セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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54話 家族

研究所

 

 倒れた響は研究所のメディカルルームへ運ばれ、瞬は医者の勉強も兼ねて響の様子を見ていた。

 

翼「立花の容態は?」

 

瞬「命に別状はないよ。今はメディカルルームで治療を受けてもらっている」

 

マリア「よかった…」

 

瞬「この世界に来る際に響の事を未来に頼まれた以上、響にもしもの事があれば、顔向けできないからね…」

 

セレナ「マム、必ず元気にしてあげて…」

 

ナスターシャ「心配はいりません。外傷自体はそれほど大きくなく、臓器などへのダメージも見られていませんから。気を失ったのは極度の疲労と消耗が原因でしょう。ゆっくり休めば回復するはずです」

 

セレナ「よかった…」

 

マリア「マム、どうしてアドルフがネフィリムを操っていた張本人だとわかったの?」

 

ナスターシャ「少し前に帰ってきた一輝のお陰です。やはり、彼を別の視点から行動させておいて正解だったのかも知れません」

 

マリア「一輝が…」

 

翼「アドルフの潜伏場所の手掛かりが得られ次第、教えていただきたい」

 

ナスターシャ「わかりました。とはいえ、あなた方にまず必要なのは休息でしょう。今はゆっくり休んでください」

 

翼「お気遣い痛みいります」

 

マリア「流石に疲れたものね…」

 

ナスターシャ「セレナ、あなたも休みなさい」

 

セレナ「はい、マム。立花さんを…お願いします」

 

 そして、部屋に戻った。

 

セレナ「…姉さん、まだ起きてた?」

 

マリア「ええ。しばらく起きているから気にしないで」

 

セレナ「姉さんにお願いがあるの」

 

マリア「どうしたの…?」

 

セレナ「私は大丈夫だから、姉さんはみんなと一緒にあのS.O.N.Gに戻って…」

 

マリア「!?セレナ、何を言っているの?大丈夫なわけないでしょう!ネフィリムの前であなたは震えていた…怖いんでしょう?なのに、あなただけを戦わせるなんてできないわ!」

 

セレナ「恐い…怖いよ。でも、今私が怖いのは、戦う事じゃないの。こんな風にみんなやマリア姉さんが傷ついて…、もし、もっと大変な事になったら…」

 

マリア「セレナ…」

 

セレナ「…私、本当はずっと姉さんと、みんなと一緒にいたい、でも…」

 

 そんなセレナをマリアは抱き締めた。

 

マリア「セレナ…いつまででも抱き締めていてあげるから。落ち着くまで、一緒にいてあげるから…。セレナが辛い時は私が、私が辛い時はセレナが。ずっとお互いに寄り添う…そうでしょう?」

 

セレナ「うん…」

 

マリア「(…私はやっぱり、この子を1人ぼっちになって、できない…!私は偽者の姉だけど…セレナ!あなたを、愛させてほしい…!)」

 

 それから翌日…。

 

ナスターシャ「みなさん、おはようございます。集まってもらったのは、こちらの調査で得た情報についてお伝えするためです」

 

翼「情報というのは…」

 

ナスターシャ「あれからドクター・アドルフについて調べた結果と」

 

 そこへ、響が来た。

 

響「おはようございます!遅れてすみません!」

 

ナスターシャ「もう起きて大丈夫なのですか?」

 

響「私だけ休んでなんていられませんから!まだちょーっと本調子じゃないですけど…」

 

セレナ「無理しちゃダメですよ…寝てないと…!」

 

響「わたしはごはんをモリモリ食べたら、食べたブンだけ元気が出るタイプだから大丈夫!」

 

瞬「(だが、S2CAの反動はバカにできない。それに、かなり消耗した状態で放ったのなら、負荷もまだ相当残っているはずだ…)」

 

響「とにかく、ナスターシャ教授。続きをお願いします!」

 

ナスターシャ「え、ええ…あなたがそれでよいというのなら…。では、あれからドクター・アドルフについて調べた結果と、『F資料』と呼ばれる文書についてです」

 

マリア「F資料…それは?」

 

ナスターシャ「F資料はとある研究者の残した文書で、それにはネフィリムや変異体ーカルマノイズについての記述があったようです」

 

マリア「カルマノイズについて知る研究者がいたなんて…」

 

