セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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70話 最速で突っ走れ!

S.O.N.G潜水艦

 

 それなら、翌日の事だった。

 

翼「……」

 

クリス「目の周りにクマができてるみたいだけど……。大丈夫か?」

 

翼「ああ……。大丈夫だ」

 

クリス「昨日の事、気にしてんのか?」

 

翼「……あのバイクと一緒になら、どんな相手にも負けないと信じていた。しかし、結果は…。私は、防人失格だ」

 

クリス「まだ終わったわけじゃないだろ」

 

翼「しかし、昨日奴が退いたのは気まぐれにすぎない。人々を危険に晒したのは事実だ」

 

クリス「あたしだってあいつに逃げられて悔しいと思ってる。でも、へこんでる暇なんてないだろ!」

 

翼「それは…」

 

クリス「そっちが諦めるなら、あたしが倒してやるからな!」

 

 クリスが行くのと入れ替わるように紫龍が来た。

 

翼「確かに…その通りだな。諦めるには、まだ早い」

 

紫龍「そうだ。そしてお前はもっと速く走り、あの高速型アルカノイズに追いつかねばならないのだからな」

 

 

 

市街地

 

 それから、翼は市街地を回っていた。

 

翼「(…私にできる事は、何だろうか……)」

 

 すると、またまたグッドスピードと遭遇した。

 

グッドスピード「よう、また会いに来たぞ」

 

翼「お前は!性懲りもなく……!」

 

グッドスピード「この前は、俺の勝ちだったな」

 

翼「わざわざ勝ち誇りに来たか!?」

 

グッドスピード「いやいや、そんなつもりじゃないぜ。この前の結果は俺も不本意だったからな」

 

翼「どういう事だ?」

 

グッドスピード「理想のスピードとは程遠かったという事だ。だから途中で回収した」

 

翼「……本当にお前は早さを突き詰めたいだけなのか?ならば、あれで十分だろう」

 

グッドスピード「何…?」

 

翼「私達は追いつく事はできなかったが、上には上がいる。あれ以上の速さに何の意味があるというんだ…!」

 

グッドスピード「…あれで十分だと思うのか?あの程度で……」

 

翼「(声色が変わった…?)」

 

 いつもの馴れ馴れしい態度と声で話していたグッドスピードの声色が変わった事に翼は気付いた。

 

グッドスピード「ふざけるなよ、十分なものか!あれでは俺の理想の足元はおろか、この世で最も速く動ける人間の聖闘士にすら届いちゃいない!まだ…まだもっと、音速や光速の世界にまで到達できる、速くなれるはずだ!そのために、俺は!!」

 

翼「(速さへの異常なまでの執念。これがこの男の本性か!)」

 

グッドスピード「おっと……つい熱くなっちまった……。そうだ、今日は別の事を伝えるために来たんだった」

 

翼「別の事?」

 

グッドスピード「あんた達に最後のチャンスをやる。1週間後の0時、この前と同じ場所でもう一度レースをしよう!」

 

翼「もう一度だと…?」

 

グッドスピード「それまでに俺は最高傑作を仕上げる。せいぜいスピードを磨いて来い!次は何があっても途中でやめたりしない。あんた達が負ければ、即大惨事だ!」

 

翼「…なぜ、競うような事をする。私をレースに参加させる目的はなんだ?」

 

グッドスピード「可能性があるからだ。あんた達は俺を止めるため、もっともっと速さを磨くはずだ。それが俺の研究を加速させる。あんた達には、俺が理想のスピードを手に入れるための糧になってもらう」

 

翼「……お前の考えはわかった。だが、大人しくいう事を聞いてやる義理はないな。この場で捕えてやる!」

 

グッドスピード「ふん、そんな戦闘に興味はない。これで逃げさせてもらうぜ」

 

 テレポートジェムを使い、グッドスピードは逃げてしまった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その後、翼は聞いた話を説明したのであった。

 

翼「ーー以上が、私が聞いた全てです」

 

弦十郎「そうか……。奴を捕らえるチャンスは、1週間後のリベンジマッチという事だな。しかし、今のままでは高速型アルカノイズに勝つ事は…」

 

翼「私はもっと、速くなります。バイクより、もっと……。そのために、私に心象実験を受けさせてください!」

 

マリア「私と調も参加させてください」

 

調「もっと、速くなるために!」

 

