セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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50話 変わらない妹

研究所

 

 戦闘が終わった後、マリア達はナスターシャに様々な説明をしていた。

 

マリア「つまり、私達は完全聖遺物ギャラルホルンが作り出したゲートによって、並行世界から訪れた…別人なの」

 

ナスターシャ「なるほど…。様々な事件で分岐した世界…異なる可能性にアクセスするとは、驚異的な聖遺物ですね…」

 

翼「一切の制御がままならず、並行世界と繋がれば、ノイズを始めとして脅威が私達の世界に現出する獅子身中の虫でもありますが…」

 

ナスターシャ「しかし訪れたあなた方によって私は辛くも救われました。セレナも、同様に」

 

響「いえっ!こちらこそ、壁を壊しちゃってごめんなさい!」

 

ナスターシャ「その程度の損壊、どうという事はありません。修理すればいい壁と違って、人命は戻らないのですから」

 

響「ありがとうございます!ところで、あの子の様子はどうですか?」

 

瞬「メディカルチェックの前に僕が診てみたけど、大きな怪我はしてないし、大事はないよ」

 

ナスターシャ「あなたは医者の勉強をしているのですか?」

 

瞬「はい」

 

マリア「セレナが戻る前にこちらの状況を聞かせて、マム。…いえ、ナスターシャ教授」

 

ナスターシャ「あなたがそちらで慣れている呼称で構いません」

 

マリア「マム、ありがとう」

 

ナスターシャ「こちらの説明をする前に一つ、お願いがあります」

 

一輝「何だ?」

 

ナスターシャ「今、あなた方が言った話、並行世界とそれを移動する聖遺物。この件については、ここだけの話とさせてください」

 

一輝「それを聞いたら、利用しようと企む輩が多いからか?」

 

ナスターシャ「理解が早いですね。あなた方の話は世界のパワーバランスを崩しかねないレベルの物。それを耳にし、利用しようとする者達が私達の組織にはたくさんいます」

 

翼「なるほど、確かに話を大きくしたくないというのは私達も同じだ」

 

ナスターシャ「あなた方の事は私が都合よく話しておきます」

 

一輝「説明はこれで終わりか?」

 

ナスターシャ「はい。これから本題に入ります。かつて、一度目のネフィリム稼働実験で事故が起こりました。その時セレナは致命的な負傷をし、延命のためコールドスリープ処置が施されたのです」

 

マリア「コールドスリープ…それじゃあ…」

 

ナスターシャ「ええ。最初の実験から既に7年が経過しています。その間に起きた技術的ブレイクスルーにより、ようやく治療の目途が経ち、セレナは目覚める事ができました」

 

瞬「7年も眠ってたなんて…」

 

一輝「(だから、写真で見た時と瓜二つだったのか…。写真で見た所、マリアとは年齢がそう離れていないにしては幼すぎたわけだ)」

 

マリア「…その間、こちらの私は?」

 

ナスターシャ「…こちらの世界のマリアは起動実験の時の事故でそのまま亡くなっています」

 

翼「私の時と同じか…。奏が生き延びた世界と…」

 

マリア「…誰かが生きれば、誰かが亡くなる。もしかしたら世界がそういうバランスをとっているのかも知れないわね…(世界とは、残酷なものね…)」

 

響「…マリアさん?」

 

マリア「大丈夫よ。それより、こんな事があったのなら、どうして再びネフィリムの起動を?」

 

ナスターシャ「それは…」

 

???「ネフィリムは力だ」

 

 そこへ、アドルフが来た。

 

ナスターシャ「ドクター・アドルフ」

 

マリア「力?あの災厄をあなたは力と呼ぶというの!?」

 

アドルフ「あれを完全に解き放ち、制御する事ができればノイズに対抗しうる強力な力となる。そう。我々はノイズに怯える事なく、例えどのような恐怖が現れても、それを力によって打倒する事ができる」

 

響「力、なんて…」

 

アドルフ「シンフォギアという力を持つ装者や、見慣れない鎧を纏って戦う小僧共が理解する事はないだろう。ノイズという絶対的な恐怖を前にして、なすすべなく逃げ惑うしかない無力な者達の恐怖など…」

