セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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81話 未来の答え

郊外

 

 翼達年長組は郊外で出現した大型アルカノイズ軍団と対峙していた。

 

翼「出現した場所が人の少ない郊外であった上、避難も完了していて幸いした」

 

奏「これなら、思う存分に戦えるな」

 

マリア「でも、気を付けた方がいいわ。こっちの世界のアリシアも何か罠を仕掛けている可能性もあるし」

 

翼「だが、まずはアルカノイズを片付けるのが先決だ!」

 

奏「いっちょ、行くぞ!」

 

 年長組3人はアルカノイズ軍団へ向かっていった。一方、星矢達は冥闘士と戦っていたが、ある違和感を感じていた。

 

星矢「前からおもってたんだがこいつら、やけにしぶとくないか?」

 

瞬「確かに、やけにしぶとい感じがする」

 

紫龍「(確かに、俺達との力の差があるにしてはやけにしぶとい。何か秘密でも…?)」

 

冥闘士「へへへっ、俺達もしぶとさには自信があるんでな」

 

氷河「ならば、そのしぶとさでもどうにもならないほど攻めるだけだ!」

 

 星矢達はいつもの調子で冥闘士達と戦ったのであった。

 

 

 

市街地

 

 一方、小型アルカノイズ軍団は残りの装者である響達が応戦する事となった。

 

切歌「この前聞きそびれたけど、セレナのギアは対アルカノイズ用の調整はできてるデスか?」

 

セレナ「はい。マムや研究所の人がアルカノイズ用の調整をしてくれました」

 

調「なら、安心だね」

 

セレナ「それにしても、小さいアルカノイズばかりだけど……」

 

調「私達の敵じゃない!」

 

切歌「さっさとアルカノイズを倒して、クリス先輩救出の準備を行うのデス!」

 

 アルカノイズを全滅させ、早くクリス救出に向かおうと意気込む4人であった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 戦いの様子は本部でも確認されていた。

 

沙織「今の所、アルカノイズとの戦闘は順調なようですね」

 

あおい「翼さん達の方も響ちゃん達の方も順調に数を減らしていっていますね」

 

朔也「後は星矢達が冥闘士を倒し、アリシアを黄金聖闘士2人が迎え撃って倒せば、終わりじゃないですか?」

 

弦十郎「確かにそうだろうな。だが、あまりにも順調すぎて逆に嫌な予感がする…」

 

朔也「嫌な予感…ですか…」

 

弦十郎「奏から聞いた話では、向こうの世界のアリシアはアルモニカで二課を一網打尽にするための策をとったそうだ。こっちのアリシアが向こうの世界のアリシアと完全に同じ事をするとは限らないが、さっき言った策や手薄になった本部を襲撃したりする策をとってもおかしくないだろう」

 

 不安そうにしている未来の様子に沙織は気付いた。

 

沙織「未来さん、司令と同じように嫌な予感がするのですか?」

 

未来「はい、沙織さん。…何だか、言葉では言い表せないような嫌な予感がするんです」

 

美衣「嵐の前の静けさ、とでも言いましょうか…。下手をすれば、こちらの世界のベルゲルミルが出現する可能性も否定できませんね」

 

 そんな中、アルカノイズの動きに変化が生じた。

 

あおい「司令、アルカノイズの動向に変化が!周辺に新たに検知されたアルカノイズが翼さん達を取り囲むように集結しつつあります」

 

弦十郎「何だと!?至急、翼達に連絡を入れるんだ!」

 

 

 

郊外

 

 アルカノイズが集結し、翼達は事実上の足止めを喰らっていた。

 

奏「くそっ、キリがないぞ!」

 

マリア「まずいわね!司令からの連絡通り、向こうのアリシアの罠にかかった時のような感じよ!」

 

翼「弱音を吐く暇はない!例えそうだとしても、戦わねばならない!」

 

奏「泣き虫の翼がここまで勇ましくなるなんてな」

 

翼「奏…」

 

マリア「さあ、行くわよ!」

 

 

 

市街地

 

 響達の方は順調にアルカノイズを倒していったが、その様子をアリシア配下の錬金術師は見ていた。

 