ナスターシャ「ドクター・アドルフの研究室や過去の住居、様々な調査をした所、どうもその資料を彼が手に入れたのが発端のようです。一部の写しや彼が調べていた研究資料などからの推測ではありますが、ネフィリムを操る技術もその資料にあるのでしょう。7年前の失敗から凍結されていたネフィリムの研究を、変異体ノイズへの対抗手段になりえるとして復活させたのは彼です。そのためにこの研究所が作られました。恐らくですが彼はここに来る以前から資料を手に入れていたのではないかと」

 

翼「研究の初期段階から虎視眈々と機会をうかがっていたか」

 

瞬「マリアさん達の話では、ネフィリムが分身を生み出したそうです。それについては…」

 

ナスターシャ「ネフィリムそのものにそういった特性はないため、取り込んだ複数の聖遺物同士が干渉した結果ではないでしょうか」

 

響「産み出す力を象徴する聖遺物…とかなんとか言ってましたよね」

 

ナスターシャ「生み出す力…ですか。過去、セレナの力で起動した聖遺物の中に、クベーラ神の9財宝の一つ、大蓮華というものがあります。おそらく、こちらを取り込んだのでしょう。古来インドでは、蓮華は生み出すものの象徴と言われていますから」

 

翼「あちらも想定外のようだったが、厄介な運を引き当ててくれたものだ…」

 

ナスターシャ「しかし、本来は取り込んだ聖遺物を分解・エネルギーと化すだけのはずが、分裂体を産んだというのは大きなイレギュラーです。多くの聖遺物を喰らい想定外の成長を続けるネフィリムには、未だどのような能力が隠されているかわからない事が多い…。ともあれ、ネフィリム、ドクター・アドルフをこのまま野放しにはできません。引き続き私達に力を貸してもらえますか?」

 

響「もちろんです!」

 

翼「ここでおりるつもりは毛頭ありません」

 

ナスターシャ「マリアも、セレナの事を含めてお願いします」

 

マリア「え、ええ…」

 

瞬「ナスターシャ教授、響と翼さんは元の世界に帰していただけないでしょうか?」

 

翼「何を言っているんだ?瞬」

 

瞬「S2CAの反動はバカにできない。ましてや、相当消耗した状態で放ったら1日程度ではその疲労は抜け切れるはずがない。どれくらい疲労が溜まっているのか、確認させてもよろしいでしょうか?」

 

ナスターシャ「わかりました」

 

 早速、訓練という形で瞬はどれぐらい負荷が溜まっているのかを確認した。

 

響「お、思ったよりも…重い…」

 

瞬「やはり、僕の予想通りだ。響と翼さんはかなり消耗している。一旦戻って、切歌と調を呼んでくるんだ」

 

翼「確かに、この様ではそうせざるを得ないな…」

 

響「わかりました…」

 

瞬「僕は医者の勉強をしているし、未来に頼まれてもいるから、これ以上の無理はさせられないんだ。きちんと治療を受けて休息するんだよ」

 

 瞬は疲労の具合を確認してから響と翼を戦線から外し、元の世界へ帰らせたのであった。

 

セレナ「瞬さん、お医者さんを志願してるとだけあって、凄いね」

 

マリア「ええ。敵に説教された事さえあるって聞くぐらい優しすぎる彼らしい行動と言えるわ」

 

 一方、ナスターシャの方は…。

 

F.I.S高官『プロフェッサー、ネフィリムの件はどうなっているのかね』

 

ナスターシャ「対処中です。そちらが特務機関に働きかけ、ドクター・アドルフの潜伏場所を特定できれば、より良い報告もできますが」

 

F.I.S高官『それについては議論中だ。なにしろ政府筋には聖遺物研究を忌み嫌う者も多い。先に結果がなくては連係は難しいと言っていい。だが、F.I.Sとしては、何としてもネフィリムを回収したい。我々がこれからアドバンテージを得ていくのに、ネフィリムは必要なカードなのだよ』

 

ナスターシャ「回収、ですか。成長して力を増し、未確認の能力まで得たネフィリムを回収するなど、あまりに危険と考えますが」

 

F.I.S高官『そのために多少の聖遺物や装者の危険があっても構わない。』

 

ナスターシャ「装者を犠牲にしてでも手に入れるべきものと、そう言っているのですか。人道に劣る行為に手を染めよと…!」

 

F.I.S高官『日本は通信回線の状態が悪いのかね。私は手段は問わない、ネフィリムを回収しろ、そう言ったのだ』

 

ナスターシャ「しかし…」

 