 

瞬「待ってください!力だけでは限界があります。仮にその力よりも強大な力が現れたら、どうにもなりません!恐怖に対抗するには力だけでなく、その恐怖に立ち向かう闘志や勇気などの心も必要なんです!」

 

アドルフ「闘志?勇気?そんな感情など何の役にも立たんよ。役に立つのは力だけだ!」

 

一輝「ふっ、そうとも限らんぞ。お前がそう言えるのは、逆境を乗り越えた経験がないからじゃないのか?」

 

 一輝の痛烈な皮肉にアドルフは機嫌を悪くしたのか、その場を離れた。そのアドルフの様子を一輝は見逃さなかった。

 

ナスターシャ「…観測された脅威への対抗手段として、ネフィリムの力が必要だったからです」

 

一輝「その脅威は恐らく…」

 

 一輝が言おうとした途端、警報が鳴った。

 

ナスターシャ「ノイズの反応…!セレナを起こしてきましょう」

 

マリア「待って。あの子は負傷して休んでいるのよ!?」

 

ナスターシャ「それでも、今の私達にはあの子しか戦える者はいません」

 

一輝「無理に起こす必要はない。俺達が行こう」

 

マリア「ええ、ここに3人の装者と2人の黄金聖闘士に匹敵する青銅聖闘士がいる」

 

翼「防人の剣は人を護る刃、ここで抜かずば竹光に同じ!」

 

ナスターシャ「…ありがとうございます。相手はただのノイズでは」

 

瞬「黒いノイズの事ですね。だったら、大丈夫です」

 

一輝「俺達がいれば簡単に倒せるのだからな」

 

ナスターシャ「(あの2人は凄い自信ですね)」

 

 5人は出撃したのであった。

 

 

 

荒野

 

 出現したノイズは一輝と瞬が大半を蹴散らしたのであった。

 

響「一輝さんと瞬さんがいたらあっさり終わっちゃいましたね…」

 

一輝「後で俺はいつもの単独行動をとりたいからな」

 

マリア「ちょっと、並行世界の危機ぐらいは一緒に行動してもいいじゃない!」

 

一輝「生憎、俺はいつもそうやって群れるのは性に合わないからな」

 

 そんな中、瞬のチェーンが反応した。

 

瞬「みんな、カルマノイズが来るよ!」

 

 現れたのはカルマノイズであったが、群れていた上、カオスビーストまでいた。

 

翼「またしてもカルマノイズの大群だと!?」

 

マリア「見慣れない怪物まで!」

 

瞬「星矢から聞いたけど、あの見慣れない怪物はカオスビーストらしいよ!」

 

一輝「お前達は1体ぐらいはカルマノイズを仕留めてみせろ。残りは全て俺と瞬が片付ける!」

 

 一輝は瞬と共にカルマノイズの大群やカオスビーストに向かう事となった。

 

一輝「とあああああっ!!」

 

瞬「ふんっ!」

 

 一輝の光速拳でカルマノイズはたくさん吹っ飛び、瞬もチェーン捌きでカルマノイズを蹴散らしていった。

 

響「一輝さんと瞬さんは凄い…」

 

翼「見とれている場合ではない、立花!私達もカルマノイズを倒すぞ!」

 

 響達もカルマノイズと戦った。一輝の猛攻にはカルマノイズは自慢の再生さえ追いつかず、カオスビーストも圧倒されていた。

 

一輝「瞬、一気に片付けるぞ!」

 

瞬「うん!」

 

一輝「鳳翼天翔!!」

 

瞬「ネビュラストーム!!」

 

 一輝と瞬の必殺技の前にカルマノイズの大群とカオスビーストはあっけなく全滅したのであった。

 

マリア「あの兄弟は凄いわね」

 

翼「私達も負けていられないな。こちらも行くぞ!」

 

響「わかりました!S2CAを!」

 

 装者3人は手を繋いで絶唱を唄い、S2CAを発動させた。

 

響「セット、ハーモニクス!S2CA・トライバースト!これでええーーっ!」

 

