セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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44話 拳

特異災害対策機動部二課特異災害対策機動部二課

 

 響達と星矢達は合流した。

 

マリア「翼、カ・ディンギルの状況は!?」

 

翼「のっぴきならない状況だ!そっちは!?」

 

星矢「俺達はジークフリートの救援に来た神闘士と一緒にドルバル派の神闘士を倒してヒルダを助け出せたんだが…」

 

調「ドルバルに自爆装置を起動されて、逃げられてしまったの。今、ジークフリートさんが追ってるよ」

 

切歌「でも、二課の人達は英雄部隊が解放したデス!」

 

響「二課のみんなは無事なんですね!よかった!」

 

ヒルダ「皆さん、今は地上に出てドルバルを追わなければなりません!」

 

トール「そうでした、ヒルダ様!」

 

ハーゲン「ヒルダ様への謀反を企てた逆賊には死を!」

 

クリス「ドルバルがソロモンの杖を持ってるってんなら、さっさとぶっ倒さねえとな!」

 

紫龍「よし、脱出だ!トール、二課の風鳴司令を運んでくれないか?」

 

トール「力仕事なら、任せろ!」

 

マリア「いつ爆発が起こるかわからない、急ぐわよ!」

 

 一同は脱出を急いだのであった。

 

 

 

地上

 

 その頃、ドルバルは地上に出て大量のノイズを召喚していたが、そこへジークフリートが立ちはだかった。

 

ドルバル「私を追って一足先に来たか…」

 

ジークフリート「ドルバル、もう逃げ場はないぞ!」

 

ドルバル「だろうな。だが、仲間はそろそろ爆発に巻き込まれるであろう」

 

ジークフリート「いや、彼等はヒルダ様を助け出して必ず生きて戻ってくる、と俺は信じる!そしてドルバル、貴様はヒルダ様への謀反を企て、地上を支配しようとしたその大罪、死を以て償うがいい!!」

 

ドルバル「大罪?そんなものは私には存在しない。いや、地上の支配者とも言うべき私こそが正義なのだ!」

 

ジークフリート「貴様のような男を誰が正義だと認めるか!ドルバルこそが邪で巨大な悪そのもの!地上の支配者になるなどという誇大妄想など、この私が打ち砕いてくれるっ!!」

 

ドルバル「来い、ジークフリート!再びお前を叩き潰してやろう!」

 

 ジークフリートはドルバルとぶつかった。最初に戦った時はドルバルの神闘衣に仕込まれた赤いオーディーンサファイアから発せられる結界により、力を100分の1にされてても足も出ずに敗北したが、今回はヒルダから託された指輪によってその結界を無力化し、逆にドルバルを押していた。

 

ドルバル「何!?私自慢の100分の1にパワーダウンさせる結界が効いてないだと!?」

 

ジークフリート「当たり前だ!私は敗因だけでなく、その結界の無力化する方法も教えてもらった!紫龍は私に貴様を倒させるために危険を承知で二課に忍び込み、ヒルダ様からオーディーンの加護がある道具を授かり、私に託してくれた!だからこそ、私は貴様の結界を無力化し、本来の力で戦う事ができるのだ!!」

 

ドルバル「ぐおおおおっ!!」

 

 ジークフリートは完全にドルバルを圧倒し、遠くへ殴り飛ばし、その際に赤いオーディーンサファイアを破壊したのであった。ちょうどその時に星矢達も来たのであった。

 

ドルバル「仲間達まで無事に脱出できたとは…!」

 

ハーゲン「逆賊を抹殺するまでは俺達は決して死なんぞ!」

 

星矢「ジークフリートの奴、完全にドルバルを押してるぞ!」

 

紫龍「だが、油断は禁物だ。ドルバルもあの黒いオーディーンサファイアを持っているはず」

 

ドルバル「察しがいいな。この通り、私も黒いオーディーンサファイアを持っている。私の配下の神闘士に持たせた物とは比べ物にならない程、強力なものだぞ。今こそ、その力を思い知るがいい!」

 

 そう言ってドルバルは黒いオーディーンサファイアを取り出し、赤いオーディーンサファイアが埋め込まれていた箇所へ嵌め込んだ。

 

ドルバル「これで貴様らも、う、うおおおおおおおっ!!!」

 

 ロキ達と同じように黒いオーディーンサファイアを神闘衣に嵌めたドルバルは苦しみだした。

 

星矢「ドルバルもやっぱり制御できなかったか…!」

 

響「まるで…イグナイトモジュールみたい…!」

 

