セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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燃えよ、カンフーマスター編
71話 チャイナ型ギア


リディアン

 

 高速型アルカノイズの事件からしばらく経った日の事だった。

 

クラスメイトA「ねーねー、知ってる?今、この街に中国雑技団が来てるらしいよ」

 

クラスメイトB「私、お姉ちゃんと見に行ったよ。ドラとか剣とか、迫力がすごかった!」

 

クラスメイトC「テレビちゃ見た事あるけど、やっぱ生は違うかー!」

 

切歌「ドラ?剣?中国雑技団とはなんデスか?」

 

クラスメイトB「実際見たきたらいいよ!実は…じゃーん、今日のステージのチケット!」

 

 クラスメイトは切歌に中国雑技団のステージのチケットを見せた。

 

クラスメイトB「お父さんがたくさんもらってきたから、みんなにもあげるね」

 

切歌「おおお、ありがとうデス!」

 

 切歌はクラスメイトからチケットを2枚もらい、調の所に来た。

 

切歌「というわけで、チケットを2枚もらったんデスよ。調、一緒に行くデス!」

 

調「せっかくだから行きたいけど……、今日は日直だから、遅くなりそう」

 

切歌「それはうっかりしてたデース…。じゃあ日直が終わってから…。はっ!それだと、間に合わなそうデス……」

 

調「よかったら別の人と行ってきて。私は、切ちゃんから話を聞いて楽しむから大丈夫」

 

切歌「それは責任重大デスね。任されたデス!」

 

調「楽しんできてね」

 

 

 

市街地

 

 早速、切歌はと一緒に行こうか考えていた。

 

切歌「さて、誰を誘って見に行くデスかねー!マリアはたしかお仕事のはず……。エルフナインはどうデスかね。でも今から誘っても間に合わないデスかね?うーん……」

 

 そこへ、クリスが通りかかった。

 

クリス「どうした?1人でうんうん唸って」

 

切歌「ナイスタイミングの登場デス!実は、中国雑技団のチケットを2枚もらったんデス。それで、一緒に行く人を探していたんデス」

 

クリス「中国雑技団?名前は聞いた事あるけど……」

 

切歌「ドラがジャーンって鳴って剣がシャキーンってなって、とにかくすごいらしいんデス!!」

 

クリス「お前……その説明で伝わると思ってるのか…?」

 

切歌「ふっふっふ、チラシももらっているんデスよ。これだけ言ってもわからないなら、見てみるといいデス」

 

 クリスも中国雑技団のステージを見に行く事となった。

 

クリス「これは……確かに凄そうだな!」

 

切歌「わかってもらえてよかったデス!」

 

???「元気そうだね、2人とも!」

 

 突然の声の主は奏であった。

 

切歌「わわっ!ビックリしたデス!」

 

クリス「な、何でここにいるんだ!?」

 

奏「本部同士の情報交換と、翼に会うためにね。そのついでに、ちょっと散歩してたんだ。それで、何がすごいって?」

 

切歌「実は、中国雑技団がこの街に来てるんデスよ」

 

奏「へえ、面白そうじゃないか。それ、チケットかい?」

 

切歌「そうデス!2枚もらったデス」

 

奏「じゃあ3人で見ようか。さ、行こう!」

 

クリス「ちょ、待てよ!チケットは2枚だって!」

 

奏「大丈夫大丈夫、あたしは自腹で出すから。さー行こう、すぐ行こう」

 

 先に奏は向かった。

 

クリス「強引だな……。でも正直、あたしも気になってきた……」

 

切歌「みんなで中国雑技団を鑑賞デース!!」

 

 3人は中国雑技団のステージを鑑賞したのであった。

 

切歌「いやー、すごかったデース!チャイナドレスでのアクロバット!」

 

クリス「ナイフ投げもすごかったな。目隠しでギリギリだったぞ!?」

 

奏「華麗かつダイナミックって感じだったね!それに、あのバランス感覚はどうやったら身に付くのか……」

 

切歌「ドラがジャーンって鳴って剣がシャキーンってなって、とにかくすごかったデスよね!」

 

