セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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夜空を舞う怪盗姉妹編
59話 怪盗への道


市街地

 

 闇世の中を駆け抜ける2人の人影があった。その人影とは、マリアとセレナの姉妹であった。

 

マリア「…いよいよね(私は…。まだ少し、今から行う事に抵抗を覚えている…。正しい目的のための行為だとわかっているのに)」

 

セレナ「ねえ、姉さん」

 

マリア「何かしら?」

 

セレナ「すごく、いい風だね」

 

マリア「……ええ。そうね!」

 

 そこへ、通信が入った。

 

ナスターシャ『ポイントには到着していますか?』

 

マリア「問題ないわ」

 

ナスターシャ「ターゲットの研究所はあと約4分で一般職員が退社する見込みです」

 

セレナ「軽微の人だけになった所を狙うんですね。わかりました」

 

ナスターシャ『西側から侵入し、保管室へ。複雑なロックが施されていますが、問題とはならないでしょう』

 

セレナ「はい、マム」

 

ナスターシャ『それでは、滞りなく任務を』

 

 そんな中、ナスターシャのいる研究所にノイズ出現の反応が出た。

 

ナスターシャ『待ってください!近隣にノイズの反応が現れています。瞬は元の世界に帰っていて来れないので、救助を優先しましょう』

 

マリア「こんな時に。…しょうがないわね。先にそっちを片付けましょう。行くわよ、セレナ!」

 

セレナ「うん」

 

 残業で逃げ遅れた会社員達にノイズが迫っていた。

 

会社員A「だ、ダメだ…!もう逃げ場が…!」

 

会社員B「残業のせいでこんな事になったのよ!」

 

会社員C「うぅ、せめて死ぬ前に娘に電話を…」

 

 絶体絶命の会社員だったが、マリアとセレナが現れてノイズを蹴散らしたのであった。

 

会社員A「ノ、ノイズを倒した!?」

 

マリア「さっさと…蹴散らしてあげるわ!」

 

セレナ「ここで時間をとられるわけにはいかない!」

 

 2人は次々とノイズを蹴散らしていった。

 

マリア「次、行くわよ!」

 

セレナ「うん!」

 

 軽い身のこなしでマリア姉妹は颯爽と去っていった。

 

会社員B「助かった…の?」

 

会社員C「あれは、一体……?」

 

 マリア姉妹にあっけにとられる会社員達であった。

 

マリア「まさか、本当に怪盗をやる事になるだなんて…」

 

セレナ「頑張ろうね、姉さん」

 

マリア「ええ……頑張りましょう」

 

 ナスターシャから通信が入った。

 

ナスターシャ『ノイズは片付いたようですね。目的のものは正面に見える研究所内にあります』

 

マリア「こっちでも位置を確認したわ」

 

ナスターシャ『予定通り計画を実行しますが、先程のノイズによる警報の影響で、所内の警戒強化が予測されます。警備に見つからないよう、十分注意し、侵入、ターゲットを奪取してください』

 

セレナ「わかりました」

 

マリア「本当にやるのよね…?」

 

セレナ「勿論。だって、このままにはしておけないよ」

 

マリア「…そうね、ごめんなさい。とうに納得したつもりだったのだけど。行きましょう、セレナ」

 

セレナ「うん!怪盗姉妹、出動!」

 

 

 

マンション

 

 これらの出来事の発端は数日前にセレナが来た事が発端だった。

 

マリア『あれは数日前の話。セレナが私を訪ねてきて』

 

セレナ「マリア姉さん、ちょっと相談があるんだけど…」

 

マリア「どうしたの?」

 

セレナ「最近、何だかマムの元気がなくて」

 

マリア「まさか病気とか……!?」

 

 元の世界のナスターシャは7年前の事故の際にマリアを庇ったために脚が不自由になった挙句、病気まで患ってフロンティア事変の時に死亡したため、マリアにはセレナのいる世界のナスターシャも同じ病に侵されたのではないかと思ったのであった。

 

セレナ「そ、そうじゃないの。病気じゃなくて、何か悩み事があるみたいなんだけど」

 

マリア「それは気になるわね」

 

セレナ「うん。だから、マリア姉さんなら何かわかるかなって」

 

