セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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47話 暁のクリスマス

旅館

 

 現地の旅館にいる星矢達はグラード財団の端末で響達の様子を見ていた。

 

沙織「響さん達はやってくれていますね」

 

星矢「この仕掛けも俺達が数日かけて配置したもんだからな。一番運ぶのを頑張ったのはアルデバランだからな」

 

アルデバラン「いやぁ、俺は大した事はしていないがな」

 

 他のメンバーも響達の動向を見つめている中、カミュは考え事をしていた。

 

カミュ「(なぜ切歌だけクリスマス型のギアに変化できなかったのか…。何か…何か手掛かりがあるはずだ…。響達にあって、切歌にないもの…)」

 

 そんな中、カミュはある事に行きついた。

 

カミュ「(そうか、響達にあって切歌になかったものは…)」

 

氷河「カミュ、何を考えていたんですか?」

 

アルデバラン「ここの所、面接が終わってからずっと考え事をしていたからな。俺もその考えていた事を聞かせてほしい」

 

カミュ「ちょうど切歌がクリスマス型のギアに変化する事ができない原因を突き止めた所だ」

 

氷河「クリスマス型のギアに変化できなかった原因?」

 

紫龍「それは何なんだ?」

 

カミュ「それは…」

 

 

 

雪山

 

 早速、AチームとBチームは索敵を開始した。

 

クリス「なあ、ちょっといいか?」

 

未来「どうしたの?」

 

翼「どうした?訓練中だぞ」

 

クリス「今日の試験はクリスマス型のギアの性能を知るのが目的だろ?そこに関係ない話じゃなくてさ」

 

翼「なるほど、そういう話か」

 

クリス「このクリスマス型って、実際、どういう条件で変化できたんだろうと思ってよ」

 

響「えーと、ギアの変化には強い想いが重要なんですよね」

 

翼「ああ、そのようだな」

 

響「でも、それなら切歌ちゃんなんてかなり前からクリスマスを楽しみにしてたのに…」

 

未来「そこは私も気になってたわ。もしかすると…サンタクロースの事じゃないのかな?」

 

響「最初それでへこんでたよね。サンタクロースがいないって知っちゃって」

 

クリス「でもその後持ち直してただろ?って事は、あたしらと条件同じじゃねーか」

 

翼「割り切れていない…という事かも知れないな。そうなると、どうするべきか…」

 

未来「一応、カミュさんに話して昨日は面接をしてもらったんですけど…まだ結果はわからないそうです」

 

クリス「ま、今は結果を待つしかねえな」

 

翼「そうだな。少なくとも訓練中には何もできないだろう。せめてパーティーを楽しませる事ができればいいが…」

 

響「そうですね。しっかり盛り上げましょう!」

 

翼「…結局、暁には余計悪い事をしてしまった。まさか今日まで引きずっているとは…」

 

クリス「随分ショックだったみてーだな」

 

響「仕方ないよ。ギアの変化ができるかどうかなんて誰にもわからなかったんだし」

 

クリス「まあな。でも…(あいつらの様子もちょっとおかしかったけどな…)」

 

未来「どうしたの?クリス」

 

クリス「あ、いや。それより先輩、実際に使った感想はどうだ?」

 

翼「ああ、思った通り…いや、それ以上に使いやすいな」

 

響「脚は雪に沈まないし、冷たい風も感じないですもんね」

 

翼「ああ。ブースターによる高速移動をしても身を切るような寒さを一切感じないし、刀身の低音癒着の心配もなさそうだ」

 

響「へー、そんなところにも効果があるんですね」

 

翼「無論、通常のギアでも温度差などにはかなり対応しているが。こと氷雪に関しては、一回りも二回りも違うようだな」

 

クリス「なるほどな…っと、悪い。ずいぶん話し込んじまった」

 

未来「だったら、ノイズを探して倒さなきゃね」

 

翼「では、そろそろ索敵再開といくとしよう」

 

 一方、Bチームは…。

 

マリア「はあっ!」

 