錬金術師「アルカノイズと冥闘士によって年長の装者3人と聖闘士の足止めに成功しました、アリシア様」

 

アリシア『ご苦労。私もそろそろS.O.N.Gの本部を襲撃しに向かうわ。あれを使いなさい』

 

錬金術師「了解しました」

 

 アリシアのいう『あれ』を錬金術師は解き放ったのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 S.O.N.Gの本部では弦十郎らは嫌な予感がしている中、警報が鳴った。

 

弦十郎「どうした!?」

 

あおい「司令、響ちゃん達が戦っている現場から高エネルギー反応を検知!こ、これは…」

 

朔也「波形パターン照合!モニターに出します!」

 

 モニターに出た怪物に発令所にいた面々は驚愕した。

 

朔也「な…、そんな…」

 

沙織「まさか…!」

 

弦十郎「ネフィリム…だとっ!?」

 

美衣「ですが、今までのネフィリムと特徴が違います!黒が基調のネフィリムと違い、あのネフィリムは氷を思わせるような水色と白、青の体色になっています」

 

あおい「青いネフィリムなんて…」

 

朔也「大変です!あの青いネフィリムが現れた場所の気温が急激に下がっています!」

 

沙織「何ですって!?」

 

弦十郎「エルフナイン君、あの気温を下げるネフィリムはどうなっているんだ?」

 

エルフナイン「分析していないのでまだわかりません!ですが、今の状況で言えるのはあのネフィリムは従来のネフィリムより奏さんの報告にあったベルゲルミルに特徴が近いのではないでしょうか?」

 

弦十郎「ベルゲルミルに…?」

 

 今度は別の反応が検知された。

 

あおい「今度は猛スピードで本部へ向かってくる高エネルギー反応を確認!」

 

弦十郎「気温を下げる青いネフィリムに続き、アリシアが来たか…!」

 

ムウ「出番のようですね、アルデバラン」

 

アルデバラン「よし、俺の出番だ!」

 

 

 

 

 アリシアが来たため、アルデバランは出撃した。そして、S.O.N.Gの本部が近くにある港でアルデバランとアリシアは対峙した。

 

アリシア「割と早く傷も癒えたようね」

 

アルデバラン「言うのも何だが、俺は頑丈なのでな。それに、この前のようにはいかんぞ!」

 

アリシア「あなたのようなデカブツは邪魔なの。さっさと蹴散らして、小日向未来に想像を絶する苦痛を与えて殺さなきゃ気が済まないからね!」

 

アルデバラン「何で未来をお前が恨んでいるのかは知らんが、ここから先へはこのタウラスのアルデバランが一歩も通さん!」

 

 アルデバランとアリシアは激突したのであった。

 

 

 

市街地

 

 一方、市街地では響達はアルカノイズをちょうど倒し終えた頃であった。

 

響「やっと終わったね!」

 

セレナ「次はマリア姉さんたちの所へ行かないと」

 

調「…ねえ、何だか急に寒くなってない?」

 

響「え?」

 

切歌「まるで、急に真夏から真冬になったような感じデス…」

 

 そう言ってると、ある程度成長した姿の青いネフィリムが姿を現した。

 

セレナ「ネフィリム…!」

 

響「嘘!?こっちのネフィリムは倒したはずなのに…?」

 

調「でも、今までのネフィリムと色が違う…!」

 

切歌「おまけに、近くにいるだけで凍えてくるデスよ…」

 

エルフナイン『皆さん、あの青いネフィリムは危険です!従来のネフィリムと違って強い冷気を発しています!気を付けてください!』

 

 そう言っている間にも、ネフィリムは口から強烈な冷気を放った。咄嗟に響達はかわしたが、その冷気の威力はあっという間に噴水が凍り、周辺までも凍り付くほどだった。

 

響「うわっ、あの冷気はベルゲルミル並だよ!」

 

調「ベルゲルミルって確か……」

 

響「奏さんのいる世界で戦った冷気を操る完全聖遺物で、とっても強かったんだよ!」

 

セレナ「でも、何であのネフィリムが冷気を?」

 

切歌「あたしに聞かれてもわからないデスよ!」

 

セレナ「何かあのネフィリムに弱点はないのですか!?」

 