マリア「でも、あの様子を見てたらイグナイトの何千倍もタチが悪く感じるわ…!」

 

 そして、神闘衣も黒く染まってドルバルの苦しみも止まった。

 

ドルバル「ぬおおおおおっ!!」

 

 ドルバルのパンチをジークフリートはとっさに受け止めたが、そのパワーに受け止めても後ずさりしてしまう程だった。

 

切歌「なんてパワーなのデスか…!」

 

調「このままじゃ、ジークフリートさんはまた負けるかも…」

 

トール「何を言っている?ジークフリートは負けんぞ!」

 

ハーゲン「あの男は神闘士最強の男にして、ヒルダ様への忠誠心にも厚い男だ!俺達はジークフリートの勝利を信じる!」

 

響「だけど…」

 

ヒルダ「人にはどうしても譲れない想いや誇りがあります。それらを尊重せずに助けようとすれば、逆に助けにならなくなるのですよ」

 

星矢「響、ジークフリートは自分の手でドルバルを倒すと誓ったんだ」

 

紫龍「だからこそ、あいつに任せよう。そして、勝利を信じるんだ!」

 

ヒルダ「それに…、邪悪な気配がします」

 

 ヒルダの感じた邪悪な気配とは、カルマノイズの群れであった。

 

クリス「カルマノイズの群れだって!?」

 

翼「ただでさえノイズが大量にいるというのに、カルマノイズまで大量に出たら…!」

 

トール「お前達、カルマノイズとやらは俺達がやる!だから、お前達は普通のノイズと戦うんだ!」

 

ハーゲン「そこの天災科学者、お前に頼むのは俺の気が進まないが、命をかけてヒルダ様をお守りするのだぞ!」

 

ウェル「よろしい、救出した最重要人物を守り通す使命を持つ英雄たる僕と英雄部隊が命をかけてでもお守りしましょう!!」

 

 しっかり守ってくれるのは感謝しているものの、ウェルのテンションにヒルダは引いていた。一方、星矢達はカルマノイズの群れに向かっていき、装者達はノイズの群れに向かっていった。ジークフリートの方は理性が吹っ飛んだドルバルの猛攻で押されていた。

 

ジークフリート「黒いオーディーンサファイアの効果は予想以上だ…。これ程までに押されるとは…!」

 

ドルバル「うおおおおおおおっ!!」

 

ジークフリート「だが、力を100分の1にされて手も足も出なかった時に比べれば大した差ではない!ヒルダ様のためにも、私を助けてくれた星矢と紫龍、シンフォギア装者達のためにも、救援に来てくれたトールとハーゲンのためにも、私は絶対に期待に応えてドルバルを倒す!!」

 

 ドルバル打倒を後押ししてくれた星矢達と仲間の神闘士、そして主のヒルダの想いに応えるためにジークフリートは小宇宙を最大に燃やした。

 

ドルバル「うおおおおおおおっ!!」

 

ジークフリート「はあああああっ!!」

 

 ジークフリートとドルバルの戦いは熾烈を極めたが、仲間や主のために戦うジークフリートの方が優位であった。

 

ドルバル「ぬおおおおおおおおーっ!!」

 

ジークフリート「ドルバル、邪な野望と欲望に溺れ、挙句の果てには理性をなくして破壊本能だけで動くケダモノと化したか!貴様のそんな力など、ヒルダ様や仲間のために戦う私の力に及びはしない!」

 

 そう言ってジークフリートはドルバルを殴り飛ばした。

 

ドルバル「ぬうううううっ…!!」

 

ジークフリート「受けてみよ、ドルバル!これが私とヒルダ様、そして仲間達からの裁きの一撃だ!!ドラゴンブレーベストブリザードッ!!!」

 

 ドルバルの拳とジークフリートの拳がぶつかったが、ジークフリートの拳が押していた。

 

ドルバル「ぬうううううっ、ぬわああああああああああっ!!!!」

 

 そのままドルバルはジークフリートの拳をまともに受け、黒いオーディーンサファイアが破壊された後に絶命したのであった。その様子を遠くからベアトリーチェは見ていた。

 

ベアトリーチェ「あーあ、ドルバルも負けちゃった。あの種は黒い野望を養分に育ちそうだったのに、思ったよりも育たなかったわね。ま、もうここに用はないわ」

 

 ベアトリーチェはそのままこの世界を去った。そして、その衝撃でドルバルが持っていたソロモンの杖はウェルの方へ飛んできた。

 

ウェル「素晴らしいですよ!それに、ソロモンの杖も回収できました!」

 