 トライバーストでカルマノイズは消滅した。

 

マリア「これで片付いたようね」

 

翼「また湧いてくるかも知れんが、この場の個体を全て仕留められたのは幸先がいい」

 

響「ナスターシャ教授の所に戻りましょう」

 

一輝「一応は俺の要望を伝える必要もあるからな」

 

 一同は研究所へ戻った。

 

 

 

研究所

 

 響達の戦いの様子はナスターシャも見ていた。

 

ナスターシャ「何という力…!」

 

アドルフ「ほう、これは…」

 

ナスターシャ「あの黒いノイズを、再生すら許さず一撃で消し去るとは…。おまけに、あの2人はその黒いノイズの大群をあっけなく片付けた…。これがあの子達の力…。これ程の強さがあれば、あるいは…!」

 

アドルフ「…装者達の方は絶唱の負荷を分散配置して軽減しているのか。確かに驚異的な威力ではあるが…不安定で危険が過ぎる」

 

ナスターシャ「私には彼女らが自身をもって用いた手段に見えましたが」

 

アドルフ「あの小僧共の精神論といい、自信など何の助けにもならんよ。それよりも、見慣れない鎧を纏う小僧共2人と装者3人に加え、もう一つのアガートラームだと。政府はこんな隠し玉を我々研究者にも隠していたのか」

 

ナスターシャ「…ええ。恐らく極秘裏に所蔵していたのでしょうね」

 

アドルフ「全く、どいつもこいつも油断ならない…!」

 

 アドルフは特に自身に痛烈な皮肉を言った一輝が気に入らない様子であった。それから、一同は帰ってきた。

 

ナスターシャ「あなたは単独行動をしたいというのですね?」

 

一輝「こればっかりは俺自身もそうしたいのでな…」

 

ナスターシャ「わかりました。一輝の単独行動は認めましょう」

 

一輝「済まないな、ナスターシャ」

 

ナスターシャ「ただし、通信機を持つ事が条件です。通信機があれば、あなたが何か変わった事を私達に伝える事ができますし、逆に私達があなたに危機を知らせる事もできます。持ってて損はないと思いますよ」

 

一輝「全く、ただ認めるのではなく、俺へのメリットも示した上で条件をつけるとは。あんたは口も上手いな」

 

ナスターシャ「あなたが望んでいる単独行動も私達とは違った視点で異変を探る事ができるかも知れませんから、了承したのですよ」

 

マリア「(凄いわ、マム。あの一輝を口で丸め込むなんて…)」

 

ナスターシャ「セレナと話をしてから単独行動をとってもよろしいと思いますよ」

 

一輝「そうさせてもらおうか。行くぞ、瞬、マリア」

 

 マリア達はセレナの所へ来た。

 

マリア「セレナ、体は大丈夫?」

 

セレナ「マリア姉さん!」

 

マリア「…ただいま、セレナ」

 

セレナ「うーん…」

 

 セレナはマリアをじろじろ見た。

 

マリア「な、なに?そんなに私の体をじろじろ見て…」

 

セレナ「マリア姉さん、凄く大人っぽくなったね…。すっかり大人の女性って感じがする」

 

マリア「え、ええ…あれから…7年だもの」

 

セレナ「7年か…」

 

マリア「(きっと私は、この時をずっと待ち望んでいたのだと思う…)」

 

セレナ「…姉さん?」

 

マリア「ああ、いえ。何でもないわ。たぶん少し疲れただけ」

 

セレナ「あの黒いノイズを倒しちゃったんでしょ。やっぱりマリア姉さんは凄い…」

 

マリア「私の独力じゃ無理よ。それに、あの2人の方が私達より圧倒的に強いんだから」

 

 マリアの視線の先に一輝と瞬がいた。

 

セレナ「それでも凄いよ。ねえ…マリア姉さん。これからは一緒にいてくれるんだよね?」

 

マリア「…ええ、勿論」

 

セレナ「あなた達は?」

 

一輝「俺の名は一輝。そして、あまり男っぽく見えない奴が俺の弟の瞬だ」

 

瞬「よろしくね、セレナ」

 