奏「とりゃあああっ!」

 

 マリア達は発見したノイズを倒していた。

 

調「ふう…これでおしまいみたい」

 

マリア「エルフナイン。今の両チームのポイント状況を教えてもらえるかしら」

 

エルフナイン『はい。目下、Aチームは皆さんと比較して、およそ1.8倍のペースで稼いでいます』

 

マリア「なるほどね…やっぱり特化型が環境にマッチすると、ギアの性能が大きく現れてくるわね」

 

エルフナイン『はい。平均捜索時間で通常型の約90%、接敵悟から殲滅までの所要時間も約40%程の効率向上とみられています』

 

調「そんなに違うんだ…」

 

エルフナイン『統計を取ろうにも、まだ母数が小さいので、まだかなりの揺れ幅を残した暫定予測値ですが』

 

切歌「うう…負けたくないデス…」

 

奏「切歌、負けたくない気持ちはわかるけど、今日はそこまで勝ちにこだわる必要はないぞ」

 

調「う、うん。これは訓練の一環なんだから…」

 

切歌「でも、あたし達はクリスマス型になれなかったデス…。それが悔しいデス…」

 

調「切ちゃん…?」

 

切歌「…通常型のギアでもやればできるんだって。目に物見せてやるって、意気込んではみたデスが…。やっぱり特別なギアがないとダメなんデスね…。これが格差社会…世知辛すぎるデース!」

 

調「き、切ちゃん、諦めるのはまだ早いよ」

 

マリア「そ、そうそう。私達で格差を覆すのよ。これは第二種適合者の私達によるギアのプロレタリア革命よ!」

 

切歌「プロ…なんデスそれ?」

 

奏「あたしも詳しくはないけど、簡単に言えば労働者階級って覚えとけばいい」

 

マリア「ごめんなさい。変な例え方をした私が悪かったわ。ともかく、この程度の逆境で屈していたら、天国のマムに笑われるわよ」

 

奏「(マム…、マリア達の育ての親なのか?)」

 

調「そうだよ、切ちゃん。私達はいつも足りない物を補って生きてきた…」

 

切歌「そうデスね…マムに笑われるわけにはいかないデスよね。マリア、調、奏さん、あたしもやってやるデスよ!」

 

奏「その意気だぞ、切歌!」

 

 切歌のやる気が戻ったが…

 

マリア「(ふう…多少はやる気を取り戻してくれたけど…)」

 

調「(うん、恐らくは時間の問題だね…。きっとまた途中経過を聞いて、開いていくポイント差に愕然として絶望すると思う)」

 

奏「(やっぱりそう思うだろ?)」

 

調「(その時の切ちゃんの姿が目に浮かぶよう)」

 

マリア「(ポイントで翼達に追いつかないと、根本的な解決にはならないわよね…)」

 

調「(うん…。でも、ギアの性能差は歴然。覆すのは難しいと思う)」

 

奏「(となりゃ、あたし達だけでもギアをクリスマス型に変化させるしかねえな…)」

 

調「(でも、私達も変身できると知ったら、切ちゃんはもっとショックを受けると思う…。それこそ、深い深い絶望の谷底に落ちかねない)」

 

マリア「(だったら…これしかないわね)」

 

奏「(マリア?)」

 

マリア「(ともかく、私に任せておきなさい)3人とも、このままでは翼達に追いつけない事はわかってるわよね?」

 

切歌「改めて言われなくても痛いくらいわかってるデスよ…」

 

マリア「でも、逆転のためのいい作戦を思いついたわ」

 

切歌「流石マリア!教えてほしいデス!」

 

マリア「さっきエルフナインが言っていたわね。Aチームは私達より索敵時間で2倍近い効率を上げてるって。」

 

調「うん、言ってた」

 

マリア「なら、こっちは同じ時間で3倍の数の敵を探せばいいのよ」

 

切歌「ええっ!?そんな魔法みたいな事ができるんデスか?」

 

調「そうか…。魔法じゃないよ、切ちゃん。単純な話」

 