 一方、装者達はあまりにも膨大なノイズに手間取っていた。

 

マリア「数が多すぎてキリがない!」

 

切歌「星矢達はカルマノイズの群れと戦ってて、あたし達の救援に行けないのデス…」

 

調「みんな、気を付けて!」

 

切歌「調、どうし…」

 

 なんと、響達の方にもカルマノイズが3体出現したのであった。

 

マリア「まさか…ここにもカルマノイズが3体!?」

 

調「もしかして、私達を襲いに来たんじゃ…」

 

翼「くっ…まさかこんな事態になるとは」

 

ウェル「みなさーん!神闘士がドルバルを倒し、この英雄ドクター・ウェルがソロモンの杖を無事回収しましたよ!」

 

切歌「やるじゃないデスか!」

 

マリア「ドクター!その杖でカルマノイズの制御は!?」

 

ウェル「カルマノイズ?ああ、それならこの僕が華麗に制御…」

 

 しかし、カルマノイズはソロモンの杖に反応しなかった。

 

ウェル「なっ!?制御できない!特異体にはコマンドが効かないのか!」

 

切歌「使えない奴デス!」

 

ウェル「酷い手のひら返し!?」

 

マリア「ドクター、杖を」

 

 今度はマリアがやってみたものの、やっぱり反応しなかった。

 

マリア「…本当ね、カルマノイズはコマンドを送っても無反応だわ」

 

調「ドクターの、ウソじゃなかったんだ…」

 

ウェル「そこまで信用されてないと流石の僕も傷つきますよ…?」

 

クリス「星矢達はカルマノイズの群れとの戦いで来れねえし、あたしらが戦うしかねーって事だよな…」

 

調「そんな…いくら装者が揃っていても、星矢さん達抜きであの数を一度になんて…」

 

翼「やるしかないだろう…」

 

弦十郎「すまん…俺も動く事ができれば…」

 

響「他に方法がないなら…この拳で!」

 

???「手段ならある」

 

 突然、鶴の一声をあげたのはフィーネであった。

 

翼「フィーネ!」

 

弦十郎「了子、君…」

 

フィーネ「この事態を収めたいなら、その杖を…ソロモンの杖を渡せ」

 

翼「渡すな、マリア!」

 

マリア「ええ…この事態の元凶なんでしょう」

 

フィーネ「他に手段はないぞ。指を咥えて滅びを見るか」

 

ウェル「今更信じられるわけがないでしょう!最初から裏切ってF.I.Sと組んでいたんですよ!」

 

調「私も今は…」

 

切歌「だって、ウソついて裏切ったんデス…よね?」

 

 話し声は星矢達にも聞こえていた。

 

星矢「やっぱりか…」

 

紫龍「だが、今の状況は…」

 

 カルマノイズの群れとの戦いで星矢達はフィーネに問い詰めている状況ではなかった。

 

フィーネ「人の言語で語ったとて、やはりムダか」

 

響「私は信じたいです。了子さんを」

 

弦十郎「頼む…彼女を信じてやってくれ…!」

 

マリア「だけど…」

 

翼「デュランダルを奪ったのは事実だというのに…!」

 

フィーネ「これだけは言える。私には収める手立てがある」

 

弦十郎「もう一度だけ…了子君を信じてやってくれないか…」

 

ヒルダ「私からもお願いします」

 

調「ヒルダさん…」

 

ヒルダ「アスガルドにも伝わっていた先史文明の巫女、フィーネを見たのは今回が初めてですが、今は緊急事態です。それに、私には今の彼女は嘘を言っていないと断言できます」

 

切歌「そ、そんな事言われてもデスよ…」

 

調「私は、私の知るフィーネとあなたが同じかわからない…」

 

ヒルダ「装者の皆さん、どうか、この場は彼女を信じてください」

 

響「ヒルダさん!」

 

マリア「(…フィーネを信用する事はできない。だけど、この最悪の状況を打開する術もない…)」

 

クリス「だったらあたしによこしやがれ!」

 

マリア「クリス…?」

 

クリス「信じられるのかよ!フィーネだぞ!渡せるわけないだろ…!こいつは上手い事言って、騙して、利用して…!」

 

響「大丈夫だよ、クリスちゃん」

 

クリス「何が大丈夫なんだよ…。私て、それでも解決しなかったら、こいつが嘘をついてたら…」

 

響「もう一度だけ、了子さんを信じてあげようよ」

 

クリス「あいつが何やらかすかわからねえんだぞ…。もし、今よりひどい事になったら…」

 