セレナ「一輝さん、瞬さん。私はマリア姉さんの妹のセレナと言います。よろしくお願いします」

 

 早速、セレナは一輝をじろじろと見た。

 

マリア「セレナ、一輝が怖くないの?」

 

セレナ「全然怖くないよ。一輝さんは今まで私が見た男の人の中でも最も頼りになる人に見えるし、優しい人に見えるから」

 

マリア「(セレナがあの威圧感溢れる一輝に懐くなんて…)」

 

 セレナの純粋さに一輝は今は亡きエスメラルダの面影を見たのであった。

 

一輝「(この子の純粋さはエスメラルダに似てる…。俺もセレナの純粋さにやられたようだ…)」

 

 一輝は微笑ましい笑みを浮かべ、セレナの頭を撫でた。

 

マリア「(一輝があんな笑みを浮かべたなんて…!)」

 

瞬「僕以外で兄さんがあんな笑みを見せたのはセレナが初めてだと思うよ」

 

一輝「セレナ、俺はあの黒いノイズをやっつけに行ってくる」

 

セレナ「姉さん達とは一緒に戦わないのですか…?」

 

一輝「瞬がいるから俺の手助けがなくても大丈夫だ。それに、時々お前の様子を見に来るからな」

 

 セレナには素直な態度で接し、一輝はカルマノイズを倒したり、異変の調査を行うために部屋を出た。それと同時に瞬も部屋を出て、一輝の真意を聞く事にした。

 

瞬「兄さん、何か目的があって別の視点で異変を調査したいの?」

 

一輝「群れるのが嫌いというのもあるが、お前の言う通りでもある。カルマノイズが大群で出てくるのが気になるし、あのアドルフという男も気になるからな」

 

瞬「確かに、頑なに精神論を否定するのは僕も気になった…」

 

一輝「瞬はマリア達と行動を共にしてカルマノイズやネフィリムと戦い、異変を探れ。俺も時折様子を見に来るからな」

 

 そう言って一輝は調査のため、研究所を後にした。

 

 

 

 

 その頃、響と翼は…。

 

響「ナスターシャ教授って、勿体つけるタイプなんですかね。詳しい説明は明日ですか…」

 

翼「どうした藪から棒に」

 

響「だって、こっちの世界がどうなってるのか凄く気になっちゃって!」

 

翼「何しろ並行世界との接触だ。ナスターシャ教授にも整理が必要なのだろう」

 

響「それはそうですけど…。周りをウロウロしてみても森ばっかりで何にもわからないですし…。それにマリアさん、ちゃんと演技できてるかな…」

 

翼「さあ、どうだろうな。だが、世界は違えどマリアがマムと慕うナスターシャ教授の頼みだ。きっとうまくやってみせるだろう」

 

響「でも、どうしてそんな事頼むんですかね?」

 

翼「…聞いてなかったのか、立花」

 

響「あはは…、実はS2CAの反動で疲れちゃって、よく聞けていなくて…」

 

翼「疲れているならそう言ってくれればよかったものを…。まあいい…。重傷、コールドスリープによある7年の空白、そしてたった一人での戦い。様々な負担が彼女に集中している。彼女は目覚めてまだ間もない。そして、姉であるマリアの死についても知らないままだ。…治療は済んだとはいえ、まだ不安定だ。大きなショックを与えるのは望ましくない。そうした事情から、マリアに今は本当の姉として振る舞ってあげてほしいというナスターシャ教授の配慮だ」

 

響「セレナちゃん、マリアさんの事大好きだったみたいですしね…」

 

翼「…ん…真実を偽る事は心苦しいだろうが、あの子を護るために必要な事だろう」

 

響「だからF.I.Sの別の研究所から来た装者という事で口裏を合わせるって話でしたっけ。…あれ?じゃあさっきの研究所ってF.I.Sの…!?」

 

翼「覚えているじゃないか。ともかく、下手な事を言ってぼろを出さないようにしなければな」

 

響「翼さんはまだいいですよ…。私なんて隠し事とかそういうのが本当に苦手で…」

 

 そんな中、ネフィリムが現れた。

 