弦十郎「ああ、わかった!急ピッチで進めるぞ!」

 

 早速、心象実験を行う事となった。

 

弦十郎「全てはイメージからだ!より速く、より鋭く動く自分を想像しろ!戦いの時だけではなく、日常生活すべて、スピードを意識するんだ!」

 

マリア「それを1週間ずっと!?」

 

調「難しい…」

 

翼「よし、挑戦してみよう」

 

 弦十郎に言われた通り、翼達は日常生活でもスピードを意識する事となった。

 

翼「いただきます…」

 

響「いっただきまーす!何から食べようかなー。鮭もいいけど、こっちの筑前煮も……」

 

 響が選んでいる間に翼はもう食べ終わった。

 

翼「ごちそうさま」

 

響「えええっ!?もう食べ終わってる!?」

 

マリア「私達もごちそうさま」

 

調「ごちそうさま」

 

響「2人まで!?」

 

クリス「食事も高速かよ……!」

 

切歌「調、よく噛まないと体に悪いデスよ?」

 

調「これもスピードを高めるため」

 

マリア「今はなりふり構っていられないわ」

 

翼「では私達は午後の訓練に行ってくる」

 

 翼達はすぐに訓練に向かった。

 

切歌「大変そうデスね……」

 

響「せめて私達は、強くなるためにいっぱい食べる!」

 

 一同の様子を星矢と紫龍は見守っていた。

 

星矢「日常でもスピードを意識するとか、弦十郎はより本格的にし始めたな」

 

紫龍「俺達は日常ではそういうのを意識した事はあまりない」

 

星矢「そんじゃ、翼達の心象実験でも見てくるか」

 

 

 

市街地

 

 翼達は遊園地へ向かっていた。

 

翼「次はジェットコースターか。あまり乗った経験はないが……」

 

調「楽しみ…」

 

マリア「私はどうも、苦手なのよね。あの浮く感じが……」

 

 そこへ、通信が入った。

 

弦十郎『今日行ってもらう遊園地は、この前よりももっとすごいぞ。何でも、世界一のジェットコースターがあるらしい。よりスピードを感じる事ができるだろう』

 

調「期待が高まります」

 

翼「世界一か。相手にとって不足なし!」

 

マリア「今すぐ逃げ出したいわ……」

 

 星矢と紫龍も様子を見に来ており、翼達は一通り心象実験の訓練をこなしていった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして、本部へ戻ってきた。

 

弦十郎「一通りの訓練は終えたな。では、試してみろ!」

 

翼「はい」

 

 ギアを纏ってみたものの、ライダー型に変化していなかった。

 

翼「……くっ、元のギアもままか。……ワタシには、何が足りないのだろうか。他にやった事はないのか!?」

 

マリア「……ほかに何かあったかしら…?」

 

調「……まだあれをやってない」

 

マリア「…ああ、あれがあったわね」

 

翼「では、全力でそれに挑もう!何をすればいいんだ?」

 

調「レースクイーンの恰好をして、F1の観戦です」

 

翼「レースクイーン…!速くなるためならば、望むところだ!」

 

 それから1週間、心象実験の訓練を続けたものの、翼のギアに変化はなかった。そして、指定された当日になった。

 

紫龍「遂にこの日が来たか…」

 

弦十郎「今夜が最後の戦いだ。マリア君、調君はライダー型ギア、翼はバイクで臨んでくれ」

 

翼「私の心象変化が間に合っていれば……」

 

紫龍「…仕方あるまい。あれだけ色々試しても変化しなかった以上、今のままで挑むしかない」

 

エルフナイン「原因がわからず……すみません」

 

翼「エルフナインが悪いのではない。私が至らなかったんだ…」

 

マリア「そう暗くならないの」

 

翼「……ああ、そうだな。瞬と氷河が待機しているとはいえ、私達が負ければ、被害を防げない。相手がどれだけ速かろうと、神速にて打ち破る!」

 

 

 

高速道路

 

 翼達はグッドスピードが来るのを待っていた。

 

翼「……」

 

マリア「あと数分……。また時間ぴったりに来るのかしら?」

 

星矢「そうに違いないさ」

 

調「……あれ?そのバイク……」

 

翼「バイクがどうかしたのか?」

 

調「そこ、汚れてます。泥が跳ねたみたいな」

 

翼「気付かなかったな」

 

調「拭きますね」

 

翼「ありがとう」

 

