セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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80話 断たれた夢

 

 夢の中で幼い頃のクリスは同級生の男児達にいじめられていた。そこへ、アリシアが来たのであった。

 

アリシア「コラ~っ!クリスをいじめるな!!」

 

男児「やべっ!にげろ!!」

 

 アリシアに恐れをなして男児達は逃げたのであった。

 

クリス「お姉ちゃん…」

 

アリシア「泣かないで、クリス。もうあいつらは私が追い払ったから。そうだ、クリスを慰めるために私が唄ってあげる」

 

 クリスを慰めるため、アリシアは唄う事にした。

 

アリシア「ララ~ララ~、ララ~ララ~♪ラララ~ララ~ラ~ララ~ララ♪ラララ~ラララララララ、ラ~ラ~ララ~ララ♪ラララ~ララ~ララ~ラララ~ララ~ラ~ララ~ララ♪ラ~ララ~ララ~ララ、ララ~~ララ~♪」

 

 

 

???

 

 浴室らしき場所の中、クリスは目覚めた。

 

クリス「ここはどこなんだ…?」

 

 しかし、アリシアが誤って付けた傷は錬金術師辺りが治療してくれたのか、治っていたものの、自分がいつの間にか全裸の状態で浴室の中にいる事に驚愕した。

 

クリス「な、何であたしがぽんぽんすーなんだよ!」

 

???「あなたが私の汚い返り血を浴びたから、服は洗濯している最中なの。今から私があなたの体を洗うのよ。また私に洗ってもらえるのは楽しみでしょ?」

 

 浴室へ濡れないための服装をしたアリシアが入ってきた。

 

クリス「余計なお世話だ!ってかお前……アリシア…、なんだよな…?」

 

アリシア「何を寝ぼけた事を言ってるのよ、私はあなたのお姉さんのアリシアなのよ。ほら、汚い返り血を洗い流しましょう。あなたの体にはそんな返り血みたいな汚いもの自体、ついてはいけないのよ」

 

 アリシアの言う事にはクリスも言い返せず、アリシアはクリスの体を洗った。

 

アリシア「神よ、クリスは美しい…。そう、いかなる世界のものにもまして…。この雪のように白い肌…、銀色の髪…、見事なまでのプロポーション…。どんなものでもクリスの前には輝きを失うわ。幼かった頃からこれほどまでに美しく成長したなんて…。まさに、クリスは神が作り上げた最高の芸術そのものよ…」

 

クリス「な、なに変な事言ってんだよ。って、うわっ!!」

 

 クリスの体を洗いながらアリシアはクリスを『最高の芸術』というほどに過剰なベタ褒めをし、クリスの胸を触った。

 

クリス「ど、どこ触ってんだよ、アリシア!」

 

アリシア「それにしても、クリスは胸が大きいわね。私がクリスと同じぐらいの頃はそこまで大きくはなかったわ。弾力もあって、形も整ってて、その大きな胸も芸術そのものよ。私の見立てではクリスのバストは90cm前後といった所かしらね。大人になれば100cm台も夢じゃないわよ」

 

クリス「あたしは胸が大きい事なんて自慢でも何でもねえ!後輩達にもからかわれたりして、むしろ邪魔だと思ってるんだよ!」

 

アリシア「そうかしら?もっと胸が大きいのを自慢してもいいのに」

 

 せっかくの大きな胸を自慢にしたがらないクリスに対し、アリシアは洗うのも兼ねて胸を触りまくったのであった。

 

クリス「ひゃっ!だから、あたしの胸を揉んだり触るんじゃねえって言ってるだろ!」

 

アリシア「姉妹同士だし、これくらいはいいでしょ?さて、体も洗い終わったから、上がりましょう」

 

 クリスの体を洗ってからタオルでよく水気をふき取り、クリスに着替えを着せてからアリシアはクリスと共に浴室を出た。その姿を配下達は見ていた。

 

錬金術師A「アリシア様があんなに笑みを浮かべているのは初めて見たぞ!」

 

錬金術師B「いつも凍り付いたような目つきをしていたからな。それに、自身への悪口よりクリスへの悪口に物凄く厳しいからな…」

 

