セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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雪上のクリスマス編
45話 雪上訓練


S.O.N.G潜水艦

 

 赤き竜との戦い以来、ギャラルホルンのアラートはなく、時折錬金術師によるアルカノイズ出現はあれど、装者達や聖闘士は平和な日々を過ごしていた。そして、待ちに待ったクリスマスが訪れようとしていた。

 

星矢「弦十郎、俺達を呼びだして何の用だ?」

 

弦十郎「ちょっと装者達の訓練の準備があってな、星矢達には手伝いをしてほしい」

 

瞬「どういった事をすればいいんですか?」

 

沙織「それは訓練の場所となる雪山で機材等を運んでほしいのです。あなた達4人以外にも、並行世界の黄金聖闘士も何人かその手伝いに来ます」

 

紫龍「雪山か…」

 

氷河「雪山は北国育ちの俺の独壇場だ」

 

 そんな中、アルデバランとカミュが来た。

 

星矢「アルデバラン!」

 

氷河「カミュ!」

 

アルデバラン「俺達も機材運びの手伝いで来たぞ」

 

カミュ「人選の結果、力持ちのアルデバランと雪山に一番慣れている私が選ばれた」

 

瞬「あの…聖闘士が機材運びをするのは…」

 

弦十郎「聖闘士は私闘はダメだが、こういった手伝いぐらいなら教皇でもアテナでも咎めはしないだろうさ。そのアテナ当人である沙織お嬢様もそのはずですね?」

 

沙織「はい。こういった事なら、咎めはしません。それに、今回の機材運びを頑張ったらご褒美もありますよ」

 

紫龍「ご褒美か…」

 

星矢「そのご褒美が何だか知らねえが、その機材運びをやってみようぜ!」

 

 

 

雪山

 

 そして、機材運びが行われた。

 

朔也「聖闘士がいたらかなりはかどりますね」

 

あおい「ええ。生身でも装者より力も速さも遥かに上で、黄金聖闘士1人で大勢のスタッフの力仕事をこなしていますよ」

 

慎次「しかも、黄金聖闘士とそれに匹敵する聖闘士が6人います。お陰で、予定の作業が大幅に早く進んでおります」

 

朔也「けど…防寒具なしで大丈夫なのか?」

 

氷河「俺達は全員平気さ」

 

カミュ「シベリアの方がもっと寒いから、この辺の寒さはむしろより心地よく感じる」

 

アルデバラン「しかし、この機材は何のためのものだろうか?」

 

慎次「それは秘密です。では皆さん、準備をお願いしますね」

 

 寒さも軽装で平気な聖闘士に一同は感心していたのであった。

 

 

 

マンション

 

 一方、装者一同は…。

 

切歌「ふんふんふ~ん♪ふんふんふ~ん♪ふんふ~ふ~ふふ~♪」

 

クリス「何だよ、ご機嫌じゃねーか。どうしたんだ?」

 

切歌「だってもうすぐクリスマスデスよ?これが盛り上がらずにいられるデスか?いや、いられるわけないデス!」

 

調「切ちゃん、テンション高すぎ…。でも、気持ちはわかる」

 

響「街もすっかりクリスマスムード一色だもんねえ。そりゃあ、誰だってテンションあがるよ~!」

 

マリア「ふふ。まあ、そうかもね」

 

翼「なるほど。どうも最近落ち着きがないと思ったら、そういう事か」

 

マリア「えっ、私まで?嘘でしょう?」

 

翼「ふっ…自覚なしか」

 

切歌「今年はいっぱい、よい事したデス!S.O.N.Gの任務で人助け!だから、今年こそきっと…。サンタクロースも来てくれるデス!」

 

クリス「サンタ」

 

翼「クロース…?」

 

切歌「デスデス!今までサンタクロースに会えなかったデスけど、これだけよい事をたくさんした今年こそ、絶対会えるデス!」

 

翼「暁は…なんというか、純粋なんだな」

 

マリア「それが切歌のいい所でもあるんだけど…」

 