響「ネフィリム!」

 

翼「立花!」

 

響「はい、翼さん!」

 

 2人はギアを纏った。

 

翼「間断なく攻め立ててくるか。2人で相手をするのは不利…だがネフィリムが相手であれば!」

 

響「また別の手がある!」

 

翼「抜くぞ、伝家の宝刀…イグナイトモジュール!」

 

響達「抜剣!」

 

 早速、2人はイグナイトモジュールを発動させて応戦したが、ネフィリムはしぶとかった。

 

響「さすがにしぶとい…。だけど、イグナイトなら!」

 

 突如、ネフィリムは怯えた様子になり、目くらましをしてから地面に潜って逃げてしまった。

 

響「ネフィリムが…」

 

翼「怯えて目くらましをして逃げただと?」

 

???「俺に怯えて逃げ出したのだろうな」

 

 声の主は一輝であった。

 

響「一輝さん!」

 

翼「私達の救援に来たのか?」

 

一輝「いや、異変の調査に行こうとしたらたまたま出くわしただけだ」

 

翼「…いつもの単独行動か…」

 

一輝「だが、その条件でナスターシャに通信機を持たされた。何かあったら連絡する。お前達もお前達で異変の原因を探れ」

 

 そう言って一輝は出かけた。

 

一輝「(妙だな…、さっきから誰かに見られているような気がする…)」

 

 一輝は何かの違和感に気付いていたが、その違和感の正体は邪悪とは無縁の女が一輝を見ていたのであった。

 

女「我々が聖衣を管理していたはずなのに、神話の時代に全滅した聖闘士がなぜ…?黒いノイズの群れを倒した件といい、アルテミス様に報告せねば…」

 

 そう言って女は去って行った。一輝と入れ替わるようにマリアとセレナ、瞬も駆け付けた。

 

響「瞬さん、マリアさん、セレナちゃん!」

 

マリア「研究所でエネルギー反応と聞いてきたけど、一足遅かったみたいね」

 

翼「抜剣ならば2人でも拮抗できそうだっったが、あの再生能力は侮れない。一輝がたまたま来てくれてネフィリムは怯えて逃げ出し、助かった」

 

瞬「兄さんが?」

 

マリア「(あのネフィリムが逆に怯えるなんて…)」

 

セレナ「えっと、そちらのお2人は…?」

 

翼「自己紹介がまだだったな。私は風鳴翼。マリアとは幾度も背中を預け合って戦っている」

 

響「私は立花響!よろしくね、セレナちゃん!」

 

セレナ「私はマリア姉さんの妹で、セレナといいます。よろしくお願いします」

 

マリア「それよりも、さっきはネフィリムね」

 

瞬「間違いないよ。実際に響と翼さんは戦ったようだし、チェーンの警戒も以前にネフィリムに警戒した時と同じだった」

 

翼「ああ、どうしてこの場に…」

 

 

 

研究所

 

 一同はナスターシャが使っていいと言った部屋に集まっていた。

 

マリア「この部屋は自由に使っていいとマムが言っていたわ。ここでネフィリムを討つ方策を考えましょう」

 

響「やっぱり、今回のギャラルホルンのアラートはネフィリムが原因なんでしょうか?」

 

瞬「ネフィリムだけじゃなく、カルマノイズと双方が要因といった方が妥当だと思うよ」

 

翼「ナスターシャ教授もカルマノイズを幾度か確認しているような口ぶりだった。瞬や一輝が撃破した群れで終わりとは思えない」

 

マリア「とはいっても、カルマノイズなら群れでも黄金クラスの聖闘士なら今までも撃破してるし、ネフィリムについて何とかしないと…」

 

翼「あれがもし完全体に至れば、瞬や一輝でなければ手に負えなくなる…成長する前に片付けなくては」

 

マリア「ネフィリムは勝手に成長するものではないわ。成長には餌が必要になる、聖遺物という餌がね」

 

瞬「あの頃の響は聖遺物との融合体だったから、ネフィリムにとっては絶好のご馳走だったんだ」

 

 一同はネフィリムが響の左腕を喰いちぎった事を思い出していた。

 