クリス「ああ、やっと言ってた意味が理解できた」

 

切歌「血湧き肉躍るとはこの事デス!思わずテンションうなぎのぼりデス!中国4千年、恐るべしデス!ハイーッ!アイヤー!」

 

 雑技団の動きを切歌は真似してみた。

 

奏「あはは、なかなか様になってるじゃないか。そうだ。この前弦十郎のダンナに聞いたんだけど、こっちの本部には心象実験とかいうプログラムがあるんだってね。それを使って、ギアに中国4千年の力を発現させる事はできないかな?」

 

切歌「それはいいアイデアデス!それができたら、パワーアップ間違いなしデス」

 

クリス「あんな動きができたら、戦いのバリエーションが増えそうだもんな。オッサンはああいうの詳しそうだし、ちょうどいい」

 

奏「そうなのかい?あーそうか、こっちじゃ映画の好みが違うんだったね」

 

クリス「こっちのオッサンはアクション映画が基本だな」

 

奏「おんなじ人間なのに趣味が違うなんて……」

 

切歌「並行世界の真っ赤な不思議デス!」

 

クリス「摩訶不思議な」

 

奏「ふふ、仲がいいんだな」

 

クリス「なんでそうなるんだよ……。いいから、とっとと行くぞ!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 切歌達は本部に来た。

 

切歌「心象実験をさせてほしいデス!」

 

弦十郎「いつになく気合十分だな!それで、心象実験がしたいとはどういう事だ?」

 

クリス「中国雑技団のステージを見てきたんだ。あんな風に身軽に動けたら、どんな攻撃も躱せそうだと思ってな」

 

奏「足場が悪くても、バランス感覚がよければ戦えるしね」

 

切歌「華麗に敵と戦うデス!」

 

クリス「つーわけで、中国4千年の歴史を戦いに活かしたいんだ」

 

エルフナイン「なるほど……中国4千年の歴史ですか。そうだ!それなら、ちょうどいい心象実験プログラムがあります」

 

弦十郎「もしや、あれか!」

 

切歌「あれって、どれデス?」

 

エルフナイン「先日完成したプログラムなんです。様々な中国の文化に触れる事で、チャイナ型ギアを発現させる事を目的にしています」

 

切歌「チャイナ型ギア!?それを纏って、ジャーンでシャキーンがしたいデス!」

 

クリス「面白そうだな!」

 

弦十郎「うむ!では、さっそく心象実験プログラムを行うとしよう!」

 

 その様子をちょうど情報交換のために来ていた童虎も見ていた。

 

童虎「こりゃ、面白そうなものが見れるぞ」

 

 切歌達はシミュレータに来た。

 

切歌「どんな事やるんデスかね」

 

奏「中国の文化に触れるって言ってたけど…。やっぱ拳法かな?アチョーッ!なんつって」

 

クリス「中国なら中華料理とかもあるよな?」

 

切歌「満漢全席食べ放題デスか!?」

 

クリス「チャイナ型ギアの前に、食いしん坊型ギアとかになりそうだな…」

 

切歌「それも捨てがたいデスが……。『気』を練るのはどうデス?スー……コオォォ……って体が光るデス」

 

奏「あはは、そりゃ強そうだね。ほかに中国っぽい事ってなんかあるかな。えーっと、卓球……とか?」

 

切歌「パンダ、パンダデス!」

 

クリス「なんだよ、パンダって。なんか、あたしらの中国のイメージ貧困だな…」

 

 一方、弦十郎は発令所にいた。

 

弦十郎「3人はシミュレータルームに行ったか。いよいよだな」

 

童虎「弦十郎、わしも見させてもらうぞ」

 

弦十郎「そういえば、向こうの聖域との情報交換もあったな」

 

慎次「今回の心象実験プログラムは、どういったものなんですか?」

 

エルフナイン「『中国4千年の極意に触れる心象実験プログラム』、これは、弦十郎さんに監督してもらい作成したものなんです」

 

弦十郎「そう……俺が今まで見てきたアクション映画のすべてを凝縮した、熱い想いの結晶がこのプログラムだ!」

 

