼が来た。
翼「…あの、奏…?」
奏「…何だよ?」
翼「もう、大丈夫なの?」
奏「…ああ、メディカルチェックの結果も異常はないってよ」
翼「そう…よかった」
奏「よかった…?何がよかったんだよ!あたしが人のギアを盗んでおきながら、ロクに使えなかったからか?それともそんな無様なあたしへの皮肉か?」
???「心配してるのにそんな言い方はねえだろ!?」
翼の心配を悪意あるものだと解釈して受け取った奏の態度に通りかかった星矢達が口を挟んだ。
星矢「奏、翼は本気でお前の事を心配してるんだ!決してバカにしていない!」
奏「殴り合えば分かり合える単細胞の男共に言われたくねえんだよ!」
逆ギレした奏はそのまま去って行った。
翼「奏…」
星矢「翼、いつもの防人節は」
紫龍「星矢、落ち着け」
アイザック「今は奏の頭を冷やす時間が必要だ。それより、今後の事を考えよう」
星矢「…わかったよ」
奏の態度に星矢はもちろん、紫龍達でさえもやるせない気持ちだった。そんな場へマリアが来た。
マリア「翼、どうだったの?」
翼「ああ、少し話せた。身体は大丈夫そうだ」
響「よかったぁ…」
翼「…立花、すまなかった。奏の代わりに謝らせてくれ…」
響「そ、そんなっ!?翼さんに謝ってもらうような事じゃないです!ギアも戻ったし、気にしないでください!」
翼「ありがとう、立花…」
氷河「体はともかく、心の方は相当深刻なようだ。何しろ、力を欲したばかりに響のギアを纏えないというとんでもない現実を目の当たりにしたんだからな…」
体よりも心の方が深刻だと星矢達は思っていたのであった。
マリア「(イグナイトの力を欲したい気持ちはわかる。でも、例えあのペンダントを制御できたとしても…今の天羽奏の心では、イグナイトの呪いには間違いなく耐えられない。彼女は力の求め方を間違っている。それに気づかない限り、前へは進めない)」
一度暴走した経験があるからこそマリアは奏の心境が理解でき、その力を求める姿勢が間違いであるともわかっていた。
翼「立花、この後時間はあるか?」
響「はい、大丈夫ですけど…」
翼「一応、ギアの調子を確かめておいた方がいいだろう。私も付き合うから、手合わせをしないか?」
響「はい、もちろんやります!マリアさんもやりましょう!」
マリア「…いいわよ。それじゃあ、奏の事を見てて」
奏の事は星矢達に任せ、響達は訓練に向かった。一方、奏の方は同じガングニールなのに響のギアを纏えなかった事をまだ引きずっていた。
奏「…あたしの適合係数じゃ、イグナイトどころかあいつのペンダントすらまともに使えない。いや、仮にあいつのペンダントが使えたとしても、今のあたしじゃ…。所詮あたしはまがい物ってわけか…」
実際はマリア達FIS組の装者の適合係数も低いが、それは今の奏は知る由もなかった。
奏「…翼はあたしなんかより、ずっとすごい奴だった。ツヴァイウイングの時だってそうだ…。泣き虫だ弱虫だなんていつもからかっていたけど、本当は翼の方が強くて、何よりも輝いていたんだ。翼という大きな片翼に対して、あたしというちっぽけな片翼。バランスなんか、つり合いなんか取れちゃいなかった…。だけど、それならあたしはこの大きな羽をもつ翼を少しでも助けてやりたい、傍で護ってやりたいと思っていたのに…、助けられたのはあたしだったなんて…そんなのないだろっ!なんで…どうしてあたしなんて護ったんだよ…。あたし1人じゃ飛べないんだ…。翼がいなきゃ、何もできないのはあたしの方だったのにっ!ちくしょう、うわあああああ!!」