クリス「サンタクロースを信じてるのか?可愛いとこあるじゃねーか」

 

切歌「信じてるって…え?どういう事デスか?あ、クリス先輩、普段からいい事あんまりしてないんデスね?ちゃんといい子でないと、来てくれないデス。だから、今年は諦めて来年はもっといい事するデス」

 

クリス「なんであたしが上から励まされてんだ…。あのなぁ、サンタなんてもんはいな…」

 

響「ストーップ、そこまで!」

 

クリス「な、何だよ!」

 

響「(切歌ちゃんは信じてるんだから、いないって言ったらショック受けちゃうよ?)」

 

クリス「(だからってあのままって訳にもいかないだろ?後で恥かくのはあいつだぞ?)」

 

響「(それはそれ、これはこれだよ!)」

 

クリス「(応えになってねーよ!)」

 

切歌「…?なんデスかね。なんか変な空気が流れている気がするデス」

 

調「あ、あのね…切ちゃん…」

 

マリア「調…言いにくいなら私が…」

 

調「マリア…ううん、私が後で伝えるから…」

 

マリア「そう…強くなったわね、調…」

 

切歌「ああ、楽しみデスね。クリスマスまであと少し。サンタクロースはどんなプレゼントくれるんデスかね」

 

調「あの、切ちゃん…サンタクロースは…」

 

切歌「なんデスか?あ、大丈夫デスよ!調もあたしと同じかそれ以上にいい子だったから、絶対に来てくれるデス!」

 

調「…あのね、切ちゃん。サンタクロースは、いないんだよ…」

 

切歌「………へ?」

 

 現実を知ってしまい、切歌はショックを受けた。

 

切歌「(その日、あたしはサンタクロースが存在しないと初めて知ったデス…)」

 

 

 

雪山

 

 そして訓練当日…。

 

切歌「この世の終わりデス…夢も希望もないデス…」

 

未来「切歌ちゃん、この前の事がよっぽどショックだったみたい…」

 

クリス「おい、そろそろ立ち直れって。サンタクロースの事聞いてショックなのはわかるけどよ」

 

響「そうだよ!サンタはいなくても私達にはパーティーがある!」

 

切歌「……パーティー…?」

 

未来「そ、そうだね!この訓練が終わったら、S.O.N.G持ちでパーティーよ!きっとおいしいものもたくさんあると思うよ!」

 

切歌「ごちそう…そうデスよね!サンタクロース以外にもクリスマスには楽しみがたくさんあるデス!」

 

響「よーし!それじゃ、パーティーのためにこの訓練を!」

 

切歌「…そういえば何で雪山にいるんデスか!?ここで訓練って何の事デス!?おまけに、未来さんと奏さんまで参加してるデスし…!」

 

クリス「お前、ほとんど放心状態で聞いてなかったもんな…」

 

響「S.O.N.Gの特別訓練だよ。なんか師匠が張りきっちゃって!この雪山で現れる敵を倒して点数を稼ぐんだよ」

 

未来「後、補足するとチーム戦だよ。私と響とクリスと切歌ちゃんの4人チームよ」

 

切歌「デデデデース!?どうしてよりにもよって、クリスマスにこんな山奥に来なきゃならないデスか!」

 

クリス「あたしだってこんな寒いとこ、きたくねーよ…」

 

響「あ、狐がいる!ねえねえ、ほらそっち!」

 

未来「確かに狐がいるね!」

 

 響はいつものペースであった。

 

切歌「なんで響さんはこんな時でも楽しそうなんデスかね…?」

 

響「まあ、それはそれ、これはこれだよ!」

 

未来「こういった所へは来る機会もほとんどないから、響は楽しんでいるんだよ」

 

切歌「ポジティブすぎるデス…」

 

クリス「しっ…見つけたぞ…」

 

響「どこどこ?」

 

未来「見つけたみたいね」

 

クリス「行くぞ、3人とも。音を立てるなよ?」

 

 一同はノイズを発見した。

 