調「いえ……でも、普段の翼さんなら」

 

紫龍「どうやら、時間通りに来たようだ」

 

 時間通りに高速型アルカノイズが出現した。

 

調「高速型アルカノイズだけ…?」

 

翼「奴め、姿を現さないつもりか!」

 

マリア「おそらくどこかで高みの見物でもしてるんじゃないかしら?」

 

調「どうしますか?」

 

 そのまま翼はバイクに乗った。

 

翼「止めなければいけない事に変わりはない。行くぞ!」

 

調「はい!」

 

マリア「ええ。レーススタートよ!」

 

 他の2人も乗り物に乗り、レースが始まった。

 

星矢「始まったな」

 

紫龍「あとは翼達次第だ」

 

 今回、現れた高速型アルカノイズは前回と同じ3体であった。

 

マリア「敵は3体!この前と同じように、1人1体倒すわよ!」

 

調「うん。私は右のを」

 

マリア「私は左にするわ。翼、あなたは中央の奴を!」

 

翼「心得た(普通の高速型アルカノイズであれば、このバイクでも!)」

 

 今回の高速型アルカノイズは前より速くなっていた。

 

調「やっぱり前より速くなってる…。でも、それは私達も同じ!えいっ!」

 

 調が一番最初に高速型アルカノイズの1体を撃破した。

 

調「まずは私が一番乗り」

 

マリア「次は私ね!はーっ!」

 

 続いてマリアも高速型アルカノイズを撃破した。

 

マリア「この程度では前哨戦にもならないわね。残るはあと1体!」

 

翼「せいっ!」

 

 しかし、翼は攻撃を当てられなかった。

 

翼「ちっ……ちょこまかと!これで決める!」

 

 次の一撃でようやく最後の高速型アルカノイズを撃破したのであった。

 

翼「ふう、片付いたか…」

 

調「ここまでは、この前と同じ。ここから……」

 

マリア「……来るわよ、真打ちが!」

 

 予想通り、赤い高速型アルカノイズと普通の高速型アルカノイズ2体が出現したのであった。

 

翼「現れたか!」

 

調「……おまけもついてますね」

 

マリア「前回のような結果にはさせないわ!」

 

翼「ギアの変化がなかろうと、必ず止める…。それが私の使命だ!」

 

 抜かれまいとする翼達であったが、赤い高速型アルカノイズの速さは相変わらずであった。

 

マリア「くっ…やはり速い!だけど!」

 

調「これを止めないと」

 

翼「ああ、私達でやるしかない!速度を上げるぞ…!」

 

マリア「わかったわ」

 

調「了解!」

 

翼「はああーっ!」

 

 翼はバイクの速度を上げた。

 

調「すごい、超高速型を追い上げてる!」

 

マリア「でも、あんな無茶な走りをしたら」

 

???「マリアの言う通りだ!」

 

 声がすると、マリア達の後ろにいつの間にか星矢と紫龍が走ってついて来ていた。

 

マリア「星矢、紫龍!」

 

星矢「突っ立っておくのも暇なんでな、走って観戦しに来たぞ」

 

調「走って観戦に…」

 

紫龍「翼は焦っている。それ故に一気に勝負を決めようとしているのだろう」

 

 紫龍の予想通り、翼は焦って勝負を決めようとしていた。

 

翼「はああーっ!」

 

 赤い高速型アルカノイズに一撃を入れようとした翼であったが、赤い高速型アルカノイズは速度を上げて回避した。

 

翼「な…!さらに速度が上がるだと!?くっ、うあああああっ!」

 

 無茶な運転が祟り、翼のバイクはスリップしてしまった。

 

マリア「スリップ!?」

 

調「大丈夫ですか!?」

 

翼「…あ、ああ。バイクも私も無事だ。すぐに追いつく」

 

マリア「わかったわ。その言葉、信じてるわよ!」

 

調「このまま、超高速型を追います!」

 

 2人は先へ行き、星矢も観戦のために2人の後を追うように走っていったが、紫龍は立ち止まっていた。

 

翼「早く…追いつかねば…!」

 

 そこへ、グッドスピードが来た。

 

グッドスピード「本当に追いつけると思っているのか?」

 

翼「お前…!こんなところに!」

 

グッドスピード「わかるぜ、どうしてあんたが勝ちを焦ったのか」

 

翼「な…っ!」

 