錬金術師C「クリスへの悪口を言った奴は惨い殺され方をするのだからな…。確か、アリシア様が利用していたウェルとかいう科学者に至っては、さっき言ったクリスへの悪口を始めとしたアリシア様の地雷をいくつも踏んでしまって、精神崩壊と大火傷という、死んだほうが楽になれる生き地獄を味あわせて粛清したそうだしな…」

 

 2人に配下達のひそひそ話は聞こえていなかった。

 

クリス「アリシア、あたしをこれからどうするんだ?」

 

アリシア「どうするも何も、あなたを人質とかに使ったりはしないわ。あなたはこの建物の中は自由に行動していいのよ。でも、外は北極のド真ん中だから出ちゃダメよ」

 

クリス「北極!?あたし、北極にいるのかよ!!」

 

アリシア「そうよ。それに、私の配下があなたに嫌がらせなどをしたらすぐに私に知らせなさい。その場で粛清するから」

 

クリス「(粛清…?アリシア、お前は…お前は本当にあたしの知ってるアリシアなのか…?)」

 

 クリスに話しかけているアリシアは一見すると昔と同じような優しい性格に見えるものの、未来やセレナ達への態度や粛清という言葉を平然と口にする姿にクリスは目の前にいるアリシアが昔のアリシアと同一人物なのか不安に思っていた。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その頃、S.O.N.Gでは情報の整理が行われていた。

 

弦十郎「翼が並行世界に行く前にアルデバランはあの冥闘士と戦っただと?」

 

アルデバラン「ああ。奴は天暴星ベヌウのアリシアと名乗った。急に襲ってきたから俺は応戦した」

 

セレナ「アルデバランさんも私達のように何もできずに負けたんですか?」

 

アルデバラン「いや、途中まではあの女とは互角だった。アリシアは冥闘士一のスピードを誇ると自称していたが、まさにその通りで俺が今まで戦った相手よりも動きが速く、灼熱拳と凍結拳を使い分けてて気を抜けば負けるほどだった。俺が負けたのは、あの女が精神攻撃系の技を放ってからだ。それを受けた俺は精神をズタズタにされてしまってまともに動けなくなってしまい、あの女の凍結拳と灼熱拳を組み合わせた必殺の一撃を受けてやられてしまった…」

 

星矢「やっぱり、瞬が思った通りに一輝と同じ精神攻撃の技を持っていたのか…」

 

マリア「ねえ、あなた達のような小宇宙の使い手は灼熱拳と凍結拳を使い分ける事はできるの?」

 

氷河「基本的にそんな奴は見かけない。灼熱拳と凍結拳を使い分ける事ができた奴は…俺の知る限りではアスガルドで戦ったハーゲンぐらいだ」

 

アルデバラン「そいつはアリシアのような技は使えたのか?」

 

氷河「いや、そんな技は使ってない」

 

ムウ「それもそのはずです。灼熱拳と凍結拳は相反する性質の拳。双方を強力なレベルで使い分けられるような闘士は少ないのです。ましてや、その高レベルの凍結拳と灼熱拳を組み合わせた必殺の拳など私は聞いた事もありません。そんな事をすれば、身体への負担は計り知れないものになります」

 

紫龍「引っかかるな…」

 

アルデバラン「戦ってて思ってたんだが…、俺はあの女の凍結拳はカミュにも引けをとらないレベルではあるが、どこか違和感を感じていたんだ」

 

星矢「違和感?」

 

響「アルデバランさん、その違和感って何なんですか?」

 

アルデバラン「よくわからんが…、凍結拳使いの凍結拳とはどこかが違うんだ。どこかが…」

 

翼「凍結拳なのに他の凍結拳使いとはどこかが違う…か…」

 

瞬「どうしてなんだろう…?」

 

 

 

処女宮

 

 一輝は並行世界の十二宮に来ていた。

 

シャカ「一輝よ、並行世界の同一人物とはいえ、君が私の所に相談に来るとは。これは大洪水や日食でも起こるのかな?」

 

一輝「神に最も近い男がそんなジョークを言うとはな。俺が並行世界の十二宮に来たのは、少し前にベヌウの冥闘士を見た際、ベヌウの冥衣が初めて見た気がしないから、その理由を突き止めに来たんだ。そして、それがわかりそうなのがお前だと判断したまでだ」

