セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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双翼のシリウス編
73話 崩された平穏


マンション

 

 それは、最初に行った並行世界で翼が来ていた時の事であった。

 

奏『…少し前までは、こんな事、想像もできなかった。あいつが、再びあたしの前に現れるなんて事。失ったはずのあたしの片翼…。ギャラルホルン。並行世界を繋ぐ聖遺物が、その不可能を叶えた。あたしが死んだ並行世界からやってきた、もう1人の翼。片翼(あたし)を失った、あたしと鏡あわせの翼。けれどあいつは、あいつの心は、あたしとぜんぜん違っていた。歌を捨て、絆を捨て、荒み、凍てついたあたしの心を、あいつは癒し、溶かしてくれた。暗がりの中に膝を抱えてうずくまるばかりのあたしに、光の下で天翔るための翼をー歌を、取り戻させてくれた。あの日、あたしは翼に誓ったんだ。取り戻したこの翼で、誰よりも高く飛んでみせる。2度と、この歌を絶やす事はしない。あたしの歌声で世界をいっぱいにしてみせるって。…欲を言えば、もう一度、大勢のファンの前で翼と一緒に思いっきり唄いたい。戦いのための歌ではない、人々の心をふるわせるための歌を、ツヴァイウイングとしての歌を。けれど、それは贅沢な、あたしには贅沢すぎる願いってやつかも知れない』

 

翼「どうしたの?さっきから上の空で」

 

奏「ああ…別に。大した事じゃないさ。ちょっとばかし、昔の事を思い出してたんだ」

 

翼「もう。人が来るなり考え事って…」

 

奏「はは、ごめんって。それにしても、S.O.N.Gのダンナ、よく許可を出してくれたな」

 

翼「う、うん、せっかくの休みだから、特別にって許可をくれたの(久しぶりの休暇、奏に会いに行きたくて、ギャラルホルンの前でうろうろしていたら……それを見かねて司令が許可をくれた。とは、流石に奏には言えないな)」

 

奏「何はともあれ、あたしは嬉しいよ」

 

翼「私だって、たまにでもこうして奏に会えるのは、やっぱりうれしい」

 

奏「ははっ、ダンナ達には感謝だな」

 

翼「そうだね…」

 

奏「(大方、あっちのダンナ達が気を遣ってくれたんだろうな)」

 

 翼の様子を見かねた弦十郎が行く許可をくれたと奏に言えない翼だったが、奏の方はそれを察していたのであった。

 

翼「どうかした?」

 

奏「あ、いや。何でもない」

 

翼「ねえ奏、ちょっと部屋を見てもいいかな」

 

奏「いちいち確認しなくても、好きなようにしたらいいさ。だけど、面白いもんなんてないと思うぞ」

 

翼「そんな事ないと思うよ(でも、奏の曲や歌詞がたくさん。奏、しっかりとアーティストしてるみたいだね)」

 

 すると、翼はあるものを見つけた。

 

翼「ん?これは、ツヴァイウイングの曲の歌詞?逆光のフリューゲル…」

 

奏「ツヴァイウイングの曲か…」

 

翼「何だか不思議だよね」

 

奏「不思議?」

 

翼「うん、最初はびっくりしたけど、私の世界のツヴァイウイングの曲と全く一緒で…とても、別の世界の曲だなんて思えない」

 

奏「あたし達は世界が変わっても同じって事だろう?だから、あたしは嬉しいけどね」

 

翼「それは、私だって…」

 

奏「それにしても、2人でこうして歌詞を眺めていると、曲の打ち合わせをしてるみたいだな」

 

翼「ふふ、そうだね」

 

奏「フリューゲルの打ち合わせや曲合わせは、初めての経験で特に楽しかったよ。翼は相変わらず真面目で、最初は特に堅苦しかったなー」

 

翼「そんな事ないよ」

 

奏「いーや、絶対に同じだね。あたしにはわかる」

 

翼「私の世界の奏は、70億人のお客さんの前で唄うだって、メチャクチャな事言ってたよ」

 

奏「そ、それは…、あたしも言ったような記憶がある」

 

翼「ふふ…」

 

奏「はは。ほら、やっぱり変わらないじゃないか」

 

