セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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世界に響く平和の歌編
79話 世界最悪のテロリスト


S.O.N.G潜水艦

 

 それは、ブラックアウト事件が起こる前の事であった。響が衰弱した事件の後、未来は定期的に訓練を行っており、今回も事前に未来は沙織に連絡をとり、美衣が相手となって訓練を行っていたのであった。

 

美衣「今日はここまでにしましょうか」

 

未来「美衣さん、付き合ってくれてありがとうございます」

 

沙織「では、休息をとりましょうか」

 

 訓練が終わったため、未来は神獣鏡のペンダントを沙織に預け、3人で休息を取ろうとしていたが……。

 

美衣「沙織様、何か聞こえてきませんか?」

 

沙織「何か、直接心に響くような……」

 

 耳を塞いでも直接心に響くような何かが聞こえた3人はそこへ向かうと、そこにはいかにも歌姫の衣装のクリスとツヴァイウイングとお揃い且つ、それぞれのイメージカラーの衣装を着て唄っている切歌と調の姿があった。

 

未来「クリス、そのステージ衣装で何をしているの?」

 

クリス「げっ、見られちまった!こ、これは……」

 

???「クリスさん達のステージ衣装に見える服は歌姫型ギアの姿なんです」

 

 説明したのはエルフナインであった。

 

未来「エルフナインちゃん!」

 

美衣「心象実験でも行っていたのですね?」

 

調「はい」

 

切歌「あたし達は武者ノイズの世界でライブができなかったから、いつかはライブをしたい一心でこのギアへの変化を目指して努力して、さっき変化に成功したのデス!」

 

沙織「そうなのですか……」

 

未来「でも、この歌姫型ギアの特性はどうなの?」

 

エルフナイン「ごめんなさい、まだこのギアは変化に成功したばかりで特性などは判明していないんです。ですので、もっと解析などが必要なんです」

 

美衣「それであれば仕方ありませんね」

 

沙織「しかしクリスさん、あなたが心象実験に付き合ったのは…」

 

クリス「後輩達が無理矢理誘ったからだ!べ、別に歌姫になりたいとか思ってねえぞ!」

 

 後輩達に無理矢理誘われたからと言ったクリスだが、それとは別の本音が滲み出ていたのであった。

 

 

 

???

 

 ある場所で、漆黒の鎧を纏った銀色の髪の女は宝石の怪物と戦っていた。しかし、結果は女の方が怪物を完全に押しており、光速拳1発で怪物の体を分断してしまう程だった。

 

女「そんな!カーバンクルがゴミのように押されているなんて!結晶にさえならないあの鎧、何なのよ!」

 

???「当然じゃない。そんな完全聖遺物如きで私に敵うと思っているの?その馬鹿猛獣の結晶化なんて、せいぜい私の薄皮一枚しか結晶化させる事ができないのよ」

 

カーバンクル「グルルルッ…!」

 

???「そろそろ終わりにするわ。コロナブラスト!!」

 

カーバンクル「グギャアアアッ!!」

 

 青い炎を受けたカーバンクルは跡形もなく焼き尽くされたのであった。

 

女「そんな…!カーバンクルが…灰になってしまうなんて…」

 

???「いい気味ね。次はこんなのでどうかしら…?」

 

 鎧の女は今度は猛烈な冷気で女を氷漬けにし、砕いたのであった。

 

???「バカね、そんな知性の欠片もない猛獣が私に敵うわけないでしょ?あのゴミといい、大人共といい、世の中はバカとクズ揃い。やはり、人間はあの子以外は根絶やしにすべきよ」

 

 そう言って女は鎧の翼を広げ、去って行ったのであった。

 

 

 

公園

 

 それから、翼が奏のいる並行世界へ行ってアリシアの事件に巻き込まれる1日前、ムウと一緒に星矢達の世界に来ていたアルデバランは漆黒の鎧の女と戦いを繰り広げていた。

 

アルデバラン「(この女、俺が今まで戦った冥闘士の中でもスピードが飛び抜けて速い!気を抜いたらやられる!)」

 

 膠着状態が続いたが、その膠着の隙を突くかのように女の指先から放たれた閃光がアルデバランに命中した。

 

???「隙を見せたわね、これで終わりよ!」

 

 そう言って女は左手に猛烈な凍気を、右手に灼熱の炎を発生させ、両手を頭上で組んでから振り下ろすと、猛烈な一撃が放たれて、閃光を受けて動けなくなったアルデバランを吹っ飛ばした。

 

アルデバラン「うわあああっ!!」

 

 そのままアルデバランに止めを刺そうとした女だったが、顔色が悪くなってその場を離れたのであった。その一部始終を一輝は偶然目撃した。

 

一輝「(何だ?あの冥衣は…!俺は…俺は何であの冥衣を初めて見た気がしないんだ…?)」

 

 

 

???