童虎「ほう…面白そうじゃな」

 

あおい「そ、それって……」

 

朔也「物凄くハードなのでは……」

 

 童虎は感心していたが、あおいと朔也は不安そうにしていた。一方の切歌達はギアを纏っていつでもできるように準備をしていた。

 

弦十郎『お前達、準備はいいか?』

 

切歌「いつでもOKデス!」

 

奏「どんな事をするんだい?」

 

弦十郎『まずはさまざまな中国武術の修行をする事で、新たなギアへの心象変化を促す!』

 

クリス「へえ、面白そうだな」

 

切歌「かっこいい武術がいいデス!」

 

弦十郎『そう焦るな。まずは修業に相応しい場所に移動してもらおう』

 

朔也『背景、切り替えます』

 

 背景がリディアンに変わった。

 

切歌「ここは……学院デス!?ここでいったい何をするんデスか?」

 

弦十郎『ここで行うのは、「男の鍛錬」だ!往年の映画スターさながらに、中国の修行を体験する事ができる』

 

クリス「いわゆるカンフー映画ってやつか?」

 

切歌「あまり見た事はないデスけど……」

 

奏「試してみる方が早い。さっそくやってみよう」

 

 早速、行ってみる事にしたのであった。

 

クリス「何だ?あれ……」

 

奏「サンドバッグがいっぱい、ぶら下がってる……?」

 

弦十郎『サンドバッグすべてに頭突きを当てながら進むんだ。これは少林寺式の修業だ!』

 

クリス「頭突きって……マジか……?」

 

切歌「さすが少林寺、なかなか面白い修業デス。行くデスよ、やあーーっ!」

 

 早速、頭突きしてみたが…。

 

切歌「い、痛あーっ!こんなの続けたら、頭が悪くなっちゃうデスよ!」

 

クリス「それは……いや、言わねーでおく」

 

切歌「今なんて言おうとしたんデス!?」

 

 頭突きをこなしていったのであった。

 

弦十郎『次は窓にワックスを塗り、そして拭き取るんだ!』

 

奏「窓に……ワックスを塗る、ワックスをふき取る!」

 

切歌「ワックスを塗る、ワックスをふき取る!」

 

クリス「ワックスを塗る、ワックスをふき取る!」

 

 3人はこなしていったが…。

 

クリス「って、ただの掃除じゃねーか!ほんとにこれが修業なのかよ!」

 

童虎『黙ってやるのじゃ。きっちりこなせば修行になるぞ』

 

 色々こなし、いよいよ『男の鍛錬』は最後となった。

 

弦十郎『次で『男の鍛錬』は最後となる』

 

クリス「ふー、やっとか」

 

弦十郎『カンフー映画には欠かせない要素で見た目にも派手なアクション。それが、落下だ!』

 

 突然、地面がなくなったのであった。

 

奏「え…?」

 

クリス「じ、地面がなくなって…」

 

切歌「落ちるデエエエエース!」

 

 そのまま落下したのであった。

 

切歌「いたたた……おしりが…。もう、死ぬかと思ったデスよ!」

 

クリス「頭突き、掃除、落下って…、何考えてんだあのオッサン!」

 

奏「本当に武術の修業なのかい…?」

 

弦十郎『勿論だ。頭突きは人間の急所である首を、ワックスは武術に必要な受けの動きを鍛える修業だ』

 

クリス「意外と、理にかなってる…のか?」

 

切歌「あの動きには、ちゃんと意味があったデス……!…あれ?じゃあ、校舎から落とされたのはなんの修業デスか?」

 

弦十郎『心の鍛錬もまた修業!ピンチを切り抜けるほど、人間は成長するものだ』

 

切歌「聞かなきゃよかったデス…。心象変化を起こせるのか、不安になってきたデスよ……」

 

 背景がリディアンから中華街になった。

 

弦十郎『次の舞台はここだ!』

 

クリス「ここは…中華街か?」

 

切歌「いい匂いが漂っている気がするデス。お腹が減ってきたデス……」

 

弦十郎『お前達には、動物のマネをして戦ってもらう!』

 