切歌「よし、まだ気づかれてないデスね」

 

クリス「それじゃ、早速倒して点数ゲットだ!」

 

響「でもあれ、あんまり得点高そうじゃないね」

 

未来「響、例え点数が高くなくてもコツコツ倒すのも大事なんだよ」

 

クリス「あ~、まともな奴が1人いるだけで助かるよ…」

 

未来「響、切歌ちゃん、私とクリスの開幕射撃に合わせて切り込んで!」

 

切歌「了解デース!」

 

響「任せておいて」

 

クリス「行くぞ!」

 

 クリスと未来は遠距離から攻撃した。

 

クリス「今だ、突っ込め!」

 

 切歌と響は突っ込んでいき、ノイズを倒したのであった。

 

切歌「これで全部片付いたデス!」

 

クリス「どうだ!」

 

エルフナイン『Aチーム、ただいまの戦闘で5点獲得です』

 

響「5点かあ…やっぱり低かったね」

 

切歌「うう、さっきからこんなのばっかりデス…。クリアまであと何点デスか?」

 

エルフナイン『あと…50点ですね』

 

切歌「デース!?」

 

響「えーっ!今のと同じだったらあと10回もやらないといけないの?」

 

クリス「なんだよ。珍しく計算あってるじゃねーか」

 

響「もう、流石にそれくらいはできるよー…」

 

クリス「いや、皮肉でも言ってないとやってらんなくてよ」

 

切歌「何だかバランス調整失敗したRPGの経験値稼ぎを延々やってる気になってきたデスよ…」

 

響「ほんと、終わりが見えないね」

 

クリス「一体誰だ、こんなの考えた奴は…」

 

 

 

回想

 

 それは、訓練に行く前の日の事だった。

 

弦十郎「全員揃ったようだな。さて、もうすぐクリスマスだ。楽しみにしている者もきっと多い事だろう」

 

切歌「…サンタクロース…いない…デス…」

 

調「切ちゃん、しっかり…」

 

弦十郎「だが、その前に諸君のために特別な訓練を用意した!」

 

翼「防人の剣として」

 

???「なあ、あたしもその訓練に混ぜてくれないか?」

 

 突然、割り込んできた声の主は並行世界の奏であった。奏はカルマノイズの事件終結後、しばしば翼達の世界に遊びに来るようになっていたのであった。自身が不在の間のノイズ退治はアイザックと王虎に任せて。

 

翼「奏!」

 

奏「なんか面白そうな訓練を企画してるそうだな。あたしも混ぜてくれないか?」

 

弦十郎「君の世界の俺に言わなくていいのか?それに、奏不在時にそっちの世界にノイズが現れたら」

 

奏「後でその事はあたしの世界のダンナに言っておくし、あたしが不在の時はアイザックと王虎にノイズ退治を頼んどくよ」

 

マリア「そこは抜かりないようね」

 

 奏は響達を見回したが、偶然未来と視線が合った。

 

奏「お前、確か名前は未来って言ってたな。なーんかその訓練に参加したさそうな目をしてるな」

 

未来「そ、それは奏さんの見間違いじゃ…」

 

奏「もしかしてお前、装者なんだろ?」

 

 図星を突かれ、未来は言い返せなかった。

 

弦十郎「なっ!?未来君が装者だと奏が見抜いたとは…!」

 

奏「そいつの本音が見え見えの目を見ればわかるさ。ダンナ、こいつは本当に装者なのか?」

 

弦十郎「…見抜かれたなら仕方ない…!」

 

 弦十郎は奏に未来の事情を説明した。

 

奏「(神獣鏡?)ふーん、まだ正式な装者じゃないから並行世界への出撃はできないのか。だったら、そいつも訓練に参加させてくれないか?」

 

未来「えっ!?わ、私はそういう事は…」

 

奏「並行世界への出撃はダメでも訓練ぐらいならいいだろ?ダンナ。それにこいつ、なーんかストレスがたまると明後日の方向へ暴走しそうな感じだしさ、ストレス発散も兼ねていいだろ?あたしと一緒に参加すれば、人数もちょうど半分にチーム分けする事もできるし」