翼「そうだね」

 

奏「(そうだ、あの頃は本当に楽しかった。もちろん、今も充分満足しているけど…)」

 

翼「(ずっと言い出せなかった、無理だとわかっているから、でも……)」

 

奏と翼「(もし、できるならもう一度、2人で一緒に)」

 

 そんな空気を壊すように二課から連絡が来た。

 

翼「二課から?」

 

奏「だな…。どうした、ダンナ?出動か?」

 

弦十郎『ああ、多数のノイズの反応を検知した。来客中すまんが、指定のポイントへ急行してくれ。場合によっては、王虎とアイザックにも出撃してもらう』

 

奏「了解。すぐ出る」

 

翼「奏、気を付けてね」

 

奏「ああ、わかってるって」

 

 

 

市街地

 

 奏は出撃し、指定ポイントに到着した。

 

奏「指定ポイントに到着した。敵は?」

 

弦十郎『すぐ近くに反応がある。油断するな』

 

奏「了解。警戒しながら索敵する」

 

 早速、奏はアルカノイズを発見した。

 

奏「お……いやがったな(ん?何かおかしい…?何だ……)」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 発見したアルカノイズを見た二課の面々もノイズとの違いに気付いた。

 

あおい「待ってください!ノイズのパターンが通常とわずかに異なります!」

 

奏『そうか!あれはアルカノイズだ!』

 

弦十郎「アルカノイズだと!?これが。翼や響君達のいる並行世界に存在するという」

 

朔也「まさか、並行世界を超えてこちらに」

 

アイザック「そんな訳があるか。錬金術師がゲートを通れるはずがない」

 

了子「アイザック君の言う通り、あれは恐らく、私達の世界のアルカノイズね」

 

弦十郎「了子君?どういう事だ」

 

了子「実は最近、私達の世界でも錬金術によって新しいノイズが作られているという噂を耳に挟んでいたの」

 

王虎「流石は天才科学者だな」

 

弦十郎「何だと?そんな報告、受けてないが」

 

了子「ごめんなさい。確度の低い情報だったから、もう少し確証を得てから報告しようと思ったんだけど…裏目に出ちゃったわね」

 

 

 

市街地

 

 弦十郎は奏に連絡した。

 

弦十郎『奏、気を付けろ!』

 

 奏はアルカノイズの攻撃をかわしていた。

 

奏「気を付けろって。口で言うのは簡単だけどな!はああーっ!」

 

 かわしてからすぐに奏は反撃してアルカノイズを撃破した。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 ちょうど二課へ翼が来たのであった。

 

翼「状況はどうですか?」

 

弦十郎「翼か。正直、あまりよくはない。出現したノイズは、どうやらアルカノイズのようだ」

 

翼「なっ…奏は!」

 

あおい「何とか注意しつつ、戦えてはいますが…」

 

弦十郎「ああ…。だが、不利な状況だ。王虎とアイザックの出撃もやむを得ないだろう」

 

翼「アルカノイズには、あらゆるものを分解する解剖器官が備わっています。その対策がなされていない奏のギアでは危険です。司令、私に出撃許可を!援護に向かいます!」

 

弦十郎「本当にすまない。今回は」

 

王虎「長話は後だ」

 

アイザック「今は一刻を争う事態なのだからな」

 

弦十郎「3人とも、行ってくれるな?」

 

王虎「勿論だ」

 

アイザック「現れたノイズは通常のノイズであれ、アルカノイズであれ、1匹たりとも逃がさん!」

 

 翼と王虎とアイザックも出撃したのであった。

 

 

 

市街地

 

 奏はアルカノイズの攻撃をかわしながら倒し続けていた。

 

奏「こっちの攻撃が効くからまだいいけど、この数に触れられずに倒せってのは、流石に無理がすぎやしないかい!」

 

 すると、ヘリの音が聞こえた。

 

奏「この音は?」

 

 ヘリから翼と王虎とアイザックが降りてきて、アルカノイズを撃破したのであった。

 

奏「何しに来た、翼!?」

 

翼「もちろん、奏の助太刀にね!」

 

奏「ったく、待っててくれりゃいいのに…」

 

翼「強がりが言えるなら大丈夫みたいね」

 