クリス「な…なんでだよ!中国武術の修業だろう?どうして動物のモノマネなんてしなきゃならないんだ!?」

 

弦十郎『ふっ…そう思うのも無理はない。だが、象形拳というれっきとした中国武術だ。蛇拳や獅子拳など…武術に動物の動きを取り入れる事で体の限界を超えた力を引き出そうとしたものなんだ』

 

奏「へえ…さすが中国。いろんな武術があるんだね」

 

切歌「蛇拳、獅子拳……どれもかっこよさそうデス!」

 

弦十郎『個々の特性を考えて、もっとも適合する動物を考えてある。まず、奏は鷹…鷹拳だ!』

 

奏「鷹か、強そうだな」

 

弦十郎『次に切歌君は、カマキリ…蟷螂拳だ!』

 

切歌「カ、カマキリデスか?」

 

弦十郎『そしてクリス君は猫……猫拳だ!』

 

クリス「あたしが、猫……!?」

 

奏「鷹拳って言われても…具体的にはどうしたらいいんだい?」

 

弦十郎『すべては、実戦の中で掴んでもらう!さあ、敵が出現するぞ』

 

クリス「マジかよ……。ずいぶん乱暴だな…!」

 

弦十郎『ふっ、それが修業というものだ!』

 

 シミュレータに中華風のノイズが出現したのであった。

 

クリス「やるしかないな!でも、マネしろって言っても、猫なんてゴロゴロしてるだけじゃ……。こ、こんな感じか?」

 

 恥ずかしいと思いながらも、クリスは猫の動きをしてみた。

 

奏「鷹か…。両手を広げて、こう?」

 

 鷹の動きを取り入れ、クリスと共にノイズに攻撃したものの、簡単にかわされて反撃を受けた。

 

クリス「ちっ…」

 

奏「あんまり、うまくいかないね」

 

切歌「次はあたしの番デス!イガリマが鎌だからというだけの理由でカマキリにされた気がするデス…。でも、やるからには、やってやるデス!あたしは、カマキリ……カマキリ…はっ!」

 

 切歌は元々のセンスがよかったのか、あっという間にカマキリの動きをものにしてノイズを撃破したのであった。

 

切歌「これがカマ切歌の蟷螂拳デス!」

 

童虎『ほう…切歌は純粋な分、入り込みもなかなかのものじゃな』

 

クリス「やるな……あいつ」

 

奏「ふふ、本当にカマキリみたいだったね」

 

弦十郎『いいぞ、切歌君。切歌君のようにその動物になりきる事が肝心だ。ただマネをするだけでは、象形拳は体得できないぞ!』

 

奏「なるほどね」

 

クリス「なんであたしがそんな事……」

 

弦十郎『ほう、クリス君はもう音を上げるのか?』

 

クリス「ちげーよ!ただちょっと……」

 

奏「恥ずかしいんだ?」

 

クリス「全然恥ずかしくなんかねー!こうなったら、完璧になりきってとっとと終わらせてやる!」

 

奏「そうこなくちゃ!敵が来る、迎え撃つよ!」

 

 再び中華のコスプレをしたノイズが現れたのであった。

 

クリス「あたしは猫……身軽でしなやかに…躱す!」

 

 覚悟を決め、猫のように身軽でしなやかに敵の攻撃をかわした。

 

奏「鷹のように素早く……狩る!」

 

 奏も鷹のように素早い動きでノイズを倒したのであった。

 

奏「こんな感じかな?」

 

切歌「2人ともすごいデス!」

 

クリス「ま、こんなもんだにゃ」

 

切歌「にゃ?」

 

クリス「な、なんでもねえ!それより、残りを片付けるぞ!」

 

切歌「了解デース!」

 

 残りのノイズも片付けたのであった。

 

弦十郎『無事、倒せたようだな』

 

クリス「なんとか倒せたはいいけど……、本当にこれで心象変化が起こせるのか?あんまり、中国4千年の極意に近づけている気がしないな……」

 

切歌「そうデス!もっとこう……、『アチョーッ!』って感じのはないんデスか!」

 