 

弦十郎「やれやれ、今回は奏に一本取られたな。ならば奏の言う通り、未来君も訓練に参加させよう」

 

未来「奏さん…、ありがとうございます」

 

奏「やっぱり本音は参加したかったんだ」

 

響「未来と奏さんも参加するんだ…。それで、どんな風に特別なんですか?」

 

弦十郎「この時期でないと経験できない特別な舞台で行われる、ゲーム感覚の訓練だ。きっと楽しんでもらえる事だろう」

 

マリア「そうかしら。何だか厄介な事になりそうだけど…」

 

クリス「あたしもそっちに同感だ…」

 

奏「でも、なんだか面白そうなものになるんじゃないか?」

 

弦十郎「安心しろ!今回の訓練はご褒美付きだ!存分にやる気を出してくれ!」

 

響「ご褒美!?何だろう?美味しい物がいいなぁ…」

 

翼「実に立花らしい発想だな。だが、褒賞の事を考えるのは少々気が早いであろう。それで司令、訓練の内容というのは?」

 

弦十郎「それはだな」

 

響「それは…?」

 

弦十郎「雪上訓練だ!」

 

奏「雪の上での訓練かぁ…」

 

響「えっ?それってハッコーダサンとかそういう…」

 

クリス「シャレになってない例えはやめろ!」

 

 クリスは響に拳骨した。

 

響「あいたっ!?」

 

マリア「もっと具体的な内容を教えてもらえるかしら?」

 

エルフナイン「はい。皆さんには2チームに分かれて、S.O.N.Gが用意した雪山を捜索、敵を発見次第、撃破してもらいます」

 

マリア「サーチ&デストロイ…索敵殲滅作戦って事ね」

 

弦十郎「そういう事だ。だが、それだけではない」

 

エルフナイン「敵には種類に応じた得点が設定されており、チームの得点が一定に達したら、その日の訓練は終了です」

 

マリア「その日の訓練は…?」

 

翼「確認したいのだが、敵というのは…?」

 

エルフナイン「ノイズ、アルカ・ノイズの事です」

 

弦十郎「これは実戦ではなく、シミュレータ訓練の一環だ」

 

エルフナイン「山全体にシミュレータのネットワークを張り巡らす事で、実地でのシミュレーション戦闘を実現しました」

 

マリア「随分と大がかりな仕掛けね…」

 

エルフナイン「はい。恐らく、皆さんが考えるより多くの予算と人手がかかっていると思います」

 

弦十郎「(人手の方は星矢達に手伝わせたから、あいつらが思ってる以上に少ないけどな)」

 

クリス「もうちょっと別の所に使ってくれよな…」

 

弦十郎「今後はこのような地形での戦闘も予想されるからな。決して無駄にはならないだろう」

 

翼「それで、チーム分けはどうするんですか?」

 

弦十郎「奏や未来君も含め、こちらでバランスを考慮の上、決定させてもらった」

 

エルフナイン「響さん・クリスさん・切歌さん・未来さんをAチーム、翼さん・マリアさん・調さん・奏さんをBチームとしました」

 

調「切ちゃんと違うチーム…」

 

切歌「…いない……デス…」

 

調「こんな状態の切ちゃんを放っておくわけには…」

 

響「…だーいじょうぶ!私が何とかするから!」

 

クリス「あたしも後輩の面倒くらい見てやるよ」

 

未来「だから、安心して」

 

調「響さん、クリス先輩、未来さん…」

 

マリア「…切歌の事は任せましょう。きっと大丈夫だから。ね?」

 

調「…うん…3人とも、切ちゃんをよろしくお願いします」

 

 

 

クリス「…ま、元気になったよな」

 

響「そうだね。出てくるのが訓練への驚きと不満だらけだけど…」

 

切歌「雪上訓練だか何だか知らないけど、こんなの横暴デス!労働基準敢闘賞を与えたいくらいデス!」

 

