研究所
翌日になった。
ナスターシャ「セレナ、怪我の方はどうですか?」
セレナ「はい。すぐに治療していただいたので、もう大丈夫です」
瞬「ですが、当分の間は戦闘などは控えた方がいいでしょう」
ナスターシャ「そうですか。瞬の言う通りにしなければいけないのですが、それはよかったです。しかし…恐れていた事が起きてしまいました」
マリア「ネフィリムの事ね」
ナスターシャ「そうです。この研究所が提供した、ネフィリムのサンプル細胞が利用されてしまったのでしょう」
マリア「だけど、いくらネフィリムの相貌を持っているからと言って、簡単に起動なんてできないはず」
ナスターシャ「起動の必要はありません。なぜならあの細胞サンプルは、起動状態のネフィリムから抽出されたものですから」
マリア「なるほど、そういう事だったのね…。でも、敵はネフィリムなんて使って、何をするつもりなのかしら?」
セレナ「聖遺物も食べられてしまうのに…」
ナスターシャ「敵の真意はわかりませんが、恐らくは、よほど怪盗の活動が困るようですね。どのような犠牲を払ってでも、怪盗を撃退したいのでしょう」
マリア「くーっ!ヤケを起こした相手ほど厄介なものはないわね」
ナスターシャ「知っての通り、ネフィリムは聖遺物を取り込んで成長します。先日の個体は瞬が倒しましたが、再びネフィリムが現れた時はすぐに倒さなければなりません」
マリア「ええ。聖遺物がずさんな管理課にある今は、なおさら!」
その後、マリア達は部屋に戻った。
セレナ「マリア姉さん、怪我は軽い捻挫だから私も行くよ」
瞬「ダメだよ。当分は戦闘はしてはいけない。無理をすれば、治りが遅くなるだけだよ」
セレナ「でも…」
マリア「(この子はこう言っているけど、私にはわかる。セレナは無理をしている…。瞬もそこに気付いているのね)」
セレナ「…ごめんなさい。姉さんと一緒にいれる事が楽しくて」
マリア「構わないわ。あなたがすぐに無理をして頑張る子だって、私は知ってるもの。瞬が言った通り、しばらく休んでなさい。あなたが回復するまで、1人でも立派にやってみせるから」
響「ここで私が大登場ー!」
そこへ、響がやってきた。
瞬「響…?」
響「私がセレナちゃんの代わりに怪盗を手伝います!」
マリア「でもあなたは怪盗ギアには…」
響「ちょーっと、見ててください!」
響はギアを纏ったが、その姿は一昔前の戦闘ヒロインのような服装の怪盗型であった。
セレナ「か、怪盗ギアになってます…」
響「すごいでしょ?」
マリア「でもいつの間に?」
響「この前報告に戻った時、私もマリアさん達に協力したくて、内緒で訓練していたんです!」
セレナ「1人で練習してできるようになったんですか?」
響「怪盗に興味があるって言ったら、ナスターシャ教授が協力してくれたんだよ」
マリア「なるほど。私とセレナに影響されたって所ね。マムもいつの間に」
セレナ「マムのあの訓練を受けたんですね?」
響「勿論!あれは凄かったなー…。でも、これなら手伝えますよね!」
マリア「そうね…。だけど、一度試させて」
響「わかりました!」
早速、訓練に向かう事となったが、瞬は不安そうにしていた。
セレナ「凄い…」
マリア「確かに、力は十分ね」
響「はい、任せてください」
マリア「それじゃ、よろしくお願いするわ」
響「よーし、私も頑張らなきゃ!」
マリア「(戦いにおいて、この子の力は申し分ない…。頼りになるという事も知っている)」
瞬「(だけど、どうも不安だなぁ…。色々とヘマをやらかしたりしそうだし…)」
響「じゃんじゃん回収するぞー!」
響の人柄を知っているが故、瞬とマリアは不安そうにしていた。
市街地
そして夜になり、出撃した。
マリア「マムから心得は聞いている?」
響「静かに、見つからないで、正体がバレないように。あとは物を壊しちゃダメ!ですよね?」