弦十郎『まだまだプログラムは始まったばかりだぞ。それに、心配はいあらない。一見無意味と思える訓練にも、深い意味がある。今までの経験も確実にお前達の心象に影響しているはずだ』

 

奏「ふうん、そういうものか」

 

弦十郎『それに、次のプログラムはお前達のイメージに近いものだと思うぞ?』

 

エルフナイン『それは、僕から説明させてもらいます。次に触れていただくのは、誰もが耳にした事のある有名な武術です』

 

切歌「おおお!そういうのを待っていたデス!」

 

エルフナイン『酔った状態で戦闘を行う拳法……酔拳です!』

 

切歌「酔拳……確かに、有名デスけど……」

 

クリス「未成年だからな。お酒はまずいんじゃないか?」

 

 そこへ、弦十郎が来た。

 

弦十郎「酔拳を使うのは、俺だ!」

 

クリス「お、オッサンが!?」

 

切歌「酔拳を使う司令と、あたし達が戦うんデスか!?」

 

奏「噂に聞いたすごく強いダンナの登場か。あたしの知ってるダンナとどう違うのか楽しみだね」

 

弦十郎「今日の総仕上げだ、お前達が体得した動きで戦ってみろ!」

 

 そう言って弦十郎はお酒を飲んだ。

 

弦十郎「んぐっ、んぐっ……、…う、ヒック!ふふ、いつでもいいぞ。かかってこい…!」

 

クリス「酔っ払いなんかに負けるかよ!やってやる!」

 

 クリスの攻撃は簡単にかわされたのであった。

 

弦十郎「はっはっは、その程度の攻撃では当たらないぞ!」

 

奏「だったら、鷹の動きで……、はあーっ!」

 

 奏の攻撃もかわされたのであった。

 

弦十郎「ヒック……うう…」

 

奏「くっ…、フラフラしてるだけに見えるのに、攻撃が当たらない!?」

 

切歌「こうなったら…」

 

弦十郎「どう来るつもりだ…?」

 

切歌「なりふり構わず滅多切りデス!」

 

 切歌の滅多切りもすべてかわされた。

 

切歌「な、これも全部避けられて!?」

 

クリス「そのまま攻撃を続けろ!さらにあたしの連射も加われば、さすがに避けられねえだろ!」

 

弦十郎「ヒック!……ふふ、甘いな」

 

クリス「くらやがれ!」

 

 切歌の攻撃に加え、クリスの射撃もかわされてしまった。

 

弦十郎「攻撃ばかりに注力すれば、守りが疎かになるぞ!」

 

 そして、弦十郎は反撃してクリスをダウンさせた。

 

クリス「バ、バケモンかよ……!」

 

弦十郎「んぐっ、んぐっ…ふふ、まだまだだな」

 

奏「噂以上じゃないか!本当にバケモノだ。なら、左右から挟み撃ちにするよ!」

 

切歌「OKデス!」

 

童虎『果たしてうまくいくかな?』

 

 奏と切歌は左右から挟み撃ちしたが、弦十郎は簡単にかわしてしまった。

 

奏「これも避けるのか……」

 

切歌「こっちの攻撃のほうが避けてるみたいデス!」

 

弦十郎「ヒック…、そう、攻撃は避けるのではなく、避けさせる……!」

 

 そのまま反撃を受け、切歌はダウンした。

 

切歌「無念デス…」

 

奏「おい、大丈夫か!?」

 

弦十郎「仲間を心配している場合か?」

 

奏「くっ、こうなりゃ破れかぶれだ!はああーっ!」

 

弦十郎「おおお~っ!」

 

 奏と弦十郎が交錯したが、奏がダウンしたのであった。

 

奏「ぐ…っ!酔拳が、こんなに強い、なんて……!」

 

弦十郎「んぐっ、んぐっ……ぷはーっ!…ここまでか。まだまだ、中国4千年の極意には程遠いようだな」

 

 それから修行の日々は続き、星矢達もそれを目の当たりにしたのであった。

 

紫龍「老師、来ておられたのですか」

 

童虎「情報交換で来たが、その際に面白いもんを見る事ができたぞ」

 