未来「それを言うなら、労働基準法違反じゃないかな…?」

 

切歌「それデス、それ!」

 

クリス「ふ~、突っ込む手間が多少は省けて助かるぞ…。お前がいなかったら、あのバカまで便乗してボケるからな」

 

響「ひどいよ~、クリスちゃん!」

 

クリス「もういいから、さっさと終わらせるぞ!」

 

 一方、Bチームは…。

 

マリア「くっ、1匹逃がしたわ!」

 

翼「任せておけ!はあああっ!」

 

 マリアが取り逃がしたノイズを翼が倒したのであった。

 

調「…お見事」

 

奏「この辺の敵は殲滅できたな」

 

翼「エルフナイン。今回のポイントは?」

 

エルフナイン『今回の敵グループの得点は合計で8点です』

 

調「Aチームと比べてどう?」

 

エルフナイン『今の所、調さん達Bチームの方が順調なペースで得点を稼いでいますね』

 

マリア「それは…主に翼のお陰ね。脚のブースターが雪上でも機動力を担保してくれているわ」

 

調「それに引き換え、私の車輪は雪が嵌まって、半分の速度も出てない…」

 

奏「それはあたしやマリアも同じさ。雪の上での戦闘なんて今までやった事もないし、動きにくいったらありゃしない」

 

マリア「ええ、そのための訓練なんだろうけど」

 

翼「この程度で音を上げるとは、3人とも情けないぞ」

 

マリア「もう、あなたちょっとズルくないかしら?」

 

調「雪は大敵…」

 

翼「すまない、軽口のつもりだったのだが」

 

奏「でも、こんな時でも弱音を吐かない翼は偉いな。あたしらは雪でまともに動けないから、射程が長めの攻撃でカバーするしかねえな」

 

調「そうだね…」

 

マリア「…切歌が心配?」

 

調「うん…切ちゃん、元気出てるといいけど…」

 

マリア「エルフナイン、切歌はどうなのかしら?訓練に集中できてる?」

 

エルフナイン『えっと…はい。今は訓練に集中できているようです』

 

翼「よかったな」

 

調「はい…安心しました」

 

奏「(あたしにはなーんか、嫌な予感がするけどな…)」

 

マリア「さて、それじゃこちらも訓練に集中しないとね」

 

調「うん」

 

 そうしている間にノイズの群れと遭遇した。

 

翼「…そうこうしている間に次の群れだな」

 

マリア「探す手間が省けて助かったわ」

 

調「うん。もっとリードを広げておこう」

 

奏「そんじゃ、行くぞ!」

 

 Bチームは遭遇したノイズの群れに向かっていった。一方、Aチームは…。

 

クリス「七面鳥撃ちだ!」

 

 クリスは得意の射撃でノイズを蹴散らしていった。

 

未来「逃した敵は私に任せて!」

 

 神獣鏡の浮遊機能で未来は翼以上に雪上でも自由に動く事ができ、クリスが逃した敵を片付けていった。

 

響「未来ってば凄い…!」

 

切歌「通常時で飛行可能なんてずるいデス…」

 

クリス「今度は何点だ!?」

 

エルフナイン「Aチーム、3点です」

 

クリス「ちくしょう、さっきより下がってるじゃねーか!」

 

切歌「手強くない敵じゃ、こんなもんデスよ…」

 

響「向こうのチームはどうなの?」

 

エルフナイン『現時点では、Bチームの方が16点ほどリードしています』

 

切歌「マジデスか…倍近く開いてるデース…」

 

クリス「このしみったれた点数じゃ当然か…」

 

響「私達も負けてられないね!もっと頑張ろう!」

 

切歌「とはいっても…ギアを纏ってても寒いデスし、雪に脚をとられて滅茶苦茶戦いにくいデスよ…」

 

響「まあ、確かに膝まで埋まっちゃうような柔らかくて深い雪の上だから、難しいよね…。でも、未来のギアは普段でも飛行可能だから、雪の上でも機敏に動けるよ」

 