 

シャカ「なるほど、ベヌウの冥衣が気になって私に相談しに来たのか」

 

一輝「何か理由でもあるのか?」

 

シャカ「一輝よ、これは私の推測なのだが…ベヌウの冥衣を初めて見た気がしないのは君の前世が関係しているのだろう」

 

一輝「俺の前世が?」

 

シャカ「前教皇や童虎から聞いたのだが、前の聖戦ではハーデス、というよりはハーデスの憑代となった人物への忠誠に厚く、そして三巨頭並みの実力を持ちながら他の冥闘士と群れるのを好まない冥闘士がいたらしい。その冥闘士もベヌウだったそうだ」

 

一輝「そのベヌウの冥闘士…、群れるのが嫌いな所が俺にそっくりだ!ま、まさか、俺の前世は…!」

 

シャカ「恐らく、一輝の前世はベヌウの冥闘士だったのだろう。そして、これも前教皇と童虎の話だが、瞬は全聖戦のハーデスの憑代となったアローンに結構似ているらしい」

 

一輝「俺の弟の瞬がアローンとかいう奴の生まれ変わりだとでもいうのか?」

 

シャカ「恐らく。アテナの聖闘士となった君達兄弟が前世ではハーデスと深い関わりを持つ者達だったとは、因果も巡るものだな。一輝よ、あくまでも推測だが、自分の前世を知って衝撃を受けたか?」

 

一輝「ふっ、まさか俺の前世が冥闘士で、瞬の前世がハーデスの憑代だったとはな。だが、それは今の俺達には何の関係もない。例え前世が何であれ、今の時代を生き抜く事に変わりはないのだからな」

 

 自分の前世を知っても一輝は己の道を突き進む事に何ら変わりはなく、処女宮を後にした。

 

シャカ「自分の前世を知ってもそれに縛られず、己の道を進むとは…。例え並行世界の同一人物であっても、君は私に迷いを抱かせただけの事はある」

 

 

 

市街地

 

 一同は帰る事となり、アリシアが未来を狙って襲撃してくる危険性を考慮し、星矢が未来の護衛につく事となった。

 

星矢「(なんか話しづらいなぁ…。こんな時ってどうすりゃ…)」

 

 星矢と響は未来に声をかけづらい様子だった。

 

未来「(あの時はクリスを助けに行きたかったから、出撃を希望したけど…、これから私って、どうすればいいのかな…?沙織さんはきちんとした答えを出せれば私を正規の装者に登録してくれるって言ったけど…響は私が一緒に戦うのを認めてくれるのか…)」

 

???「うふふ、悩める乙女の心の声が聞こえてきたわよ!」

 

未来「何!?」

 

響「この声って、ひょっとして…!」

 

 突然の声と共にドロンと煙が出て、パルティータが姿を現した。

 

パルティータ「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!!」

 

響「うわああっ、びっくりした!!」

 

星矢「母さん、そんな登場にこだわらなくても……!」

 

パルティータ「あ~ら、こういった登場にこだわるのも人の勝手でしょ?それに、年頃の女の子の悩みを聞くと相談に乗りたくなっちゃってね。未来、あなたはこれからの事で悩んでるんでしょ?」

 

未来「…はい。私はこれからどうしたらいいのか、わからなくて…。何かいい方法とかないのですか?」

 

パルティータ「それは難しい相談だけど、あなた自身に納得がいく答えは神であるアテナ様にも私にもなく、あなた自身にしかないのよ。よーく悩んで、考えれば自ずと納得のいく答えが出てくるはず。納得のいく答えならば、誰もが認めてくれるはずよ。そのためにはよーく考えるのよ、よーくね。それじゃ」

 

星矢「待ってくれ!母さんには頼みたい事があるんだ!」

 

パルティータ「頼みたい事?」

 

 星矢はパルティータにセレナのいる並行世界をこの世界にいるセレナの代わりに護ってほしい事を伝えた。

 

パルティータ「なるほどね、わかったわ。それじゃ、またね」

 

 よく悩んで考え、納得のいく答えを出さなければならないと助言した後、パルティータはまたドロンと姿を消したのであった。

 