響「奏さんが来てくれたら何とかなるかも知れないけど…!私達でやるしかないよ!イグナイトモジュール」

 

響と切歌と調「抜剣!」

 

 奏は翼やマリアと共に足止めされていて救援に行けず、響達はイグナイトを使ったが、それでも青いネフィリムの猛攻に押され、足を凍らされて動きを封じられてしまった。

 

セレナ「あ、足が!」

 

調「凍らされたらローラー移動もできない…!」

 

 足を凍らされて動けなくなった装者達に青いネフィリムが襲い掛かり、吹っ飛ばされてしまった。

 

装者達「きゃああああっ(あああああっ)!!」

 

切歌「せ、せめて冬だったらクリスマス型ギアになれたのにデス…」

 

調「切ちゃん…寒いよ…」

 

セレナ「体が…いう事を聞きません…」

 

 猛烈な冷気で体の言う事が聞かなくなり、意識も薄れはじめ、青いネフィリムが装者を捕食しようと迫っていた。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 青いネフィリムの猛威によって響達の命の危機に晒されている姿に未来はもう我慢できなくなってきた。

 

未来「(響…!助けに行きたい…!でも、正式な装者にしてくれるかどうか…。いや、今はそんな場合じゃない!私が助けに行かないと!)」

 

 以前と同じように出撃を断られてしまうかどうか不安になったものの、響の危機に未来は決心し、答えを決めた。

 

弦十郎「あの青いネフィリムは恐ろしいものだ…!このままだと、響君達が…!」

 

エルフナイン「仮に青いネフィリムの弱点がベルゲルミルと同じであれば、奏さんが向かえばどうにかなりそうですが…肝心の奏さんは…」

 

未来「司令、沙織さん、私を正式な装者に登録して響達の助けに行かせてください!」

 

弦十郎「未来君…!?」

 

未来「今の状況で響やみんなを助けに行けるのは私しかいません!それに、相手が聖遺物なら神獣鏡の効果も絶大なはずです!」

 

美衣「確かに、ネフィリムは完全聖遺物であるが故、未来さんの仰る通りに神獣鏡の効果はあるのでしょう」

 

沙織「しかし未来さん、正式な装者となれば、響さん達が過ごしている過酷な戦いの日々が待っています。過酷な戦いの日々に身を投じるというのが、あなたが時間をかけて出した、自分自身に納得のいく答えなのですね?」

 

未来「はい!」

 

 しばらく沙織は未来と視線を合わせ、見つめ合っていたが…

 

沙織「わかりました。では、現時刻より未来さんを正式な装者に登録しましょう。司令もよろしいですね?」

 

弦十郎「さっきの未来君の目を見て、心意気をしっかり感じた。俺もそれを承認しよう」

 

未来「沙織さん!」

 

沙織「未来さん、あなたは辛い時間に耐え、訓練を重ね、よく考えて自分自身に納得のいく答えを出しましたね。神獣鏡を受け取って出撃してください」

 

 沙織は自身がペンダントとして首にかけていた神獣鏡のギアを未来に渡した。

 

エルフナイン「神獣鏡のギアも既に対アルカノイズ用の調整は終わっているので、アルカノイズと戦っても大丈夫です」

 

未来「ありがとう、エルフナインちゃん」

 

ムウ「風鳴司令、敵の目を欺くのにもちょうどよかったですね」

 

未来「敵の目を、欺く…?」

 

弦十郎「この前、未来君を出撃させなかったのは、敵の出方を伺い、上手く行けば欺こうと思ったためでもあったんだ。未来君の出撃したい気持ちを踏み躙らざるを得なくて済まなかった。さぁ、響君を助けに行くんだ!」

 

未来「了解!」

 

 早速、未来はギアを纏った。

 

ムウ「私は本部防衛もありますので、あなた達の助太刀は送迎とアルカノイズの一掃に留まらせていただきます。では、行きますよ!」

 

 未来の手をとり、ムウは奏達のいる場所へテレポートした。

 

 

 

郊外

 

 奏達はアルカノイズの群れに足止めされたままであった。

 

奏「くそっ、これじゃあ救援に行けないじゃねえか!」

 