マリア「そうよ。今回が2人での初任務になる。くれぐれも、慎重にね」
響「はい!ばっちり回収しますよ!」
マリア「……声が大きいわ」
響「すみません!」
マリア「少し心配だけど…侵入しましょうか」
響「はい!」
早速、2人は侵入したが…
響「はあぁぁぁーっ!」
響は全力で走ったのであった。
マリア「なぜ全力で走るの?」
響「いつでも全力が私のモットーですから!」
マリア「だから声が大きいってば!…き、気付かれてないかしら?」
響「ご、ごめんなさい…。ちょっと張り切り過ぎました。慎重に…慎重に…、さーて、お宝はどこかなー…?」
マリア「ああっ、そこは赤外線が!」
響「え?」
マリア「くっ、反応する前に無力化すれば!」
しかし、マリアは狙いを外してしまった。
マリア「外した!?」
そして赤外線トラップに引っかかってしまった。
響「わわっ、何だかすごい警報が!」
マリア「ああっ、もう!私までペースを乱されて!」
響「ご、ごめんなさい」
トラップにかかった事で出てきたのか、アルカノイズが出現したのであった。
マリア「アルカノイズ!ちっ、こちらに気付いて出してきたのね!」
響「これはやっつけちゃっていいんですよね?」
マリア「当然よ!これ以上、騒ぎが大きくなるとまずい!アルカノイズを倒しながら脱出するわ!」
響「え?何も盗まないんですか?」
マリア「捕まらない事と、正体を知られない事が優先!いいわね!」
響「そうでした!そういう事なら…。おおおーっ!」
響は大声を出してアルカノイズをなぎ倒していった。
マリア「声が大きい!」
響「す、すみません…」
マリア「いいから屋上から脱出するわよ!はあーーっ!」
アルカノイズをなぎ倒し、二人は屋上に出た。
響「うわわ、警察の人がすごく集まってますよ!」
マリア「くっ!迂回してターゲットを、と思ったけど、もう離脱するしかないわね」
響「もしかして失敗ですか!?」
マリア「もしかしなくても!」
響「う…ごめんなさい」
マリア「一応、あなたは初任務だったから、簡単そうなターゲットを選んだんだけど…」
響「面目ないです」
マリア「逃げるわよ!」
響「は、はい!」
2人はその場から離脱したのであった。
研究所
そして翌朝になった。テレビを見てナスターシャは笑い、瞬は頭を抱えたのであった。
ナスターシャ「ふふ……」
セレナ「マムがテレビを見て笑ってるなんて、珍しいですね。何を?」
ナスターシャ「このニュースです」
響「どれどれ」
マリア「ええ……」
響「えーっと、『ついに偽物まで現る!?ドタバタコスプレ模倣犯、何も取らずに逃げ出した…!』……」
響「偽物、コスプレ……か、頑張ったのにーっ!」
マリア「頑張り過ぎたのかも知れないわね…」
ナスターシャ「しかし、怪盗ファントムシスターズのファンの仮装扱いとは……」
響「いくら何でもコスプレ扱いはひどいなー……」
マリア「一度は割り切ったはずなのに、またあのギアが恥ずかしく感じてきたわ……」
セレナ「ちゃんと予告状を出さないからですよ?」
マリア「本当に出さなくてよかったわ…」
響「もし予告なんてしてたら……」
ナスターシャ「こういう事もあるでしょう。正体を知られなければ十分です」
響「ですよね!これからも頑張ります!」
瞬「君のそのタフネスは本当に見上げたものだ…」
響の明後日の方向へ暴走する姿勢に瞬は頭を抱えたのであった。
市街地
そしてしばらく経った後の事だった。
マリア「ターゲット奪取、あとは脱出だけ」
響「ふっ、今回もいただきですね」
マリア「ええ。最初はどうなる事かと思ったけど、慣れるものだわ」
響「怪盗ファントムシスターズ、狙った獲物は逃がさないー!ですからね」
マリア「マムの強化訓練を受けて、少しずつ簡単な任務を繰り返した甲斐があったわね。さ、脱出よ」
ところが、アルカノイズが出てきた。