星矢「急に現れて急に姿を消した…」

 

響「パルティータさんって、神出鬼没だね…」

 

未来「よく悩んでよく考える、か…」

 

 

 

リディアン 寮

 

 沙織が事前に連絡を入れたために星矢は護衛として特例でリディアンの寮母の所で寝泊まりをする事となった。

 

星矢「(未来、気の遠くなるほど前世の俺の母さんの言った通りに考えているのか?)」

 

 一方の未来は響が寝た後も考え事をしていた。

 

未来「(納得のいく答えは沙織さんやパルティータさんじゃなく、私自身にしかない…、か…)」

 

 未来は今までの事を思い出していた。

 

未来「(私が装者になりたいと思ったのは、聖遺物の浸食が激しくなった響を助けたいと思った事から始まった。フロンティア事変の時に神獣鏡は失われたけど、響が並行世界の響の負の感情が流れ込んだ事による不調に陥った時に私は響を助けるために並行世界の神獣鏡を纏い、再び装者になる事ができた。それから、私は色々な訓練を重ねてきた。いつか、正式な装者になりたいという想いがあったのは、いつも響が傷ついていたからだった。だったら、護られてばかりじゃなく、響と一緒に戦いたい、と。ひょっとしたら、私は魔法少女事変の時でさえ心のどこかではそう思ってたのかも知れない。クリスが攫われた直後は私は落ち着きがなく、一時の感情で出撃しようとしたけど、今はどうすればいいのかわからない。答えはやっぱり…私自身にしかないのかな…?)」

 

 パルティータの言った通り、自分の納得できる答えは自分自身にしかないと思った未来であった。

 

 

 

???

 

 翌朝、アリシアは朝食を作っていた。

 

クリス「アリシア、何を作ってるんだ?」

 

アリシア「何って、朝食よ。それと、クリスの主食は大好物を作ってるんだから」

 

クリス「大好物?」

 

 その大好物とは、あんぱんであった。

 

クリス「これ…アリシアの手作りなのか?」

 

アリシア「当然じゃない。幼い頃は上手にできなかったけど、今はできるようになったわ。昨日もだけど、毒なんて入ってないわよ」

 

 納得してない様子でクリスはアリシア手作りのあんぱんを食べた。

 

クリス「(う、うめえ!このあんぱんの味はアリシアでないと作れない味だ!)」

 

アリシア「気に入ってもらえたわね。どんどん食べ」

 

 ところが、アリシアは苦しそうにしたのであった。

 

クリス「アリシア!?」

 

アリシア「だ、大丈夫よ…。何でもないから…」

 

 その返事にクリスは納得していなかった。そして、2人はゆっくりしていたのであった。

 

アリシア「懐かしいわね、私達がこうやって一緒にいるのは何年ぶりか…」

 

 

 

回想

 

 それは、アリシアがまだ5歳の頃だった。

 

アリシア「お父さん、お母さん、私は妹が欲しい!」

 

アリシアの父「どうしてなんだい?」

 

アリシア「だって、私だけじゃ寂しくって、つまらなくって…」

 

アリシアの父「アリシアは寂しがりやなのか…」

 

アリシアの母「私のお腹にアリシアの妹が宿るかどうかはわからないけど、ソネットが赤ちゃんを出産するそうよ。それも、アリシアの誕生日に」

 

アリシア「誕生日!?だったら、私のバースデープレゼントは妹になるのかしら?」

 

 そして、アリシアの誕生日にクリスが生まれたのであった。

 

アリシア「わあっ、可愛い!この子が私の妹…」

 

ソネット「どうしてクリスを妹って言うの?」

 

アリシア「だって私、お姉ちゃんになりたいもん!おじ様とおば様の家は私の家と近所同士だし、私のお父さんとお母さんと同じ仕事をしてるし、私はクリスのお姉ちゃんになりたい!」

 

雅律「はははっ、血のつながりがなくてもアリシアは立派なクリスのお姉さんになれそうだなぁ!」

 

アリシア『それから、私とクリスは本当の姉妹のように育った。私とクリスは同じ銀髪だったから、周囲には逆に血のつながりがあるのではと疑われたけど』

 

