セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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78話 双翼のシリウス

北極

 

 紫龍達は膨大な分裂増殖型のアルカノイズの群れに足止めされていた。

 

氷河「これでは進めないぞ」

 

王虎「こうなったら紫龍、氷河、お前達が先に行け!」

 

紫龍「俺達が!?」

 

アイザック「未完成の永遠の子守歌が流された時はお前達2人に助けられたからな。今度は、俺と王虎がお前達を先に行かせる番だ!」

 

氷河「済まない、アイザック…」

 

紫龍「王虎、この場は頼んだぞ」

 

 2人は先へ進んだのであった。奏はマーカーに従ってまっすぐ進んでいたが…。

 

奏「マーカーに従って真っすぐ進むだけで基地に着く、だって?途中にあんなでかい谷があるなら言っといてくれよ(……って、あたしが飛び降りた位置が悪かったんだけどさ)なんにしても。迂回したおかげで余計な時間くっちまったな…」

 

 進んでいくと、ようやくロイバルト北極基地に着いた。

 

奏「やっと着いたか……。あれが昔のドイツ軍が作った、ロイバルト北極基地(にしても……変だな。あれから1度も襲撃を受けてない。あたしらの接近にまだ気づいてないとか?いや…上空と地上で2度も交戦したんだ。そんなわけない。罠か…?)」

 

 色々と考えたが…

 

奏「やめだ…考えても埒が明かない。どうせ、こっちの動きはお見通しなんだろ?コソコソしたって、それこそ時間の無駄だ。正面から堂々と行ってやる」

 

 一方、アイザックと王虎は周囲の警備をしていたアルカノイズが全て投入されていた事もあり、救援に行けなかった。

 

アイザック「これでは救援に行けないぞ!」

 

王虎「命運はあいつらに託さざるを得ないな……」

 

 

ロイバルト北極基地

 

 基地に入り込んだ奏だが、そこには人気がなかった。

 

奏「基地の中も、全然人気がない……。不気味なぐらい、静かだな……」

 

 色々と部屋を探っても誰もいなかった。

 

奏「……こっちの部屋の中も、もぬけの空か。翼……一体どこにいるんだ?」

 

 そして進んでいくと、巨大なホールがある部屋に来た。

 

奏「巨大なホールに、巻き貝みたいな楽器。ここが翼の言っていた部屋か」

 

アリシア「随分とゆっくりのご到着ね、天羽奏。待ちくたびれてしまったわ」

 

奏「アリシア・バーンスタイン!翼はどこだ!?」

 

アリシア「そこに転がっているのが見えないのかしら?」

 

 アリシアの言った通り、翼が倒れている姿が奏にも見えた。

 

奏「翼!?お前、翼に何をした!?」

 

アリシア「安心しなさい、気を失っているだけよ」

 

奏「翼を返してもらう!」

 

アリシア「ええ、結構よ。もうその子に用はないのだから」

 

 急いで奏は翼に駆け寄った。

 

奏「翼!」

 

翼「……う…」

 

奏「(よかった、何とか無事みたいだ)翼…、遅くなっちまってごめんな。もう少しだけ、待っててくれ。なぜ翼を攫った!?どうして翼にこんな事を!」

 

アリシア「櫻井了子なら既に気付いていると思ったけど、あなたには伝えてないのかしら」

 

奏「何!?」

 

アリシア「知っているのでしょう?このアルモニカと、永遠の子守歌の事は?」

 

奏「ああ…。人類世界全てを眠らそうなんて、バカげた計画の事だろう」

 

アリシア「そう。かつてドイツ軍が計画したものの、起動すらできずに放棄される事になった、秘密計画。…けれど、今の科学力ならば、その問題は充分に克服できる」

 

奏「それと翼に、どう関係が」

 

 そんな時、奏は閃いた。

 

奏「まさか!?」

 

アリシア「そう…。シンフォギアによって増幅されたフォニックゲイン。奇跡を生み出す、無限の力を秘めた波動。それは、アルモニカを完全起動させるに足る程の出力を生み出す理想的なエネルギー源となる」

 

奏「そのために翼を」

 

アリシア「初期計画では、あなたを捕らえる予定だったのだけどね。死んだはずの風鳴翼、適合者がいたのは幸運だった。出来損ないのあなたでは、計画実行は遅れたでしょうからね」

 

奏「くっ…」

 

アリシア「でも、光栄に思いなさい。もうじき世界平和への序曲を特等席で聞く事ができるのだから」

 

奏「そんな悠長な事、させると思うのか!」

 

錬金術師A「思うさ。そのために我々がいるのだから」

 