マリア「……相手も腕を上げてるようね」
響「でも、アルカノイズなら!」
マリア「ええっ、撃破して突破するわよ!」
2人はアルカノイズを撃破し、その場から離脱したのであった。
研究所
そして帰還したのであった。
響「聖遺物も哲学兵装も結構取り戻したんじゃないですか?」
マリア「ええ。回収は順調よ」
セレナ「私も、瞬さん直々にそろそろ復帰できるって言われました」
マリア「怪我が軽くてよかったわ。セレナが復帰したら、怪盗は3人に増えたって事になるのかしら?」
響「そこは怪盗だから分身ぐらいするって事で!」
セレナ「ふふ、そんなフィクションの忍者みたいな事、できるわけないじゃないですか」
瞬「いや、忍者はいるし、その忍者は分身もできるんだ」
セレナ「え…?ええっ!?」
ナスターシャ「順調で何よりです。さて、残りの回収対象についてですが」
マリア「ええ」
ナスターシャ「ネフィリムの細胞サンプルの行方と聖遺物を横流ししている者について、もう少しで掴めそうです。そして恐らくそこには、以前に遭遇し、瞬が撃破した獣型のネフィリムがいるでしょう」
セレナ「また現れたら、すぐに倒さないと…」
ナスターシャ「相手もそろそろ、なりふり構っていられないはずです。何をしてくるかわかりません。くれぐれも気を付けて」
マリア「わかったわ、マム。いよいよね…」
公園
あおいは公園にいた。
あおい「(あれから何度か怪盗に遭遇したけれど…。捕まえるどころか、現場に現れるノイズから救われた事もあった。ファントムシスターズ…彼女達は一体、本当に……)」
そこへ、迷子の子供が通りかかった。
あおい「あら?迷子かしら?」
すると、響が来た。
響「君、どうしたの?ほら、お姉ちゃん秘蔵のキャンディあげるから!」
子供「うぐっ…お姉ちゃん、いいの…?」
響「うん。ママと逸れちゃったのかな?」
子供「うん……。ママ…」
響「それじゃあ、お姉ちゃんが一緒に探してあげようー!きっとすぐ見つかるからね、元気出して!」
響の様子をあおいは見ていた。
あおい「(こういう正義感のある子を見ると…嬉しくなるわね。市民を護る警察という仕事に、誇りが持てる気がする)」
響「この子のお母さーん!いませんかー!坊やが迷子になってますよー!」
子供「お姉ちゃん、すごく大きい声!」
響「でしょ?だからきっとすぐに…」
そう言ってると、迷子の子供の母親が来た。
母親「本当にありがとうございました。ほら、今度は手を繋いでいこうね」
子供「うん。お姉ちゃん、ありがとう!」
響「ばいばい。いやー、よかったよかった…」
あおい「迷子のママ探し、お疲れ様です」
響「えっ!?と、友里さん!?」
あおい「え?前に会った事ありましたか?」
響「(しまった!?友里さん、こっちの世界では警察官だったんだ!マリアさんに前に聞いてたのに…!)えーっと、は、はい、以前、お会いした事が…。ありましてですね」
あおい「そうだったんですね。ごめんなさい、思い出せなくて。労いの代わりと言っては何ですが…あったかいものどうぞ」
響「あったかいものどうも!」
あおいから温かい飲み物を渡され、響は喜んだのであった。
響「って、やばっ!もう予定の時間だーっ!」
あおい「何か用事ですか?」
響「そんな感じです!では、私はこれで!」
響は帰っていった。
あおい「ふふ、元気のいい子…」
警官A「警部、こちらでしたか。また予告状です!」
神社
そして夜になった。
響「今度のターゲットは神社…なんですね?」
マリア「この社の神主が個人的に興味を持ち、横流し品を補完しているという話よ」
響「どうしてそんなもの」
マリア「人ならざる力だから、かしらね。超常的な力を手に入れて自分も髪に近づきたい、とか」
響「へえ、変な人ですね」
マリア「身も蓋もない。神社なら構造的に、そう多くの警備は置けないでしょ。さっさと回収しましょう」