ヒルダ「その時は覚悟を決めましょう。とにかく、今は緊急事態です。このまま手をこまねいていては刻一刻と最悪の事態になってしまいます。どうか、彼女を信じてあげてください…!」

 

弦十郎「俺からも頼む…!」

 

響「師匠、ヒルダさん…」

 

 クリスの言う事態も考慮した上でヒルダは信用するように説得した。

 

翼「…雪音。ソロモンの杖を渡そう」

 

クリス「先輩まで…」

 

翼「私はただ、司令の言葉を信じたいだけだ」

 

マリア「ヒルダの言う通り、緊急事態である上、この世界でフィーネと過ごしてきた司令が言うのなら…」

 

調「…私は信じてみたい。一度はフィーネに救われたから」

 

切歌「調にそう言われると、信じられるかも知れないデス」

 

響「だからクリスちゃん…」

 

ウェル「正気ですか!?あなた達は!」

 

クリス「今更こいつを信じるなんて…!」

 

フィーネ「…あなたの判断に任せるわ」

 

クリス「…失敗したらただじゃおかねーからな!」

 

 爆発が刻一刻と迫っているため、フィーネはソロモンの杖を受け取った。

 

フィーネ「ありがとう…」

 

ウェル「狂ってるんですか!パッパラパーばかりか!?見ろ、あいつがソロモンの杖を」

 

 響達の世界のフィーネと同じようにフィーネはソロモンの杖を突き刺してノイズを吸収していき、更にはデュランダルまでも取り込んで黙示録の赤き竜、ヒウン・ベイバロンへと変貌を遂げた。

 

響「カ・ディンギルの暴走が止まった!」

 

ウェル「デュランダルを取り込み、カ・ディンギルから動力源を取り除いたというのですか!?」

 

 赤き竜はソロモンの杖で操作できず、装者達の方に現れた3体のカルマノイズを食べようとしたが…。

 

ヒルダ「フィーネ、そのノイズを取り込んではいけません!取りこんだら」

 

調「ヒルダさん?」

 

 ヒルダは咄嗟に警告したが、赤き竜はカルマノイズを食ったのであった。

 

翼「竜が、カルマノイズを…」

 

切歌「食ってる…デスか…。ぜ、全部まとめてごっくんしちゃったデス!

 

クリス「こいつ、このために…!?」

 

ウェル「なるほど、竜になったのはあの黒いノイズに対抗するためと言う事ですか…」

 

切歌「やったデス!」

 

ヒルダ「フィーネ、あなたは何をしたのかわかっているのですか!?すぐにあのノイズを吐き出しなさい!そうしなければ…!」

 

調「さっきからヒルダさん、何を焦ってるんだろう…?」

 

フィーネ『これでもう爆発の心配はない…』

 

弦十郎「了子君、やはり君は…!」

 

 ところが、赤き竜は苦しみだした。

 

切歌「と思ったらまた暴れ出したデスよ!?どうなってるデス!」

 

弦十郎「どうした!了子君!」

 

ヒルダ「ああっ、私の恐れていた事態が…!」

 

ウェル「あれは…変異体を取り込んだ事による影響か!さっき、あなたが警告したのは…」

 

ヒルダ「ドルバルの使っていた黒いオーディーンサファイアはあの黒いノイズを何百体も凝縮して作り上げたものです。なので、そのノイズを取り込めば、黒いオーディーンサファイアによって暴走したドルバルのようになるのは必然です」

 

調「だからさっき…」

 

切歌「食中毒を起こしたデスよ!」

 

 カルマノイズの呪いにより、赤き竜は一部が黒く染まり、暴走したのであった。

 

弦十郎「くっ…了子君…」

 

マリア「呪いの影響か…理性を失ってる!」

 

翼「星矢達はまだ来れる状況ではないが、立ち向かうほかあるまい!」

 

クリス「やれるかわかりゃしねえけど、やってやる!」

 

 赤き竜は理性を失い、暴走していた。

 

響「了子さん!」

 

クリス「フィーネ!ちっくしょう!あたしらの声が聞こえてねーのか!」

 

翼「来るぞ、よけろ!」

 

 赤き竜の攻撃を響達は咄嗟にかわした。

 

マリア「間一髪ね…」

 

響「聞いてください、了子さん!」

 

翼「立花、もう…」

 

マリア「…いえ、まだあの中で生きている可能性があるわ」

 

調「マリア?」

 

切歌「ほ、本当デスか!?」

 