 

 女はアジトに帰ってきた後、映像を見ていた。

 

???「一時はどうなるかと思ったわ。ゴミがヘマをやらかしたせいで『あれ』の封印を解くカギが消えてしまってプランの一つが頓挫してしまったもの。でも…並行世界からカギがやってきたお陰でようやくあれの封印を解く事ができるわ…」

 

 そして、ある装者に目をつけていた。

 

???「クリス…、今まで会いに行けなくて寂しかったわ…。今から会いに行くからね…」

 

 クリスへの異様な執着を示した女は漆黒の鎧を纏い、空を飛んでいった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 それは、奏のいる世界で再び起こった事件が解決し、翼達が帰ってくる直前の事だった。

 

クリス「まだか…?」

 

 奏のいる世界で翼が連れ去られてしまった事でクリスはかなり苛立っていた。

 

星矢「あっちでは何が起こってるんだ…?」

 

瞬「わからない…。でも、僕もできたらすぐにでも行きたいという気持ちは一緒だ」

 

調「先輩、もう行きたさそうにしてるよ」

 

切歌「あたし達も行きたいのデス…」

 

 そんな中、突如としてゲートから誰かが来ようとしていた。

 

クリス「帰ってきたのか!?」

 

 しかし、ゲートから来たのはセレナであった。

 

クリス「違うのかよ…」

 

セレナ「皆さん、どうしたんですか?」

 

 セレナは早速、クリス達の所に来て事情を説明してもらった。

 

セレナ「マリア姉さんは響さんと一緒に出掛けてるのですか…」

 

 『姉さん』という言葉を聞いたクリスは微笑んでいた。

 

切歌「クリス先輩はお姉ちゃんが欲しいのデスか?」

 

クリス「あ、いや、そんな訳ねえだろ?」

 

調「でも、さっきのセレナの言葉に反応してた」

 

セレナ「雪音さんもお姉さんが欲しいのですか?」

 

クリス「ほしいっていうか…、その…あたしにも昔はお姉さんみたいに親しい人がいて、あたしのパパとママの仕事の同僚の子供であたしとは姉妹同然に育ったんだ」

 

調「とすると、私達にとってのマリアみたいな人がクリス先輩にもいたんだ」

 

切歌「どんな人デスか?」

 

クリス「…あたしとは真反対で素から優しくて、面倒見のいい人さ。一緒に唄うのが好きで、あたしに将来の夢は歌で戦争をなくすって語ってたしな」

 

セレナ「その人は今はどうしてるのですか?」

 

クリス「…その人の親が所属してるNGO団体は戦争に巻き込まれてみんな死んだらしい。きっと、その人も…」

 

セレナ「……悲しい事を聞いてすみません…」

 

クリス「気にすんなよ。あたしのパパやママと違って死んだとこを見てすらいないし、気にしたって何にもならねえしな」

 

調「せっかく来たから、一緒に訓練でもしよう」

 

切歌「そうデス!もしかすると、訓練中にマリアが帰ってくるかも知れないのデス!」

 

セレナ「はい」

 

切歌「そう言えば、クリス先輩のお姉さんみたいな人の名前って」

 

 ところが、アルカノイズ出現の警報が鳴った。

 

クリス「くそっ、こういった時にアルカノイズがまた出やがったのかよ!」

 

朔也「出現位置はリディアンの近くです!」

 

弦十郎「直ちに現場に向かってくれ!」

 

切歌「オッケーデス!」

 

セレナ「私も行きます!」

 

弦十郎「本当は遊びに来ただけなのに、共に戦ってくれて感謝する…」

 