星矢「それより、あいつらは何してんだ?」

 

氷河「見た限りでは、中国拳法でもやってるようだが…」

 

紫龍「あの動き、中国拳法で間違いない」

 

童虎「紫龍も色々な中国拳法を学んでおったからのう」

 

 一方、シミュレータルームでは…。

 

弦十郎「修業を始めて3日…。俺に攻撃を当てるまでになるとは、本当に成長したな。特に奏はあちらの世界での務めも果たしながらよく耐えた」

 

奏「まあね」

 

クリス「いつまでも負けたままでいられるか!」

 

切歌「これも修業の成果デス!」

 

弦十郎「ああ、その通りだ。つらい修業だがよく頑張っている。よし……では、今日はここまでにするとしよう」

 

切歌「はいデス!明日も頑張るデス!」

 

 弦十郎はシミュレータルームを出たのであった。

 

切歌「やっぱり司令の修業はすごいデス!これでもう、どんな中国武術もどんと来いデスよ」

 

クリス「ああ、そうだな。中国武術だったら……。ん?中国武術…?」

 

奏「あれ?そういえば…、あたし達、どうして修業を始めたんだっけ?」

 

切歌「え?……あ……。あああああーっ!すっかり忘れてたデス…、あたしは、中国雑技団がやりたかったんデスよ!」

 

奏「そういえば、そうだったね…。修行に必死になりすぎて目的を見失ってた……」

 

クリス「バカみたいに頑張って体を鍛えて……、この3日間は何だったんだ!?」

 

切歌「あたしがやりたかったのはこんな汗臭いのじゃなくてもっとこう……、華麗なやつデース!」

 

奏「武器でジャグリングとか?」

 

クリス「アクロバットで輪くぐりとかな」

 

切歌「そうそう、そういうやつデス!このままだと武術の達人になってしまうデス。こうなったら、自分達でこっそり雑技の練習をするデスよ!」

 

クリス「あたし達だけでやれるのか?まあ、このまま進めるよりはマシか……」

 

奏「あたしも付き合うよ。できるようになるまで、練習あるのみだ!」

 

切歌「まずは梯子の上で逆立ちに挑戦デス!やーっ!」

 

 初めてやるのにも関わらず、できたのであった。

 

切歌「…あ、あれ?」

 

奏「あたしはジャグリングだ!よっと……」

 

 奏もジャグリングができたのであった。

 

奏「ん……?」

 

クリス「アクロバットをやってみるか。ちょっと怖いけど……はあっ!」

 

 クリスもまた、アクロバットができたのであった。

 

クリス「お、おわ……!」

 

切歌「な、何で…」

 

奏「一発で……」

 

クリス「できたんだー!?アクロバットなんてやった事ないぞ?」

 

奏「あたしもだ。でも、結構ラクラクできちゃうんだけど……」

 

切歌「これは、ひょっとして……」

 

???「ふ、本当はもっと修行をしてからと思っていたんだが……、気付かれてしまったか」

 

 そこへ、弦十郎が入ってきた。

 

クリス「オッサン!?見ていたのかよ。っていうか、今のセリフ……」

 

奏「なるほど、そういう事か。ダンナも人が悪い」

 

弦十郎「ああ、そういう事だ。つまり……」

 

切歌「あたし達は天才だったんデスね!?」

 

 切歌の勘違いにクリス達はおろか、発令所で見ていた星矢達でさえずっこけていた。

 

弦十郎「ん?」

 

切歌「練習もせずに極めてしまうほどの才能……、自分でも恐ろしいデス!司令が思わず秘密にしてしまったのも、仕方がないと言わざるを得ないデスね」

 

弦十郎「い、いや……」

 

 勘違いしている切歌にクリスは拳骨した。

 

切歌「あいたっ!な、なにするデス!?」

 

クリス「こうでもしないと止まらないだろ、お前の勘違いは」

 

切歌「え?勘違い?」

 

奏「あはは……ま、おとなじくダンナの説明を聞くとしようか」

 

弦十郎「うむ、では改めて説明しよう。お前達が中国雑技ができたのはなぜなのか。それは、この3日間の修業の成果だ!」

 