マリア「ええ…クリスも覚えてるでしょ?前に会った別の立花響の事を…」

 

クリス「そうか!確かあのバカもカルマノイズを取り込んで…」

 

マリア「それでも無事だった。融合症例、つまり聖遺物の侵食がカルマノイズの呪いに抵抗していた…。今のフィーネはそれ以上の完全聖遺物との融合症例よ。可能性はゼロじゃない!」

 

弦十郎「…頼む!なら俺を…了子君の下へ!」

 

 ふらふらながらも、弦十郎は立ち上がった。

 

響「し、師匠!?」

 

翼「そんな状態で…」

 

弦十郎「少しだが動けるようにはなってきてる…。だがまだ本調子には程遠い…頼む!俺の声が届く所まで、彼女の目の前まで連れて行ってくれ!必ず…目を覚まさせて見せる!」

 

クリス「…オッサン、あんたフィーネの何なんだ?」

 

弦十郎「同僚で、飲み仲間で…家族だ!」

 

クリス「ちっ…わかったよ!一気に送ってやるから、振り落とされんじゃねーぞ!」

 

響「私が横で支えます!」

 

翼「なら、あの竜の外殻は…」

 

マリア「私達が打ち砕く!」

 

切歌「責任渋滞デスね」

 

調「切ちゃん、それどういう意味…?」

 

切歌「責任がたくさん詰まってる状態の事デス!」

 

弦十郎「恩に着る…」

 

クリス「特大の奴をくれてやらあああっ!ロックオン、アクティブ!フルバースト!」

 

 クリスはミサイルを放った。

 

響「師匠!いきますよ!」

 

弦十郎「ああ!まさかミサイルに乗る時が来るとは!」

 

 弦十郎は響と共にミサイルに乗った。赤き竜は撃ち落とそうとしたが…。

 

翼「させん!」

 

マリア「はあああっ!」

 

 翼とマリアは攻撃を仕掛けた。

 

切歌「ミサイルの邪魔はさせないデース!」

 

調「再生させる暇なんて与えない!」

 

 切歌と調も赤き竜に攻撃し、何とかミサイルは赤き竜の近くに来た。

 

響「抜けた!ここです!」

 

弦十郎「了子おおおおおっ!」

 

 弦十郎の声に赤き竜は動きが止まった。

 

ウェル「本当に動きが止まった…?」

 

弦十郎「俺の声を聞け、了子君!」

 

響「了子さん、聞こえますか!」

 

フィーネ『ガ…グ…げんジュウ、ろう……ぐ、ん…。ガアアーッ!はぁ、はぁ…』

 

クリス「届い、た…?」

 

フィーネ『ぐ、ぐ…はぁ、はぁ…。辛うじて、今は抑え込めているだけだ…!だ、あだ…このノイズの呪いは思った以上に強力だ…!私の意識があるうちに…竜の顎を抑えていられるうちに…止めを刺せ…!』

 

弦十郎「了子君…」

 

響「そんな事、できないですよ…!」

 

翼「お前は…、お前はどうしてこの土壇場で私達を助けようとする…!」

 

フィーネ『幾星霜の悲願と、繰り返してきた仮初めの命…。永遠の刹那の中の…幾億の会話、人との記憶、積み重ねられた時間…その狭間に生じた、ごく僅かな迷い…』

 

クリス「フィーネ、ずっと迷って…だったらなんで…!」

 

弦十郎「了子君…!」

 

フィーネ『もしかすると…私は…かつて黄金聖闘士だった頃のように正義の味方を気取りたかった…のかも知れないわね。その後、一時期を除いて数千年も悪者をやってきた私に言う資格があるかはわからないけど…』

 

マリア「正義を行う事に、資格など必要ないわ!」

 

フィーネ『ふ…。それに、私のアテナとペガサスへの怒りと憎しみを断ち切ってくれたあなたに借りを返さないと…ね』

 

響「それって…あの時の…」

 

 響はルナアタック事変の戦いを思い出していた。

 

調「あの時の、響さんへの…!でも、どうして?そのフィーネの記憶は、私達の世界の…」

 

フィーネ『あなたのお陰よ』

 

調「私の…?」

 

フィーネ『最初に出会った時、あなたに触れた事で別の世界のフィーネのかすかな残留思念が私に流れてきたわ…』

 

調「残留思念…?」

 

 調はフィーネが咄嗟に伏せさせた時の事を思い出していた。

 