切歌「どういう事デス?」

 

マリア「向こうが一塊になって高速移動で倍の敵を見つけるなら、こっちは4方に分かれて索敵すればいいのよ」

 

切歌「あっ!?」

 

奏「つまり、手分けして撃破するって事だな」

 

マリア「そういう事」

 

切歌「で、でも、それだと敵を倒すのに時間がかかるデスよ?」

 

マリア「確かに3人一緒の時よりは発見から殲滅までの所要時間はかかるかも知れない。そこは何とか腕でカバーよ」

 

奏「そもそも、時間的には戦ってる時間よりも探す時間の方がずっと長いからな」

 

マリア「ええ、そう。しかもクリスマス型のギアの戦闘効率上昇は索敵時間よりも低めだから、戦闘時間の差も開きにくいはず。この作戦のなによりの肝は、ここまでの所、そこまで強力な敵とは遭遇してないという点ね」

 

切歌「確かに1人でも何とかなりそうな相手ばかりだったデス。なんだかやれそうな気がしてきたデース!」

 

調「うん…いけそう」

 

マリア「大事なのは、1人では手に負えない相手に遭遇したら無視して離脱する事。これだけは絶対に守って」

 

切歌「了解デス」

 

調「とりあえず、大型系は見つけても無視かな」

 

奏「倒せそうなら倒してもいいんじゃねえか?」

 

マリア「それじゃ1時間後に、あの丘の上に生えた一番高い杉の樹の下で合流しましょう。いいわね?」

 

奏「いっちょ、気合入れろよ!」

 

 4人は手分けして敵の索敵と撃破を行う事となった。

 

マリア「切歌は向こうへ行ったし…。そろそろいいかしら」

 

 早速、マリアは通信を入れた。

 

マリア「エルフナイン、ちょっといい?」

 

エルフナイン『はい、なんでしょう?』

 

マリア「点数を巻き返すために、クリスマス型になりたいのだけど…」

 

エルフナイン『え?今回は点数目的ではないので、そんなに焦る必要は…』

 

マリア「…それはわかってるの」

 

エルフナイン『…切歌さんのためですか?』

 

マリア「ええ」

 

エルフナイン『ちょっと待ってください』

 

 エルフナインは連絡をとった。

 

エルフナイン『そう、ですね…え。なんですか?はい…はい。お待たせしました。クリスマス型になって頂いても大丈夫です』

 

マリア「本当に?」

 

エルフナイン『はい、比較試験のデータは充分とれましたので』

 

マリア「ありがとう」

 

 早速、マリアはギアをクリスマス型に変化させた。

 

マリア「夕べはすぐに解除しちゃったけど、どんなものかしら」

 

 試してみた所、感想は響達と同じであった。

 

マリア「なら…戦闘ではどうかしら!?」

 

 雪の上でも埋まらないため、あっさりとマリアは敵を片付けられた。

 

マリア「これならいける!私と調と奏が分かれてクリスマス型のギアを使えば、充分追いつける!さあ、かかってきなさい!」

 

 一方、奏は…。

 

奏「ああ、わかった。クリスマス型のギアも使っていいんだな?」

 

 そして、通信は終わった。

 

奏「さてと、クリスマス型のギアの使い心地はどうなんだろうな?」

 

 奏もギアをクリスマス型に変化させた。

 

奏「おおっ!雪の上でも沈まないから、思う存分に動けるぞ!よし、行くぞ!」

 

 水を得た魚のように奏はいつものペースで敵を蹴散らしていった。

 

奏「へへへっ、槍の刃も低音癒着しねえし、思った以上に使い心地がいいじゃねえか。よし、どんどん稼ぐぞ!」

 

 調もまた、エルフナインからクリスマス型になっていいと言われたのであった。

 

調「切ちゃん…嘘ついて、ごめんね…。でも、切ちゃんの心を護るには…これしかないの」

 

 そして、クリスマス型にギアを変化させた。

 

調「…うん。また変身できた」

 