 奏の後ろにベルゲルミルがいた。

 

奏「な!?後ろ!?」

 

 咄嗟のベルゲルミルの不意討ちを奏はかわした。

 

奏「ベルゲルミルか!上等だ!ブリーシンガメン、お前の力をあたしに寄越せ!」

 

 奏はブリーシンガメンを起動させ、ベルゲルミルと対峙した。

 

奏「食らいやがれぇぇぇーっ!!」

 

 炎の攻撃をベルゲルミルに浴びせたが、ベルゲルミルは怯まずに反撃して来た。

 

奏「なっ!?前よりもパワーが上がってる!?しかもブリーシンガメンの炎に怯まない?どうしてだ!?」

 

錬金術師A「当然だろう。氷の国は霜の巨人たるベルゲルミルの領域。いかにブリーシンガメンといえど、万全の力は発揮できぬ」

 

 奏は了子の言った事を思い出していた。

 

奏「なるほどな…。そういう事かよ」

 

アリシア「わかったでしょう?聖闘士達も足止めに成功した以上、最早、あなたに計画を止める手立てはないという事が」

 

錬金術師B「アリシア様。衛星ネットワークとのリンク、準備整いました」

 

アリシア「……ふふ。さあ、遂にすべての準備は完了したわ。天羽奏、あなたはそこで見届けなさい。愚劣で醜い人類の終焉の時をね!」

 

 遂に世界に向けて永遠の子守歌が流されたのであった。

 

奏「させるかー!!」

 

 妨害しようとする奏だったが、ベルゲルミルが邪魔してきた。

 

奏「くっ…邪魔を、するなぁああーっ!!」

 

 

 

北極

 

 ロイバルト北極基地が見えてきた紫龍と氷河も永遠の子守歌を聞いていた。

 

紫龍「始まったか…!」

 

氷河「遅かったのか…!?」

 

 しばらく聞いても2人は何も変化はなかった。

 

氷河「眠く…ならないな」

 

紫龍「(もしや……!)」

 

 中和装置があるとはいえ、小宇宙を高めて抵抗していなくても眠くならない事に紫龍はある確信を得て、氷河と共に基地に突入した。そして、思わぬ人物と合流したのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 了子は敵の動きを見ていた。

 

了子「…遂に始まったわ。やはり、衛星回線ネットワークを使ってアルモニカの波動を全世界に照射する計画だったのね……。こちらの対抗装置の準備は、万全とはいえない。世界の運命は、あの子達に託すしかないようね……。間に合ってちょうだい、みんな……」

 

 

 

市街地

 

 衛星回線ネットワークで流された永遠の子守歌により、世界各国の人間は次々と眠りについてしまったのであった。

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 奏はベルゲルミルの妨害により、永遠の子守歌が流されるのを阻止するのが間に合わなかった。

 

奏「(くっ……間に合わねえ!)」

 

 ベルゲルミルのパワーは二課襲撃時より上がっており、奏を押していた。

 

奏「がはっ!(な…なんて力なんだよ……)」

 

錬金術師B「アリシア様、子守歌の照射は順調。既に世界の7割を超える地域が影響かに堕ちました」

 

アリシア「後少し…後少しで、私達の理想が実現する。さあ、私の演奏で永遠の眠りにつきなさい、愚かなる人間達よ!醒める事のない夢の中で穏やかに朽ち果てていくがよい!お前達の腐り果てた、その魂と共に!」

 

 最早、ベルゲルミルは奏1人で手に負える相手ではなかった。

 

奏「うううっ…く、くそぉ……」

 

 今にもベルゲルミルは目前に迫っていた。

 

奏「(やっぱり、あたしなんかの力じゃ、無理だったのか……。すまない、翼…了子さん……みんな……)」

 

???「諦めるな、奏!まだ希望は残っている!」

 

 声と共にベルゲルミルの腕が切断されたのであった。

 

奏「な……!?」

 

 ベルゲルミルの腕を切断したのは、紫龍であった。遅れて氷河と響とマリア、弦十郎も来た。

 

紫龍「奏、大丈夫か!?」

 

マリア「まったく、1人で無茶するんだから」

 

弦十郎「間一髪、間に合ったようだな」

 

奏「だ……ダンナまで?なんでこんな所に!?」

 

弦十郎「了子君が、我々3人を優先して目覚めさせてくれてな、米軍に遺されていた高高度音速偵察機を借りて、最短時間で駆け付けたというわけだ」

 

響「それで、先に自力で起きた紫龍さん達と合流して来たんです」

 

弦十郎「詳しい話はあとだ、今はそれよりも」

 

 目の前にアルモニカがあった。

 