マリア「急がないと、セレナやみんなが!」

 

翼「この苦境、イグナイトを」

 

 ところが、ムウが未来を連れてテレポートしてきた。

 

翼「小日向…、それにムウ…」

 

ムウ「時間がありません。アルカノイズは私が一掃しましょう」

 

 そう言ってムウは光速拳でアルカノイズを一掃した。

 

奏「相変わらず手品みたいな技だ…」

 

未来「これで、翼さん達も響達の助けに行けるよ!」

 

ムウ「私は本部防衛もあるので、あなた達を送迎したら直ちに本部へ戻ります。急ぎましょう!」

 

 奏達も一緒にムウにテレポートしてもらった。

 

 

 

市街地

 

 響達の方は青いネフィリムの発する猛烈な冷気で体が言う事を聞かないばかりか、もはや意識さえ朦朧としていた。

 

響「体が…動かない…。もう……ダメなのかな……?」

 

???「おい、この寒さでへばって生きる事を諦めているのか!?」

 

 そんな時、聞き覚えのある声と共に灼熱の炎が放たれ、青いネフィリムが炎を嫌がるのと同時に極寒が和らぎ、氷が溶けていった。

 

切歌「ん?氷が溶けて体が言う事を聞くようになったデス!」

 

セレナ「でも、一体誰が…?」

 

響「これって……奏さんだ!」

 

 灼熱の炎を放ったのは、ブリーシンガメンを発動させた奏であった。奏の他にも翼とマリア、未来もいた。

 

未来「響、大丈夫!?」

 

響「未来、どうしてここに?」

 

未来「響やみんなを助けに来たの。正式な装者に登録されたから、私も一緒に戦う事ができるよ」

 

響「そうなんだ。だったら、青いネフィリムを倒してクリスちゃんを助けに行かないとね!」

 

 奏と翼、マリア、未来も加わって青いネフィリムと対峙した。

 

奏「翼、あのどっかの怪獣に似た化け物がネフィリムっていう奴か?」

 

翼「そうだ。だが、あのネフィリムは冷気を放つ所などの特徴はむしろベルゲルミルに近い」

 

マリア「でも、聖遺物を食われたりしなければ勝手に成長しないから、そこはベルゲルミルよりはマシというべきかも知れないわ」

 

奏「だったら、この場であの怪物をあたしの炎で焼き尽くしてしまうのが得策だ!」

 

 そう言って奏は槍に炎を纏わせ、向かっていった。

 

翼「私達も行くぞ、マリア!イグナイトモジュール」

 

翼とマリア「抜剣!」

 

 翼とマリアもイグナイトモジュールを発動させて奏と共に青いネフィリムに向かっていき、響と未来も向かっていった。

 

奏「喰らいな!」

 

 炎の攻撃を青いネフィリムはとても嫌がっていた。炎を操る奏の新しい力、ブリーシンガメンに切歌と調、セレナは驚いていた。

 

セレナ「凄い…あれが奏さんの新しい力…」

 

調「私達にとってのイグナイトみたいな力なのかな…?」

 

切歌「でも、青いネフィリムは炎を嫌がっていたみたいだから、形勢逆転なのデス!」

 

 響と未来も年長組3人と共に連携で青いネフィリムに攻撃を仕掛けていた。聖遺物殺しの特性を持つ神獣鏡の力もブリーシンガメン程ではないにしろ、青いネフィリムには効果的であった。

 

奏「未来のギアの攻撃、青いネフィリムに結構効いてるぞ!」

 

マリア「何しろ、神獣鏡は聖遺物殺しの特性があるから、奏のブリーシンガメン程じゃないけど、完全聖遺物である青いネフィリムにも効果的なのよ」

 

翼「だが、神獣鏡だけでは再生能力のせいで青いネフィリムの決定打にはなりえない」

 

 翼の言う通り、未来の神獣鏡だけでは青いネフィリムの決定打にはなりえなかった。

 

未来「(やっぱり、神獣鏡だけではネフィリムを倒しきるだけの火力が足りない。どうしたら…)」

 

響「未来、青いネフィリムを倒すための威力が足りないなら、私と未来で切歌ちゃんと調ちゃんのような事、やってみようよ!」

 