フィーネ『ふふ、お陰でネフシュタンの侵食、融合症例についても知る事ができた。あの刹那の瞬間で得たのは、とても濃厚で甘美な…。そして、あなた達の世界での私の結末も…』

 

響「了子さん!私は了子さんに生きて」

 

フィーネ『う、くーっ!そろそろ、この呪いを押し留めるのも限界か…!さあ、今の…うちに…!所詮、私は過去の亡霊…今を生きるあなた達が今を護りなさい。私の事は、もういいから…!』

 

 遂にフィーネは破壊衝動を抑えられなくなった。

 

フィーネ『(意識が…これ以上、抑えられない…)』

 

響「了子さん!了子さん!」

 

翼「くっ…このままでは…!」

 

クリス「おい、返事しろ!呪いなんかに負けてんじゃねーよ!」

 

マリア「…彼女の想いを汲みましょう」

 

調「マリア!?でも…!」

 

マリア「このままではドルバルのように呪いに取り込まれて、見境なく人を襲う怪物に戻ってしまうわ!」

 

切歌「まだ星矢達は来れないし…、あたし達だけでやるしか…ないデスか?」

 

ウェル「ないのデスよ!!」

 

切歌「なっ!?」

 

ウェル「何を迷ってるんです!あれを倒せば英雄ですよ!」

 

調「ドクター…」

 

ウェル「皆さんがやらないなら、この僕がこの手で!英雄としてこの醜い竜に止めの一撃を!」

 

 しかし、ウェルは赤き竜に一蹴されたのであった。

 

ウェル「はっ!?なあああああっ!?」

 

赤き竜「ガアアアアアアッ!!」

 

 そして、赤き竜はあっさりと装者達を一蹴したのであった。

 

響達「あああああっ!!」

 

 次の一撃で装者達に止めを刺そうとした赤き竜であったが、そこへ星矢と紫龍が立ちはだかった。

 

響「星矢、さん…」

 

翼「遅いぞ…!」

 

星矢「遅くなってすまん、みんな!」

 

紫龍「あまりにもカルマノイズの数が多くて、手間取ってしまった。やっとジークフリート達だけで対処できる数になってきたから、駆け付けた」

 

クリス「こんな状況でヒーロー登場かよ…!」

 

マリア「こうなったら、あなた達に託すしかないわ…」

 

切歌「あたし達に代わって何とかしてほしいのデス…」

 

調「星矢さん、紫龍さん…、フィーネを…」

 

星矢「いつかはこうなると思ってたけど、やるしかないみたいだな…」

 

紫龍「行くぞ!」

 

弦十郎「うおおおおおおおっ!!」

 

 今度は星矢と紫龍が戦おうとしたが、弦十郎がビームを弾いた。

 

星矢「弦十郎!」

 

弦十郎「待たせたな…。やっと動けるようになった」

 

響「師匠…」

 

弦十郎「立てるか?」

 

響「な、何とか…」

 

弦十郎「よし、なら星矢と紫龍は装者達を護ってくれ」

 

星矢「弦十郎1人であいつと戦う気だな?」

 

弦十郎「ああ、こういう時に体を張るのが大人の役目だろう」

 

切歌「さっきまで痺れてたのデー!?」

 

弦十郎「おおおおおおっ!!」

 

 弦十郎はすさまじい闘気を放った。

 

切歌「デ、デース!?」

 

紫龍「小宇宙を燃やしているわけでもないのに、大気が震える程の闘気!」

 

翼「闘志がここまでの気迫を生み出しているのか!」

 

調「凄い…!」

 

弦十郎「もう体は問題ない。…だからここは俺に任せて、星矢と紫龍は装者達を頼む!」

 

星矢「わかった。言ったからには必ず勝てよ!」

 

響「師匠…了子さんをお願いします」

 

クリス「ここはオッサンに任せるしかねえみてーだな…」

 

弦十郎「ああ!」

 

 弦十郎は赤き竜と対峙した。

 

弦十郎「全く…手のかかる女だよ君は…。だがな、惚れた女1人も護れないで…何が男だ!」

 

 その時、弦十郎の拳に変化が起こった。

 

星矢「紫龍、弦十郎の拳が!」

 

紫龍「まるでギアの断片のようだ…!」

 

ウェル「これは一体、何が起きているんです!?」

 

翼「わからない…だが、これは間違いなく」

 

響「師匠の想いの力です!」

 

ウェル「つまりは…愛ですか!?」

 

マリア「そう、ここで愛!」

 

弦十郎「行くぞ、了子君!おおおおおおーっ!!」

 