氷河「あそこにあるのがアルモニカか…。不思議な音はここから…」

 

マリア「待って、まさか、起動している!?」

 

奏「…済まない、止められなかった…」

 

弦十郎「永遠の子守歌が完成したのか!?」

 

響「でも、私達は全然眠くならないですね……」

 

錬金術師A「この基地のみ、アルモニカに対する精神防壁を張っているのだ。世界が平和になる瞬間を見届けるために。お前達は運がいい。アリシア様の演奏を、この奇跡の瞬間に立ち会えたのだから。だから何も心配せず、今は完成した永遠の子守歌の音色を楽しむ事だ」

 

響「そんな、それじゃ…」

 

紫龍「いや、まだ希望は残っている」

 

マリア「紫龍、どうしてそんな事が言えるの?」

 

弦十郎「永遠の子守歌が完成してしまった以上、了子君の装置は何の意味も持たない…」

 

マリア「私達は、負け」

 

氷河「まだ負けてなどいない!」

 

紫龍「俺達という、希望という名の証人がいるからだ!」

 

アリシア「何を寝ぼけた事を言ってるの?人類は永遠の眠りに」

 

氷河「お前達が完成したとほざいていた永遠の子守歌を基地の外で聞いた俺達は眠っていないのだぞ」

 

紫龍「本当に完成したのであれば、中和装置があっても俺達は今頃眠りについて来れなかったはず。つまり、俺達が永遠の子守歌が未完成である事を示す証人だ!」

 

 紫龍の指摘にこれまで動じていなかったアリシアは動揺したのであった。

 

アリシア「こ、これは何かの間違いよ!アクシデントが発生したという、あなた達の運が良かっただけだわ!」

 

???「紫龍達も来てくれたのか!」

 

 翼が立ち上がったのであった。

 

奏「翼、目が覚めたのか!?」

 

翼「奏…、紫龍、みんな、来てくれてありがとう」

 

響「翼さん!」

 

マリア「翼…」

 

アリシア「もう終わりよ。眠らない黄金聖闘士というアクシデントはあったけど、世界は平和になり、争いで悲しむ人もいなくなった」

 

翼「いいや、まだ悲しんでいる人がいる。救わないといけない人が!」

 

アリシア「何…?」

 

翼「お前自身だ、アリシア!私はお前と、シリウス交響楽団のために戦う!」

 

アリシア「何をいっている…?私の、楽団のため?」

 

 そして、翼はイグナイトモジュールを発動させた。

 

翼「奏、紫龍、みんな、私に力を貸してほしい。アリシアを、シリウス交響楽団を救うために!」

 

奏「翼……。ああ、わかった!やるぞ、翼!」

 

響「はい!翼さんが救いたい人は、私の救いたい人でもありますから!」

 

マリア「この最大級の絶望的な状況下で、敵を救いたいなんて、なんだかとっても翼だわ!」

 

翼「ありがとう、みんな」

 

紫龍「俺達も行こう。俺が戦った敵にもアリシアに似たような奴がいてな、そいつとアリシアが重なって見えてしまう」

 

 紫龍のいうそいつとは、アリシアと同様に人間に絶望していたフェンリルであった。

 

翼「アリシア!残念ながらまだ争いは残っている。お前を救うための争いがな!」

 

アリシア「この状況で、何をわけのわからない事を!人類は完全に永遠の眠りについたというのに!どうして、お前は、お前達は諦めない!?なぜ、絶望しない!?」

 

氷河「決まっているだろう、俺達は地上の愛と平和のため、そして大切な人達を護るために戦っている!」

 

紫龍「そして俺達には喜びを、苦しみを分かち合える友が、仲間がいる!だからこそ、過酷な運命にも、絶望的な状況にも立ち向かっていけるんだ!」

 

アリシア「仲間と友だと!?それがなぜ力になる!?ベルゲルミル、もう手加減は無用だ!あいつらを殺せ!そして、足止め用のアルカノイズをもっと出せ!あいつらを葬り、完全平和を手にする!」

 

 配下の錬金術師は大量の分裂増殖型のアルカノイズを出した。

 

氷河「俺達を足止めするだけでは、倒せはしないぞ!」

 

錬金術師B「ふん、戦いは数だよ」

 

紫龍「(戦いは数…、どこかで聞いた事のあるセリフだな)」

 

錬金術師A「そして、その数を使いこなせなければ勝てはしないのだ!今こそ対聖闘士用のアルカノイズを生み出す時だ!いでよ!」

 