元の世界の翼は奏に依存していたが、実際はどっちもどっちで奏も翼に依存していたのが判明したのであった。
翼「(…奏。私は奏の事をわかっていなかったのかも知れない。奏だって、私より少し年上なだけだったんだ。迷いも、嘆きも、あって当たり前なんだ…。ツヴァイウイングの頃、私は奏にずっと支えられていた。だから、今度は私が奏を支えたい。奏が寄りかかっても倒れないくらいには、強くなれたはずだから…)」
そこへ、紫龍と氷河が来た。
紫龍「あまり気負いすぎるな。いざとなれば俺達もいる」
氷河「お前にもしもの事があれば、奏は立ち直れなくなるからな」
翼「わかってる」
一方、奏はシミュレーターの場所に来ていた。
奏「…あたしが間違ってた。人のものを奪って簡単に強くなろうなんて…。男共の言う通り、やるならあたし自身の力を磨くしかない。強くならなきゃ、あたしはノイズに復讐できない。このガングニールはあたしが手に入れた、あたしの力なのにあたしがそれを疎かにしてた…。もう一度あたし自身を鍛え直してやる!」
訓練している所へ翼がやってきた。
翼「…奏、ちょっといい?」
奏「…なんだよ?」
翼「その、今度は私と一緒に訓練しない?」
奏「…同情なんていらねえんだよ」
翼「違う、同情なんかじゃない。私は、ただ奏の力に」
奏「いい加減、あたしとお前の世界のあたしを混同するな。あたしはお前のしってる奏じゃない」
翼「奏、それでもあなたは…」
そんな中、ノイズ警報が鳴った。
奏「出やがったか…!」
市街地
すぐに奏と翼は出撃した。そして、出撃先にはカルマノイズがいた。
奏「…やっぱり出やがった!カルマノイズめ!」
翼「奏、1人で戦っては!」
奏「うるさいっ!あたしは、こいつを倒すんだ!」
翼の制止も聞かずに奏は突っ込んだが、カルマノイズは軽々とかわした。そして、カウンターをかましてきた。
奏「避けられた!?なっ!?ぐうううっ!がっ…く…」
あっさりカウンターを受けて奏はダウンしてしまった。
響「奏さん!」
紫龍「無茶のし過ぎと焦り過ぎだ!」
翼「くっ、こうなってはやるしかっ!今度こそイグナイトで!」
響「了解です!イグナイトモジュール、抜剣!」
響達はイグナイトモジュールを発動させた。しかし、強烈な破壊衝動に呑まれそうになった。
星矢「どうした?」
翼「妙な違和感を感じた」
マリア「一瞬だけど、破壊衝動に呑まれそうになったわ。どうやらあなた達も同じみたいね…」
響「はい…こんな事は今までなかったのに…」
星矢「だったら、すぐに決着を着けるぞ!ゴールドカルマノイズの止めは響達に任せる!アトミックサンダーボルト!!」
紫龍「廬山昇龍覇!!」
氷河「オーロラエクスキューション!!」
黄金聖闘士となった星矢達の技を3連発受けてもゴールドカルマノイズは消滅しなかった。
星矢「今だ!」
響「はい、星矢さん!」
止めに響の渾身のパンチと翼の蒼ノ一閃、マリアのALOOF†KNIGHTをまともに受けたゴールドカルマノイズは消滅した。そして、取り巻きのカルマノイズは王虎とアイザックが止めを刺したのであった。
特異災害対策機動部二課
カルマノイズ消滅は本部でも確認された。
弦十郎「ノイズの消滅を確認した!お前達、やってくれたな!感謝する!」
朔也「イグナイト…凄い力ですね!」
あおい「ええ…これならまたカルマノイズが出てきても」
喜びのムードの中、了子は調べていた。
了子「(…イグナイト、暴走の力、それにカルマノイズ…。奏ちゃんの暴走未遂…、さらに先程の変身直後の不調…。もしかしたら色々とややこしくなるかもね~)」
他のメンバーには気付かない事に気付いた了子であった。