グッドスピード「まともにやり合っても勝ち目がないと悟ったんだろ?だから、引き離される前に勝負をつけようとした。結果、八ドリングに失敗してスリップしたってわけだ。そこの黄金聖闘士もだいたいはそれを察していたようだな」

 

 グッドスピードの言った事に紫龍は頷いた。

 

翼「違う、黙れ!私は、負けを認めてなど……!」

 

グッドスピード「ふん、なんとでも吠えればいいけどな。俺は、あんたに失望した。もうレースなどどうでもいい。どうせあの2人も追いつけやしないだろう。宣言通り、このまま都心部に突っ込ませてやるよ!」

 

翼「くっ…」

 

紫龍「翼、言われっぱなしでいいのか?このまま諦めれば、大惨事だ」

 

翼「私は…諦めない!諦めるわけには、いかない!」

 

 マリアと調は赤い高速型アルカノイズを追っていたが、引き離される一方であった。

 

調「マリア、どんどん離されてる!」

 

マリア「くうーっ!まだ速度が上がるというの!?(…翼、私達は絶対にあきらめない。だからあなたも、さっさと来なさい!)」

 

星矢「(取り決めがなきゃ、俺が直々にあのアルカノイズを追い越して倒せるけど…ここは紫龍が翼に喝を入れて立ち直らせるのに賭けるしかねえな…!)」

 

 もどかしく思いながらも、星矢は2人の後を追う形で観戦していた。一方、グッドスピードが複数の高速型アルカノイズを大量に放った。

 

翼「高速型が大量に…!」

 

グッドスピード「あんたにはこいつら程度の相手がお似合いだ。俺は向こうの決着を見届けに行く」

 

翼「待て!」

 

グッドスピード「じゃあな」

 

 グッドスピードはそのまま赤い高速型アルカノイズの方へ行った。

 

翼「……くそっ!はああーっ!」

 

 大量の高速型アルカノイズが邪魔して翼は先へ進めなかった。

 

翼「(こんなところで時間をとられている間にも、超高速型アルカノイズは…。いや、まだだ!心象変化さえ起こせれば…)集中しろ…、速さを、誰よりもスピードを求めるんだ…。バイクよりも、もっと上のスピードを!頼む……ライダー型ギアに、変わってくれーー!!」

 

 しかし、変わらなかった。

 

翼「ダメ、だったか…」

 

紫龍「違うな、お前に足りないものがあるから変化できないんだ。それを考えろ!」

 

翼「足りないもの…わからない…。今の私にできる事はもう…」

 

???「何、ぼさっとしてんだ!」

 

 銃弾と共に来たのはクリス達であった。

 

クリス「ちっ、まったくちょこまかと…」

 

翼「雪音!」

 

響「はあああーっ!」

 

切歌「行くデスよ!」

 

 3人の攻撃はかわされてしまった。

 

翼「お前達!どうして…」

 

クリス「どうしても何もあるか!」

 

響「私達も戦います!」

 

翼「しかし、高速型のスピードには」

 

紫龍「あの3人が何もせずにいたとでも思っているのか?見てみろ」

 

 紫龍が言った通りに見てみると、3人は連係で高速型アルカノイズを倒したのであった。

 

翼「高速型を…倒した!?」

 

クリス「あたしらだって遊んでたわけじゃないんだ。こうやって連携すりゃ倒せる!」

 

響「秘密特訓のかいがあったね!」

 

切歌「大変だったデスよ……」

 

翼「3人とも…(そうだ、私は……、どうしてできないと決めつけていたんだ。私には、バイクがある!)」

 

紫龍「立ち止まっている暇はないぞ。すぐに出発してあの超高速型を追うんだ!」

 

響「ここは任せてください!」

 

切歌「おいしいところは譲るデスよ!」

 

翼「ああ、わかった!ありがとう、3人とも!」

 

 翼は観戦している紫龍と共に出発した。

 

翼「もっとだ、もっと速く走ってくれ…!(追いつけるか…いや、私達なら、きっと!)」

 

 そこへ、通信が入った。

 

マリア『やっと立ち上がったのね、翼!』

 

翼「ああ、遅くなったな」

 

調『超高速型は依然加速中です』

 

マリア『あなたの力が必要なの!ギアを変化させなさい!今度こそ!』

 

翼「わかっている!しかし、先程も」

 

紫龍「言ったはずだ、翼!お前の心象変化に足りないものがあるから変化できないと!それを見つけてみせろ!」

 