 全身金ピカの宝石型のアルカノイズが出たのであった。そして、そのノイズに引き寄せられるかのように分裂増殖型のアルカノイズは集まって合体していき、やがて1体の巨大な宝石型のアルカノイズとなった。

 

氷河「どこかのスライムみたいに合体して1体のでかいアルカノイズになったぞ!」

 

錬金術師A「ふはははっ、もはや黄金聖闘士など恐るるに足らず!やってしまえ!」

 

 巨大アルカノイズは紫龍と氷河に襲い掛かった。そして、響達の方はベルゲルミルに押され、響とマリアのイグナイトが解除されてダウンしてしまった。

 

弦十郎「響君、マリア君!」

 

奏「翼、大丈夫か!?」

 

翼「…うん、奏がカバーしてくれるから」

 

奏「しかし、なるほど…あたしの家族がノイズに殺されたように、あいつの家族は人に、いや、『争い』に殺されたってのか。……アリシアの気持ち、あたしにもわかる。大切な物を奪われたら、奪ったモノに復讐したくなる。…あたしと同じだ」

 

翼「奏……」

 

奏「だけどあたしは、翼がいてくれたおかげで道を誤らずに済んだ。だから、あたしも、あいつを救いたい!」

 

翼「私達なら救えるよ、きっと」

 

奏「ああ、行くぞ翼!」

 

翼「うん!」

 

奏と翼「はあああーっ!」

 

 奏と翼はベルゲルミルに猛攻をかけていた。

 

アリシア「なぜだ…?なぜ倒れない?なぜ折れない?なぜ諦めない?」

 

奏「あたし達は、絶対にあきらめたりしない」

 

翼「ああ、人間の持つ可能勢を。平和の時代を希求する想いを」

 

アリシア「私が諦めたというの!?」

 

氷河「そうだ!お前は全て諦めたんだ!」

 

紫龍「俺は以前、お前のように人間に絶望して狼だけしか信じられなくなった男と戦った事がある。人間に絶望し、全ての人を永遠の眠りにつかせようとするお前はその男と同類だ!」

 

アリシア「そのお前の戦ったという、狼しか信じない男と私を一緒にするな!」

 

 巨大アルカノイズと戦う中、紫龍は直接名前は出さなかったものの、フェンリルと同類であるとアリシアに断言したが、アリシアは認めたくなかった。

 

奏「ほんとにアリシア、紫龍の言ってた男に似てるのかも知れない」

 

翼「仲間を理不尽に奪われた故に、抱いていた崇高な理想は何よりも深い絶望へと変わった」

 

奏「人類がいなくなれば、確かに争いはなくなるだろうさ…。けれど、そこには何もない。ただの無限の暗黒だ」

 

翼「お前の仲間達や、お前が望んでいた人々の希望も、笑顔もない。見上げる者のない、夜空に輝くシリウスの光に、一体何の意味がある?」

 

アリシア「黙れ!黙れ黙れ!お前達に何がわかる!?お前達がシリウスの…楽団の名を口にするな!お前達にもわかっているはずだ。…歌の力など、何の役にも立たないという事を。世界に平和をもたらすためには、人類を消すしかないという事を!」

 

奏「そんな事はない!信じて唄い続ければ、きっと届く!」

 

翼「世界の人々の心を、ひとつにできる!」

 

奏「翼、行くぞ!」

 

翼「うん!一緒に飛ぼう、奏!」

 

 奏と翼は『ORBITAL BEAT』を唄い出した。

 

アリシア「ふっ、今更、そんな歌に何の意味がある!?歌など、愛など、希望など、人類には値しない!さあ、ベルゲルミル、極寒地獄へと閉じ込めろ!」

 

 ベルゲルミルの猛攻に奏と翼はダウンし、ブリーシンガメンとイグナイトが解除されてしまった。

 

アリシア「言わぬ事ではない。ブリーシンガメンもイグナイトとやらの力も、尽きたようね。そして、黄金聖闘士も無敵と化したアルカノイズに太刀打ちできていない」

 

 アリシアの言った通り、巨大アルカノイズには紫龍と氷河の攻撃が通じていなかった。

 

紫龍「エクスカリバー!」

 

 エクスカリバーで切り裂いても、すぐにくっついてビームを発射して反撃してきた。

 

紫龍「ぐっ!」

 

 ビームを受けた際、紫龍は何かに気付いた。

 

氷河「ダイヤモンドダストォ!」

 

 ダイヤモンドダストを受けても、凍った箇所が砕けた後にすぐ分裂してくっつき、元通りになった。

 

錬金術師A「ふはははっ、無敵のアルカノイズが遂に完成したぞ!」

 

錬金術師B「後はじわじわと押していけば奴等もこれまで!」

 