 それから、見つけたノイズを蹴散らした。

 

調「これでだいぶポイントを稼げたはず」

 

 一方、切歌は…。

 

切歌「やっと1グループ見つけたデスよ…。見た所雑魚っぽいデスけど、数だけはワラワラといるデスね…。エルフナイン。今、Aチームとのポイント差はどれくらいデスか?」

 

エルフナイン『現在ちょうど30ポイント差です。やはり、Aチームの序盤のリードが大きいですね』

 

切歌「あちゃー、やっぱりそんなに離されてるデスか…」

 

エルフナイン『これでもBチームの分離作戦後、かなり詰まって来ています』

 

切歌「今日はペースが全然違うデスね。クリスマス型のギアが4人分、恐るべしデス…」

 

エルフナイン『そ、そうですね』

 

切歌「グズグズしてられないデス。あたしもこれから攻撃を仕掛けるデスよ」

 

エルフナイン『はい、頑張ってください』

 

 そう言って通信を切った。

 

切歌「さーて…1人でもあのくらい、やってやるデス!」

 

 切歌は見つけたノイズの群れに攻撃を仕掛け、全滅させた。

 

切歌「ふう…どんなもんデスか。何とか全滅させたけど、やっぱり1人だとしんどいデスね…。エルフナイン、今のポイントはどれくらいデスか?」

 

エルフナイン『今のグループで4ポイントですね』

 

切歌「やっぱりそんなもんデスよね…。Aチームとの差はまだまだデスよね…」

 

エルフナイン『いえ。現在の差は18ポイント…いえ、今12ポイントになりました』

 

切歌「いつの間に?戦闘の前に聞いた時は30ポイント離れてたデス」

 

エルフナイン『え、えーと…。恐らくはBチームの皆さんの作戦勝ちですね』

 

切歌「やっぱりそうデスか!これなら確かにいけるかもデース!」

 

エルフナイン『そ、そうですね。では引き続き頑張ってください』

 

切歌「マリアと調と奏さんも頑張ってるんデスね!…って、あれ?さっき戦闘に入る前に30ポイント差があったんデスよね?で、あたしが今稼いだのが4ポイントだから、差し引き26ポイントデスよね…?なのにたった今、12ポイント差になった…?あたしが4ポイントを稼いでいる間に、14ポイントも差が減ったデスか…?しかも、当然その間にAチームだってポイントを稼いでいるはずデスよね…?それって、マリアと調と奏さんがあたしの倍以上加勢でないと、そんなに差が詰まるはずないんじゃ…?どうして3人ともそんなペースでポイントを…。ま、まさか…!」

 

 切歌は嫌な予感がした。そして、1時間経過した。

 

切歌「そろそろ1時間経つデスか。合流地点の丘の上に一番高い杉の所に行くデス」

 

 合流地点に切歌は到着し、ほどなくしてマリア達も来た。

 

切歌「3人とも、随分と早いデスね」

 

マリア達「(ギクッ!)」

 

マリア「もう1グループ探して戦ったら合流時間に間に合いそうになかったから、少し早いけど切り上げたの」

 

調「わ、私もそう…」

 

奏「けど、きちんと稼いできたぞ」

 

切歌「へー、そうデスか。それにしては、たくさんポイントを稼いでたみたいデスね」

 

マリア達「ギクギクッ!」

 

切歌「あたしがこの1時間で14ポイントしか稼いでないのに、3人とも40ポイント近くずつ稼いでる計算デス。どうやるとそんなに稼げるデスか?」

 

マリア「た、たまたま運よく敵がたくさん見つかったのよ」

 

調「う、うん。そうそう」

 

奏「あたしは可能な限り、大物も倒し続けたのさ」

 

切歌「3人とも何か、あたしに隠してないデスか?」

 

調「な、なにも隠してなんかないよ?」

 

奏「ほんとだぞ、ほんと」

 

切歌「へー。そうなんデスかー。ところでもう一つ疑問なんデスが…」

 

マリア「な、何なの?」

 