市街地
ノイズとの戦闘が終わり、一同は帰ろうとしていた。
星矢「響、翼、マリア、さっきのイグナイトの不調は…」
翼「よくわからない…」
マリア「…何なんでしょうね。この違和感は…。まるで誰かの破壊衝動が流れ込んで来ていたような…」
紫龍「その原因がわかるまではイグナイトは使わない方がいい」
氷河「ノイズと戦うのは装者だけでなく、聖闘士である俺達もいるのだからな」
響「…とにかく、戻りましょう」
翼「ああ。奏も…ほら、手を」
しかし、奏は手を取るのを拒否した。
奏「いらない…余計な事はするな」
マリア「あなたっ!」
翼「…いいんだ、マリア」
マリア「でも!」
翼「いいんだ。今は戻ろう」
先程の響達の不調の原因を王虎とアイザックも考えていた。
王虎「(奴等の口ぶりからすればああいった不調は今までなかったようだな…)」
アイザック「(とすれば、何か原因を作っているものがあるはず。それがわかれば…)」
セーフハウス
マリア達は先日の戦いの事を話していた。
翼「この前のイグナイトの不調だが…どう思う?」
マリア「…正直、何が原因か見当もつかないわ」
響「真っ黒な破壊衝動が急に湧いてきました。制御したイグナイトでこんな事なんてなかったのに…」
3人とも同じ異変を感じていた。そんな中、紫龍は考え込んでいた。
王虎「紫龍は心当たりがあるのか?」
紫龍「いや、俺も原因を考えていた所だ」
アイザック「通常のノイズとの戦いではそんな不具合は起きなかったようだけどな」
星矢「(響達の制御したイグナイトの不調の原因っと…)」
氷河「(3人とも同じだから個人の問題ではない事は間違いない。とすれば、外部に原因がある…)」
紫龍「(ノイズの群れとの戦いでは不調は起きなかった。とすれば…)」
まだ確証は持てなかったが、星矢達には響達のイグナイトの不調の原因を作り出している存在が何であるかの見当はついた。
特異災害対策機動部二課
その後、星矢達は二課本部に来た。
弦十郎「みんな、よくやってくれた。お陰でカルマノイズの3体を撃破する事ができた」
マリア「カルマノイズの…3体ですって?」
響「ほ、他にもいるんですか!?」
了子「今までに確認されている数だと、通常のカルマノイズがあと2体、ゴールドカルマノイズは3体かしらね~。あなた達が来る前に普通のカルマノイズを何体かアイザック君達が倒してくれたし、他にもいないとは言い切れないけど」
まだカルマノイズがいた事に響達は衝撃を受けた。
翼「合計5体…あれがか…(イグナイトの出力があればギリギリ戦う事はできるが、しかし…)」
弦十郎「次にカルマノイズがどこで現れるかは不明だが、奴等を倒せるのは装者を擁する我々と協力者の聖闘士だけだろう。この世界の者ではない君達に負担をかけるのは心苦しいが、それでも我々には君達の助けが必要だ。…よろしく頼む」
そんな時にノイズ警報が鳴った。
弦十郎「早速か。全く、息つく暇もないな…。お前達、頼んだぞ!」
星矢達は出撃した。そして、本部では星矢達がノイズを圧倒している様子を見ていた。
了子「本当にすごいわね、この子達ってば。おまけに、並行世界から来た星矢君達もアイザック君達に負けないぐらい強いし」
朔也「さらにあのイグナイトでしたっけ。奥の手まであるくらいですからね…」
了子「…う~ん、あれはちょ~っと危ないかも」
弦十郎「…どういう事だ、了子君?」
了子「まだ確証はないのだけれど…まぁ、心配が杞憂に終わる事を祈ってるわ」
了子もまた、持ち前の頭脳で分析し、イグナイトの不調の原因を推測していたのであった。