 セレナも一緒にクリスは4人で現場へ向かった。アルカノイズの出現と共に星矢達は何かを感じていた。

 

星矢「何だ…?この邪悪な小宇宙は…」

 

弦十郎「どうした?」

 

瞬「邪悪で強力な小宇宙を感じます。それも、冥闘士のような小宇宙です」

 

沙織「もしかすると、冥闘士の生き残りがいるのかも知れません。星矢と瞬も出撃してください」

 

 星矢と瞬も出撃する事となった。

 

 

 

市街地

 

 出撃した星矢達は漆黒の鎧を纏っている敵を目撃した。

 

調「あの鎧の奴等は何?錬金術師?」

 

星矢「違う!あいつらは冥王ハーデスの手下の冥闘士だ!」

 

クリス「冥王ハーデスって…、ちょっと沙織から聞いたけどあんたらが手下共々倒したんじゃないのか!?」

 

星矢「確かに冥王ハーデスは俺達が倒した!だけど、冥闘士に生き残りがいたなんて俺達も聞いてない!」

 

セレナ「あの…私は冥闘士の事は知らないんですけど、ノイズやネフィリムより強いんですか?」

 

瞬「その通りだよ、セレナ。目の前にいる奴等はカルマノイズやネフィリムの何万倍も強いんだ!」

 

切歌「そ、そんな奴等に勝てるのデスか…?」

 

星矢「この場は俺達に任せな。俺達もあの時より強くなったからな」

 

瞬「君達はアルカノイズの方を頼む!」

 

 冥闘士の方は星矢達が担当する事となり、クリス達はアルカノイズの方へ向かった。

 

星矢「てめえら、まさかハーデスの仇討ちをしようと思ってるんじゃねえだろうな?」

 

冥闘士A「ふん、俺達にとってハーデスなんてもうどうでもいいんだよ。俺達は別働隊といったところだな」

 

冥闘士B「そもそも、俺達を替えの利く駒同然にしか思っちゃいないハーデスやタナトスみたいな神の下につきたくねえよ。だから、別働隊に志願して聖戦から離脱したのさ!」

 

瞬「こんなにもハーデスへの忠誠心に欠けた冥闘士を見たのは初めてだ!」

 

冥闘士C「そもそも、俺達をまとめてるお頭に至ってはある女の子以外は何とも思っちゃいないんだからな」

 

星矢「お頭?そいつがお前達のリーダーなのか!?」

 

冥闘士C「そうさ、今頃は」

 

 そんな時、仲間に拳骨された。

 

冥闘士A「バカ!うっかりバラすんじゃねえ!」

 

星矢「瞬、この場は俺が何とかするから、お前はクリス達の方へ行ってくれ!」

 

瞬「わかった。でも、無理はしてはダメだよ」

 

 瞬をクリス達の元へ行かせ、星矢は冥闘士3人と対峙した。一方、戦場となったリディアン周辺では未来が避難誘導を行っており、クリス達はアルカノイズを次々と倒していた。

 

クリス「セレナはアルカノイズを知ってるのか?」

 

セレナ「はい。怪盗をやってた時に遭遇して特徴などをマリア姉さんに教えてもらいました」

 

クリス「なら、話は早いな。アルカノイズの攻撃に当たるんじゃねえぞ!」

 

セレナ「はい!」

 

 クリスは年下の3人を指揮しながら一気にアルカノイズを殲滅したのであった。

 

調「終わったね」

 

切歌「あたし達が強いのデス!それに、冥闘士とやらも今頃星矢達に倒されてこの戦いも終わりなのデス!」

 

 そこへ未来が来た。

 

未来「戦いは終わったの?」

 

セレナ「はい。これから帰ろうとおも」

 

 そんな時、クリスはある気配を感じた。

 

クリス「…終わりじゃねえみたいだぞ…」

 

 クリスの言葉通り、漆黒の鎧を纏った女が現れた。

 

調「新手…!」

 

クリス「てめえ…まさか冥闘士なのか!?」

 

???「その通りよ。あなたに会うのは何年ぶりになるのかしら、クリス」

 

クリス「何年ぶり?あたしの知ってる奴に冥闘士なんざいねえ!」

 

???「…ヘッドギアが邪魔で私の事がわからないのね」

 