奏「お陰さんでな(まあ、正直助かったけどな……)」

 

王虎「話はここまでだ。すぐに片付けるぞ!」

 

アイザック「ノイズが1匹でも居住区へ入れば、どうなるかはお前達でも想像はつくだろうからな」

 

翼「背中は私に任せて、思いっきり行って」

 

奏「お言葉に甘えて…一気に片付けるとするか!」

 

 王虎とアイザックがいた事もあり、アルカノイズは全滅した。

 

奏「ふう…これで一通り片付いたか?」

 

翼「そうね…」

 

王虎「いや、油断するな!」

 

アイザック「新しい客のお出ましのようだ」

 

奏「何だと…?」

 

 アルカノイズを放った錬金術師たちが現れたのであった。

 

女「これは想定外、まさか風鳴翼に出会えるなんて」

 

翼「何者だ!?」

 

奏「見た感じ人間のようだが。少なくとも、味方って雰囲気じゃなさそうだな」

 

翼「そのローブ姿、錬金術師…?」

 

アイザック「錬金術師だと!?」

 

王虎「今は亡き老師から錬金術師がいる事は聞かされたし、近頃はなんとかの錬金術師とかいう錬金術師が出ている漫画とかもあるが、まさか本物の錬金術師とご対面とはな」

 

翼「このアルカノイズはお前達の仕業か!」

 

女「そこまでわかっているなんて、流石シンフォギア装者ね。お互い、色々とお話ししたいとは思うけど、今は」

 

 女は掌を向けた。

 

翼「(何だ?掌をこちらに…)」

 

 すると、一同に不思議な音が聞こえた。

 

奏「があっ!?なんだ?へ、変な音が…?」

 

翼「頭の中に、鳴り、響く…だと!?」

 

アイザック「くそっ、耳を塞いでも止められん!」

 

王虎「どうなっているんだ…?」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 謎の音について連絡が来たが…。

 

弦十郎「音だと?通信越しでは何も聞こえんが…」

 

あおい「可聴域ならびに超音波域には異常な音波の検出はありません」

 

朔也「ですが、装者と聖闘士の脳波に原因不明の干渉が確認されています。このままではギアの適合係数にも悪影響が出る恐れが」

 

了子「これが、錬金術の力なの?」

 

弦十郎「むう…何とか対抗策を打たねば……」

 

 

 

市街地

 

 一同には変な音が聞こえたままであった。

 

翼「なんの、これしき!イグナイトモジュール、抜剣!」

 

 翼はイグナイトモジュールを発動させた。

 

翼「覚悟しろ、錬金術師!」

 

奏「つ、翼!?」

 

アイザック「そんな音で俺達を惑わせられると思うな!」

 

王虎「俺達はヤワじゃないんでな!」

 

女「聖闘士はともかく、装者は予想外ね。自力で跳ね返すだけの力があるとは。適合者としての力…いえ、そのギアのお陰かしら?」

 

 翼は斬りかかり、王虎とアイザックは殴りかかった。

 

翼「(錬金術師とはいえ人間、斬るわけにもいかない。捕らえて情報を吐き出させる)」

 

 しかし、女は金縁で彩られた宝石のようなアルカノイズを召喚し、聖闘士と翼の攻撃を防いだ。

 

アイザック「聖闘士の攻撃を防いだノイズだと!?」

 

王虎「アイザック、様子がおかしいぞ!」

 

 攻撃を受けた宝石のようなアルカノイズは分裂したのであった。

 

翼「聖闘士の攻撃さえ防ぐ分裂増殖型のアルカノイズだと…!?」

 

女「そのギアの変化、とても興味深いわ」

 

翼「余裕のつもりか!?」

 

女「ふふ。いずれにせよ、不完全な状態では、これが限界みたいね」

 

アイザック「不完全…?」

 

王虎「どういう事だ!?」

 

奏「急に動けるようになった?耳鳴りも消えて…」

 

錬金術師A「聖遺物の活性化を確認。もう間もなく」

 

女「こんなに早く?正直、この場では無理と思っていたけど、嬉しい誤算ね。流石、風鳴翼ね」

 

錬金術師B「聖遺物、起動します」

 