 その言葉に切歌と調は衝撃を受けた。

 

切歌「ええっ!?響さんと未来さんがあたしと調のようなユニゾンを!?」

 

調「でも、未来さんは実戦経験が少ないし、ガングニールと神獣鏡は私達のギアのシュルシャガナとイガリマの二つと違って相性がいいわけでもないし、訓練もなしでいきなり私達と同じユニゾンって…できるのかな…?」

 

 響の考えなしの発言に未来は戸惑ったものの、他に有効な手立てがないために承諾する事にした。

 

未来「…ほかに有効なやり方が思い浮かばないし、やってみよう!」

 

響「うん!」

 

奏「それじゃ、あたしらが青いネフィリムを弱らせるからな!」

 

 奏は翼やマリアと一緒に3人で青いネフィリムに猛攻を仕掛け、奏の炎と翼とマリアの攻撃で青いネフィリムは弱っていく一方だった。

 

響「未来、やるよ!」

 

未来「うん!」

 

 響と未来は心を重ねるように歌を重ねた。

 

響「(何だろう?未来と一緒に戦うと力が湧いてくる…!)」

 

未来「(自然とどう動けばいいのかがわかてくる…!)」

 

 歌を重ねてからの連携は、見ている装者達さえ感心させる程であった。

 

セレナ「立花さんと小日向さんの連携、凄いです…」

 

切歌「あたしと調のように心と心が通じ合っているのデス!」

 

 そして、青いネフィリムがまともに動けなくなった所で未来はアームドギアである扇を左手に持ってから変形させ、響は右腕のアーマーが変形し、互いに合体して二回り大きな機械の拳となり、響の右腕と未来の左腕に組み合わさった。

 

響と未来「いっけ~~~っ!!」

 

 2人の心はおろか、魂までもが重なったように発動させた響と未来のユニゾン技、『浄拳』で青いネフィリムを貫いた。貫かれた青いネフィリムはガングニールの爆発力と組み合わさって威力が激増した神獣鏡の聖遺物殺しにより、再生する間もなく分解されて倒されたのであった。

 

錬金術師「な、何と言う事だ……!」

 

 

 

 

 一方、アルデバランとアリシアの戦いは互角であった。

 

アリシア「マインドクラッシャー!」

 

 マインドクラッシャーを放ったアリシアだったが、アルデバランはかわした。

 

アルデバラン「アリシア、聖闘士に一度見た技は通じんぞ!」

 

アリシア「ちっ、流石に二度目は通じないか…!」

 

 最強の技を放つ前に動きを封じるために使うマインドクラッシャーを封じられ、アリシアは決め手がなく、長期戦に持ち込まれていた。

 

アリシア「(マインドクラッシャーが封じられているとなると、コロナ・ゼロを確実に当てる事ができない…!それに、これ以上戦いが長引いて小宇宙を使い過ぎたら…)」

 

アルデバラン「グレートホーン!」

 

アリシア「くっ!」

 

 グレートホーンをまともに受け、アリシアは吹っ飛ばされたが、すぐに立ち上がる華奢な見た目とはまるで違う頑丈さを見せた。

 

アルデバラン「(グレートホーンをまともに受けてもすぐに立ち上がるとは…。あの女の頑丈さは見た目では想像もつかない程だ)」

 

 見た目からは想像もつかない頑丈さを見せるアリシアにアルデバランはその頑丈さを疑問に思っていた。

 

アリシア「焼き尽くす!」

 

 アリシアは灼熱の青い炎を放ったが、アルデバランはうまく受け止めた。

 

アルデバラン「お前のその青い炎と冷気、どっちも激しすぎるな。否定と敵意の青い炎と憎悪と妬みの冷たい氷だ。周りはおろか、己自身さえ焼き尽くし、凍り付かせる程だ。それが冥闘士の性質なのか、お前自身の性質なのかはわからんがな」

 

アリシア「私自身の性質といった所かしら。私はハーデスもアテナも、聖闘士も冥闘士も、聖戦にも興味なんてないの。興味があるのは……私とあの子を虐げた世界そのものへの復讐だけよ!!」

 