アリシア「クリスは歌は好き?」

 

クリス「うん、大好き!それにね、パパとママは『歌で世界を平和にする』って夢があるの」

 

アリシア「歌で世界を…。私、決めた!私の夢は歌手になって歌で世界を平和にしたい!」

 

クリス「歌手に?」

 

アリシア「そうよ。できたら…、クリスと一緒にデビューしたい!」

 

クリス「お姉ちゃんと一緒に…。うん、やりたい!」

 

 

 

アリシア「あの頃はとっても楽しくて懐かしかったわね…」

 

クリス「そうだな…。アリシア…お前、歌手になって歌で世界を平和にするって夢はどうしたんだよ…!何で冥闘士なんかに…!」

 

アリシア「……もう、私は夢を断たれてしまったの…」

 

クリス「それってどういう…」

 

 突然、アリシアは上着を脱いだ。上着の下は痛々しい古傷などが刻まれていた。

 

クリス「これって…」

 

アリシア「…この傷は私の両親や楽団のみんなを殺したドイツの極秘研究機関、ブリル協会の連中によって付けられた傷と被験体の証よ!そのせいで私は様々なステージ衣装を着られなくなってしまったの!」

 

クリス「おい…、それってどういう事なんだよ!楽団のみんなはあたしのパパやママと同じようにバルベルデの紛争に巻き込まれて死んだはずじゃ…!」

 

アリシア「世間ではそうでしょうね。だけど…、本当は違った!あのゴミ共のエゴで私の家族や楽団のみんなは殺されたのよ!!」

 

 

 

回想

 

 それは、楽団がバルベルデである物を発見した時から始まった。

 

団長「こ、この黒い鎧は何だ?」

 

 黒い鎧を発見した楽団は珍しいものだと思ってその鎧を持ち帰ろうとした。ところが…、同時にそれを発見したブリル協会の戦闘員によって口封じも兼ねて皆殺しにされたのであった。

 

アリシア「お父さん、お母さん、みんな!!」

 

戦闘員「リーダー、そのガキはも殺しますか?」

 

科学者「いや、このガキは被験体として連行する。ちょうど、被験体が不足していたからな」

 

アリシア『それから、私はブリル協会に拉致されて被験体にされた。数日前におじ様とおば様とクリスを失い、ショックを受けていた私に追い討ちをかけるように私の両親や楽団のみんなが殺された事で私はどん底に叩き落とされ、更に聖遺物の実験の被験体としての過酷な日々と大人達からの虐待でブリル協会のゴミ共への怒りと憎しみは増すばかりだった…!いつか、両親や楽団のみんなを殺した奴等を殺して仇を取りたい…。そう思い続けてから1年ほど経ったある日、遂にその日が訪れた…!』

 

科学者「ウヒャヒャヒャヒャッ!!科学の進歩は何においても犠牲の上に成り立つもの!その犠牲が多ければ多いほど、科学は進歩し、科学者は英雄になるぅ~~っ!!」

 

アリシア「何で…、何で私の両親や楽団のみんなを殺したのよ!歌や音楽で戦争をなくそうと頑張っていたみんなを何で殺したのよ!」

 

科学者「歌や音楽で戦争をなくす?そんなのは僕の英雄になるという夢の前にはちっぽけで下らない夢だ。音楽や歌で戦争をなくすなんて、できっこないんだよ。それくらいなら、聖遺物の被験体として僕の英雄に至る道になった方がマシじゃないか」

 

 ウェルと同じ顔の心無い科学者の楽団の夢を否定し、自身の夢さえも断った事にアリシアの怒りと憎しみは頂点に達した。

 

アリシア「下らないと言ったな…!歌や音楽で世界を平和にするという私の両親や楽団のみんなの夢を下らないと言ったな!!みんなを殺したお前らなんか、私が殺してやる、殺してやる!!」

 

科学者「はん、力のないガキにそんな事が」

 

 アリシアの憎しみに反応したかの如く、黒い鎧=ベヌウの冥衣が反応してアリシアの近くに来た。

 

科学者「な、何だと!?今までどうやっても起動できなかったあの完全聖遺物がなぜ起動を…?」

 