翼「私に足りなかったもの。私が、見落としていたもの……それは……」

 

 ようやく翼は自分が見落としていたものに気付いた。

 

翼「そうか、私は……スピードの停滞を相棒のせいにして、1人だけで速さを求めようとしていた……。これまでずっと、一緒に走ってきたというのに…!限界を超えるならば、お前も一緒にだ。ついてきてくれー!!はあああーっ!」

 

 足りないものに気付き、土壇場で翼はギアの変化に成功したのであった。

 

翼「いざ、友と往かん!」

 

紫龍「やっと変化できたな。お前が飛ばすのと共に俺もスピードを飛ばすぞ!」

 

 翼と共に紫龍も閃光のように駆けたのであった。

 

クリス「2人ともあっという間に見えなくなったな」

 

響「今、翼さんが向かった方で青い光がはじけたような…」

 

切歌「何が起きてるんデスか!?」

 

クリス「無効はみんなが何とかしてくれる。あたし達は残りを片付けるぞ!」

 

響「うん!」

 

切歌「やるデス!」

 

 翼と紫龍はあっという間にマリア達に追いついたのであった。

 

翼「遅くなったな、2人とも」

 

マリア「翼、その姿は…!」

 

調「心象変化、成功したんですね」

 

マリア「もう遅いのよ…」

 

調「ごめんなさい、私達はもう…」

 

翼「すまない…無理をさせたな」

 

マリア「いいのよ。その代わり、しっかり仕留めなさいよね」

 

翼「ああ、任せろ!」

 

紫龍「星矢、俺達は最後まで見届けるぞ!」

 

星矢「わかってる!」

 

 3人とも光の筋になったかのように駆けたのであった。

 

調「すごい…一瞬で光の筋になっちゃった…」

 

マリア「それでも星矢と紫龍方が翼に速度を合わせてるだけだわ。頼んだわよ……」

 

 星矢と紫龍が観戦のために後を追う中、翼は忘れていた感覚を思い出していた。

 

翼「(耳元で鳴る風の音、目まぐるしく変わる景色、バイクと一体になったようなこの感覚……。この感覚を、忘れていたなんて!)すまなかったな、大切な相棒を放っておいて……。だが、もう独りにはしない。ともに行こう!もっと速く、奴の所まで!」

 

 そして、赤い高速型アルカノイズに追いついてきたのであった。

 

星矢「見えたぞ!」

 

紫龍「この一瞬が勝敗の分かれ目になる!」

 

 紫龍の言った通り、勝敗の分かれ目の瞬間が訪れようとしていた。

 

翼「ついに…!とらえたぞ、アルカノイズ!はああーっ!」

 

 そして、翼は赤い高速型アルカノイズに攻撃を加え、撃破したのであった。

 

翼「私達の前は、誰にも走らせん!!」

 

 その様子をグッドスピードは見ていた。

 

グッドスピード「……いいものを見せてもらった。これじゃ、音速の世界への突入は当分先だろうな…」

 

 ちょうどS.O.N.Gの職員に取り囲まれた。

 

S.O.N.G職員「動くな!お前を拘束する!」

 

グッドスピード「ああ、抵抗はしない。どこへなりと連れていけばいい」

 

 大人しく捕まったグッドスピードに装者達はおかしく思っていた。

 

クリス「なんだあいつ、やけにおとなしく捕まったな」

 

切歌「だけど、これでやっと事件解決デス!」

 

マリア「お疲れ様、翼」

 

調「すごかったです」

 

翼「……ありがとう。だが、上には上がいるし、あれはこいつのお陰だ」

 

マリア「あなたとバイク、両方よ。あなた達は一心同体なんだから」

 

翼「ああ、そうだな」

 

 そこへ、響が来たのであった

 

響「翼さーん!」

 

翼「どうした?」

 

響「捕まった錬金術師さんが、翼さんと話がしたいって!」

 

 大人しく捕まったグッドスピードのところへ来た。

 

グッドスピード「やればできるじゃねーか。いい走りだった。……俺の完敗だ」

 

翼「お前は本当に速さにしか興味がないんだな。……教えてくれ。本当は、アルカノイズを街に突っ込ませるつもりなどなかったのではないか……?」

 

グッドスピード「さあ、どうだかな。おっと、もう時間みたいだ。それじゃあな」

 