 再び殴り合いの戦いとなり、片方にパンチが入れば、もう片方にパンチが入る形で一方的な戦いにならず、ある程度してから互いに距離をとった。

 

アルデバラン「アリシア、確かにお前のスピードは俺がこれまで戦った冥闘士よりも上だろう。だが…お前の拳は重みがない。ただ、激しいだけだ。そんな拳で俺を簡単に倒せると思ったら大間違いだ!」

 

アリシア「何!?」

 

 そんな中、配下の錬金術師から連絡が入ってきた。

 

錬金術師『アリシア様、神獣鏡のシンフォギア装者が急に戦場に現れ、アイスネフィリムを倒してしまいました!』

 

アリシア「何!?では、私達はまんまと敵の策に嵌められたとでもいうのか!?裏をかかれた以上、作戦は失敗だ!直ちに撤収!」

 

 配下に撤収命令を出し、アリシア自身も発作を感じ初め、空を飛んで逃げたのであった。

 

アルデバラン「どうやら、退ける事はできたようだな」

 

 

 

市街地

 

 アイスネフィリムを倒し終わり、装者達は安心していた。

 

切歌「あのネフィリムは冷気を吐いたりして厄介だったデス…」

 

調「奏さん達が来なかったら今頃、青いネフィリムに食われてた…」

 

セレナ「立花さんと小日向さんのあの技は暁さんと月読さんみたいな連携で凄かったですよ。何か、秘訣があるのですか?」

 

響「う~ん、秘訣って言われても…」

 

未来「私もそういった事は考えていなかったの」

 

マリア「訓練もなしに切歌と調の2人と同じような事ができたなんて…」

 

翼「小日向、司令や沙織お嬢様は正式な装者に登録してくれたのか?」

 

未来「はい」

 

響「奏さんや未来が来てくれたから、青いネフィリムを倒せて助かったよ!」

 

未来「これからは私も一緒に戦うから、無茶のしすぎはダメだよ」

 

響「え、えっと…」

 

未来「(私が…私が今まで待ち望んだ時がやってきたのかも知れない。響を命がけの戦いに巻き込ませてしまったから、私も一緒に戦う事ができれば、その償いになると思ってた…。やっと、やっと一緒に戦えるようになった…!)」

 

 待ち望んだ時が来て嬉しい気持ちでいっぱいの未来だったが、装者達の安心した雰囲気を吹き飛ばすかのようにアリシアが現れた。

 

マリア「あの女が私達の世界のアリシアなのね?」

 

切歌「そうデス!あのあたし達をゴミのようにしか見ていない目は忘れられないのデス!」

 

アリシア「知ってる輩もいるけど、改めて自己紹介するわ。私はベヌウの冥闘士、アリシア・バースタイン」

 

翼「(何だ?こっちの世界のアリシアは奏の世界のアリシアとはまるで別人のような雰囲気だ…!)」

 

奏「(あの目つき、見てるだけで体中が凍ってしまうような冷たい目つきだ…!)」

 

アリシア「驚いたわ。まさか、アイスネフィリムの弱点である炎と神獣鏡を使って倒してしまうなんて」

 

マリア「あの青いネフィリムはアイスネフィリムというのね。でも、あなた達の切り札のアイスネフィリムは私達が倒したわ!」

 

アリシア「切り札?あれは単なる手駒の一つよ。切り札は…アイスネフィリムよりも遥かに強い私自身なんだから。力がない癖にネフィリムやソロモンの杖に頼りっきりで威張ってたあのバカと一緒にしてもらっては困るわ」

 

マリア「あのバカ?」

 

調「もしかして、ドクターの事じゃ…?」

 

アリシア「正解。それにマリア、あなたの道化ぶりも存分に見せてもらったわ。非情になりきれずに何もかもうまくいかず、あのバカに賛同してもうまくいかず、とことんダメな三流テロリストぶりはお笑いものよ。一流のテロリストである私なら、暴力で強引に押さえつけるわよ」

 

セレナ「…取り消してください…!マリア姉さんがテロリストなわけがありません!そんなのはあなたのでっち上げです!」

 

マリア「セレナ…」

 

 フロンティア事変の事を知らないセレナにはアリシアの言った事はただのでっち上げにしか聞こえなかった。

 