F.I.S高官『我々は慈善団体ではない。聞こえているのかね?』

 

ナスターシャ「…わかりました。こちらのできる範囲で最善を尽くしましょう」

 

F.I.S高官『次回はよい報告を期待しているよ』

 

 マリアとセレナは瞬と共にいた。

 

マリア「2人で訓練をしておきましょう」

 

セレナ「うん。私ももっと強くならないと…」

 

マリア「これからは切歌と調が来るまで私達2人でノイズに対処しなければいけないわ。瞬はカルマノイズの群れとの戦いにも備えなくてはいけないから、頼りっきりはいけない」

 

 そこへ、ナスターシャが来た。

 

ナスターシャ「2人は無事、あちらに戻りましたか?」

 

瞬「はい。見送ってきました。ちゃんとあっちで治療を受けているでしょう」

 

ナスターシャ「そうですか…。あの子達にもしもの事があれば、あちらの方々に申し訳が立ちません。よく休んでくれるとよいのですが」

 

マリア「2人共がむしゃらだから、あのままここにいてはどうなるかわからないものね」

 

ナスターシャ「それから、セレナ。話がありますので、私と来てもらえますか?」

 

セレナ「はい、マム。じゃあ、姉さんと瞬さんは先に行ってて?」

 

瞬「わかったよ」

 

 ちょうど瞬は一輝に響達の事を知らせようと思い、通信機で連絡をとった。

 

一輝『瞬か。どうした?』

 

瞬「兄さん、響と翼さんはカルマノイズやネフィリムとの戦闘で相当消耗してしまったから、元の世界に帰す事になったよ。代わりに切歌と調に来てもらおうと思ってるんだ」

 

一輝『元の世界では死に別れたセレナとナスターシャに会えるから、あいつらは大喜びするだろうな』

 

瞬「兄さんも気を付けてね」

 

一輝『ああ、わかってる』

 

 マリアの方は訓練をしており、ちょうど終わった頃だった。

 

マリア「…ふう。セレナ、遅いわね。(マムはあまり長話をしない人だし…こちらでも同じよね、多分。セレナは何を……迎えに行こうかしら)」

 

 セレナが遅いため、マリアは迎えに行った。

 

マリア「セレナ、ここにいたのね。なかなか来ないからどうしたのかと…」

 

セレナ「………」

 

マリア「…セレナ?」

 

セレナ「あ…マリア……姉さん…」

 

マリア「一体どうしたの…セレナ」

 

セレナ「実は、マムから…ううん、違うの。F.I.Sの方から指令があって、囮でネフィリムを誘き寄せるっていう作戦命令があったの…」

 

マリア「囮って…!ネフィリムは聖遺物を食べるのよ!あなたに餌になれって事!?そんな事はさせない、私がマムに!」

 

セレナ「待って、姉さん!お願い!」

 

マリア「どうして止めるの!?」

 

セレナ「マム…辛そうな顔してた…だから……だから私…」

 

マリア「…だからって。やっぱりあなたにそんな危険な役目を負わせるわけには」

 

 不安そうにしているセレナをマリアは抱き締めた。

 

マリア「セレナ…私が護るわ。あなたを必ず」

 

セレナ「姉さんは…姉さんだよね…?ずっと離れていても、私の大好きな…」

 

マリア「…当たり前じゃない。私は(本当の姉じゃない…ううん、一輝の言う通り、本当も嘘もない。あなたが私を姉と言ってくれるなら…)私はあなたの姉よ。どんなに離れていても、あなたの事が大好きな、あなたの姉なんだから…」

 

セレナ「だったら、私は大丈夫。マリア姉さんがいてくれたら、私は何だってできるもの」

 

マリア「全く、そんなに震えて…。私の前で強がりはいらないわ」

 

セレナ「強がりなんかじゃ…」

 

マリア「(私はセレナを危険な目に遭わせたりなどしない、絶対に。たとえ…)」

 

 

 

 

 そして翌日、療養のために帰っていった響と翼に代わり、切歌と調がやってきた。

 

切歌「到着デース!」

 

調「セレナのいる研究所…どんな所なのかな」

 

切歌「マムにも早く会ってみたいデスね。こっちのマムは怪我も病気もしてないそうデスし」

 

調「マムの元気な姿がまた見られるなんて、子供の頃以来だね」

 

切歌「でもまずはネフィリムを何とかするデス!」

 