未来「そうだね。響の言う通り、神獣鏡には今、活用している飛行能力や聖遺物の分解といった、他のギアにはない強みもあるね」

 

クリス「けどよ、あたしらは動きづらいままだ。だったら、あたしが山の上から全部狙撃した方が早いだろ?ちょうど飛行できる奴がいる事だし」

 

未来「クリス、それだと訓練にならないと思うよ」

 

クリス「そんな事言ってる場合か?そんなルールないだろ」

 

響「そうだけど…」

 

クリス「じゃあどうするんだよ?根性論でなく対案上げてみろって」

 

未来「対案…」

 

響「うーん、あっ!?あるよ!ギアを適応させればいいんだよ!名付けて『クリスマス型』!」

 

切歌「クリスマス…型デスと!?」

 

クリス「そこは雪山型じゃねーのかよ…」

 

響「ギアの変化には強い想いが必要だってエルフナインちゃんも言ってたから、雪山への想いじゃ足りないかなって」

 

未来「私はギアの変化自体やった事はないけど、雪山への想いは漠然としてて響の言う通りにした方がいいと思うよ」

 

クリス「いや、それはそうだけどよ…流石に無理じゃないか?」

 

切歌「…やってみたいデス!」

 

クリス「おい、マジか…」

 

切歌「サンタクロースはいない…でもあたしの胸にはまだクリスマスへの熱い想いが溢れているデス!だから…この想いを歌に乗せて試してみるデスよ!」

 

響「おおっ、切歌ちゃんいいね!それじゃやってみよう!」

 

 4人は一旦、ギアの装着を解除した。

 

響「行くよ、準備はいい!?」

 

未来「私はいいよ!」

 

切歌「心にクリスマスを強く思い描くデス…」

 

クリス「一回だけだからな、何度もは試さないぞ?」

 

響「(クリスマス…みんなで楽しみたい、未来を喜ばせたい、心に残るような楽しい日をみんなで…)」

 

未来「(1年に1度だけのクリスマスだから、響やみんなと一緒にプレゼントなどで思う存分に楽しみたい…)」

 

クリス「(よくわかんねーけど、こいつらと楽しめるなら、クリスマスってのも悪くねーよな…)」

 

切歌「(ごちそう、プレゼント、パーティー、サンタクロース以外にも色々あるデス!だから楽しみなのは変わらないデス)」

 

 4人はそれぞれクリスマスを強く思い描きながら聖詠を唱えた。しかし、切歌の方は変化がなかった。

 

切歌「…やっぱりそううまくはいかないもんデスね…。仕方ないデス。このまま頑張るしか…」

 

 しかし、響達の方を見て切歌は驚愕した。

 

切歌「って…。なななな、何デスとーッ!?」

 

 なんと、響達3人はギアが変化していたのであった。

 

響「できちゃった…クリスマス型のギアになってるよ!」

 

未来「ほんとだ!クリスマス型になってる!」

 

響「未来もちゃんと変化してるよ!」

 

未来「私もクリスマス型に変化できてうれしいよ!」

 

クリス「お前ら…マジか!?変身できたのかよ!?」

 

響「そういうクリスちゃんだって変わってるよ?」

 

クリス「本当だ、あたしも変わってやがる!?」

 

未来「クリスもクリスマスが楽しみだったんだね?」

 

クリス「まあ今回はたまたまって気もするけどよ…」

 

切歌「ちょちょちょちょ!ちょっと待つデス!なんでデスか!?どうしてあたしだけ!3人とも何を考えて変身したんデスか!?」

 

クリス「何って…パーティー楽しみだなーって感じだな…」

 

響「あ、やっぱり楽しみだったんだ!私もみんなでパーティー楽しみだなーって」

 

切歌「あたしだって同じデス!パーティー、ごちそう、プレゼント交換…楽しみなのに…、この世には神も仏もいないデスか!?」

 

未来「(確かに切歌ちゃんだけ変化がないのは変ね。何か、思い描き方を間違ってるんじゃないかな…?)」

 