 しかし、紫龍と氷河も諦めていなかった。

 

紫龍「(無敵であるはずがない。きっと、どこかに弱点がある。弱点が…)」

 

 一方、奏と翼は立ち上がった。

 

奏「翼…大丈夫か…?」

 

翼「大丈夫…まだまだ、戦える。歌の力は……人々の心は!絶望の闇なんかに決して屈したりはしない!」

 

奏「ああ……唄うのをやめるな、翼!歌さえあれば、人の心から希望はなくならない」

 

翼「ええ、奏!あなたと一緒なら、何度でも立ち上がる。何度でも、羽ばたいてみせる!!」

 

アリシア「やめろ、その歌を!いい加減耳障りだ!」

 

 奏と翼の歌は倒れている響とマリア、そして巨大アルカノイズに苦戦している紫龍と氷河にも聞こえていた。

 

響「うう…この、歌声は……」

 

マリア「翼と…奏の、歌…?」

 

弦十郎「2人共、気がついたか!?」

 

響「はい、師匠。それに、なんだろう……力が…漲ってくる…?」

 

マリア「本当だわ。これは、一体…?」

 

 歌の影響は紫龍と氷河にも現れ始めた。

 

氷河「これは…?」

 

紫龍「小宇宙が……更に燃えている…!」

 

弦十郎「2人の歌が……フォニックゲインと小宇宙をを高めているのか?」

 

アリシア「なっ!……これは!?」

 

 皮肉にも、アルモニカの永遠の子守歌を流すために使った衛星回線ネットワークによって奏と翼の歌が世界中に流されてしまい、その歌に人々が反応した上、世界中からフォニックゲインが溢れたのであった。

 

アリシア「世界中からフォニックゲインが溢れている!?そんなバカな!?人類は永遠の眠りについたはずだというのに……。私の演奏は完璧だったはずだ!」

 

紫龍「だから言っただろう、世界中の人々の反応と俺達が眠っていない事がお前の演奏が、永遠の子守歌が未完成であるという決定的な証拠だ!」

 

 その事実を突き付けられ、アリシアは言い返せなかった。

 

弦十郎「そうか、アルモニカの音が衛星回線を介して世界へ流れたのと同じように、二人の歌もまた世界中に流れた…」

 

マリア「人々は眠りについていながらも、二人の歌に反応した!?世界が、2人の歌に応えた!」

 

響「これならいけます!」

 

弦十郎「ああ。中和装置をつけた紫龍と氷河がアルモニカの音を聞いても眠っていなかったり、人々の心に歌が届いたという事は…、アリシアの演奏は、永遠の子守歌は、まだ完成していない!これなら了子君の装置で眠った者達を起こす事ができるはずだ!」

 

アリシア「くっ!その歌を、やめろーー!」

 

弦十郎「この中和装置を制御装置につないで世界に発信すれば、眠りについた人類を全て目覚めさせる事ができる!」

 

 急いで弦十郎は制御装置へ向かった。

 

アリシア「今すぐ衛星とのリンクを解除しろ!歌を、外へ流すな!」

 

錬金術師A「我らの邪魔はさせぬ!」

 

 錬金術師が邪魔してきたが…

 

響「行ってください、師匠!」

 

マリア「この場は私達が抑えるわ」

 

弦十郎「頼む!」

 

 弦十郎は急いだのであった。

 

錬金術師A「おのれ装者と聖闘士達めー!」

 

錬金術師B「ベルゲルミルに巨大アルカノイズよ、まとめて片付けてしまえ!」

 

 ベルゲルミルに奏達は苦戦していた。

 

奏「くそっ、やっぱりこの程度じゃ通じないか……」

 

翼「こちらの決定力が欠けているという事なの……」

 

氷河「弱気になるな!この状況でしかできない事があるぞ!」

 

奏「何!?」

 

響「みなさん、手を繋いでください!世界中が、奏さんと翼さんの歌に応えて力をくれている。そのフォニックゲインを使って、マリアさん!」

 

マリア「ええ!調律したフォニックゲインの再構築は、私に任せておきなさい!」

 

響「お願いします!」

 

翼「さあ…奏も。手を」

 

奏「…ああ」

 

響とマリア「おおおおおおーっ!!」

 

奏と翼「はああああーっ!!」

 

 膨大なフォニックゲインにより、装者達のギアのエクスドライブモードが起動したのであった。それと同調するかのように、紫龍と氷河も強敵に追い込まれた時のように小宇宙が激しく燃えていた。

 

錬金術師A「な、何だ!?この凄まじいエネルギーは!?」

 