響「そうですね。回収しちゃいましょう!」
神社に入り込んだのであった。
マリア「それにしても、境内には警察がひしめいてるかと思ったけど、意外に少ないわね」
響「神社パワーでバリアとか張ってるのかも!」
マリア「今回は哲学兵装だから、神主が使いこなせたらあり得ない話ではないけれど…まあ、ないでしょうね。気を伝って忍び込むわよ」
響「はい!」
2人は気を伝って乗り込み、哲学兵装を回収した。
響「何だかあっさりと…」
マリア「回収できたわね」
響「いいじゃないですか。今日はこれで引き揚げて、晩ごはんにしましょう!」
マリア「そうね。たまにはゆっくり」
警官A「今だ、ネット投下!」
気が抜けた隙を突かれ、2人は罠にかかった。
マリア「ワイヤーのネット!?」
響「うわわ、やっぱり罠だった!」
警官B「大人しくしろ!そいつは超硬質強化炭素繊維ネットだ!」
警官C「いくらお前達でも、そこからは逃げられないだろう!」
あおい「ついに捕まえたわよ、ファントムシスターズ」
響「ど、どうしよう…!」
マリア「(ギアのチアkらならまだ脱出は可能だけど、力尽くで切断すれば、出力で警官を傷つける…!)くっ、どうすれば…」
あおい「署へ連行する前に、あなた達には聞きたい事が」
ところが、2体目の獣型ネフィリムが現れたのであった。
警官A「警部、境内に怪物が!」
警官B「な、何だあの化け物は!?」
あおい「ノイズ…じゃない!何なの!?」
応戦したものの、ネフィリムには効果はなかった。
あおい「9ミリ程度じゃ歯が立たない!応援を!」
ネフィリムの前に警官達は蹴散らされていった。
マリア「今なら!」
場の混乱に乗じて2人はネットを破った。
あおい「くーっ、ファントムシスターズ!あなた達があの化け物を!?」
響「違います!とにかく、あれは私達に任せてください!」
マリア「また仕留めてあげるわ!」
あおい「あなた達は一体…!」
響とマリアはネフィリムに向かっていき、応戦したのであった。
警官D「どうなってるんだ!銃弾が効かないのに彼女はほとんど素手で…!」
1人の警官が銃弾をネフィリムに向けたため、ネフィリムはその警官に襲い掛かった。
警官D「う、うわっ!」
マリア「下がって!」
警官を庇い、マリアが攻撃を代わりに受けた。
マリア「うぐっ!」
響「大丈夫ですか!?」
マリア「ええ、平気よ」
警官E「この…化け物め!」
ネフィリムに銃弾が効かない事に警官達は動揺を隠せなかった。
警官C「ノイズでもないのに、銃が効かない!こんな動物…動物番組でも見た事がない!」
警官達に向けた攻撃を響は庇った。
響「くうっ!動物じゃ、ないですから!」
あおい「まずい、警官隊が却って足手まといになっている…!総員、下がりなさい!」
警官D「は、はい!」
警官C「彼女達に任せるんですか!?」
あおい「…今はそれしかない」
マリア「ありがたい、これでネフィリムに集中できるわ!」
ネフィリムとの戦闘に集中できるようになり、今までよりもマリアは攻撃の手を激しくした。
響「もう1発!」
響は更に攻撃を加えた。
マリア「これで…止め!」
そして、マリアが止めを刺したのであった。
警官B「怪物を、倒した…!」
マリア「…仕留めた!離脱するわよ」
響「そうですね。それじゃ、これで!」
2人は離脱したのであった。
あおい「行ってしまった…」
警官B「おい、お前達大丈夫か?」
警官A「あ、ああ…。だが、あいつらは…」
警官D「あんな怪物相手に…」
警官C「ファントムシスターズの片方、雰囲気変わってないか?」
あおい「あの子達は…やっぱり私達を護ったというの…?」
これで今回の話は終わりです。
今回は響が負傷したセレナに代わり、マリアの相方を務める事になりましたが、色々とヘマをやらかす様子を描きました。
次はいよいよ聖遺物横流しの黒幕との決着を描きます。