弦十郎「…そうか」
市街地
出撃した星矢達は次々とノイズを蹴散らしていた。
アイザック「ダイヤモンドダストォ!」
王虎「廬山龍飛翔!」
黄金聖闘士の星矢達とそれに匹敵する実力の持ち主の王虎とアイザックにはノイズは敵ではなかった。一方、装者の方は奏は未だに連携ができない状態であった。星矢達は何時間戦っても息一つ切れてなかったが、装者の方は流石に息が切れていた。
響「増援増援また増援…。もう、多すぎです!もう何時間も戦って息一つ切れていない星矢さん達が羨ましいですよ…」
マリア「そうね…たかがノイズとはいえ、これは骨が折れるわね!」
星矢「おまけに、やばい奴まで来たようだぜ」
星矢の言った通り、今度はゴールドカルマノイズが出現した。
響「ゴールドカルマノイズ!?」
マリア「お仲間がやられた事で仇討ちにでも来たのかしらね…」
響「…どうしますか?」
マリア「…使わざるを得ないでしょうね。イグナイトなしで戦える敵じゃないわ」
紫龍「イグナイトを使うのはよせ!この前のイグナイトの不調の原因は恐らく」
ノイズの大群を放っておけずに助けに行けない紫龍の制止も聞かず、響達はイグナイトモジュールを発動させた。ところが、この前と違って破壊衝動に呑まれそうになり、咄嗟に解除した。
響「危なかったぁ…」
マリア「ええ…とっさに解除できたからいいものの…、こんなの制御以前の問題ね…。くっ…だけど、力が…」
響「…私もほとんど動けません…」
翼「マリア、立花、大丈夫か!?」
2人はすぐに戦える状態ではなかった。
翼「…大丈夫だ。ここは私が」
奏「お前ら、2人とも休んでな。ここはあたしが抑えてやる」
翼「…奏?」
奏「ついて来い。あたし1人じゃ無理だ」
翼「ええ…もちろん!」
奏と力を合わせて翼はゴールドカルマノイズと戦った。その様子を星矢達は加わらずにノイズを蹴散らしながら横目で見ていた。2人の猛攻でカルマノイズを倒せたに見えたが…
翼「倒した…のか?」
奏「…いいや、まだだ!」
その通り、ゴールドカルマノイズは再生した。
翼「くっ…復元した!?」
奏「半端な攻撃じゃ、こいつらは復活してしまう…」
翼「厄介な相手だ…ならば、絶唱で!」
奏「やめろ!!」
絶唱というトラウマを思い出した奏の制止に翼は止まった。
奏「(あたしの前で二度と翼に絶唱なんて唄わせない…)こいつはあたしが」
そう言ってるうちにゴールドカルマノイズは姿を消してしまった。星矢達は周辺のノイズを全滅させてから来たため、間に合わなかった。
星矢「遅かったか…!」
氷河「だが、死者を出すよりはマシだ」
翼は奏の方を見た。
奏「…なんだよ?」
翼「(奏は、立花やマリアを護ってくれた…。それに、今絶唱を止めてくれたのは…私を思っての事なのだろうか…。やはり、奏は奏なんだ…)何でもない、ありがとう」
奏「ちっ、気味悪いからやめろ。…さっさと帰るぞ」
特異災害対策機動部二課
星矢達は本部に帰還した。
了子「あらあら、大変だったわね」
弦十郎「大丈夫なのか…響君、マリア君」
響「はい、何とか」
マリア「ええ、一応はね」
了子「…あなた達のイグナイトモジュールの事だけど、一度作った人に見てもらった方がいいわ」
翼「やはり、何か問題が…?」
了子「逆よ逆。多分、機能には何の問題もないと思うわ。けど、念のためにね~。推測だけど、問題はカルマ化したノイズの方にあるのよ」
紫龍「やはり、了子さんもイグナイトの不調の原因はカルマノイズにあると考えてましたか」
了子「紫龍君は気づいてたの?」
紫龍「了子さんと同じで推測でです」