響「響き合う心と心は、みんなで紡ぐ一つの歌は!無限の力を引き出す事ができるんだぁぁーっ!!」

 

 エクスドライブの装者達の攻撃にベルゲルミルは圧倒され、吹っ飛ばされたのであった。

 

紫龍と氷河「うおおおおーっ!!」

 

 そして、小宇宙が激しく燃えている紫龍と氷河もまた、高い防御力を誇る分裂増殖型のアルカノイズが多数合体して生まれた巨大アルカノイズを拳で吹っ飛ばしたのであった。

 

アリシア「ベルゲルミルと巨大アルカノイズが、圧倒されているだと?バカな…なんだこの異常なフォニックゲインと小宇宙は!?これがシンフォギアの、人の持つ力の、奇跡の力だというのか!?認めない…奇跡など。私達を…楽団のみんなを見捨てたこの世界に、そんなものが存在するわけない!アルモニカの呪縛から解放する!ベルゲルミル、貴様の力を解き放て!」

 

奏「もうやめろ!今ならまだ引き返せる」

 

アリシア「引き返す!?そんな事、もうできない!この身、この命は!全て、楽団の遺志を継ぐために捧げてきたのだから!」

 

翼「嘘だ!楽団の人々はお前にそんな事は求めていない!楽団の人達は、お前に幸せに生きてほしかったはずだ!なぜなら…お前が行き続ければ、お前の心の中に、楽団のみんなが生き続けるからだ!」

 

アリシア「お前達なんかに、何がわかる!全てを奪われた私の気持ちが!夢半ばで潰された楽団のみんなの無念が!」

 

奏「わかるさ!大切な人を失った悲しみならな!」

 

翼「そうね…それでも人は、前を向いて生きていかなければならない。お前の信じたシリウスは、その道しるべだったはずだ!」

 

アリシア「黙れ…黙れ黙れ黙れ!!」

 

 業を煮やしたアリシアは遂に自分の命を焼却し始めた。

 

響「なんですか…、あの輝きは!?」

 

 アリシアが命を焼却したのと同時にベルゲルミルも姿が変わり、巨大化していった。

 

奏「ベルゲルミルの姿が変わっていく!?」

 

マリア「まさか…命を燃やして、ベルゲルミルに注いでいるの?」

 

翼「もうやめろ!そんな事をして何になる!?」

 

アリシア「争いのない世界を構築するためならば、今更この命など、惜しくない!」

 

 一方、巨大アルカノイズが紫龍と氷河に押されている事に業を煮やした錬金術師はさらに分裂増殖型のアルカノイズを出し、合体させたのであった。更に巨大化したベルゲルミルにはエクスドライブの攻撃も動じなくなり、紫龍と氷河も巨大アルカノイズの再生に手を焼いていた。

 

氷河「これでは俺達がスタミナ負けしてしまうぞ!」

 

紫龍「(あのアルカノイズはいくら切り裂いてもくっつき、消し飛ばしてもその箇所から失った分のアルカノイズが分裂して、またくっつく。まるで、その様子は磁石と再生する金属のようだ…。ん?磁石…?)」

 

 紫龍は中核となるアルカノイズが出てから、分裂増殖型のアルカノイズが集まって1体の巨大アルカノイズになったのを思い出した。

 

響「そんな!エクスドライブの力が!」

 

マリア「跳ね返されるだなんて!」

 

アリシア「はははははーっ!!今や完全体と化したベルゲルミルに、そんなまやかしの力など通用するものか!さあ、見せてみろベルゲルミル!かつて終末の戦いで世界を氷に包んだ、その力を!そして思い知れ、シンフォギア装者ども!歌の力なぞでは、何一つ変える事はできぬという事を!無明の闇を永遠に彷徨う人類には穏やかな眠りこそが!平等な死こそが!唯一無二の救済と知るがよい!」

 

奏「そんな事はない!歌は、世界を変えられる!歌には無限の力がある!人々を導く光となれる!」

 

アリシア「ふん、口先では」

 

氷河「それを実際に実行しようとしているのが奏達だ!」

 

アリシア「何!?」

 

翼「私達がそれを証明してみせる!アリシア、お前はあの時、『そんな歌があるなら聴かせてほしい』と言ったな?」

 

アリシア「それが何だ!?」

 

翼「今からそれを聴かせてやる!」

 

奏「行くぞ、翼!」

 

翼「ええ、奏!」

 

 2人が唄い出した歌は逆光のフリューゲルであった。

 

奏「決して折れる事のない、両翼の歌を……」

 

翼「何度絶望にくじけても、再び羽ばたくための、この歌を……」

 