翼「何を言っている?」

 

女「フォニックゲインをありがとう。お礼に面白いものをお見せするわ」

 

 その場の気温が下がるのを凍気使いのアイザックが感じていた。

 

アイザック「この冷気は…」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 その異常は二課でも確認されていた。

 

あおい「装者と聖闘士の周囲の気温が急激に低下しています!」

 

朔也「どうじに、震度3の地震も確認!」

 

弦十郎「次から次へと、一体、何が起きているんだ!」

 

 

 

市街地

 

 そして、今度は震度3の地震が発生した。

 

翼「何だ、この振動は!?」

 

奏「気を付けろ、翼!嫌な空気が流れてる!」

 

翼「わかってる!」

 

王虎「来るぞ!」

 

 地底から化け物が出現した。

 

翼「何だ、この化け物は!?」

 

アイザック「どうやら、この辺りに立ち込める冷気を放っていたのはこいつのようだ」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 化け物を見た途端、了子の顔色が変わった。

 

了子「まさか…あれは!?」

 

弦十郎「知っているのか、了子君!?」

 

了子「いけない!翼ちゃん、奏ちゃん、この場は王虎君とアイザック君に任せてすぐに撤退して!」

 

 

 

市街地

 

 顔色を変えた了子は装者2人に撤退しろと言ったが…。

 

翼「いえ…敵に背を向ける事などできません!いざ、参る!」

 

 翼は化け物に向かっていった。

 

奏「おい、待てって、翼!冷静なようで結構無鉄砲なんだよな、昔から…。仕方ない」

 

 奏も向かっていった。

 

王虎「俺達も行くぞ!」

 

アイザック「ああ!」

 

女「聖闘士に邪魔はさせないわ!」

 

 王虎とアイザックの道を塞ぐように分裂増殖型のアルカノイズが出現した。

 

王虎「翼はおろか、俺達の攻撃さえ防いだアルカノイズか…!」

 

アイザック「いつもの攻撃で倒せないなら、もっと小宇宙を高めて攻撃するまでだ!」

 

 2人は高い防御力を誇る分裂増殖型のアルカノイズに足止めされた。聖闘士抜きで奏と翼は化け物と戦う事になったが…。

 

化け物「グガアアアッ!」

 

奏「何なんだよ、この化け物は!タフすぎだろ!」

 

翼「イグナイトでもほぼダメージが通っていないだと…?」

 

 ところが、化け物は女の方も攻撃した。

 

女「じゃじゃ馬め、対象が違うわよ!」

 

翼「同士討ち!?」

 

奏「暴走でもしてるってのか?」

 

女「準備はできた?」

 

錬金術師A「はい。たった今完了しました」

 

女「いいわ、それじゃ計画通り、アルモニカによる制御を」

 

錬金術師B「了解しました」

 

女「さあ、ベルゲルミル…私に従いなさい!」

 

 ベルゲルミルの動きが止まったのと同時に、またアルカノイズが出現した。

 

奏「ちっ、こいつらも次から次へと!」

 

翼「アルカノイズの相手は私が!」

 

奏「ああ、頼んだ!」

 

 翼はアルカノイズを一掃したが、また出てきたのであった。

 

翼「(まだ出てくるか!?王虎とアイザックは足止めされている…!このままでは体力が……だが…、諦めるわけには!)はあーっ!」

 

 次々と出てくるアルカノイズに翼は体力が消耗していった。

 

翼「はぁはぁはぁ……」

 

 一方の奏はベルゲルミルと戦っていたが、タフさに手を焼いていた。

 

奏「そんな大振りの攻撃!」

 

 しかし、狙いが別であった。

 

奏「な!?これは、あたしを狙った攻撃じゃない?まずい!翼よけろ!」

 

 体力が消耗していた事もあり、翼はベルゲルミルの攻撃を受けてしまった。

 

奏「翼!?」

 

翼「ぐ……ここまで、なの……」

 

 攻撃を受けた翼は倒れた。

 

奏「翼!今助ける!」

 

 またアルカノイズが出た上、奏も体力の限界がきていた。

 

奏「(ぐっ…あ、あたしも限界が……。アイザックと王虎は足止めされてるし、この化け物にアルカノイズ…今のあたしの力じゃ…)」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 二課でも最善の手を打っていた。