マリア「(だから、あの時制止しようとしたのね…)」
了子「まあ詳しい事は確かめてからにしましょう。という事で、あなた達には一度戻った方がいいわ」
響「で、でも、私達が帰ったらノイズとの戦いが…」
アイザック「心配するな。俺と王虎がいるんだ。だから、お前達は一旦戻れ」
氷河「響達のアイザックの言う通りにするんだ」
一旦帰るのを躊躇っていた響達だった。
了子「機能に不安を抱えたまま戦うのは危険よ。一度はっきりさせてきたほうがいいわ」
翼「しかし…」
王虎「奏を1人にするのが嫌なのか?だが、安心しろ。俺達がついてる。だから、元の世界に戻ってその不調の原因を究明するんだ」
市街地
響達は一旦元の世界へ帰る事となったが、帰った直後にノイズが出現し、奏が出撃した。
奏「(そう、あたしはこれでいい…。これでいいんだ…)この世界はあたしの世界…あいつらに頼るなんて間違いだ。今までのように、あたし1人でやってやる!」
奏は1人でノイズを蹴散らしていった。
奏「(あたしは負けない…ノイズを全部駆逐するまで!もっと力を!)」
突然、後ろからの攻撃を受けてしまった。
奏「ぐううっ!?…ちっ、やってくれるじゃねーか!あたしの後ろに翼はもういないんだ。だから、あたしが」
そう言ってるうちに蒼ノ一閃でノイズが一掃された。
奏「この技は!?」
王虎とアイザックが翼を連れてきた。
翼「いないなんて悲しい事を言わないで、奏…。私はいつだって、奏の傍にいる!」
奏「…お前、どうして帰らなかったんだ?」
王虎「翼はどうしても奏を見捨てられないっていうから、残る事にしたのさ」
奏「…あたしはお前の知っている奏じゃない」
翼「わかってる。それでも、奏は奏だから」
アイザック「それに、俺と王虎はノイズ退治の助っ人として来ている。お前も少しは俺達を頼れ」
奏達はノイズを全滅させた。
翼「終わったね…。奏、お疲れ様」
奏「(…そうだ、あたしは元々1人じゃなかった。こんな風に翼に背中を預けて戦ってたんだ…)」
翼「…奏?どうしたの?」
奏「…なんでもない(でも…違う!あたしの翼は…あの時、あたしを庇って…)帰るぞ」
翼「ええ、戻りましょう」
奏「(…だから、違う。あたしの翼じゃない…。だから、あたしは絶対に受け入れない…。例え翼が翼であったとしても、あたしの翼はたった一人しかいないんだから…)」
S.O.N.G潜水艦
元の世界に帰還した響達はエルフナインにイグナイトモジュールの様子を見せてもらっていた。
エルフナイン「響さん、マリアさん。イグナイトモジュールについてですが…」
マリア「どうだったの?エルフナイン」
エルフナイン「結論から言うと、何の異常も見つかりませんでした…」
響「え?制御できなかったのに?」
エルフナイン「はい、すみません…」
紫龍「お前が気にする事はない。並行世界でカルマノイズと戦った際は精神面で大きな揺らぎはなかった。とすれば、やはりあの時の不調の原因はカルマノイズにあったようだ…」
エルフナイン「紫龍さんの推測が正しいかどうかは調べておきます。念のため、お二人はメディカルチェックを受ける事をお勧めします」
響「わかった。受けてくるよ」
そんな時、ノイズ警報が鳴った。
響「ノイズが…」
マリア「…メディカルチェックの前にやる事ができたわね」
弦十郎「待て、2人とも。今の状況で出撃は許可できない」
響「でも、師匠!」
クリス「そうそう、2人は留守番だ」
響「クリスちゃん」
紫龍「響、マリア、俺はカルマノイズがイグナイトに不調をきたした原因だと思っているが、お前達の体にも異変が起こっている可能性がある」