切歌「なんデスと!?で、でもあたし達がやってたのは武術の修業デス」

 

弦十郎「ああ、もともとあの心象実験プログラムは武術を習得するために作ったものだ。だが、中国雑技にはもともと、武術をもとにした動きが非常に多い。そこで、雑技の習得に役立つよう少しプログラムを調整して修行をしてもらっていたというわけだ」

 

クリス「なるほどな。それでいつの間にか雑技に必要な力がついたってわけか。でも、それならそうと言ってくれればよかったじゃねえか」

 

弦十郎「案外お前達がノッていたからな。いっそ最後まで言わない方が効率がいいと判断したんだ」

 

切歌「危うく達人になってしまうところだったデスよ」

 

弦十郎「はっはっは、雑技を習得できて、おまけに強くんれるんだ、一石二鳥だろう」

 

奏「確かに!実際ダンナの思った通りになってたね。それじゃ、あたし達はこのまま修業を続けたらいいのかい?」

 

弦十郎「いや、もう基礎は十分できているようだ。明日からは雑技の修業に入ろう」

 

切歌「ついに!投げたり跳んだりできるんデスね!ド派手な技を習得してやるデス!」

 

弦十郎「ああ、戦いにも取り入れられるよう、武術と組み合わせた修行を用意してある」

 

クリス「いよいよ心象変化も近そうだな。どんなギアになるのか楽しみだ!」

 

 それから修行を続けたが、ギアの変化はなかった。

 

クリス「何でだよ……」

 

奏「雑技もかなりできるようになったのに……」

 

切歌「なんで心象変化が起きないんデスか!?」

 

弦十郎「熟練度は問題ないはずなのだが……」

 

エルフナイン「だとすると、心象に問題があるのかも知れませんね」

 

クリス「中国雑技に必要な気持ち…って何だ?」

 

奏「さあ…。実際見たのも、この前の1回だけだしね」

 

切歌「あの時は綺麗で迫力があって…、それはもう感動したデスよ!」

 

クリス「そりゃ見る側の気持ちだろ?」

 

奏「見る側……。案外、肝心なのはそこなのかも知れないな」

 

クリス「ん?どういう事だ?」

 

奏「だってさ、中国雑技ってのは人に見せるものだろ?だから、観客がいなくちゃ気持ちはわからないんじゃないかな」

 

弦十郎「なるほど、一理あるな!」

 

エルフナイン「でしたら、観客を呼んで、雑技を披露する場を設けるというのはどうでしょう?」

 

切歌「楽しそうデス!みんなに修行の成果を見せたいデス!」

 

クリス「みんなって……あいつらに見せんのか?」

 

奏「いいじゃないか。せっかくここまで来たんだから、心象変化を起こしたいだろ?」

 

クリス「まあ、そりゃな……」

 

弦十郎「決まりだな。では、さっそく招待するとしよう」

 

 早速、装者一同は呼ばれたのであった。

 

響「あの、私、今日何で呼ばれたのか聞いてないんですけど……何か知ってます?」

 

星矢「俺は知らねえぞ。ま、来てからのお楽しみって事にしとこうぜ」

 

瞬「案外、楽しい話かも知れないよ」

 

翼「老師まで来ていたとは…」

 

童虎「たまにはこっちに来てみるのも面白いと思ってのう」

 

調「切ちゃんが見当たらない…」

 

マリア「クリスもいないわね。呼ばれていないのかしら?」

 

未来「それなのに、何で私は呼ばれているんでしょう……」

 

沙織「私にはよくわかりません」

 

美衣「ですが、何かある事は事実でしょう」

 

エルフナイン『レディースアンドジェントルメン、そして装者と聖闘士の皆さま、本日はお集まり頂きありがとうございます。』

 

調「エルフナイン?」

 

響「な、なにが始まるの!?」

 

エルフナイン『S.O.N.G雑技団による、華麗なる出し物をお楽しみください。それでは……イッツ・ショータイム!』

 

 シミュレータルームの背景が中華街に変わった。

 

翼「ここは……中華街か!?」

 