マリア「ここでマムの悩みを推理してもどうにもならないわ。一度、訪ねてみましょう。S.O.N.Gに許可をとって私も行くから」

 

セレナ「本当?ありがとう」

 

マリア「妹とマムのためだもの」

 

 

 

研究所

 

 マリアはセレナと共に研究所に来た。

 

マリア「マム、セレナから聞いたわ。何か悩んでいる事があると」

 

ナスターシャ「マリア…。急に訪れたと思ったら」

 

セレナ「私、マムに元気がないのが心配で」

 

ナスターシャ「あなたが心配する必要はないと言ったはずです。それに無断であちらに行き、マリアまで巻き込むとは」

 

セレナ「ごめんなさい…」

 

マリア「マム、何か悩みがあるなら話してほしい。世界は違っても、私達は家族なんだから」

 

ナスターシャ「しかし、これは研究者側の問題です。あなた達が心配する事ではありません」

 

マリア「それでも、話してほしい。私も、セレナも、マムからたくさんのものをもらったわ。だから…」

 

セレナ「力になれるかはわからないけど、せめて一緒に悩みたいんです」

 

ナスターシャ「マリア、セレナ…。わかりました。あなた達がそこまで言うのなら。現在、F.I.Sはとある企業から聖遺物の譲渡を要求されているのです」

 

マリア「どうして聖遺物を?」

 

ナスターシャ「聖遺物とは可能性の塊です。故に、それを欲しがる者は数知れない…。今までも、いくつか聖遺物関連のサンプル提供を要求された事がありました。無論、正しい知識を持たない者達に聖遺物を渡す事はできないと断ったのですが…米国F.I.Sから直接の圧力があり、譲渡を余儀なくされたものもすでにいくつかあります」

 

セレナ「そんな、どうして米国のF.I.Sが…」

 

ナスターシャ「恐らくは米国の有力な議員にコネか何かを持つ者が、聖遺物の取引に絡んでいるのでしょう。厳重な保管および不用意な扱いを行わない旨の確約は取り付けてはいたのですが。先日、ついに聖遺物の影響と思われる事故が発生してしまいました」

 

マリア「聖遺物を侮っているわ…!」

 

ナスターシャ「ええ。しかも、こちらで事故の背景を詳しく調べた所、どうやらその聖遺物を横流しした者がいるようなのです」

 

セレナ「どうしてそんな事…」

 

マリア「人には欲があるのよ。聖遺物ブローカーなんて、冗談にもならないけれど」

 

ナスターシャ「横流しのルートはまだはっきりしませんが、譲渡品のリストにはネフィリムの細胞サンプルなどもあり…」

 

セレナ「ネフィリム…」

 

ナスターシャ「ええ。このままでは、いつか更に重大な事故が起こるのではないかと…」

 

 重大な話にマリア姉妹は返す言葉もなかった。

 

ナスターシャ「悩んでもどうにかできる事ではありません。やはり、あなた達に話すべき事ではありませんでしたね」

 

セレナ「マム…」

 

ナスターシャ「セレナ、マリアをあちらの世界まで送っていってあげなさい。しばらくこちらは忙しいので、少しの間であればゆっくりしても構いません」

 

 セレナがマリアを元の世界へ送ったのと入れ替わるように瞬が来た。

 

ナスターシャ「瞬…」

 

瞬「ナスターシャ教授、司令から様子を見てくるように頼まれました。といっても、セレナのいるこの世界は主に僕が担当してますけど」

 

ナスターシャ「そうですか」

 

瞬「教授、何か悩み事でもあるのでしょうか…?」

 

ナスターシャ「そうですね、簡単に言えば、聖遺物の横流しについての事です」

 

瞬「横流しですか…。兄さんがこの世界の月の女神アルテミスから授かった聖衣が上層部にその存在を知られる前に装者のギアの新たな機能として組み込んだのが幸いだったのかも知れません」

 

ナスターシャ「私もそう思います。聖衣は小宇宙という力が使えなければ稼働すらできない特異な完全聖遺物ですが、扱いを知らない者の手に渡れば大変な事になる可能性もありますからね。来たついでですが、少し手伝っていただけますか?」

 

瞬「わかりました」

 

 

 

市街地

 

 しばらくセレナはマリア達のいる世界でゆっくりする事となった。

 