響「あの…聖衣も下手をしたらネフィリムの餌になるんじゃ…」

 

瞬「可能性としては否定できない。今日はもう遅いから寝よう」

 

 一同は寝る事にした。

 

 そして翌日…。

 

瞬「セレナ、おはよう。ナスターシャ教授もおはようございます」

 

セレナ「おはようございます」

 

ナスターシャ「昨夜はよく休めましたか」

 

響「はい!おかげでぐっすり休めました!」

 

マリア「おはよう、マム、セレナ。セレナはトレーニング中だったのかしら?」

 

セレナ「うん。ちょうど休憩中だよ」

 

マリア「あまり頑張り過ぎないようにね」

 

セレナ「大丈夫。マリア姉さんが来てくれて、すごく調子がいいの」

 

マリア「…そう。あなたの元気な顔が見られて嬉しいわ」

 

セレナ「マリア姉さん、瞬さん。お二人もよかったら続きを見ていてほしいです」

 

瞬「うん。わかったよ」

 

翼「ぜひ、見学させてもらおう」

 

響「セレナちゃん、頑張ってね」

 

セレナ「はい、ありがとうございます」

 

 早速、セレナはシミュレータでの訓練を行った。

 

マリア「セレナ…本当に思い出の中の姿とわずかにも違わない」

 

瞬「僕もだけど、兄さんも驚いたと思うよ。あの子はコールドスリープしていなければ、もう20歳だから…」

 

ナスターシャ「セレナの訓練を見ながらで構いませんので、現状の詳細について、この前の続きを話しましょうか」

 

響「はいはい!それがすごく聞きたかったんです!」

 

ナスターシャ「わかりました。それではまず、我々のいる聖遺物研究所についてお話ししましょう。ここは米国政府の息のかかった、F.I.Sに連なる研究所の一つです」

 

翼「…やはりそうか」

 

響「あれ?それじゃここはまさか米国?」

 

ナスターシャ「いいえ、ここは日本です」

 

マリア「…日本にどうしてF.I.Sの施設があるの?」

 

ナスターシャ「F.I.Sの施設ではありません。あくまで、それと繋がるのあるだけの聖遺物研究所です」

 

マリア「…そういう建前って事ね」

 

ナスターシャ「理解が早くて助かります」

 

瞬「日本には特異災害対策機動部二課や風鳴機関があったはずなのに、どうしてF.I.Sの施設が?」

 

ナスターシャ「簡単な事です。既に日本では聖遺物を研究する組織が失われているからです」

 

瞬「失われた?」

 

響「失われてって…えええっ!?ど、どうしてそんな事に!?」

 

ナスターシャ「フィーネが観測され、あの空の月が欠けた事件…。多くの力が激突した、カ・ディンギルでの戦いで、それまでの全てが失われてしまったのです。装者も、組織も、フィーネも。多くの犠牲と行方不明者が出た事で二課は解体され、以後、聖遺物研究は日米政府共同で行われる事になりました。複数の装者と天才・櫻井了子を失ったこの国は、急速に発言力を失いました。そんな中、唯一、第一種適合者が所属する私達F.I.Sが発言力を強め、同盟国であるこの国へと進出したのは自然な流れでした」

 

翼「そんな事が…」

 

響「何だかもう、色々ビックリです…」

 

マリア「ええ。ルナアタックの結末は違うようだけど、予想以上に私達の世界と近かったのね」

 

ナスターシャ「他に確認事項はありますか?」

 

瞬「あの…この世界に聖闘士はいるのでしょうか?」

 

ナスターシャ「聖闘士…ですか…。残念ながら、あなたのいう鎧の戦士、聖闘士は神話にはいたようですが、今は存在しません」

 

瞬「そうですか…」

 

ナスターシャ「ただ…、天使を見たなどとの報告がいくつか寄せられております。事実かどうかはまだわかりませんが…」

 

瞬「(天使…?)ありがとうございます」

 

ナスターシャ「他には…」

 

翼「いえ、十分です。ここからが本題だが、観測された脅威というのは、やはり」

 