調「翼さんや響さんがあんなになるくらいの強敵だもん、気を引き締めなきゃ」

 

切歌「とにかく研究所に行ってみるデス!」

 

調「うん」

 

 そう言ってると、警報が鳴った。

 

切歌「とかなんとか言ってたら、早速ノイズデスか!?」

 

調「来て早々…!翼さん達から渡してもらった通信機で、連絡入れてから戦いに行こう」

 

切歌「名案デス!」

 

 早速、通信を入れた。

 

切歌「…あーもしもし?」

 

ナスターシャ『戻ってきていただいたのですか。当面は休息を、と願っていたのですが、現在ノイズが発生して』

 

調「こちら装者2名、ノイズの対処に向かいます」

 

ナスターシャ『…あなた達は…もしや…?』

 

切歌「2人の代理デス!任せて安心デスよ!」

 

調「行こう、切ちゃん!」

 

切歌「いっちょやったるデスよ!」

 

ナスターシャ『現場へは瞬も向かっています。彼と力を合わせ、ノイズを迎撃してください』

 

 切歌と調は瞬と共にノイズを殲滅したのであった。

 

 

 

研究所

 

 そして、瞬は2人を連れて研究所に戻ってきた。

 

切歌「というわけで、ノイズは行き掛けの駄賃として倒してきたデス!」

 

ナスターシャ「ありがとうございます。それにしても…」

 

切歌「うむむ…何か変な感じがするデスよ。マムなのにマムじゃなくて、やっぱりマムで」

 

調「そうだね。…すごく不思議」

 

ナスターシャ「それは私も同じ事です。調、切歌…。瞬が頼んでいたとはいえ、まさかあなた方が来てくれるとは思ってもみませんでした。歓迎します。よろしくお願いしますね」

 

切歌「こちらこそデス!」

 

調「はい、よろしくお願いします」

 

切歌「はー……これがセレナのいる研究所…。F.I.Sと関連があるとはいえ、こりゃまた立派なもんデスねー…」

 

ナスターシャ「見てくれだけです。研究員や施設は潤沢とまではいえません。何より、今はネフィリムの問題もあります。この研究所の防備ではあれを防ぐ事もできません」

 

調「問題については私達が」

 

切歌「ばっちし片付けていくデスよ!」

 

ナスターシャ「あなた達は変わりませんね。可能な限りで構わないので、お願いします」

 

切歌「ところでマリアとセレナが見当たらないデス」

 

調「寝坊、とか…?」

 

切歌「響さんじゃないんデスから…」

 

瞬「それが…」

 

 

 

 

 一方、マリアはセレナを連れて逃げ出していた。

 

セレナ「…いいのかな?」

 

マリア「いいのよ、あちらが手段を選ばないというのなら、私達も同様にするだけ」

 

セレナ「でも、私がいないとネフィリムが」

 

マリア「あなたが全てを背負う必要なんてないわ。餌になれだなんてふざけた命令、従わなくていい」

 

セレナ「逃げても…構わない…?」

 

マリア「あなたは一度目のネフィリム起動実験で、みんなを護るために7年もの間、眠りにつく事になった。そして目覚めてからも、たった1人でノイズと戦い、再びネフィリムの実験にも協力した。2度目のあの日もあなたは1人でネフィリムに立ち向かおうとした。死の危険だってあったのに…」

 

セレナ「……」

 

マリア「あなたには誰よりも幸福になる権利がある。幾度も繰り返し犠牲になり続ける生涯なんて、私が許さない…。セレナ、あなたは優しい子よ。けれど…このままではあなたが壊れてしまう…。あなたは私が絶対に護ってみせる…!(セレナは…この子だけは護ってみせる。そのためなら、私は全てを失っても構わない!)

 

セレナ「ん…ありがとう、マリア姉さん(マリア姉さんが一緒にいてくれる事は嬉しい…。でも、本当にこれでいいのかな…?)」

 

 

 

研究所

 

 マリアがセレナを連れて家出した事に切歌と調は衝撃を受けていた。

 

切歌「うえええええっ!?い、家出したデスか!?」

 

ナスターシャ「F.I.Sからの作戦指示をセレナに伝えました。…それをマリアが聞いたのでしょう」

 

調「作戦…ですか?」

 

ナスターシャ「ネフィリムの回収のために、装者を囮にして捕縛せよ…。という作戦命令です」

 

調「私達装者を人とも思わない、最低の作戦」

 