セレナ「(ゆっくりしてきていいって言われたけど……)はぁ…」

 

 ため息をついた時に切歌と調が出てきた。

 

調「何だか元気ないね。マリアが仕事に行っちゃったから?」

 

セレナ「そうじゃ…ないんですけど」

 

切歌「そうデス!こんな時は!」

 

 切歌はアニメのDVDをセレナに渡した。

 

セレナ「これは…?」

 

切歌「響さんのお友達に半ば強引に渡されたんデスけど、このアニメ、すっごく面白かったデスよ。気に入ったら色んな人に布教して、とも言われたので、まずはセレナの布教デス。きっとこれで元気も出るデス」

 

調「うん。私も見たけど、面白かったよ」

 

セレナ「…ありがとうございます。どんなお話か楽しみです」

 

切歌「感想も絶賛募集中デス!」

 

 

 

マンション

 

 セレナはマリアの住んでいる部屋へ行き、切歌から渡されたアニメのDVDを見る事にした。

 

セレナ「マリア姉さんが帰ってくるまで、暁さんから借りたアニメを見てようかな(暁さんと月読さん、タイプの全然違う2人が面白いっていうなら絶対面白いはず、楽しみ…)」

 

 渡されたアニメは怪盗ものであった。

 

警官『そこまでだ!もう逃げ場はないぞ!今度こそ年貢の納め時だぞ、魏続だか何だか知らないが…』

 

怪盗少女『正義のために盗み取る!私は決して捕まらないわ!』

 

 そう言って怪盗少女は消えた。

 

警部『き、消えた!?』

 

セレナ「なるほど、悪い人からお宝を盗む怪盗少女…。こんなアニメもあるんだ(結構カッコよくて、面白そう…。あの名乗り方とかポーズもいいなあ)」

 

 それを見たセレナはある事が閃いた。

 

セレナ「…あれ?そ、そうだ!これだ!」

 

 そして夕方になり、マリアが帰ってきた。

 

マリア「ただいま、セレナ。ついでにごはんも買ってきたから、一緒に」

 

セレナ「姉さん!私と一緒に、泥棒になって!」

 

マリア「え……っ!?」

 

 セレナの言葉にマリアはショックを受けた。

 

マリア「そ、そんな…!」

 

セレナ「姉、さん…?」

 

マリア「泥、棒なんて……せ、セレナが……グレちゃった……!」

 

セレナ「ち、違うの、そうじゃなくて!」

 

 

 

研究所

 

 怪盗もののアニメを見たセレナは閃いた案をナスターシャに伝えた。

 

ナスターシャ「…なるほど。ギアの力を用いて、密かに聖遺物を取り戻すと」

 

セレナ「はい、マム」

 

ナスターシャ「よい案かも知れませんね」

 

マリア「だけど…泥棒なのよ?盗みを働くだなんて悪い事だわ…」

 

ナスターシャ「元々は不正な方法で横流しされた物です。手段を選んでいる場合ではないのかも知れません。聖遺物の不用意な扱いは極めて重大な事故を引き起こす可能性があるのですから」

 

セレナ「マリア姉さん、これは人助けのため。正義のために悪を貫く、なんて、かっこいい…」

 

 かつて世界に宣戦布告した事があるマリアにとって、セレナの悪意のない、純粋さからくる言葉は古傷をえぐるのに等しいものであった。

 

マリア「うーーっ!(セレナの目が輝いている…)」

 

セレナ「どうしたの?あと、泥棒より怪盗の方がかっこいいんじゃないかな?」

 

マリア「そう、そうね…怪盗……」

 

ナスターシャ「しかし、ギアでの活動は目立ちすぎます。万が一にもあなた達の正体が知られてはなりません」

 

マリア「怪盗……そうか、怪盗型…!マム、それに関しては、いい手段があるわ」

 

 マリアは心象変化の事をナスターシャに教えた。

 

ナスターシャ「まさか、心象によるギアの変化とは…!確かにギアは心象の影響を受けますが、そんな方法が……」

 

マリア「ええ、既に私はいくつかの新型ギアを経験しているわ」

 

セレナ「凄い…。それって私にもできるかな?」

 