 

弦十郎「急ぎ装者を回収だ!」

 

あおい「はい!」

 

朔也「しかし間に合うかどうか」

 

弦十郎「それでも急げ!くっ…どうして俺には力がないんだ…」

 

 

 

市街地

 

 その様子は王虎とアイザックも見ていた。

 

アイザック「まずいぞ!」

 

王虎「何をするつもりだ…?」

 

女「安心しなさい、殺しはしないわ。私は戦いが嫌いなの」

 

奏「喧嘩吹っ掛けておきながら、今更何言ってやがる!」

 

女「仕方ないのよ。これは争いのない世界を作るために必要な事だから」

 

翼「うっ…」

 

錬金術師A「風鳴翼の回収、完了いたしました」

 

女「よろしい。では、撤収しましょう」

 

奏「なっ!?翼をどうする気だ!?」

 

女「この子はもらっていくわ」

 

奏「そんな事はさせない!」

 

女「出来損ないのあなたはもはや必要ないわ」

 

奏「何だと!?」

 

 ベルゲルミルが邪魔をしたのであった。

 

奏「邪魔を……するなぁーー!!」

 

 しかし、ベルゲルミルに吹っ飛ばされたのであった。

 

奏「か……返せ…!翼を…、返せ!」

 

女「ふふ…では、ごきげんよう」

 

 女達はテレポートジェムで逃げたのであった。ちょうどその時に王虎とアイザックも分裂増殖型のアルカノイズを倒し終わったのであった。

 

アイザック「間に合わなかったか…!」

 

奏「翼…、翼アアーーーッ!!」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 その後、奏が目を覚ました場所は二課のメディカルルームでであった。

 

了子「意識が戻ったみたいね」

 

奏「ここ、は……?」

 

王虎「安心しろ。二課のメディカルルームだ」

 

了子「気分はどう?目眩とか、吐き気はしない?」

 

奏「ああ…大丈夫……」

 

了子「よかった。脳波やCTに異常はなかったけど、万が一という事もあるものね」

 

奏「翼……そうだ、翼はどうなったんだ!?」

 

了子「ダメよ、そんな急に動いちゃ!」

 

アイザック「それについては、司令が説明する。もうすぐ来る頃だ」

 

 そう言ってると、弦十郎が来た。

 

弦十郎「状況は俺が説明しよう」

 

奏「弦十郎のダンナ……」

 

弦十郎「翼は敵に連れ去られ、行方不明だ」

 

奏「やっぱり、夢なんかじゃなかったんだな……」

 

アイザック「そもそも、その光景を目の当たりにした俺達がいるんだ。これが現実だ…」

 

弦十郎「目下総力を挙げて捜索中だが、現段階では何も手掛かりは掴めていない」

 

了子「途中で翼ちゃんの反応も途絶えちゃったしね……」

 

奏「あたしのせいで翼が……」

 

アイザック「お前のせいじゃない。不要な事で自分を責めるな」

 

弦十郎「アイザックの言う通りだ。この状況をもたらした責任は、我々全員にある。悔やむより、大事なのはこれからどうするかだろう」

 

奏「ダンナ…」

 

弦十郎「怪我がまだ治りきってないところ悪いが、急ぎやってもらわないといけない事がある」

 

王虎「お前が不在の時の防衛は俺達に任せろ。だから、やるべき事をやるんだ」

 

奏「ああ、わかってる…」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 奏は翼のいた世界に来た。

 

エルフナイン「あ、奏さん」

 

あおい「本当だわ。いらっしゃい」

 

朔也「やあ、よく来たね。あれ、でも翼さんがそっちに行ってなかったっけ?」

 

奏「それが…」

 

弦十郎「…何かあったんだな」

 

奏「大事な話があるんだ。みんなを集めてくれないか」

 

弦十郎「…わかった。装者全員に緊急招集をかけてくれ。そして、沙織お嬢様にも連絡を」

 

あおい「りょ、了解しました!」

 

 装者達と沙織達が集まったのであった。

 

響「すみません、遅くなりました!」

 

弦十郎「ご苦労。これで全員集まったな」

 