 そこへ、コスプレしたノイズやアルカノイズが現れた。

 

マリア「敵が現れたわよ!」

 

未来「待って、誰か……出てきます!」

 

 出てきたのはクリス達であった。

 

クリス「はっ!」

 

切歌「アチョー、デス!」

 

奏「たあーーっ!」

 

 3人は敵を蹴散らしていった。

 

響「クリスちゃん達!?」

 

翼「か、奏!?どうして……」

 

マリア「出し物って、戦闘のデモンストレーションという事かしら?」

 

紫龍「いや、そうではないらしい」

 

調「紫龍さんの言った通り、いつもと動きが全然違う」

 

未来「雑技団って言ってたし……そういう事?」

 

美衣「そうなりますね」

 

弦十郎『いいぞ、お前達!だが、もっとだ!観客を意識して技を出すんだ!』

 

切歌「了解デス!もっと……華麗に!」

 

クリス「もっと、速く!」

 

奏「もっと、大迫力で!」

 

 もっと華麗に、速く、大迫力で3人は敵を蹴散らしていった。

 

響「凄い!3人とも、戦ってるのにすごく綺麗……」

 

未来「見て、ギアが……!」

 

 3人のギアが変化し、チャイナ型ギアとなったのであった。

 

切歌「……ついに、変化したデスよ!」

 

クリス「やったな!残りの敵はこのまま倒すぞ!」

 

奏「ああ。このギアなら、もっとすごい動きができそうだ!」

 

 3人はより華麗な動きで残りの敵を一掃したのであった。

 

エルフナイン「皆さん、心象変化の成功おめでとうございます」

 

切歌「ありがとうデース!チャイナ型ギアでの活躍はどうだったデスか!?」

 

調「うん。かっこよかったよ、切ちゃん」

 

響「チャイナ型ギアなんですね!いいなー」

 

クリス「ああ、体が軽いし、バランス感覚もよくなるみたいだな」

 

紫龍「俺の見た感じからしても、あの動きは間違いなく中国の武術そのものだ。老師もそう見えましたか?」

 

童虎「ああ、わしが見てもあの動きは中国の武術そのものじゃ」

 

翼「まさか奏まで参加していたなんて……」

 

奏「まあ、成り行きでね。黙ってて悪かったよ。それにしても、どんな敵でもこのギアなら華麗に倒せそうだよ」

 

エルフナイン「あの、その事なんですが……」

 

星矢「何か問題でもあるのか?」

 

クリス「その問題ってのは何なんだよ」

 

エルフナイン「先程のショーの時、ギアの出力を測定していたんです。機動力やバランス能力、動体視力などの各種能力はすべて上昇していました。しかし、攻撃力はむしろ下がってしまったようで、このままだと実戦への導入は……」

 

クリス「できないってのか!?」

 

エルフナイン「見せる事に重きを置いた心象変化ですから、攻撃面はおざなりになってしまったのかも知れませんね」

 

切歌「せっかく習得したのに……戦うだけでもダメ、見せるだけでもダメなんて、わがままなギアデス!」

 

弦十郎「なに、悲観する事はない。なかなかバランスの難しいギアのようだが、さらなる修業で出力を上げる事ができるはずだ」

 

奏「どう修業したらいいか、ダンナにはあてがあるのかい?」

 

弦十郎「もちろんだ。ただし、お前達にやる気があれば…だが」

 

切歌「もちろん、やる気満々デス!」

 

クリス「ああ、実戦で使えないままじゃ終われないな!」

 

奏「頼むよ、ダンナ!」

 

弦十郎「その意気だ。では、チャイナ型ギアのパワーアップに向けて、引き続き修業を行う!」

 

 再び、修業が始まったのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は切歌達が中国武術を体得し、ギアをチャイナ型ギアに変化させるまでを描きました。
今回出てくる主な聖闘士を童虎にしたのは久々に原作の黄金聖闘士を出したいのと、紫龍よりも中国武術に詳しいのではないかと思ったからです。
次の話は映画撮影になりますが、他の黄金聖闘士も何人かチョイ役で出てきます。
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