奏と翼「今こそ、私達の歌を」

 

奏「届けてみせる!世界の果て、人類みんなの心の底まで!」

 

 2人の歌にフォニックゲインは更に高まって行った。

 

アリシア「な…!?なんだ、この異常はフォニックゲインは!?」

 

 歌を聞いていた紫龍と氷河の小宇宙もさらに燃えていた。

 

氷河「更に小宇宙が燃えるぞ、紫龍!」

 

紫龍「ああ。2人の歌のお陰だろう!」

 

 異様なフォニックゲインと小宇宙にベルゲルミルは怯んだ。

 

アリシア「バカな!ベルゲルミルが」

 

マリア「まさか、この歌は!」

 

響「凄く温かい…、そして力がどんどん漲ってくる」

 

 2人の歌に世界中が更なる反応を見せた。

 

弦十郎「これは!?世界が、2人の歌にさらなる反応を」

 

マリア「全世界70億人へ向けたスーパーライブ…」

 

響「これが、翼さんと奏さん、2人の双翼!」

 

 紫龍と氷河でも決定打を与えられない事に錬金術師達は慢心していた。

 

錬金術師A「ふはははっ!無敵のアルカノイズには黄金聖闘士も無力だ!最早、勝負は勝ったも同然だ!」

 

紫龍「いや、勝負は最後の最後まで諦めない奴だけが勝つんだ!そして、その力に慢心していると足元をすくわれるぞ!」

 

錬金術師B「何をほざくか!一気に止めを刺してやる!」

 

 巨大アルカノイズは最大出力でビームを発射しようとしたが……。

 

氷河「最大出力のようだ!」

 

紫龍「待っていたぞ、この時を!(狙いはあの中核となっているアルカノイズ!)」

 

 ビームを発射するために中核となっているアルカノイズが露わになるタイミングを待っていた紫龍は聖衣を脱ぎ、一気に小宇宙を高めたのであった。

 

錬金術師A「ふん、鎧を脱ぎ捨てるとは。自ら死にに来るようだな」

 

氷河「愚かな、それこそが紫龍の本気だ!」

 

錬金術師A「何!?」

 

紫龍「聖闘士の力の源は聖衣ではない、己の小宇宙だ!そして、これこそがライブラ紫龍最大の奥義、廬山昇龍覇!!」

 

 無防備な中核のアルカノイズに廬山昇龍覇が叩き込まれ、そのアルカノイズは消滅し、巨大アルカノイズはバラバラになって元の分裂増殖型のアルカノイズに戻った。

 

氷河「締めは俺が決めるぞ!オーロラエクスキューション!!」

 

 絶対零度の凍気に分裂増殖型のアルカノイズは一匹残らず全滅した。

 

錬金術師B「そんなバカな!無敵のアルカノイズが…!」

 

紫龍「あの巨大アルカノイズはあの金色のアルカノイズを中核として誕生した集合体のアルカノイズ。つまり、中核さえ潰せば合体前に戻る!そして、その再生力に慢心し、技の隙に気付いていなかった貴様らは負けて当然だ!」

 

錬金術師A「何だと!?」

 

紫龍「俺も以前、自分でも意識していなかった技の隙を見抜かれて敗北し、死にかけた事がある。だからこそ、お前達の巨大アルカノイズの弱点と隙を見抜く事ができたんだ!」

 

錬金術師A「おのれ……」

 

 一方、装者達の方も戦いが終わろうとしていた。

 

翼「これで」

 

奏「終わりだぁあああっ!!」

 

 奏と翼がベルゲルミルを貫いた。貫かれたベルゲルミルは消滅したのであった。

 

マリア「ベルゲルミルが、消えてゆく…」

 

響「終わったんでしょうか…?」

 

マリア「ええ。恐らく、ね……」

 

 命を焼却したアリシアは消えようとしていた。

 

アリシア「私が…負けた……?なぜ……?」

 

響「アリシアさんの身体が……」

 

紫龍「命を燃やし尽くした代償というわけか…」

 

翼「アリシア・バーンスタイン……」

 

アリシア「風鳴翼…天羽奏……。ふ……あなた達の勝ちね。笑うがいいわ…」

 

奏「…笑ったり、するものかよ」

 

翼「なあ、アリシア…。シリウス交響楽団は、争いに苦しむ者達を救い、悲しむ者達を笑顔にする。それが目的だったのだろう?」

 

アリシア「そうよ…でも、この世界が、それを拒んだの……。だからこそ…私は……こうするしかなかった……」

 

奏「けど、それでもあんたは…ずっと迷っていたんだな。自分のやろうとしている事が、本当に楽団のメンバーが望んでた事なのかって」

 