切歌「こんなに深い雪なのに、なんで3人の足跡が樹の周りにしかついてないデスか?」

 

奏「(しまった!)」

 

マリア「(早めに到着すれば姿を見られないと思って油断したわ)」

 

調「(切ちゃんの動物的勘は侮れない…)」

 

切歌「3人とも…あたしを仲間だと思うなら、本当の事を言ってほしいデスよ」

 

調「切ちゃん…ごめんなさい」

 

マリア「これ以上傷つけたくなかったから黙ってたんだけど…」

 

奏「もう正直に言うしかねえな…」

 

 仕方なく、マリア達はクリスマス型へギアを変化させた。

 

マリア「夕べ試してみたら…」

 

調「私達も変身できちゃったの…」

 

切歌「やっぱりデエーース!」

 

調「ごめんね、切ちゃん」

 

切歌「調が謝る事じゃないデスよ…。1人だけ変身できないで気を遣わせた不甲斐ないあたしが悪いんデス…」

 

調「(切ちゃん…地の底まで落ち込んで…)」

 

奏「(もう手の打ちようがないな…)」

 

 そんな中、足音が聞こえた。

 

奏「新手か?」

 

マリア「いえ、あれは…」

 

 出てきたのは弦十郎であった。

 

マリア「風鳴司令!?どうしてここに…」

 

弦十郎「モニタで状況を確認していてな。こうなるのではと思い、ヘリを飛ばしてきたのだ」

 

切歌「落ちこぼれのあたしの事を叱りに来たデスか?」

 

調「切ちゃん、そんな言い方は」

 

弦十郎「時に切歌君、君にとってクリスマスとは何だ?」

 

切歌「唐突デスね…。クリスマス…デスか?美味しい物を食べたり、ゲームしたり、あ、プレゼント交換とかもいいデスよね。そんな楽しいイベントがクリスマスデス!」

 

弦十郎「ふむ…カミュが推測した通り、一番大事な事を忘れているようだな」

 

切歌「一番大事な事!それは何デスか!?」

 

弦十郎「ふっ…答えを教える事は簡単だ。しかし、それでは意味があるまい。自分で悩み答えを見出すのだ。では、また後程会おう」

 

 そう言って弦十郎は本部へ戻った。

 

切歌「結局あの人、何をしに来たデスか?」

 

マリア「(それにしても司令、聖闘士でもないのにあの恰好で寒くないのかしら…?)」

 

調「ねえ、切ちゃん。こうしている間にもどんどんポイントが開いていくよ」

 

奏「そうだな。もう隠しててもしょうがねえし、最後の追い上げは4人で行くぞ!」

 

調「私が高速移動で先行索敵して、3人を誘導するから」

 

マリア「任せたわ。さあ、行きましょう切歌」

 

切歌「…わかったデス」

 

 こうして、雪上訓練は終わったのであった。

 

クリス「はー、疲れた疲れた」

 

響「みんな、お疲れ!」

 

クリス「そう言う割にお前はまだ元気そうだな」

 

響「クリスマスギアのお陰で走るのも楽だったしね!」

 

未来「私も空を飛ぶより走る方が気持ちよくて楽だったよ」

 

翼「昨日より倍以上も高い目標ポイントだったのに、短時間でクリアできたな」

 

切歌「結局、あたし達の負けだったデス…」

 

響「あ…」

 

切歌「それもこれも、あたしだけがクリスマスギアに変身できないで足を引っ張ったからデス…」

 

響「ごめん、切歌ちゃん…。その…」

 

切歌「いいんデス。気を遣わないでほしいデス。余計に惨めに…うう…」

 

調「(切ちゃん…)」

 

マリア「(今日の訓練は勝ち負けじゃない…って言っても、納得しないわね)」

 

 そこへ、あおいが来た。

 

あおい「皆さんお疲れ様です。露天風呂で汗を流したら、ヘリで本部に戻りましょうね」

 

響「わーい、クリスマスパーティーだ!」

 

未来「響ったら…」

 