マリア「S.O.N.Gの装者はみんな、ギアの変化を経験しているわ。セレナにもできるはずよ」

 

ナスターシャ「未知の機能ですが、『怪盗』の作戦行動に応じた機能を有するギアを手に入れられるならば、試す価値はありそうですね。わかりました。訓練プログラムをこちらで用意してみましょう」

 

 訓練プログラムを考案している最中、瞬も来た。

 

瞬「教授、何をしているのですか?」

 

ナスターシャ「マリアとセレナのギアを怪盗型に変化させるための訓練プログラムを作成している所です」

 

瞬「そうですか」

 

ナスターシャ「私も怪盗について色々と知らなければなりませんからね」

 

瞬「非力ながら、僕も手伝わせていただきます」

 

 そして、訓練プログラムができあがったのであった。

 

ナスターシャ「まず第一に、あなた達は決して正体を知られてはなりません。正体不明で捕まる事がない、それが怪盗です」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

 心得を学んだあと、次のステップに入った。

 

ナスターシャ「F.I.Sのネットワークを用いて、怪盗に関する可能な限りの映画やアニメーションを集めました。すべて視聴してもらいます」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

 視聴が終わった後、マリア姉妹はギアを纏った本格的な訓練に入った。

 

ナスターシャ「怪盗には素早く、軽い身のこなしが不可欠です。尚且つ静かに動けるようになるまで、特訓です」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

 素早く軽い身のこなしをやったものの、音の方に関してはまだまだであった。

 

ナスターシャ「まだまだ音が大きいですよ。常に40デシベル以下で行動できるように!」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

 訓練が一通り終わった後…。

 

セレナ「怪盗の資料、色々用意してくれてたね」

 

マリア「ええ、あの短期間でここまで…。昔を思い出したわ」

 

ナスターシャ「ここまでマリアの言う通り、心象変化を促すための準備は可能な限り行いました」

 

マリア「今なら、いける気がするわ」

 

セレナ「どうすればいいの?」

 

マリア「ここまでの訓練と、『怪盗』を強く思い描きながらもう一度ギアを纏うのよ」

 

セレナ「わかった。一緒にやってみよう」

 

マリア「そうね。行くわよ、セレナ」

 

 マリアとセレナは怪盗を強く思い描き、ギアを纏った。すると、きちんとギアの形が漫画やアニメで出てくる派手な姿の怪盗になっていたのであった

 

セレナ「ほ、本当にギアの形が変わってる…」

 

マリア「形だけじゃないわ。機能も怪盗に相応しいものになっているはずよ」

 

ナスターシャ「これは…なるほど。ではその力、見せてもらいましょう。戦闘訓練で通常ギアとの性能差分を分析します」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

 そして、戦闘訓練で戦闘能力の性能が判明したのであった。

 

セレナ「これで完璧だよね」

 

マリア「ええ、これならいけるんじゃないかしら?」

 

ナスターシャ「まさか、本当にこのような方法で……。シンフォギアの可能性は、まさに汲めど尽きぬ泉です」

 

マリア「私も初めて水着型のギアに変化した時は驚いたわ」

 

セレナ「水着型のギア?見てみたい」

 

マリア「また次の機会にね」

 

セレナ「うん」

 

ナスターシャ「ただ、戦闘テストだけでは『聖遺物を盗む』事についての有用性までは測れません。よってこれより、実戦に近い形での試験を行います。よく聞いてください」

 

マリア姉妹「はい、マム!」

 

マリア「どんな試験を行うのかしら?」

 

ナスターシャ「今夜、この研究所に忍び込み、私の所まで来てください。居場所は継げません。警備の人間や警報装置も動かします。それでも警備を掻い潜り、私の元に辿り着けるかどうか…。これが最終試験です」

 

 そしてそれから、ナスターシャは瞬にある依頼をした。

 

ナスターシャ「瞬、これからあなたのお友達を2人ほど連れてきてくれませんか?怪盗型ギアの最終試験の準備を手伝ってもらいたいのです」

 

瞬「わかりました、ナスターシャ教授。あと2人連れてきます」

 

 瞬は紫龍と氷河を連れてきた。

 

ナスターシャ「手伝いに来てくれてありがとうございます。早速、準備を行ってもらいますよ」

 