ナスターシャ「そうです。この前の特殊な個体である、あのノイズです。ノイズ特殊個体…そちらではカルマノイズと呼称しているようですね。そのカルマノイズが最初に現れたのは忘れもしない、最初の実験の日、つまり7年前の事でした…」

 

 

 

回想

 

 それは、元の世界と同じ7年前のネフィリム稼働実験の日の事だった。

 

セレナ「私…唄うよ」

 

マリア「でも、あの歌は!」

 

セレナ「私の絶唱で、ネフィリムを起動する前の状態にリセットできるかも知れないの」

 

マリア「そんな、賭けみたいな事…!もしそれでもネフィリムを抑えられなかったら…」

 

セレナ「その時は、マリア姉さんが何とかしてくれる。F.I.Sの人達もいる。私だけじゃない。だから何とかなる」

 

マリア「セレナ…」

 

セレナ「ギアを纏う力は私が望んだものじゃないけど、この力で、みんなを護りたいと望んだのは、私なんだから」

 

マリア「セレナ!」

 

 姉やみんなを護るため、セレナはギアを纏い、絶唱でネフィリムを起動前にリセットしたのであった。

 

 

 

ナスターシャ「…結果として、セレナは絶唱によりネフィリムの暴走を押し留める事に成功しました」

 

マリア「だけど、火災による崩落に巻き込まれて、セレナは…」

 

ナスターシャ「それはこちらの歴史ではありません。セレナが気を失うと同時に炎の中、幼いマリアはセレナに駆け寄り瓦礫から彼女を護ったのです」

 

マリア「そうか、こちらの私は…」

 

ナスターシャ「そこに現れたのがカルマノイズでした。そのカルマノイズによって、マリアは…」

 

 

 

回想

 

 セレナの絶唱でネフィリムの暴走を押し留めた所までは元の世界と変わらなかったが、元の世界と違い、マリアは恐怖に苛まれながらも勇気を振り絞り、気を失ったセレナに駆け寄ったのであった。

 

マリア「セレナァアアアアアアッ!!」

 

 そして、セレナを研究所の崩落から護る事に成功したのであった。

 

マリア「セレナ…」

 

 妹を救った事で安心したマリアだったが、カルマノイズの出現という、真の地獄が待っていたのであった。

 

マリア「黒い…ノイズ…!?」

 

 現れたカルマノイズは葡萄型であり、無情にもカルマノイズは爆弾をバラ撒き、通常の葡萄型とは比較にならない威力の爆発で研究所は更なる被害を受け、マリアやレセプターチルドレン達は爆発に巻き込まれてしまった。

 

ナスターシャ「マリア!」

 

 ナスターシャは庇おうとしたが、間に合わなかった。

 

ナスターシャ『そのカルマノイズによって、マリアを含め、多くの犠牲が出ました』

 

ナスターシャ「マリア、マリア!」

 

 爆発に巻き込まれたマリアは体を焼かれていて出血もひどく、もはや助かる見込みはなかった。そして、カルマノイズによる犠牲者の中には元の世界では装者となった切歌や調も含まれていたのであった。

 

マリア「マム…、もう……私は…ダメなの……。だから……セレナの事を……お願い……」

 

 そう言ってマリアは息途絶えた。マリアを、多くのレセプターチルドレンを失ったナスターシャは悲しみを押し殺す事ができず、涙を流したのであった。

 

ナスターシャ『どうしてマリアが死に、私が生き残ったのか…?悔やんでも悔やみきれません』

 

 その後、ナスターシャはなんとか生き残ったセレナをコールドスリープで眠らせた。いつか治療し、目覚めさせることができる日が来るまで。

 

ナスターシャ「(マリア、セレナは治療できるようになったら必ず私達がいつの日か、目覚めさせます。いつの日か、必ず……)」

 

 死体のように眠るセレナをナスターシャは見つめていた。 

 

 

 

ナスターシャ「それから、あのカルマノイズは数回この世界に出現しています。自身が炭化せず、無尽蔵に人を殺せる恐るべき存在です。それが現れた地域の人は殺され、街一つが丸ごと滅ぼされた例もあります。今まで確認されている個体数は全部で4体、こちらでは1体も倒せていません。しかも、一昨日や先日に大群で現れた時は驚きました。…一昨日や先日にあなた達が撃退したのが初めてです」