 そう言う未来も楽しみでしょうがなかった。

 

マリア「切歌、いつまでもそんな顔しないで。お風呂に入って帰るわよ」

 

調「ほら、切ちゃん。行こう」

 

切歌「は、はいデス…(司令に言われた『大切な事』って結局何なんデスか…全然わからないデスよ…)」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして、クリスマスパーティーが始まった。

 

響「沙織さんが挨拶するんだ」

 

沙織「ええ、響さん。では司令、私が挨拶をしてよろしいですか?」

 

弦十郎「いいとも、沙織お嬢様」

 

沙織「皆さん、今回の雪上訓練は星矢達やS.O.N.Gのスタッフの皆様の準備によって無事に始める事ができ、そして装者の皆さんも楽しむ事ができて何よりです。よって、締めとしてクリスマスパーティーをやりましょう!乾杯!」

 

 沙織の挨拶が終わり、クリスマスパーティーが始まった。

 

未来「響ったら、早速食べてるね」

 

響「だって、この料理はとってもおいしいんだもん!」

 

星矢「だろうな。この料理は美衣さんの手作りだからな」

 

美衣「おいしくいただいてもらって何よりです、響さん」

 

未来「あの…出された料理は美衣さんが作ったんですか?」

 

美衣「はい。皆さんが喜んでもらえるように腕によりをかけて作りました」

 

響「ありがとう、美衣さん!」

 

星矢「響、ボサッとしてると俺が食っちまうぞ!」

 

響「星矢さんの意地悪~!」

 

クリス「先輩も楽しんでるみたいだぞ」

 

 また奏とクリスマスを過ごせる事に翼も喜んでいた。

 

翼「(まさか、奏とまたクリスマスを過ごせるとは…。3年前に私達の世界の奏が死んでから、防人としての意識を強くしたためにずっとクリスマスを意識した事はなかったな…)」

 

奏「翼、この世界のあたしとクリスマスの思い出はあるだろ?」

 

翼「う、うん…あるよ。私自身は乗り気じゃなかったけど、奏が強引に連れ出したりして…」

 

奏「やっぱ、そうか。3年前に死んじまったあたしの世界の翼も乗り気じゃなかったけど、あたしが連れ出してプレゼント交換やら、クリスマスライブやらでたくさん楽しんだからな」

 

翼「また、こうやって巡り会えたから、私達も楽しもうか」

 

奏「そうだな。メリークリスマス!!」

 

紫龍「(世界を超えて翼と奏がクリスマスを楽しむとはな)」

 

氷河「(初めて奏が生き残った世界に来た時では信じられない光景だ…)」

 

 並行世界という壁を超えて2人はクリスマスを楽しんだ。一方、切歌が落ち込んでいるのを瞬は見ていた。

 

瞬「(切歌、クリスマスギアになれなかったのがよっぽどショックだったみたいだ…)」

 

クリス「おい、後輩共!次はお前らがプレゼント選ぶ番だぞ。早く来いって!」

 

調「あ、はい。今行きます。ほら、切ちゃんいこ?」

 

切歌「う、うん…。クリスマスが過ぎていくデス…。このまま、あたしは…最後まで…」

 

マリア「(まだあんなに悩んでるなんて。本当に重症ね…)」

 

 

 

マンション

 

 そしてその晩…。

 

切歌「むにゃむにゃ…やけ食いデス…。けど…もう…食べられない、デス…」

 

調「ううん…切ちゃん…。残したら、もったいないよ…ほら、タッパー…」

 

 2人が寝てる中、慎次が忍び込んだ。

 

慎次「ふふ、よく寝てますね」

 

 そして、プレゼントを置いた。

 

慎次「これでよし、と…」

 

 プレゼントを置いてから慎次は去った。

 

切歌「うんむ…なんであたしだけ…変身できないデス、か…むにゃむにゃ…」

 

調「切ちゃん…サンタクロースは…本当にいる…よ」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして翌日、プレゼントがあった事に切歌は驚き、本部へ来た。

 