紫龍「力仕事なら俺達の出番だ」

 

氷河「早く終わらせてマリアとセレナの最終試験ができるようにするぞ」

 

ナスターシャ「それと瞬、あなたは最終試験でも手伝っていただきますよ」

 

 紫龍と氷河が手伝ってくれた事もあり、準備はすぐに終わった。

 

 

 

 

 そして夜になり…。

 

セレナ「研究所に忍び込むなんて、何だかドキドキするね」

 

マリア「…そうね(どうしてもまだ泥棒をする事に抵抗があるけれど、あんなに目を輝かせてお願いされたら、断れない…!)とにかく、まずはマムの試験をクリアしましょう」

 

セレナ「そう言えば、怪盗としてのチーム名はどうしよう?」

 

マリア「チーム名?怪盗にはカリスマ性も必要という事かしら。何でも構わないわよ」

 

セレナ「でもどうせなら可愛い名前がいいな」

 

マリア「名前ねー…、私達姉妹を象徴するような、巧いネーミングがあれば…」

 

 そう言ってると、時間になった。

 

セレナ「姉さん、そろそろ」

 

マリア「え、ええ。そうね」

 

 マリア姉妹は怪盗型ギアを纏った。

 

マリア「行きましょう、セレナ!」

 

セレナ「うん、姉さん」

 

 

 

研究所

 

 そのままマリア姉妹は研究所へ向かった。

 

マリア「セレナ、こっちよ」

 

セレナ「うん」

 

 そして、研究所の前に来た。

 

マリア「警備がいる。かなりの厳重さよ」

 

セレナ「やっぱり手を抜いてはくれないわね」

 

マリア「マムだもの」

 

セレナ「まずはあの警備を掻い潜って建物に入らないと。そーっと、音を立てないように」

 

 音を立てず、警備を潜り抜ける事に成功した。

 

セレナ「ここのドアから入れ…」

 

マリア「待って!」

 

セレナ「どうしたの?」

 

マリア「何か嫌な予感がするわ。念のため、この枯れ枝で」

 

 枯れ枝をドアの方へ投げると、一瞬で炭になった。

 

セレナ「枝が一瞬で炭に!?もしこれを触っていたら…」

 

マリア「痺れる程度じゃ済まないわね」

 

セレナ「マムは本気なんだ…!」

 

マリア「私の知るマムは、教育に関しては一切手加減しないわ。セレナも知ってるでしょう?」

 

セレナ「うん…」

 

マリア「これも私達の怪盗としての技術を高めるため。気を引き締めてかかりましょう」

 

セレナ「うん!」

 

 罠が仕掛けられていない入り口は見つからなかった。

 

マリア「なかなか安全な入り口が見つからないわね…。この辺りの壁を壊して侵入するのはどうかしら?」

 

セレナ「ダメだよ。怪盗はそんな事しないよ」

 

マリア「…そうかも知れないわね。でも、それならどこから…」

 

 色々歩き回り、ようやく入り口を発見した。

 

セレナ「ずいぶん歩き回ったけど」

 

マリア「ようやく潜入できたわね」

 

セレナ「まずはどこを探すの?」

 

マリア「とりあえずはマムの私室から探ってみましょうか」

 

 マリア姉妹はナスターシャの私室に入った。

 

マリア「ベッドにふくらみが。マム、寝てるの?」

 

セレナ「姉さん、ダメ!」

 

マリア「えっ…?」

 

 セレナはベッドの隙間から何かを発見した。

 

セレナ「ベッドの隙間からピアノ線が」

 

マリア「これは…明らかに不自然な箱につながっているわね。中身は催涙ガスか何かかしら…?」

 

セレナ「もしくはもっと怖い何かかも…。気付かずにお布団を動かしたら、ピンが抜ける仕掛けだったみたいだね…」

 

マリア「こ、こんなものまで…?」

 

 マリア姉妹は次の場所へ向かった。

 

セレナ「こんな見え見えの落とし穴なんて、やーっ!」

 

マリア「はっ!?セレナ!」

 

 マリアは落とし穴を飛び越えようとしたセレナを制止した。

 

マリア「前の落とし穴はダミーよ。その先に本物の落とし穴が」

 

セレナ「ええっ!?」

 