ナスターシャ「ええ、その通りです。しかし、有用な作戦ではあります。セレナの安全に最大限の注意を払えば、実行できなくはありません」

 

切歌「でも、それは…。うぅ、納得できないデス!」

 

瞬「僕もその考えは同じだよ、切歌」

 

調「じー……。…考えがあるの?」

 

ナスターシャ「セレナとマリアの協力が今、必要なのです。わかってもらえますか?」

 

調「…わかった。それなら2人を連れ戻してくる」

 

切歌「や、やるデスか!?」

 

調「信じよう、この人はマムなんだから」

 

切歌「…ううー…調がそういうなら…。あたしも信じてみるデス!」

 

ナスターシャ「2人とも…ありがとうございます」

 

切歌「でも、どうやって2人を探すデスか?」

 

瞬「それだったら、僕の出番だ」

 

調「そうだよ、瞬さんのネビュラチェーンがある!これまでも神獣鏡のステルス機能を破ったりできたから、マリアとセレナも簡単に探せる!」

 

切歌「それに、鎖でグルグル巻きにして無駄な抵抗もさせない事だって可能デス!」

 

瞬「それじゃあ、行こうか」

 

 瞬達は出撃した。

 

 

 

 

 マリアはセレナが歩きやすい道を選んで進んでいた。

 

セレナ「はあ、はあ、はあ…」

 

マリア「疲れたかしら。この辺りで一度、休みましょう…」

 

 そう思った矢先、急に鎖が飛んできてマリアとセレナは拘束されてしまった。

 

セレナ「鎖が急に…!?」

 

マリア「(鎖…?まさか…!)そこにいるのは誰!?」

 

セレナ「追手…?」

 

???「見つけたよ」

 

 出てきたのは瞬達であった。

 

マリア「瞬…!(私とした事が、迂闊だった…。ネビュラチェーンをすっかり忘れていたわ…)」

 

調「セレナのために歩きやすい道を選んだんだね」

 

瞬「でも、仮にセレナが歩きにくい道を選んだとしても、ネビュラチェーンからは逃げられないよ」

 

調「戻ろう?2人共。マムが待ってる」

 

マリア「それはできないわ。セレナは危険な作戦への協力を命令されていて」

 

切歌「マムから聞いたデス。囮になる作戦だって」

 

マリア「なら、どうして?この子を危険な目に遭わせる事なんてできないわ」

 

瞬「落ち着いてください、ナスターシャ教授にも考えがあります」

 

マリア「3人ともごめんなさい。でも私は決めたの。セレナを絶対に…護り抜くって!」

 

セレナ「姉さん!3人と戦うの!?」

 

調「穏便に済ませたかったけど…」

 

切歌「仕方ないデス!」

 

瞬「いい加減にするんだ!」

 

 瞬の一喝に一触即発のマリア達は怯んでしまった。

 

調「瞬…さん…?」

 

瞬「そうやって仲間同士で争っても何にもならない!それこそ、合理性だけを重視する敵の思うつぼだ!」

 

切歌「でも、わからず屋のマリアにはお灸が必要なんデスよ!そんなにあたし達や瞬は頼りないデスか!?」

 

調「どうしてマリアは、いつもいつも全部1人で抱え込もうとするの!」

 

マリア「これは、私がやるべき事!やらねばならない事なのよ!あなた達には」

 

調「関係ない、なんて言わせない!」

 

切歌「あたし達は家族のはずデス!」

 

マリア「……家族…」

 

セレナ「マリア姉さん…2人は…」

 

マリア「私はそれでもセレナを…」

 

切歌「わからず屋にも程があるデスよ!」

 

調「マリアには、私達の言葉をもっとちゃんと聞いてもらうから!」

 

瞬「マリアさん、セレナを護りたい気持ちはわかります。でも、それを全部抱え込んで1人で突っ走っても何にもならないんです。切歌や調に僕や兄さんもいます。だから、僕達を信じてください」

 

マリア「調、切歌…私は…」

 

 そんな中、チェーンが反応した。

 

瞬「そこにいるのはわかっているぞ、出てこい!」

 

 瞬に言われ、ネフィリムとアドルフが出てきた。

 

アドルフ「鎖の小僧のせいで削り合いすらできなかったか。ちっ、忌々しい兄弟め!」

 

マリア「アドルフ!」

 

切歌「ここに来て、ネフィリムが4体も同時に…デスか」

 

瞬「大丈夫だよ。僕がついているから」

 