響「あれ?奏さん」

 

クリス「で、一体何があったんだ?」

 

弦十郎「奏の世界に向かった翼が、何者かに攫われた」

 

星矢「何、翼が!?」

 

紫龍「翼がいないから、何かあったとは思っていたが…」

 

マリア「一体誰に?」

 

奏「敵は錬金術師らしい。それ以外はまだ何も…」

 

マリア「安否の確認は?その後、相手から要求や接触はあったの?」

 

奏「何もない…。あたしがこっちに来る前までは、だけど」

 

氷河「それは、無事かどうかもわからないという事になるな…」

 

瞬「言い方は悪いけど、今の時点ではそうとしか言えない…」

 

響「大丈夫だよ。翼さんなら、絶対に」

 

クリス「あったりまえだ!先輩なら大丈夫に決まってる!」

 

紫龍「そもそも、死んだという情報がない以上、諦めるのは早い」

 

マリア「わざわざあの子を攫ったという事は、敵には何か、目的があるって事。その目的が果たされるまでは、危害を加える可能性は低いと思うわ」

 

氷河「マリアの言う通りだな。俺もそう思う」

 

響「奏さん!翼さんはきっと無事ですよ!」

 

奏「ああ、ありがとう…」

 

クリス「危害を加える目的ならその場でするだろうしな」

 

切歌「はあ…よかったデス……」

 

調「でも、逆に言えば、目的が果たされたら……」

 

沙織「ええ。今後の状況は時間との戦いになるでしょう」

 

弦十郎「早速、響君とマリア君は向こうの世界に行って翼救出のサポートをしてくれ」

 

響「はい、師匠!」

 

マリア「ええ、了解したわ」

 

クリス「先輩の危機だ、あたしも行くぞ!」

 

切歌「モチのロンデス!ね、調?」

 

調「うん。黙って待ってられないもの」

 

弦十郎「いや、それは許可できない」

 

クリス「な、何でだよ!?今、時間との勝負って言ったばかりだろ!?」

 

弦十郎「今回の件は敵が何者でどのくらいの規模なのかも、どこにいるのかも全く把握できていない異常事態だ。この状況下で装者と聖闘士全員が並行世界に渡り、何らかの理由で戦闘不能に陥った場合、支援する事ができなくなる。ある程度事態を把握するまでは、並行世界へと向かう者は絞らせてもらわざるを得ん」

 

沙織「私も同じ意見です。並行世界を行き来できるのは、装者の皆さんと聖闘士、そして神である私だけです。万一、装者と聖闘士が全員不在となれば、私達だけでは救助はおろか、状況の確認すらできなくなります」

 

切歌「あ、そっか…そうデスよね…」

 

奏「すまない、みんな…。あたしのせいで……」

 

調「いえ、奏さんのせいではないです」

 

クリス「……仕方ないか」

 

弦十郎「わかってくれたか」

 

クリス「ああ。でも、もし何かあったら、オッサンが止めたとしてもあたしは先輩を助けに行くからな!」

 

弦十郎「…その時はやむを得まい」

 

紫龍「奏、向こうに王虎とアイザックがいながら翼が攫われた以上、俺達も行くしかないだろう。誰が行くのかを決めるためにお前が直前に戦った敵の情報を知りたい」

 

 奏は装者の攻撃はおろか、アイザックや王虎でも力を込めなければ倒せない分裂増殖型のアルカノイズやベルゲルミルの事を話した。

 

紫龍「なるほど……」

 

星矢「俺達の攻撃にも高い耐性を持つ上、生半可な攻撃では逆に分裂して増えるアルカノイズか……」

 

紫龍「よし、響とマリアと共に俺と氷河も行こう。それと沙織さん、奏の言ったアルカノイズに対しては集団で出てくる事も想定し…」

 

沙織「ライブラの武器の使用もやむなし、と思っているのですね?わかりました、そのノイズに対してはライブラの武器の使用を認めましょう」

 

星矢「流石沙織さん、話がわかるな!」

 

沙織「ノイズもアルカノイズも人類の脅威です。そういった怪物などに対しては正義の戦い以前に生きるか死ぬかしかない戦いだと私は思っています」

 

氷河「それは心強い!」

 