 そう言って女はヘッドギアを外した。すると、クリスの表情が驚愕したのであった。

 

クリス「お、お前は……アリシア!!」

 

アリシア「そうよ。私は天暴星、ベヌウのアリシア。会いたかったわ、クリス。見ないうちに随分美しくなったわね」

 

 アリシアが親し気にクリスと話してる姿にセレナ達はあっけにとられていた。

 

セレナ「あの人、雪音さんの知り合いなのかな?」

 

切歌「だったら、あたし達もその人と親しくなりたいのデス」

 

アリシア「クリス、害虫である三流テロリストの妹達の事は放っておいて行きましょう」

 

 アリシアの言葉にセレナ達は衝撃を受けた。

 

セレナ「が、害虫って…」

 

調「三流テロリストの妹達…その三流テロリストってまさか…、マリアの事なの!?」

 

アリシア「大当たりよ。あんな非情になれずにやる事為す事がとことん裏目に出て、粗大ゴミに賛同してもダメな事の連続だった三流テロリストなんて、たかが知れてるわよ。私なら、完全に非情になれるからあんな三流テロリストのようなヘマはしないわよ。そして、クリスに纏わりつく害虫に用なんてないわ」

 

切歌「マリアを三流テロリストとか、聞き捨てならないのデス!お前はあたし達が倒してやるのデス!」

 

アリシア「クリスに纏わりつく害虫共が身の程も弁えずに私を倒すだなんていい度胸じゃない。ま、これまであなた達の活動に関わってきた私から見てもあなた達じゃ勝てはしないわ」

 

セレナ「私達は害虫じゃないですし、姉さんはテロリストなんかじゃありません!取り消してください!」

 

調「マリアをバカにして、私達を害虫と言ったあなたは私達が倒す!」

 

未来「待って!あなた達とあの人の力の差は」

 

 アリシアの言葉に激怒したセレナ達はアリシアに向かっていった。

 

アリシア「無駄な事を」

 

 そう言うとアリシアは指を光らせた。すると次の瞬間、3人は吹っ飛ばされたのであった。

 

セレナ達「きゃあああっ!!」

 

 セレナ達は吹っ飛ばされ、顔から地面にぶつかった。

 

未来「あれは…光速拳!」

 

クリス「実力は黄金聖闘士クラスかよ…!」

 

アリシア「さてと、私のクリスに纏わりつく害虫の中でも最も嫌いな害虫の片割れであるあなたも始末したいけど、神獣鏡の装者でもあるから聞きたい事があるわ。あなたのギアの在り処を教えてもらうわよ」

 

 未来が神獣鏡の装者である事を知っている事実に未来とクリスは衝撃を受けた。

 

クリス「アリシア、てめえ…なんで神獣鏡の事を…?」

 

アリシア「私の計画に神獣鏡が必要なのよ。神獣鏡は私が纏うはずだったのに、あの英雄とほざく粗大ゴミのせいでお前の手に渡った上、片割れの害虫と融合していたガングニール共々失われてしまって神獣鏡を使ったプランが台無しになってしまったから、並行世界の神獣鏡が来て助かったのよ。さぁ、在り処はどこ?」

 

未来「私、どこにあるのか知らない!」

 

 未来からの回答が予想通りであるかのようにアリシアは取り乱す事なく指を光らせ、その閃光は未来の額に当たった。

 

アリシア「しらばっくれても無駄よ。さぁ、どこにあるの?」

 

未来「(何?言いたくないのに口が勝手に…)…S.O.N.Gの本部に保管されてる…」

 

アリシア「わかったわ。なら、ここで死ね!」

 

 そう言ってアリシアは未来を貫こうとしたが…。

 

クリス「がはっ…!」

 

未来「クリス!」

 

 未来を庇ってクリスは脇腹を貫かれたのであった。

 

アリシア「!?クリス、しっかりして、クリス!」

 

 クリスが未来を庇ったせいで自分の手でクリスを傷つけてしまった事にアリシアは動揺し、慌ててクリスを抱えたのであった。

 

未来「(この人…、クリスの事を…)」

 

アリシア「小日向未来…、クリスを惑わして私にクリスを傷つけさせたからには、ここで死んで罪を償え!!」

 