 

瞬「あれ程のノイズが大群で現れたら、恐怖そのものでしかないですね…」

 

響「じゃあ、セレナちゃんが目覚めるまではずっと人が殺され続けて…」

 

ナスターシャ「今は無き特異災害対策機動部、そこの所属していた装者が対処していたと記録にありますが…、倒すには至っていません。まだその時点では大群で現れておらず、接触回数が少ないというのもありますが。そして今、我々の世界に残っている装者はセレナ1人となってしまいました」

 

瞬「(だとすると、この世界の切歌と調も…)」

 

翼「対抗するための選択肢がない状況…。兵器としてのネフィリム運用もやむなしという事か」

 

マリア「……」

 

ナスターシャ「マリア。違う世界とはいえ、自身の死の様を聞いたのは、心苦しいものだったでしょう…」

 

マリア「いいえ。そんな事より…、私は…こちらの私はセレナを救えたのね」

 

ナスターシャ「ええ、だからこそ今、あの子はああして生きているのです」

 

マリア「そうね…なら、こちらの世界の私は本望だったと、そう思うわ」

 

 そして、セレナの訓練は休憩となった。

 

セレナ「マリア姉さん。どうだったかな?」

 

マリア「よく頑張ったわね…」

 

セレナ「うん!私、少しでもみんなの力になれるように頑張りたい」

 

マリア「(…この子の本当の姉は、何よりも大切な妹を護り切る事ができた。この笑顔を護る事ができた。私とは…違って…!妹を護れない所か、さかしまに命を救われるなんて…私は…なんて不甲斐ない…。私には、この子の信頼も、愛情も、受け取る権利などありはしない。セレナの笑顔を向けられるべきは、この子を命がけで護り、そして散った本当の姉…本物のマリア。あの子を救えなかった偽者の私如きが…この子に慕われる事など許されるはずがない…)」

 

瞬「(マリアさん…)」

 

 瞬にはマリアが自分を責めているのに気づいていた。暗い姉の様子に気付いたのか、セレナは駆け寄った。

 

セレナ「どうしたの?大丈夫?…姉さん?」

 

マリア「いえ…何でもないわ、大丈夫よ。ありがとう(この子の抱擁を受け入れる権利など、私にはないはずなのに…)セレナ。せっかくだから、一緒に訓練をしましょうか」

 

セレナ「本当?一緒に訓練ができてうれしい!」

 

瞬「僕が第三者の視点で様子を見るから、何かあった時は対処するよ」

 

マリア「(セレナに翳りを見せてはいけない。偽者の私がしてあげられる事は、せめて代わりとして傍にいるくらいなんだから…)」

 

 そして、訓練の後…。

 

マリア「私は、あの子の姉のように妹を護る事もできなかった(あの日あの場所で…私にたった一欠片でも勇気があれば、踏み出せる一歩があれば。きっと私は胸を張れた。あの子の本当の姉のように。例え命を落としても、笑みを湛えて死出の度に赴く事ができた。けれど、私は…何もできなかった。だからこそ、私はこちらのあの子を、セレナを護ろう。私には護れなかったけれど、私じゃない、私よりも出来たマリアが護ったあの子を。偽者としてでもいい、私は私の代わりに…!許してほしいとは言えない。けれど、できる事ならあなたに言いたい)ごめんなさい、セレナ。ダメな姉さんで…」

 

 自分を責めるマリアの姿を瞬は見ていたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はセレナが生き残った並行世界の事情が明らかになる話でした。
一輝の単独行動は本人が「群れるのは嫌い」と言っている都合上、入れなければならないと思ったためです。
セレナの世界の聖闘士の事情についても一部明らかにしていますが、これからアテナの姉のアルテミスが出てくるかも知れません。
過去のシーンに関しては、ある程度本編のネフィリム暴走事故のシーンも参考にしつつ、挿入しました。
次の話はセレナが大変な事をやらかします。
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