 弦十郎は赤き竜と激突した。赤き竜は触手で攻撃したが、弦十郎は全てはっけいで弾いた。

 

弦十郎「今度はこっちの番だ!!」

 

 懐に飛び込んだ弦十郎は赤き竜に連打の拳を放ち、大きく後退させた。

 

星矢「すげえ、弦十郎は聖闘士でもないのにすげえ…!」

 

紫龍「もしも、小宇宙が扱えたら間違いなく、黄金聖闘士になれる…!」

 

 響達の防衛に専念しつつ、星矢と紫龍は弦十郎の戦いを見ていた。そして、弦十郎と赤き竜の戦いは熾烈を極めていたが、弦十郎が圧倒していた。。

 

弦十郎「うおおおおおっ!」

 

翼「司令の本気、これ程のものか!」

 

クリス「正真正銘、たった一人で圧倒してやがる…!」

 

響「流石は師匠です!」

 

弦十郎「了子君、聞こえるか!俺が生きている限り、勝手にいなくなる事は許さん!」

 

 ところが、特機装束に異変が起こった。

 

調「だけど、特機装束が薄れてきている…!」

 

切歌「時限式デスか!?」

 

ウェル「加えて負荷にも制限付き、もうとっくに限界は超えているはずです!」

 

マリア「司令はそれでも…」

 

ヒルダ「いいえ、機械で人の力や限界を完全に測定するのは不可能です。これこそ、あの人が起こした奇跡…!」

 

 ヒルダの言葉にカルマノイズを片付けて駆け付けた神闘士達も頷いたのであった。

 

弦十郎「お前は俺を殺すんだろ!『約束』を思い出せ!君が俺に殺されるんじゃない…君が俺を殺すんだろ!だったら出てこい!俺はここにいる!!」

 

 弦十郎の言葉に、フィーネは『約束』を思い出した。

 

フィーネ『(やく、そく…?)』

 

 赤き竜の様子に変化が生じた。

 

響「竜の様子が!?」

 

弦十郎「うおおおおおおおっ!!」

 

 弦十郎は拳で竜を砕いていた。

 

調「拳で…竜を砕いてる!?」

 

切歌「でももう、装束が消えそうデスよー!」

 

星矢「竜が砕けるのが先か、装束が消えるのが先か…!」

 

紫龍「後は司令次第だ…!」

 

マリア「まだよ、完全に消え去る前に」

 

翼「風鳴る一撃を!」

 

響「最速で最短でまっすぐに、一直線に!」

 

クリス「ぶちかましてやれえええっ!」

 

ヒルダ「大切な人を、助けるために!!」

 

弦十郎「うおおおおおおおっ!!」

 

 渾身の一撃で弦十郎はカルマノイズごと竜を打ち砕いたのであった。

 

フィーネ「全く、無茶ばかりするわね…あなたは…」

 

弦十郎「他人事のように…誰のせいでこんな苦労していると思ってるんだ?」

 

フィーネ「私の計画の邪魔ばかりする、本当に迷惑な人」

 

弦十郎「するさ。そういう約束だろう?」

 

フィーネ「ふふ、本当に…おかしな男…」

 

 そして、竜は消えたのであった。

 

ウェル「竜が消える…」

 

響「やった!さっすが師匠!」

 

フィーネ「また私の負けね…」

 

弦十郎「ああ、そうだな。帰ろう…俺達の二課に」

 

 こうして、今回の戦いは終わったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 星矢達は帰還し、響達は並行世界の弦十郎の事で話題になっていたが、星矢達の方は黒いオーディーンサファイアなどの話題となっていた。

 

氷河「何?黒いオーディーンサファイアだって?」

 

星矢「俺達はそれを見てきたんだ」

 

紫龍「しかも、あの黒いオーディーンサファイアは何百体ものカルマノイズを凝縮して作り上げた代物らしい」

 

瞬「何百体ものカルマノイズを凝縮だなんて…」

 

沙織「その並行世界のアスガルドの異変の首謀者であったドルバルだけでは到底作れない代物ですね」

 

星矢「(きっと、今回もベアトリーチェがドルバルと手を組んでいたに違いない…!)」

 

 更なる黒幕の存在を星矢は見抜いていたのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 同じ頃、ウェルはおいしい所を弦十郎達に持っていかれたために再び英雄になろうと目論んでいた。一方、フィーネの方は…。

 