 激怒したアリシアは未来を殺そうとしたが、ネビュラチェーンが飛んできて顔にぶつかった。

 

アリシア「くっ!」

 

未来「あの鎖は…瞬さん!」

 

 瞬が駆け付けたのであった。

 

瞬「あなたが冥闘士の残党のリーダーなのか!?」

 

アリシア「その通りよ、アンドロメダ。私は天暴星、ベヌウのアリシア」

 

未来「気を付けてください、瞬さん!あの人の実力は黄金聖闘士クラスです!」

 

 目の前のアリシアに瞬はいつ襲ってくるのか身構えていたが、クリスに目を向けたアリシアは背を向けた。

 

アリシア「今回はここで帰るわ。急いでクリスの傷を治さないといけないし、あなたの攻撃を受けて流した私の汚らわしい血でクリスが汚れてしまったのだからね。でも、クリスを惑わした挙句、私に傷つけさせて私の血でクリスを汚したからには小日向未来、近いうちにお前を殺しに来るわよ!心も体も徹底的にボロボロにしてね!」

 

未来「クリス!」

 

 そう言って未来への憎悪を露わにしたアリシアはクリスを抱えて冥衣の翼で空を飛んだのであった。

 

瞬「あの人は何者なんだ…?」

 

未来「瞬さん、ごめんなさい…。あのアリシアって人にクリスを攫われた挙句、神獣鏡のある場所を言わされてしまったんです」

 

瞬「クリスが攫われた上に神獣鏡の在り処を言わされた?」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 瞬達は一度帰還したのであった。

 

弦十郎「何だと!?クリス君が攫われた上、敵が神獣鏡の事を知っていた上、狙っていただと!?」

 

未来「ごめんなさい。私は何もできなかった上、在り処を吐かされてしまって…」

 

弦十郎「未来君が気に病む事はない。恐らく、敵は精神に作用する技で未来君に神獣鏡の在り処を吐かせたのだろう。抵抗できなくても仕方ない」

 

沙織「もう過ぎた事を悔やむより、これからの事を考えましょう」

 

 アリシアの行動に瞬はある疑問を持っていた。

 

瞬「(あのアリシアって冥闘士は精神に作用する技で未来に神獣鏡の在り処を吐かせたんだろう。ん?精神に作用する…?)」

 

 フロンティア事変の際に思っていた疑問と今回の出来事が繋がったのであった。

 

瞬「(もしかすると…、フロンティア事変の時に未来を洗脳したのも、ウェルに大火傷を負わせて精神崩壊させた黒幕はアリシアに違いない!)」

 

星矢「どうした、瞬。何か閃いたのか?」

 

瞬「星矢、沙織さん、司令、僕はフロンティア事変で疑問に思った事がようやくわかったような気がするんです」

 

弦十郎「疑問に思った事だと?」

 

瞬「はい。ウェルと一緒に未来を洗脳し、ウェルに大火傷を負わせて精神崩壊させた犯人がわかったんです」

 

未来「私を?」

 

沙織「誰が犯人なんですか?」

 

瞬「これは推測でしかないんですが…、犯人は今回現れた冥闘士のリーダーのアリシアだと思います」

 

弦十郎「冥闘士が犯人だと!?」

 

瞬「はい。フロンティア事変の時に1発攻撃を受けてから未来が暴走したのはアリシアがそうなるように仕組んだものとしか思えません。それに、アリシアの冥衣は色以外は割と兄さんの神聖衣の状態の聖衣と似ていたんです」

 

エルフナイン「ベヌウはエジプト神話に伝わる不死鳥で、ギリシャ神話のフェニックスの原型にもなった幻獣です。なので、一輝さんの聖衣とベヌウの冥衣が似ててもおかしくはないと思います」

 

星矢「似てるって事は、アリシアって奴は一輝と同じような技を持ってる可能性があるって事か?」

 

瞬「そう考えるのが自然だと思うよ。何しろ、未来に言いたくない事を言わせた時点で兄さんの幻魔拳のような技が使える証拠なんだ。そして、アリシアの精神操作技は朧幻魔皇拳のように1発攻撃を受けると、真の効果が発動する二段構えにもできるのが自然だと思うよ」

 

沙織「とすれば、既に敵は神獣鏡の在り処を知っているわけですね」

 