 そして、冥衣はアリシアの体に装着され、肉体を改造する冥衣によってアリシアは十代後半ぐらいに急成長した。

 

アリシア「まずは貴様からだ!八つ裂きにしてやる!!」

 

科学者「ひ、ひぃ~~っ!!」

 

 冥闘士として覚醒したアリシアの怒気に恐れをなした科学者は逃げようとしたが、アリシアに瞬時に追いつかれて首を斬り飛ばされて死亡したが、それでも怒りが収まらないアリシアはその科学者の死体を文字通り八つ裂きにしたのであった。

 

アリシア「あのゴミ共は1人たりとも生かしては帰さない…!」

 

 積年の恨みを晴らすためにアリシアはブリル協会の人間を全員虐殺し、忌まわしい場所であったブリル協会の建物を青い炎で焼き尽くしたのであった。

 

アリシア「これで…、これで私の家族や楽団のみんなの仇をとる事ができたわ。あは、あはははっ、あははははははっ!!!」

 

 エゴにまみれたブリル協会の大人達の虐待によって悲しみや恨み、憎しみといった負の感情の制御さえできなくなったアリシアは狂気に呑まれ、狂った笑いをしたのであった。

 

 

 

クリス「アリシア、お前は…お前は自分を虐げていた奴等を報復で皆殺しにしたのかよ!!」

 

アリシア「そうよ。楽団の夢を否定したあいつらは死んで当然だもの。それ以来、私は大人が嫌いになったの。一般人なら無視できるけど、政治家などの腐った大人を見ると無性に殺人衝動に駆られるようになってしまってね…。そして、その時にわかったの。歌で世界を平和にする事はできないって。世界を平和にするためには…人間を皆殺しにするしかないと」

 

クリス「皆殺しって…、歌を捨てて見ず知らずの人間まで殺して何になるんだよ!」

 

アリシア「例え戦う意志のある連中を殺して戦争の火種を一つ潰しても新たな火種が二つ三つバラ撒かれるぐらいなら、いっその事、皆殺しにしてしまった方がマシだと思わない?」

 

クリス「(どうなってんだよ…、大人が嫌いとか、アリシアは鏡のように昔のあたしを見てるようじゃねえか…!いや、昔のあたしでも大人を見ただけで無性に殺したくなった事はねえ…。歌を捨てた上、皆殺しを考えるようになったなんて…!)」

 

 再会したアリシアは夢を断たれて歌を捨て、人間を皆殺しにしようとしている姿にクリスはショックを受けたのであった。

 

アリシア「でも、クリスは最後まで私が護るわ。冥闘士として目覚めて数年は人間を皆殺しにするプランを立てつつ、気に食わない大人達を虐殺してたけど、3年前にフィーネからクリスが生きている事を知らされて私は救われたの。家族であるあなたが生きていてくれて、どれ程私は嬉しかったか…」

 

クリス「アリシア…」

 

アリシア「それとクリス、約束してくれる?」

 

クリス「何だ?」

 

アリシア「もう、どこへも行かないで。あなたは私にとって唯一生き残った家族だから…、たった一人の心から信じられる人だから…」

 

 夢を断たれて復讐鬼と化した反面、昔の一面も残っているアリシアにクリスは複雑な心境だった。

 

アリシア「ちょっと用があるからクリスはこの建物の中で待っててね」

 

 そのままアリシアは部屋を出て、配下と会っていた。

 

配下A「アリシア様、何年も研究を重ねて生み出した例のものに関してですが…」

 

アリシア「投入するわよ、装者を一網打尽にするために」

 

配下B「しかし、あれを動かすためのフォニックゲインが…」

 

アリシア「フォニックゲインの代わりになるエネルギーならあるわよ」

 

配下A「そ、そうでしたね。では、アルカノイズ投入の準備等も行います」

 

アリシア「(クリスに纏わりつく害虫共、見てらっしゃい…!今こそ皆殺しにするから…!)」

 

 一方的に装者達への憎悪を燃やすアリシアであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 同じ頃、S.O.N.Gでは一同が本部に集合していた。

 

紫龍「その様子では、アリシアは攻めてこなかったようだな」

 