 グッドスピードは連行されていった。

 

グッドスピード「おい、そこのバイク乗り!あの速さ……衰えさせるなよ?俺がそれを超え、音速や光速の世界に入る日までな…ははっ!」

 

星矢「あいつ、まだ音速や光速の世界に入るのを諦めていないようだぞ」

 

紫龍「それだけ、スピードに執着しているのか…」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 それから、しばらく経った後…。

 

翼「この前は無理をさせた。隅々まで点検をせねばな。(小さな傷がついている…。こちらのパーツも、傷んでいるようだ。こんなになるまで、頑張ってくれたんだな……)よし、今日は完璧にメンテナンスしてやるからな、相棒!」

 

 他の面々は集合した。

 

弦十郎「捕えた錬金術師の取り調べについてだが、尋問に対して素直に供述しているようだ」

 

マリア「あれほど厄介な相手だったけど、負けを認めた途端に潔いのね」

 

弦十郎「ああ。素性や動機もわかってきた」

 

沙織「グッドスピードは元々、将来を渇望されたバイクレーサーだったそうです。ですが、とある事故による怪我で、レーサーとしての将来が閉ざされてしまい、その体を治す方法を探していた際に錬金術に出会ったそうです」

 

星矢「あいつ、元レーサーだったのか!」

 

クリス「そんな経緯があったんだな…」

 

響「あれ?でも、体を治すためだったのに、どうして高速型アルカノイズの研究を…?」

 

弦十郎「さあな。体を治す事が不可能とわかったのか、それともアルカノイズの可能性に惹かれたのか……速さを追求できるなら、方法は何でもいいと供述しているようだが……理解に苦しむな。だが、その過程で聖闘士の存在も知ったらしい」

 

調「……速さという理想に憑りつかれてたんですね」

 

マリア「そんな考えを持っていたからこそ、速く走る素質のある翼に興味を持ったのかしら?」

 

切歌「なんにしても迷惑極まりないデス!」

 

弦十郎「そうだな。どんな理由であれ、犯した罪は償ってもらう事になるだろう。ところで、翼の姿が見えないが…」

 

響「あれ?確か先に来てバイクの点検をするって言っていたような……」

 

弦十郎「なるほどな。大方、時間を忘れるほど夢中になっているんだろう。後で、今の話を伝えておいてくれるか?」

 

響「はい、わかりました!」

 

マリア「時間を忘れてバイクいじりだなんて、あの錬金術師と似たものを感じるわね…」

 

調「翼さんも、理想に向かって突き進む人だから」

 

クリス「待ってたらいつまでも帰ってこなさすだし、こっちから行ってみるか」

 

切歌「翼さんが相棒とどんなふうに過ごしているのか、気になるデス!」

 

 一同は翼の様子を見に行ったが、翼は寝ていた。

 

紫龍「どうやら、寝ていたようだな」

 

切歌「バイク、ものすごくピカピカデス…」

 

クリス「よっぽど念入りに磨いたんだろうな」

 

マリア「このバイク、何だか誇らしげに見えると思わない?こうして翼をしっかり支えて……」

 

調「うん。さすが相棒」

 

響「そうですね!」

 

 ちょうど、翼が起きそうな様子を見せた。

 

響「あわわわわっ……」

 

星矢「静かにしとけよ…」

 

響「う、うん」

 

 気持ちよさそうに翼は寝ていた。

 

響「よかったぁ…」

 

マリア「疲れてそうだし、邪魔しないようにしなくちゃね」

 

クリス「それにしても、こうして見るととても有名なアーティストには見えないな」

 

切歌「そうデスね。でもそんなギャップも、ものすごく翼さんデス」

 

響「……このまま、そっとしておきましょうか?」

 

切歌「そうデスね」

 

紫龍「そうしよう。気持ちよさそうに寝てるからな」

 

マリア「ふふ、ゆっくりお休みなさい」

 

調「お疲れ様でした…」

 

翼「…行くぞ、相棒…」

 

 寝言を言いながら寝てる翼であった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回は超高速型アルカノイズとの決着を描きました。
今小説のグッドスピードの目的がいずれは音速や光速の世界に突入するというのにしたのは、青銅でも音速、黄金ならば光速で動ける聖闘士というわかりやすい目標ががいるためという事にしました。
これでBeyond the Speed編は終わり、次は燃えよ、カンフーマスター編になります。

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