 そんな折、響達が帰ってきて、送迎で同行した奏も来た。

 

マリア「何だか深刻な様子ね…」

 

響「師匠、何かあったんですか?」

 

弦十郎「それは…」

 

 弦十郎はクリスがアリシアに攫われた事を話した。

 

翼「何だと!?雪音がアリシアに!?」

 

奏「この世界にもアリシアがいたのか!?」

 

星矢「ちょっと待て!奏の世界にもアリシアがいたっていうのか!?」

 

 奏は自分の世界でアリシアが起こした事件を話した。

 

星矢「そうか…」

 

弦十郎「奏の世界のアリシアは哲学兵装アルモニカで全人類を永久に眠らせようとしたのか…!」

 

紫龍「その通りです、司令」

 

氷河「ならば、俺達の世界のアリシアの目的も同じだろう」

 

紫龍「だが、神獣鏡を求めている時点で向こうとは事情が違うようだ」

 

弦十郎「恐らく、こっちのアルモニカは聖遺物の力で封印されていて、その封印を解くために神獣鏡が必要なのだろう」

 

沙織「既に敵は在り処を知っているので…」

 

未来「私をクリス救出へ行かせてください!」

 

 アリシアに神獣鏡の在り処を吐かされ、クリスが攫われたために未来はその罪悪感で出撃を要請した。

 

響「未来?」

 

未来「私のせいで神獣鏡の在り処を知られた上、クリスが攫われたんです!だから、私も行かせてください!」

 

弦十郎「それはできない。なぜなら…敵の狙いは未来君だからだ。君は正式な装者ではない。それに、奴は精神操作も得意としている。下手に出撃すれば、未来君がアリシアに洗脳されてアルモニカの封印を解いてしまう危険も考えられる。出撃したいのはわかるが、今はこらえるんだ」

 

未来「そんな…」

 

 そして、装者と聖闘士は出撃の準備を、大人達はアリシアの情報を集めていた。

 

沙織「司令、未来さんの件についてですが…。訓練もしっかり受けています。本人もその気であればそろそろ…」

 

弦十郎「…そうだな…。それに、さっき未来君の出撃を許可しなかったのは、敵の出方を伺うためでもある」

 

沙織「既に目的はある程度わかっているとはいえ、全て向こうの世界と一緒という訳ではないのですから、油断は禁物ですね…」

 

弦十郎「後は本拠地だ。本拠地さえわかれば、ある黄金聖闘士の力を借りて一気に突撃する事もできる」

 

???「それが私の役目ですね、風鳴司令」

 

 気配を消していたムウが姿を現した。

 

弦十郎「ちょうどムウが貴鬼の指導でこっちに来てて助かったぞ」

 

ムウ「いえ、アルデバランと一緒に貴鬼がどうしているのか見に来ただけです。アルデバランの方も、大した怪我でなくてよかったです(しかし、黄金聖衣にもそれなりにダメージがあるとは…。もしも、アルデバランほど頑丈でない私がアリシアと戦っていれば、重傷は免れなかったでしょうね…)」

 

 そこへ、慎次達が来た。

 

慎次「司令、今回の敵はあの世界最悪のテロリストと言われていて、冥闘士でもあるアリシア・バーンスタインなのですね…」

 

弦十郎「ああ。一般には公開されていないが、政治の世界ではその名を知らぬ者はいないほどのテロリストだ。出会った他のテロ組織や悪徳政治家、マフィアなどの人間を皆殺しにし、果ては国家の要人の暗殺も確実に成功させ、自分達の要求を呑まない国に対しては制裁として軍はおろか、その国家元首や閣僚、政治家を皆殺しにし、政府機能を完全に破壊して国を滅ぼした事さえある。国の中枢を破壊する際はたった一人だけでな…。危険度は武装組織フィーネやキャロル一味とは比較にならないほどの極悪なレベルだ。あまりの残虐性と強さと容赦のなさから、アリシアの事を『人の皮を被った悪魔』とさえ言う奴もいる程だからな…」

 

朔也「そう言えば、隣国の朝鮮半島二か国はアリシアが自分達の要求を呑まない場合の見せしめとして政治中枢を完全に破壊し、今でもまともな政権の樹立すらできていない有様ですからね……。まさか、あの核を保有する国が当時成人年齢に達していないテロリストに滅ぼされたなんて耳を疑いましたよ…」