クリス「神はともかく仏はクリスマスに関係ないだろ…」

 

響「それはそうとして、このギアの性能を試してみようよ!」

 

未来「そうだね。どういった機能があるのかな?」

 

切歌「待つデス!絶対納得いかないデーース!」

 

 

 

 切歌の嘆きは木霊し、翼達Bチームにも聞こえていた。

 

調「今のは…切ちゃんの声?」

 

翼「全く、暁達はいったい何をしているのだ」

 

奏「ま、あっちはあっちで楽しくやれてるんじゃねえのか?」

 

調「奏さんの言った通りみたいで切ちゃん、やっぱり元気が戻ったみたい」

 

マリア「まあ、元気は元気みたいね…」

 

翼「だがそうなると、むこうのチームは暴走を抑える人間が小日向1人だけなのが心配だな…」

 

マリア「司令がどういう基準でチームを分けたのかを聞きたい所だけど」

 

奏「あたしの考えだと、面白そうだという基準でダンナは分けたと思う」

 

翼「奏はそう思ってるんだ…。だが、一度始まれば勝負は勝負だ。このまま先行して逃げ切りと行こう」

 

エルフナイン『そううまくはいかないかも知れませんよ』

 

調「どういう事?」

 

エルフナイン『Aチームの得点が急速に上昇、Bチームに迫りつつあります』

 

翼「なんだと?さっきまでは充分な差があったはずなのに」

 

マリア「向こうのチームに何が起こったの?」

 

調「さっきの切ちゃんの悲鳴と何か関係が…?」

 

エルフナイン『それは公平を期するためにお教えできません』

 

奏「もたもたしてたら、あっという間に抜かれちまうな」

 

翼「突き放すためにも次の敵を探すぞ!」

 

マリア「ええ。行くわよ、調、奏!」

 

調「…うん」

 

奏「そんじゃ、行くぞ!」

 

 響達Aチームの方は今までと違って雪の上でも軽快にノイズを倒していたのであった。

 

響「よーし、これで全部だね!」

 

エルフナイン『皆さん、あと15ポイントで本日の訓練は終わりです』

 

切歌「Bチームはどうなんデスか?」

 

エルフナイン『あと8ポイントですね』

 

響「うわっ、それじゃ下手すれば1回でクリアされちゃうよ?」

 

クリス「くっ…こっちは流石に1戦じゃ足りないか…」

 

 そんな折、通信が入った。

 

弦十郎『なかなかいい接戦を繰り広げているようだな』

 

響「師匠!」

 

未来「こんな時に何ですか?」

 

弦十郎『なに、そんな君らに耳寄りな情報を、と思ってな』

 

響「耳寄りな情報?」

 

弦十郎『ああ。本日の仕上げとして山の頂上に大物を用意した。それ1体で30ポイントに相当する。是非狙ってくれ』

 

響「クリスちゃん、未来、それを倒せば!」

 

クリス「ああ、一気に逆転だな」

 

弦十郎『無論、その代わり手強い事は折り紙付きだがな』

 

クリス「なあに、このクリスマス仕様のギアがあれば余裕だろ!」

 

未来「あまり調子に乗らない方がいいと思うよ」

 

響「行こう!」

 

切歌「(あたしだけギアが変化していないデス…。ひょっとして、あたしにはクリスマスを楽しむ権利がないデスか…?)」

 

響「切歌ちゃん、どうしたの?」

 

クリス「何ボサッとしてる!Bチームに先を越されたら元も子もないだろ!」

 

切歌「あ…ご、ごめんなさいデス…」

 

未来「(やっぱり、ギアが変化しなかったのがショックだったのかな…?)」

 

響「さあ、行くよ!」

 

 響達は山の頂上へ向かった。




これで今回の話は終わりです。
今回の話は雪の上での訓練でしたが、XD本編をそのままなぞるのは面白くないと判断したので、奏と未来も参加するという流れにしました。
次の話は大物のノイズとの戦いとその息抜きとなります。

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