切歌「ビビビビビビッグニュースデス!」

 

弦十郎「どうしたんだ、2人してそんなに慌てて」

 

切歌「そそそそれが!サンタクロースが本当にいたデスよ!ね、調?」

 

調「うん」

 

弦十郎「ほう、それはよかったじゃないか」

 

切歌「あ、その顔は信じてないデスね?誰も入れない部屋にプレゼントを置いてくなんて、本物のサンタクロースにしかできないデスよ?」

 

弦十郎「なるほど。では、そうかも知れんな」

 

切歌「本当に信じてるデスか…?」

 

弦十郎「切歌君、サンタクロースとはどんな存在だと思う?」

 

切歌「サンタクロース、デスか…?こうしていい子にプレゼントをくれる存在…?」

 

弦十郎「そう、しかし、それだけではない…。君はプレゼントをもらってどうだった?」

 

切歌「すっごく驚いて、すっごく嬉しくて楽しい気持ちになったデス!」

 

弦十郎「そう、サンタクロースとは誰かを笑顔にする存在…。つまりクリスマスの本質とは、奉仕の心!」

 

切歌「ほ、奉仕の…心デスか!?」

 

???「そう、それがなかったから君はクリスマスギアになれなかったんだ」

 

 そこへ、カミュが来た。

 

調「カミュさん…」

 

切歌「じゃ、じゃあカミュがやった面接は…」

 

カミュ「君が変身できなかった原因を探るためだ。そして、私は突き止めた。君は友などの大切な人を楽しませたりする『誰かのために』という気持ちが欠けていたから、クリスマスギアになれなかった」

 

弦十郎「切歌君が変身できなかった原因はカミュが教えてくれたからな」

 

切歌「そうだったんデスか…。考えてみたら、確かにあたしは自分の事しか考えてなかったデス…。パーティーでもいじけて、みんなを楽しませようだなんてできていなかったデス…」

 

調「…切ちゃん…」

 

弦十郎「もう一つ、楽しませるのは相手だけじゃないぞ。自分も楽しくなければ、相手を喜ばせる事なんてできない」

 

切歌「自分も…楽しく。あたし…やっとわかったデス!…もう一度、変身を試させてほしいデス!クリスマス…その本質をここで刻み込むために!」

 

カミュ「やってみるがいい。その心のままに!」

 

切歌「(調…それに聖闘士やS.O.N.Gのみんな…あたしがみんなからもらった笑顔を返したい、次はみんなで笑顔になりたいデス!大切な人達がみんな笑って、楽しめるようなクリスマス、今度こそ間違えないデス!)」

 

 カミュと弦十郎から言われた奉仕の心を胸に切歌は唄うと、やっとクリスマスギアに変化したのであった。

 

切歌「凄いデス…あたしもできたデス!」

 

調「やったね、切ちゃん」

 

弦十郎「よかったな、もう切歌君は大丈夫だ。本当のクリスマスを知る事ができたんだからな!」

 

切歌「サンタクロースもクリスマスも同じ…みんなを笑顔にするもの。もう間違えないデスよ!」

 

弦十郎「よし、それでは最後の仕上げだ!そのギアを扱い、戦って心と体に真理を刻み込め!」

 

切歌「望むところデス!」

 

カミュ「(やれやれ、司令に挑むのは我々に挑むより無謀ではないが、自殺行為も同然だ…)」

 

 切歌の姿をカミュは見ていたのであった。そして、カミュの思った通りの結果となったのであった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は二日目の雪上での訓練とクリスマスパーティー、そして切歌がクリスマスギアに変化できなかった理由が明らかとなる内容になっています。
次の話は装者メインのクリスマス編と違って聖闘士メインの単発の話となり、聖闘士星矢の派生作品の一つのロストキャンバスのある人物をシンフォギアの世界観にも合わせる形で設定を変更し、ゲスト的ポジションで出します。
また、聖闘士星矢本編では語られず、裏設定に留まっていた聖衣誕生秘話も明らかになるかも知れません。

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