 

弦十郎「俺も疑ったさ。まずは邪魔をする軍から潰してから中枢を潰すと思っていたが、軍との戦闘を配下に任せてアリシア自らが中枢を破壊して核兵器を使う事すらさせずに軍も全滅させたそうだ。まさか、北の将軍一家も敵の首領が自ら殺しに来るなんて思ってもいなかっただろうから、何もできずに殺されただろうな…」

 

あおい「朝鮮半島二か国や他の小国がいくつか滅ぼされてから、アリシアはノイズと並ぶ特異災害認定されてロシアや中国、米国さえも手が出せない恐ろしいテロリストとしてその名が各国政府に知れ渡りましたから…。恐ろしいテロリストのアリシアがまさか冥闘士だったなんて…」

 

慎次「僕もアリシアが冥闘士であるというのは想定外でした」

 

朔也「アリシアの身元が判明しました。アリシア・バーンスタイン。彼女の両親は雪音夫妻の所属していたNGO団体の同僚であり、家も近所で家族ぐるみでの交流もあったようです」

 

弦十郎「クリス君の両親とアリシアの両親が仕事の同僚だったとは…」

 

あおい「ですが、アリシアの両親と所属していたNGO団体のメンバーも雪音夫妻の後を追うかのように雪音夫妻の死から数日後にバルベルデで戦火に巻き込まれ、死亡。当時、幼かったアリシアもその時に死亡したと思われていたのですが…」

 

弦十郎「まさか、あの状況でアリシアが生き残って世界最悪のテロリストと化してしまうとはな…」

 

慎次「アリシアの両親とNGO団体のメンバーの死からテロリストと化した間に何かがあった事は間違いありませんね」

 

弦十郎「そこがカギだ。その間、絶対に何かがあったに違いない…」

 

 星矢達の方でもアリシアに関する情報を整理していた。

 

星矢「向こうのアリシアは錬金術師だったのか」

 

奏「ああ。あいつはベルゲルミルという、完全聖遺物を扱っていた」

 

瞬「でも、こっちのアリシアは錬金術師である向こうのアリシアと違って冥闘士なんだ。それも、冥界三巨頭にも匹敵する程の小宇宙を秘めていた」

 

星矢「そのせいで切歌と調とセレナは光速拳でやられてしまった」

 

マリア「セレナ!!」

 

 セレナの事でマリアは冷静さを一気に失い、セレナ達の所へ向かった。

 

紫龍「マリアの気持ちもわからなくはないが…」

 

奏「翼を救ったと思ったら、今度は翼の世界で翼の仲間が攫われてしまうとはな。よし、あたしの世界の危機を救ったお礼でこの世界のアリシアの事件解決に協力する」

 

翼「奏…、ありがとう。急いで向かわねば、雪音が」

 

未来「翼さん、アリシアは絶対にクリスを人質などに使わないと思います」

 

翼「なぜそう言い切れる?小日向」

 

未来「アリシアはクリスを誤って傷つけた際、とても動揺していたんです。きっと、クリスを本気で大切に思っているに違いありません」

 

響「未来の言った通り、本気で大切に思ってないと動揺なんてしないもんね」

 

翼「世界が違えば、アリシアも違うのか…」

 

 マリアはセレナ達の所へ行った。

 

マリア「よかった…。みんな軽く打った程度で済んで…」

 

セレナ「マリア姉さん、あの人は許せません!優しいマリア姉さんをテロリスト呼ばわりしたあの人は絶対に許せません!!」

 

マリア「(セレナの怒りはもっともだけど、アリシアのテロリスト呼ばわりは間違っていないのだけどね…)」

 

調「クリス先輩を攫った挙句…」

 

切歌「あたし達を害虫というアリシアは何様のつもりなのデスか!?しかも、あいつは人を人と思ってない冷たい目をしたたのデス!」

 

マリア「(まさか、私達の世界にもアリシアがいたなんて…。セレナ達の話を聞く限りでは、私達の世界のアリシアは向こうのアリシアよりもさらに冷血で冷酷なようね…)」

 