切歌「お前はどうしてマリアの事をよく知っているのデスか!?」

 

アリシア「あら、あなた達の事もよく知ってるわよ。この姿に見覚えがあるでしょ?」

 

 そう言ってアリシアはマインドクラッシャーを自分に打ち込み、眼鏡をかけて鬘を被った。

 

調「そ、そんな…!」

 

切歌「もしかして…」

 

アシリア「はぁーい、私はアシリアで~す♪あなた達の事はこの姿と人格で武装組織フィーネに入り込んだ時に知りました~♪」

 

切歌「アシリアさんが…アリシアデスか…!?」

 

調「何の目的で私達と行動を共にしていたの?」

 

アシリア「それはですねぇ…、ネフィリムの制御技術を手に入れるのと、複数立てていた人間根絶プランの内、ネフィリム地球破壊爆弾化プランと神獣鏡でアルモニカの封印を解いてすべての人間を永遠の眠りへと誘うアルモニカプランを実行するためにおバカさんを煽てて利用していただけなんですよ~!」

 

 その言葉にマリアと切歌、調は衝撃を受けた。

 

調「人間を皆殺しにするために私達を利用していたなんて…!」

 

切歌「ほ、本気でそんな事を言ってるのデスか!?」

 

アシリア「勿論、本気なのよ~」

 

 そう言ってアシリアは再びマインドクラッシャーを自分に放ち、本来の人格に戻った。

 

アリシア「でなきゃ、あんなとるに足らない弱小組織に加わるわけないでしょ?お前達やババアとバカも全て私の人間根絶プラン遂行のために利用していたのに過ぎないの。でも、あのバカは私の逆鱗に触れまくったから始末したのだけどね」

 

翼「とすれば、フロンティア事変の真の黒幕はウェル博士ではなく、お前だったというのか!アリシア!」

 

アリシア「そうよ。あのゴキブリは私の都合のいいように動いてくれる駒として、私に注意を向けさせないためのスケープゴートとして利用させてもらったわ。お陰でお前達も全て怒りをゴキブリに向けてくれて私は動きやすかったのよ」

 

 

 

 

 

回想

 

 それは、フロンティア事変にて、ウェルが星矢に渾身のパンチを受け、ボロボロになっていた時の事であった。

 

ウェル「ぐ、ぐが…………!」

 

 顔が大きく潰れるほどのパンチを受けたウェルの元へアシリアが来た。

 

ウェル「ア、アシリア…、僕を……助け…て…くれ……!そして……僕を3回も…殴った…奴を……」

 

アシリア「博士、もうこれ以上は役に立たなさそうなので、どうやらここまでのようですねぇ…」

 

ウェル「な、何を言ってるんだ…?君は…僕の事を英雄と言ってくれたじゃないか…?」

 

アシリア「それはですねぇ、ぜーんぶ嘘なんですよ。あなたのような人が英雄になれるわけないじゃないですか」

 

ウェル「な、何だとぉ!?」

 

アシリア「あのおばさんと違って私の本性に気付けなかったようですねぇ、おバカさん!」

 

 ウェルをバカにし、邪悪な笑みを浮かべたアシリアは自分に向けて指から閃光を放った。すると、笑みを浮かべていた表情は氷のように冷たい表情へと変わり、黒髪のかつらをとり、アリシア本来の銀髪を露わにした。

 

アリシア「お前のようなゴキブリが英雄なわけないでしょ?人間どころか、私に利用されていた道化でしかないわ」

 

ウェル「ゴ、ゴキブリ!?英雄の僕を…僕をゴキブリと言ったな!?ゴキブリと言った事を後悔させてやるゥ!!」

 

 激怒したウェルはネフィリムの細胞を仕込んだ腕をアリシアに向けて襲い掛かったが、アリシアは難なくその腕を掴んでから容易く捻り、へし折ったのであった。

 

ウェル「ぐぎゃああああああっ!!!」

 

 それからアリシアが指を光らせると、ウェルは何発も殴られて壁に激突して倒れた。それからすぐにアリシアはウェルの頭を踏みつけたのであった。

 

ウェル「うぎゃああああっ!!」

 