アドルフ「鎖の小僧がいては分が悪いな…。だが、鎖の小僧については手は打ってある」

 

 なんと、カルマノイズの群れが出てきたのであった。

 

瞬「カルマノイズの群れ…!」

 

アドルフ「近頃はカルマノイズが群れで出てくるものでな、鎖の小僧を釘付けにするために、そいつらを呼び寄せてやったんだよ」

 

切歌「こ、これじゃあ瞬は加勢できないデスよ!」

 

調「どうやって呼び寄せたの!?」

 

アドルフ「そんなものは教えるか!」

 

瞬「やむを得ないか…!」

 

 瞬はカルマノイズの群れに向かっていった。

 

セレナ「今度こそ私達…」

 

マリア「アドルフ!」

 

 装者一同はギアを纏い、アドルフへ向かっていったが、ネフィリムが邪魔をした。

 

アドルフ「おっと、まぐれ当たりでも期待したのか?かのアルバート・アインシュタインはこう言った。神はサイコロを振らないと。感銘を受けるよ。増えたネフィリムの餌が足りなくてね…どうしたものかと思っていたが…ここに来てネフィリムの餌が集まるとは。全ては俺が安寧を確定させつつあるという予兆に過ぎなかったわけだ…!」

 

切歌「う、なんかトンデモを思い出して気持ち悪い奴デス…」

 

調「ううん、これと比べたらドクターの方がマシかも」

 

アドルフ「ラプラスの魔物に親愛の情を込めて!さあネフィリム、残らず喰らい尽くせ!」

 

 装者一同は万全の状態でもネフィリムの猛攻に押されていた。

 

切歌「これは…きついデスよ!」

 

調「やっぱり、ネフィリム4体だと…!」

 

アドルフ「コイントスに頼るようなお前達では覆せまいよ。表を出したいなら、俺は最初から両面表のコインを用意する」

 

切歌「そういうのをイカサマというのデス!」

 

アドルフ「反則負けのルールがこの世にあるというなら、ジャッジでも呼んでくるといい」

 

調「こいつ…!」

 

セレナ「アドルフ博士…」

 

マリア「調、切歌」

 

切歌「何デス?」

 

調「絶唱で犠牲になるっていうのはなしだよ」

 

マリア「あなた達がそれを許さないのは知ってる。…お願い、2人の力を貸して」

 

切歌「何でもやるデス!」

 

セレナ「姉さん、何か…あるの?」

 

調「あるよね。マリアなら」

 

マリア「ある。それは…」

 

 その内容をマリアは話した。

 

切歌「んんん…それはうまくいくかもデス」

 

調「やってみる価値はある」

 

アドルフ「いたずらに引き伸ばすのはやめないか。天を仰いだ所で奇跡なんて降って来ない。ネフィリム、片付けろ!」

 

 ネフィリムが近づいてきたのをマリアは待っていた。

 

マリア「2人共、今よ!」

 

調「はーっ!」

 

切歌「デス!」

 

 切歌と調は全方位からアドルフを直接狙った。

 

アドルフ「なっ、全方位から俺を直接…庇え、ネフィリム!」

 

 慌ててアドルフはネフィリムを呼び寄せ、攻撃を防いでもらった。

 

アドルフ「だからまぐれ当たりなどは…」

 

マリア「最初から当てになんていってないわ」

 

瞬「本命はこっちだ!」

 

アドルフ「何ッ!?鎖の小僧がいつの間に…」

 

切歌「さっき、カルマノイズの群れを倒し終わってきたのデス!」

 

 瞬も加わり、切歌と調は周辺の木々を切り倒したのであった。

 

アドルフ「周辺の木々まとめて、だと!?くそっ、鎖の小僧が来た以上、出直しだ!戻れ!俺を護れー!」

 

マリア「あなたは確実を期すために全ネフィリムを戻す…。そういう小物よ」

 

瞬「アドルフは僕が来たから逃げるだろう。今の内に研究所へ戻ろう!」

 

 予想よりも早く瞬が来てしまったためにアドルフはマリア達の策に嵌った後、逃げ出したのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はS2CAの反動で響と翼が元の世界へ帰る羽目になり、代わりに切歌と調が来るのと非人道的な作戦を聞いてしまったマリアの家出騒ぎを描きました。
F資料というものが出てきましたが、それの製作者は皆さんも知っているあの人かも知れません。
次の話はネフィリムがとんでもない事になります。

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