 セレナ達が軽傷だとわかって安心し、廊下で考え事をしているマリアの所へ未来が来た。

 

未来「マリアさん、あのアリシアって人は私が神獣鏡の装者だという事を知っていた上、瞬さんの推測ではフロンティア事変の時に私に暴走するような洗脳を施し、ウェル博士を精神崩壊させて大火傷を負わせた張本人だったようなんです。おまけに、マリアさんの事を『三流テロリスト』とか言ってたり、マリアさん達の事もよく知ってて、活動にも関わったとか言ってたんですけど、マリアさん達の方でもアリシアに関する手掛かりはあるんですか?」

 

マリア「アリシアの手掛かり?私もそんな事は知らないわよ。第一、私も向こうの世界に行くまでアリシアに会った事さえないのだから。ただ…」

 

未来「どうしたんですか?」

 

マリア「セレナが生きていた世界に行く前にも話したけど、ドクターにはアシリアという助手の女の人がいたのよ。切歌みたいに明るくていつも励ましてくれた上、食料調達をしてみんなを満足させてくれたドクターの助手がね。もっとも、食料調達であまり一緒にいない事が多かったのだけど」

 

未来「(ウェル博士の助手?もしかして、その人は…!)それに、アリシアは『神獣鏡は私が纏うはずだった』って言ってたんです」

 

マリア「(どうなってるの?『神獣鏡は私が纏うはずだった』だなんて…、何か変よ…。私達をよく知っているのといい、未来の洗脳の件といい、ドクターの無残な姿の件といい、この世界のアリシアは思った以上に私達の知らない所でフロンティア事変に介入していたのかも知れない…)」

 

 自分達の世界のアリシアの不可解な発言にマリアは疑問を募らせる一方だった。一方、発令所にはある人物が来ていた。

 

沙織「一輝!」

 

弦十郎「いつも単独行動をとっているお前がどうしてここに?」

 

一輝「単純に言う、俺は用事があって黄金聖闘士達が生き残った世界へ行く」

 

弦十郎「どうしてそれを?」

 

一輝「たまに瞬に会って、あらかた情報を聞いててな」

 

沙織「その用事とは…」

 

一輝「少し気にある事があってな、それで黄金聖闘士に何か聞こうと判断した」

 

弦十郎「一輝が相談に行くとはな。ま、気になる事があるならきっちり相談した方がいいぞ」

 

 一輝は笑みを浮かべた後、聖衣を纏ってゲートに飛び込み、並行世界の聖域へ向かったのであった。




アリシア・バーンスタイン(本編世界)
双翼のシリウスに出たアリシア・バーンスタインの並行世界の同一人物にして、天暴星ベヌウの冥闘士。
アリシアの両親はクリスの両親と同じNGO団体の所属であり、同僚でもあったため、クリスとは姉妹同然に育った。
奏が生き残った並行世界のアリシアと同様に落ち着いているように見えるが、実際はかなり感情の起伏が激しく、人を殺す事に何のためらいも抱いていない。雪音夫妻の死から数日後にバルベルデの戦火に巻き込まれて両親やNGO団体の面々と共に死亡したはずであったが……?

これで今回の話は終わりです。
今回は本編世界でアリシアが行動を開始したのと、三巨頭クラスの圧倒的な力を見せつけ、クリスを拉致したところまでを描きました。
聖闘士星矢原作やアニメのお約束でアルデバランがいきなりやられていますが、後できっちり活躍します。
本編世界のアリシアが片翼世界に比べてかなり悪人寄りになっているのは、フィーネやウェル、アダムが並行世界では善人になっていたため、ならば逆に並行世界に出た悪人が本編世界に出たらより凶悪になっていると思ったからです。
本編世界のアリシアが冥闘士として登場させたのは、直接聖闘士とのぶつかり合いがしたかったのと、冥闘士の三巨頭以外の強者の中ではベヌウが最適だと思ったからです。炎と氷を操るのは神闘士のハーゲンと同じですが、本編世界のアリシアは聖闘士星矢版メドローア的な技を持っているハーゲンの完全上位互換として描いています。なぜアリシアが凍結拳を使えるのかは後に明らかとなります。
次の話は攫われたクリスの様子がどうなっているのかが判明します。
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