氷河「だから、きちんとメディカルチェックを受けろ」
マリア「紫龍、氷河…」
切歌「ここはあたし達の出番デース!」
調「だから、安心して」
マリア「調、切歌…」
瞬「ここは僕がクリス達と一緒に出撃するから、星矢達は休んでて」
星矢「頼むぜ、瞬、クリス!」
瞬「うん、クリス達が無茶しすぎないようにしておくよ」
クリス「そこは余計だ!」
瞬の態度にクリスは怒った。
マリア「調、切歌も気を付けて。瞬も言った通り、無理はしないようにね」
調「うん、大丈夫」
切歌「泥船に乗ったつもりで待ってるデス!」
調「切ちゃん、それだと沈んじゃう。正しくは大船」
切歌「おおう…間違ったデス。とにかく、安心して待っているデスよ」
瞬「それじゃあ、行くよ!」
瞬はクリス達を連れ、出撃した。
市街地
出撃した瞬達は出現したノイズを全滅させた。
クリス「…はっ、ざっとこんなもんだ。あたしの敵じゃねえーよ!」
そんな中、ネビュラチェーンが反応した。
瞬「安心するのは早いみたいだよ。このチェーンの反応はまた敵が現れた証拠だ!」
それと同時に弦十郎からの連絡も入った。
調「その鎖は攻撃と防御だけでなく、索敵にも使える…。とても便利な武器…」
切歌「あの鎖、あたし達も欲しいのデス」
攻撃と防御はおろか、索敵までできるネビュラチェーンの便利さに調と切歌はほしいと思うほど感心していた。
S.O.N.G潜水艦
新たに出たノイズの姿に弦十郎は驚いていた。
弦十郎「なんだ…このノイズは…。通常のノイズとは比べ物にならないエネルギー…」
そう、そのノイズこそ、ゴールドカルマノイズであった。
星矢「あれはゴールドカルマノイズだ!」
沙織「ゴールドカルマノイズ!?」
マリア「なぜ、あのノイズがこちらに…?」
エルフナイン「今のノイズはバビロニアの宝物庫を介さず、並行世界から流れてきています。ですから」
弦十郎「並行世界側の脅威が現れる可能性もある、という事か…。4人とも注意するんだ!」
市街地
ゴールドカルマノイズの出現に瞬達は身構えたが、とある奇妙な光景を目の当たりにした。
クリス「こいつかっ!って、おい…何だよこれは!」
調「人が、人を…襲ってる?」
そう、その光景は人が人を襲うという光景であった。
切歌「まるで地獄絵図デス…」
瞬「きっと、ゴールドカルマノイズが元凶だ!そいつを倒せば」
そう言ってると、ノイズが大量に出てきた。
切歌「ノイズが大量に出たデス…」
瞬「ノイズは僕に任せて、君達はゴールドカルマノイズの方へ向かうんだ!」
ノイズの群れの相手は瞬に任せ、クリス達はゴールドカルマノイズの方へ向かった。瞬のチェーン捌きでノイズの群れは一気に全滅した。その直後に通信が入った。
紫龍『瞬、3人にイグナイトモジュールが使うのをやめさせろ!』
瞬「紫龍、それってどういう」
そうしている間にもクリス達はゴールドカルマノイズ相手にイグナイトモジュールを使用した。結果は響達と同じで破壊衝動に呑まれそうになり、咄嗟に解除する羽目になった。
クリス「はぁ、はぁ…な、何だってんだよ…」
切歌「イグナイトが…おかしいのデス」
調「制御できない…」
結局、瞬が1人でゴールドカルマノイズと対峙する事となったが、ゴールドカルマノイズの様子がおかしかった。
S.O.N.G潜水艦
その様子は星矢達も見ていた。
星矢「やっぱり、紫龍の予想通りカルマノイズがイグナイトの不調の原因を作ってるようだな」
あおい「目標のエネルギーが急速に減衰しています!」
弦十郎「どういう事だっ!?」
朔也「目標、消失しました…」