星矢「ああ。準備でもしてるのか、俺達がうろたえているのを嘲笑っているのかはわからねえけどな。(未来、自分で納得できる答えでも見つかったか?)」

 

未来「(もうちょっと考えてみます。パルティータさんの言った通り、私自身が納得できる答えは私自身がじっくり考えて出すしかないから…)」

 

 星矢と未来は小声で会話をしていた。

 

奏「ダンナ、アリシアの本拠地は北極のロイバルト北極基地ってとこにあるんだ。今のうちにそこへ向かって翼の仲間を」

 

弦十郎「早とちりするな、奏。俺達の世界のアリシアがお前の世界のアリシアのように同じ場所を本拠地にしているとは限らない。それに、お前達の世界で起こった大惨事は何としてもこの世界では未然に防がなければならないんだ。慎重に行くぞ」

 

奏「…わかったよ」

 

翼「奏…」

 

氷河「結局、敵の出方を待つしかないか…」

 

ムウ「そうなりますね。並行世界と同じ場所が本拠地とは限りませんし、同じような戦略をとるのかもわかりません。なので、慎重にならざるを得ないのでしょう」

 

アルデバラン「しかも、アリシアは頭も切れる奴だ。きっと、俺達の予想もつかないような策を練ってくると思うぞ」

 

紫龍「囮を使って俺達を本部から動かし、手薄になった所をアリシア本人に攻められて未来を拉致、または殺害されてしまう恐れもあるな…」

 

瞬「未来に向けたアリシアの憎しみは尋常ではないよ。きっと、アルデバランの言ったように僕達の予想しない方法で攻めてくる事も考えられる」

 

アルデバラン「S.O.N.G本部に関しては、俺とムウが防衛する」

 

星矢「アルデバラン、アリシアとの再戦は大丈夫か?」

 

アルデバラン「なぁに、再戦となれば何とかなるだろう。星矢達は星矢達のやるべき事を優先してほしい」

 

星矢「わかった。けど、無理すんなよ」

 

切歌「クリス先輩を助けるには、アリシアを倒さなきゃダメなんデスよね…?」

 

セレナ「あの人は許せないのですけど、実際に戦って勝てるのでしょうか…?」

 

星矢「勝たなきゃならねえ。勝たなきゃクリスは救えねえし、奴等は世界中の人間を皆殺しにするんだ」

 

調「でも…」

 

ムウ「諦めるのはまだ早いですよ。敵との戦いはまだ始まってませんし、最後まで諦めなければ、何とかなるかも知れません」

 

響「そうだね。私達装者だけじゃなく、星矢さん達やムウさんにアルデバランさんもいるから、きっとどうにかなるよ!」

 

翼「立花の言う通りだが、敵の戦力はまだ完全に把握できた訳ではない。私達の世界のアリシアが冥闘士である以上、奏のいる世界のアリシアの一味以上に恐ろしい隠し玉を持っている可能性も考えられる」

 

奏「さて、何が出てくるのやら…」

 

 そう言ってると、警報が鳴った。

 

沙織「どうやら、敵のお出ましのようですね」

 

朔也「大型アルカノイズの反応多数と小型アルカノイズの反応多数を検知しました!」

 

あおい「しかも、冥闘士まで出てきています!」

 

弦十郎「星矢達は冥闘士の方へ向かってくれ。アルデバランとムウは本部防衛のため、待機。そして、大型アルカノイズは翼、奏、マリア君の3人が、小型アルカノイズは残りの装者4人で迎え撃つんだ!」

 

 ムウとアルデバランは本部で待機し、星矢達は出撃したのであった。

 

未来「(何だろう…?何か嫌な予感がする…。どうしてなのかな…?)」

 

 戦いが始まろうとしている中、未来は得体の知れない嫌な予感がしていたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はクリスがどうなっているのかと、アリシアの過去を描きました。
久しぶりに登場したパルティータですが、AXZ編が近づくにつれ、出番も多くなるかも知れません。
過去にアリシアによって滅ぼされたブリル協会ですが、並行世界ではティアーズ・オブ・ピースメーカー編から本格的に出てきます。
次の話はアリシア一味が攻めてきます。そして、未来の答えが明らかになります。

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