星矢「お前達、翼の事を頼んだぞ!」

 

奏「ああ、わかってる!」

 

響「うん!どーんと任せて!」

 

マリア「すぐに連れて帰ってくるわ」

 

 早速、奏のいた世界へ向かったのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 奏のいた世界に来た後、一同は二課へ向かった。

 

響「失礼します!」

 

弦十郎「よく来てくれた、4人とも。奏もご苦労だった」

 

奏「それより翼の行方についての手掛かりは!?」

 

弦十郎「残念だが、それらしい情報はまだ何も掴めていない」

 

アイザック「グラード財団も行方の手掛かりを探っているが、そっちもまだだそうだ」

 

弦十郎「翼の事、本当にすまない」

 

響「いえ、そんな…」

 

弦十郎「本来なら我々で対応すべき状況に巻き込んだ上、敵の手に落とすなど……詫びのしようもない」

 

響「翼さんなら絶対大丈夫ですよ!」

 

マリア「ええ、私の知っている翼はそう簡単にやられる子じゃないわ」

 

弦十郎「うむ…そうだな」

 

紫龍「それより、何か次の手は打っているのですか?」

 

弦十郎「アルカノイズを使役していた以上、敵は錬金術師であると推測される」

 

氷河「ああ、それは聞いている」

 

了子「以前、私が掴んだ錬金術師の情報…。そこを起点に活動地点を探ってるところよ。これである程度、地域が絞り込めると思うわ。問題は…」

 

紫龍「時間、というわけか」

 

了子「そうね…」

 

奏「今は待つしかないのか……」

 

弦十郎「君達装者と聖闘士の出番はまだ少し先になるだろう。だが、いつ有力な情報が入ってくるかわからん。それまで鋭気を養い、常に心身共に万全な状態を維持しておいてくれ。奏も今のうちにゆっくり休み、傷を癒しておくんだ」

 

奏「…わかったよ」

 

弦十郎「4人にも、男女に分かれてこちらで待機場所を手配しよう。すまないがしばらくの間、そちらで待機していてもらえるだろうか」

 

響「わかりました!」

 

マリア「それじゃ、ひとまず休憩室を借りて休んでましょうか」

 

王虎「それがいい。俺達は戦いに備え、鋭気を養わなければならないのだからな」

 

弦十郎「それがいい」

 

奏「あのさ。お前ら、部屋の手配ができるまで、ひとまずあたしの部屋にくるか?」

 

響「えっ!?いいんですか?」

 

マリア「確かに、何かあった時、3人一緒にいる方が合理的ね」

 

奏「決まりだな。じゃあ、行くとするか」

 

アイザック「氷河と紫龍は男同士で俺達の使っている部屋へ来る事になるぞ」

 

氷河「済まない、アイザック」

 

紫龍「司令、何かあればすぐに知らせてください」

 

弦十郎「ああ、勿論だ」

 

了子「あ、奏ちゃん。その前にちょ~っとだけ、いいかしら?」

 

奏「ああ。悪いな、少しだけ先に行っててくれ」

 

王虎「なら、俺達は先に行くぞ」

 

 一同は先に行ったのであった。

 

奏「用って?」

 

了子「奏ちゃんのギアのペンダント、貸してもらえるかしら?」

 

奏「ギアの……どうして?」

 

了子「この前の戦闘の損耗も気になるし、今の内に整備しておきたいの」

 

奏「わかった…じゃあ、頼むよ」

 

 奏はギアのペンダントを渡したのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はアリシア一味の登場とベルゲルミルの出現を描きました。
アイザックと王虎は度々本編世界に行っていた奏の代わりに退治をやっている事も多かったため、片翼の奏者編以来の登場となります。
高い防御力を誇る分裂増殖型アルカノイズは後のティアーズ・オブ・ピースメーカー編に出てくるアルカノイズの縁を金色にしただけで、そのデザインはシンフォギアXVのアマルガムを参考にしました。
アリシア一味が攻撃力の高いノイズではなく、聖闘士の足止めのための防御力が高くて生半可な攻撃をすると増えるアルカノイズを使役しているのは、何か秘策があるためでしょう。
次の話はある聖遺物がヨーロッパから届きます。
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