急にゴールドカルマノイズが消えた事に弦十郎達は唖然としていた。
市街地
ゴールドカルマノイズが消えた事は瞬達も唖然としていた。
クリス「…消えた…?何なんだよ!わっけわかんねー!」
瞬「でも、助かった事に変わりはない。今は帰って今後の対策を立てよう」
S.O.N.G潜水艦
瞬達は帰還し、カルマノイズについてわかった事を聞いていた。
エルフナイン「先程のカルマ化したノイズ…、カルマノイズについてわかった事があります」
弦十郎「話してくれ」
エルフナイン「まず、あのノイズは正確にはまだこちらに出現していません」
クリス「現れたのに出現してないって意味わからねーっての」
エルフナイン「先程現れたのは鏡像のようなものと思ってください。一時的にこちらの世界へ干渉してきた幻のようなものです」
瞬「あれは幻に過ぎなかったのか…」
エルフナイン「はい。だから並行世界側からの揺り戻しで消えたと考えられます」
調「そうだったんだ…」
切歌「周りの人達が争っていたのは何なんデスか?」
エルフナイン「それはあのノイズの能力でしょう。あれは人へ破壊衝動を植え付ける呪いを持っているようです」
星矢「破壊衝動だって?」
紫龍「これで欠けていたピースがはまった!エルフナイン、響達のイグナイトの不調の原因はカルマノイズの破壊衝動が原因じゃないのか?」
マリア「あの流れ込んできた破壊衝動はそれに間違いないと思うわ」
エルフナイン「これで紫龍さんの推測が正しかった事が証明されたようです。イグナイトの不調はダインスレイフの呪いにカルマノイズの呪いが重なり、より強い破壊衝動を呼び起こしていたのが真相でしょう」
氷河「だから、響達はより強くなった破壊衝動に襲われたのか…」
エルフナイン「はい…あのノイズが相手の場合、イグナイトの使用は自殺行為です。イグナイトなしで戦うしかありません。それと、さっきのカルマノイズですが、このままだと遠からずこちらの世界に存在が確定してしまうかも知れません」
瞬「となれば、存在が確定すれば今度は本体が出てくるという事かな?」
エルフナイン「そうです」
切歌「そ、それってかなりのピンチじゃないデスか!」
エルフナイン「とにかく急いで並行世界側の異変を収めないと…」
星矢「…とっととカルマノイズを片付けなきゃならねえようだな」
響「そうですね、星矢さん…」
紫龍「それと、イグナイトなしでカルマノイズと戦わなければならない以上、対策を練ろう」
カルマノイズとの戦いの対策を練った後、星矢達は再び並行世界へ向かう事となった。
星矢「それじゃあ、行ってくるぜ」
エルフナイン「ごめんなさい。あの呪いについて上手く対処ができればよかったんですけど…」
紫龍「今更悔やんでも仕方ないぞ、エルフナイン。俺達は一刻も早くカルマノイズを倒さなければならない。それに、カルマノイズの秘密が判明してイグナイトなしで戦うためには今の所、あれしか決定打にならんからな」
マリア「星矢達もいるから、あとは通じるかどうか試すだけよ」
エルフナイン「ありがとうございます、紫龍さん。代わりと言っては何ですが、皆さんにお願いがあります」
氷河「どうした?」
エルフナイン「このチップを向こうの櫻井了子さんに渡してください。僕の方で分かった事をまとめておきました」
響「ありがとう、必ず渡すからね!」
エルフナイン「はい。よろしくお願いします」
星矢達は再び並行世界へ向かったのであった。
これで今回の話は終わりです。
今回はカルマノイズの秘密が明らかになるのを描きました。
次の話は奏のすれ違いや苦悩を描きます。