マリア「さっきのゴム弾を避けると実弾に当たる罠もひどかったわね」

 

セレナ「落とし物を拾うと警報が鳴る罠も…」

 

マリア「ここまでの規模の仕掛けを、マムは1日でどうやって……?(やっぱり…瞬達に来てもらった上で準備を頼んだのかしら…?)」

 

 更に進むと、今度はネビュラチェーンまで仕掛けられていた。

 

セレナ「ネビュラチェーンまであるなんて…!」

 

マリア「(瞬も最終試験の邪魔役として参加しているのね。それに、あの鎖には嫌な思い出がいっぱいあるわ…。フロンティア事変の際はあの鎖の前には私達は手も足も出ず、神獣鏡のステルスさえ全く通じない程だったから…)」

 

セレナ「姉さん、ネビュラチェーンはどうやって…?」

 

マリア「あの鎖は気配に反応する鎖よ。下手に狼狽えたりすると鎖は過剰に反応して襲ってくるわ」

 

セレナ「だったら、気配を消してそっと行くしかないね、姉さん」

 

 ネビュラチェーンに気配を探知されないよう、マリア姉妹は気配を消してゆっくり歩き、何とか突破したのであった。そして、最後に心当たりがある訓練の場へ来た。

 

マリア「はぁ、はぁ…もう、ここしかないわね」

 

セレナ「マム、ここまでやるなんて…」

 

ナスターシャ「二人とも、無事来れたようですね」

 

マリア「紙一重だったけどね…」

 

セレナ「合格ですか?」

 

ナスターシャ「まだです。最後の障害は…これです!」

 

 ちょうどシミュレータがあったため、ノイズが最後の障害であった。

 

ナスターシャ「さあ、マリア、セレナ!これを倒す事ができますか!?」

 

セレナ「これが最後の難関…」

 

ナスターシャ「新型ギアの力を示すのです!」

 

マリア「(これって、怪盗と関係あるのかしら…?マム、ちょっと楽しんでる気がするわ)」

 

セレナ「やろう、姉さん」

 

マリア「(まあ、セレナもいい顔をしてるし)ええ!」

 

 最後の難関として、ノイズとの戦闘となった。そして、姉妹の連携でノイズを追い詰めていった。

 

セレナ「とどめは一緒に」

 

マリア「合わせるわ!」

 

セレナ「やああっ!」

 

マリア「はああーっ!」

 

 ノイズを倒したのであった。

 

セレナ「やった、私達の勝ち」

 

マリア「…片付いたわね。マム、これで合格かしら?」

 

ナスターシャ「ええ、合格です。しかし怪盗としては所々危ない部分がありましたね。特に建物などの破壊は極力避けてください。事を大きくしたくないという理由もありますが。何より今回のターゲットには、一般の企業も混じっていますからね」

 

セレナ「はい」

 

ナスターシャ「それに、危険な薬品を扱っている企業も多いので、軽率な行動が大事故につながりかねません」

 

マリア「壊して進もうとしてしまっていたわ…。…彼女の影響かしら」

 

ナスターシャ「ですが今回はよく踏みとどまりました。怪盗ギアとなっても、ギアの戦闘力が落ちる事がないのは確認済みです。これなら実践でも大丈夫でしょう」

 

セレナ「それなら、これでやっと終わり…ふう、ヒヤヒヤした」

 

マリア「正直、いくらマムでもここまでやるとは思っていなかったわ。瞬まで妨害に配置していたぐらいだから」

 

ナスターシャ「ネビュラチェーンを罠に配置していましたので、わかっていたようですね。それでは後は帰って休んで構いません。計画の詳細は明日に。……ああ、警備やトラップは先程復活させたので気を付けて。ターゲットを盗んで帰るまでが怪盗ですよ」

 

セレナ「そ、そんな…」

 

マリア「あれを、また…!?」

 

 トラップが復活した事にショックを受けるマリア姉妹であった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回はマリアとセレナが聖遺物横流しの事を知るのと、それらを取り戻すためにギアを怪盗型に変化させ、潜入の訓練をこなすのを描きました。
瞬は怪盗の活動には直接かかわらず、主に道中のノイズ退治を担当する事になります。
次はいよいよマリア姉妹が怪盗として本格的に活動します。

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