翼「ええ。そして、その躊躇いが…。永遠の子守歌の完成を、最後まで、無意識に拒んでいた。でなければ今頃、人類は歌も届かぬ真の眠りへとついていたはずだ」

 

氷河「(永遠の子守歌は完成しなかったのはそれをし損ねたのではなく、アリシアが無意識に完成させたくなかったからなのか…)」

 

アリシア「そう…ね。ええ、そう。気付いていたわ」

 

翼「わかっていても、止める事はできなかったのか?」

 

アリシア「私は…楽団の音楽が大好きだった。楽団の音楽で一番笑顔になれたのは、きっと、私自身…。だけど…思い出せないの。みんながどんな演奏をしていたか。一番好きだったはずの、私が!初めからわかっていた。自分のやっている事が間違いだって。だけど、どうしても許せなかった……。憎しみを、苦しみを、乗り越える強さが…私にはなかった。闇の中で輝き続けるなんて、私1人ではできなかった…。そして、その私の弱さのせいで……シリウス交響楽団のみんなが私に託してくれたものを、私自身のこの手で、潰してしまった……」

 

翼「いや……潰れてなどいないさ」

 

奏「ああ…あんたやその仲間の意思は、あたし達が引き継ぐ」

 

アリシア「あなた達……」

 

奏「争いのない世界を作るってのは、ちょっとばかし難しいけど」

 

翼「でも、悲しんでいる者達を笑顔にする事ならできる」

 

アリシア「…世界を変える、歌か……。あの時は鼻で笑ったけど……そうね。確かにあなた達なら、できるかも知れないわね……。ああ…聞こえる……。今なら、思い出せる……。楽団の…みんなの演奏が……」

 

 そして、アリシアは消えてしまった。

 

翼「アリシア……。私は、アリシアを救うと言ったのに…、結局……」

 

奏「救ったさ、あいつ、最後笑ってただろ?」

 

翼「奏……、うん…」

 

紫龍「アリシア…、もっと早く俺達に出会う事ができれば、友になれたかも知れなかっただろうな…」

 

奏「ああ……そうだな(……あたしも、翼に会ってなかったら、こいつらに出会えてなかったら……)」

 

氷河「どうかしたか?」

 

奏「いや、何でもない。そんじゃ、帰りますか?みんなが待っている場所に」

 

翼「うん、帰ろう」

 

 アイザックと王虎はベルゲルミルと巨大アルカノイズを倒した直後に来ていたが、その場の雰囲気を壊さないように敢えて扉の近くで待っていた。衛星回線ネットワークによって中和装置の音波が流された事により、世界中の人々は目覚めたのであった。

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 それから帰還した後、響達は元の世界へ帰り、奏はその送迎へ行ったのであった。

 

あおい「……翼さんもだけど、奏さんもだいぶ元気なかったね」

 

朔也「今回の被害の事、相当悔やんでるみたいだ……」

 

 この一連の事件の被害は飛行機や交通事故等による被害が多数を占めていた。そして、このブラックアウト事件と呼ばれるようになった。そして、弦十郎はある考え事をしていた。

 

了子「どうしたの?弦十郎君」

 

弦十郎「アリシアの事を考えててな」

 

あおい「確か、永遠の子守歌は未完成だったために私達は目覚める事ができたそうですね」

 

弦十郎「ああ。俺達の世界のアリシアは永遠の子守歌の完成を無意識に拒んでいた。だが…、もしかすると、どこか別の並行世界にもアリシアがいたら…その世界のアリシアは本気で世界を滅ぼそうとしているのかも知れない」

 

朔也「じょ、冗談言わないでくださいよ。本気で世界を滅ぼすだなんて…」

 

弦十郎「並行世界には様々な可能性がある。俺の推測通りに本気で世界を滅ぼそうとしているアリシアがいる世界があるのかも知れない」

 

了子「本気でとなると、とんでもない事になりそうね…」

 

 ある意味、今回はアリシアの迷いで何とかなったのであった。その迷いがなく、本気で世界を滅ぼそうとしているアリシアがいる世界が存在する可能性を弦十郎と了子は考えていたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はアリシア一味との決着を描きました。
紫龍と氷河に立ちはだかった分裂増殖型のアルカノイズが合体して生まれた巨大アルカノイズはドラクエのキングスライムのアイデアを参考にしました。そして、その際にドズルの「戦いは数だよ」とドラクエのネタも入れました。
今回で双翼のシリウス編は終わり、次は絆結ぶ赤き宝石をカットする代わりの代替イベントとして、世界に響く平和の歌編となります。
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