フィーネ「(RN式回天特機装束…。自身に聖遺物を侵食させ、力に変えるなんてね。使いこなせる者などいないと踏んでいた機能、『Level2』を引き出すとは…。本来、起動エネルギーとしてのみ使用される『精神力』を拳に乗せて放出し、黒いノイズを消滅させた。黒いノイズは負のオーラの塊、そこのあの男の正のオーラをぶつけて相殺。人間離れした精神力がもたらした恩恵。相変わらず人の予測をことごとく壊す男。…そんな力に助けられるなんてね)」

 

 そこへ、弦十郎が来た。

 

弦十郎「精が出るな。どうだ、特機装束の稼働時間は延ばせそうか?」

 

フィーネ「無茶を言わないでちょうだい。ほぼ全壊のものを辛うじて修復、調整している最中よ。派手に暴れて、こんなに負荷をかけて…」

 

弦十郎「あまり悪目立ちする事をしないでくれと、防衛大臣にも釘を刺されたよ」

 

フィーネ「当然でしょ?他の事後処理は?」

 

弦十郎「アスガルドの長、ヒルダとの交渉で神闘士との協力関係を結ぶ事に成功した。後は政府の方で片づけるだろうよ。ただ、今回の件で米国F.I.Sの権限も当分は制限されるだろう」

 

フィーネ「そう。いつまで黙っていてくれるかしらね…」

 

弦十郎「さあな。なるべく長くこんな時間が続いてほしいが…、装者達と黄金聖闘士が帰った今、今後また同じような事が起きたらと思うとぞっとするよ」

 

フィーネ「ふふ、コーヒー飲むでしょ?」

 

弦十郎「…あ、ああ頂こう。いやに親切だな…」

 

フィーネ「一応、あなたは怪我人だからね。とはいっても、ついこの間まで集中治療を受けていた人間とはとても思えないけど…」

 

弦十郎「はは、丈夫なのが取り柄だからな」

 

フィーネ「それで済ますなんて、ほんとあなたらしいわ」

 

弦十郎「ふう…染み渡るな。だが、もう変な毒を入れるのはやめてくれよ」

 

フィーネ「あなたのために細かく調整した毒なのよ。致死性の毒を入れなかっただけでも感謝してほしいわね」

 

弦十郎「毒を入れられて感謝する奴なんていないだろう」

 

フィーネ「あなたはおかしな男だもの。私には理解し難いわ」

 

弦十郎「俺は単純な男のつもりだがね」

 

フィーネ「単純にして不可解、それ以上に難しいものはないものよ。だけど、あなたが今、何かに悩んでいるくらいはわかるわ」

 

弦十郎「…ずっと、君に謝りたいと思っていた」

 

フィーネ「一体何の事かしら?」

 

弦十郎「ネフシュタンとの融合…、あの時、俺がもっと早く到着していれば…。君をそんな体にしたのは俺の責任だ」

 

フィーネ「何かと思えば、そんな事。ネフシュタンとの融合は私自身の意思。バラルの呪詛を解き、統一言語のためなら、この身がどうなろうと大した事じゃないわ」

 

弦十郎「だが、君はもうその計画は諦めてくれたのだろう?」

 

フィーネ「何度も繰り返し言ってきたけれど、あの子達以上にあなたの甘さは大概ね。誰がそんな事言ったのかしら?」

 

弦十郎「な…、まさか…!」

 

フィーネ「何千年にわたる悲願を、たかが数年の想いが上回るわけないでしょ?…ほんの少しだけ、計画が先延びしただけよ。あなたの命もね。あの約束はまだ有効なんだから。でも、しばらくは安心していいわ。流石に重傷を負ってまで私を助けてくれた相手をすぐ殺そうとは思わないから」

 

弦十郎「全く、本当に懲りないな、君は…」

 

フィーネ「あの子から、諦めない事の意味を改めて知らされたもの」

 

弦十郎「とんだ置き土産をしていってくれたものだ」

 

フィーネ「諦めの悪さはあなたもさほど変わらないと思うけれど?」

 

弦十郎「それとこれとは…!」

 

フィーネ「まあ、せいぜい私の事をしっかり見張ってる事ね」

 

弦十郎「…そうだな。しっかりと見張っている事にするよ」




これで今回の話は終わりです。
今回はジークフリートとドルバルの決着とカルマノイズを取り込んで暴走した赤き竜を止めてフィーネを助けるべく、大人として、漢としての意地を弦十郎が見せる内容となっております。
次の話は雪上のクリスマス編で、並行世界に行くわけではなく、息抜きのような話となっており、そのままXD本編通りになぞるのも面白くないので、奏と未来も出てきます。このため、星矢達の出番は必然的に少なくなります。

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