アリシア「ほんとバカね。聖遺物の欠片を仕込んだぐらいで私に勝てるとでも思っていたの?サジタリアスに3回も殴られまくったのといい、学習能力がないのかしら?」

 

ウェル「ぐ、ぐが……」

 

アリシア「それに…私がこのまま生かして帰すと思ったら大間違いよ!」

 

 そう言ってアリシアはウェルへの徹底的な暴行を開始した。まず、手始めにウェルのネフィリムの細胞を仕込んだ左腕を掴み、焼いたのであった。

 

ウェル「う、うぎゃあああああっ!!!!熱い、熱い~~~!!!!!!」

 

アリシア「これで終わりじゃないわ。私はとても腹が立っているのよ。まず、私の本当の目的は何なのか、バカの頭でわかる?」

 

ウェル「ぼ、僕を殺して手柄を奪い、英雄になるつもりだな!?」

 

アリシア「はい、ハズレ。私はむしろ、英雄は嫌いなの。私の本当の目的はね…、私の妹のクリス以外の人間を皆殺しにする事よ!」

 

 ウェルを遥かに凌ぐ狂気の持ち主であるアリシアにウェルは衝撃を受けた。

 

ウェル「皆殺し…。え、英雄の僕までもその対象か!?」

 

アリシア「ええ、そうよ。間引くなんて生温すぎるわ。そして私の腹が立っている理由はいろいろあるの。まず、貴様が幼い頃の私を虐げた奴と同じ顔をしている事!次は貴様は力がない癖に威張っていた事!私は貴様や政治家のような力がない奴が威張っているのがとても気に食わないの。そして最後は…神獣鏡を私ではなく、小日向未来に渡して装者に仕立てた挙句、台無しにして私の人類皆殺しプランの一つを潰した事だ!だから、報復として特定条件を満たすと本当の効果が出るように細工した私のマインドクラッシャーを未来に打ち込んだのよ」

 

ウェル「細工?あの原因不明のエラーは…」

 

アリシア「そう、私が仕組んだの。貴様と立花響を重点的に抹殺するようにね!それに、機械如きで私のマインドクラッシャーを破れる洗脳を施せるわけないでしょ?」

 

 今度は指でウェルの体に穴をあけるという暴行を行った。

 

ウェル「ぐぎゃああああっ!!」

 

アリシア「まだまだ地獄の責め苦はこれからよ」

 

ウェル「え、英雄の僕よりあの女を生かすだと!?優れた頭脳を持つ僕に比べればあの女なんかクズ同然じゃないか!!」

 

 その言葉を聞いたアリシアの表情は氷のような表情から一変し、怒りと憎しみに満ちた表情へと変わった。

 

アリシア「クリスが…クズ…?ふざけるな、逆上せ上がるな!!私の妹のクリスは宝石よりも美しいとても大切な妹だ!それに比べ、貴様のようなゴミは優れた頭脳があろうと、汚い粗大ゴミだ!!そんなゴミクズ如きがクリスをクズ扱いするな!!」

 

 そのままウェルの頭を掴み、アリシアは怒りに任せて何度もウェルの顔面を壁にぶつけ続けた。ただでさえ激しい暴行を受けてウェルは出血が激しく、顔の原型すら留めていなかった。

 

アリシア「もう貴様はただ殺すのでは気が済まん!死ねない生き地獄でも味わってずっと苦しみ続けるがいい!!マインドクラッシャー!」

 

 アリシアはウェルにマインドクラッシャーを打ち込んだ。その効果はすぐに現れ、ウェルは炎に焼かれる幻覚を見た。

 

ウェル「ぼ、僕が燃やされる!!ぐぎゃああああっ!!!!」

 

アリシア「ついでで本当に焼いてやる!」

 

 アリシアの炎を受け、ウェルは心も身体も炎で焼かれて死ぬより苦しい地獄を味わう事となった。

 

 

アリシア「という訳よ」

 

 フロンティア事変の真の黒幕が判明した事で響達に衝撃が走った。




これで今回の話は終わりです。
今回はアイスネフィリムの襲撃と未来が正式に装者に登録されるのを描きました。
未来が実戦経験が少ないのにも関わらず、響との連携がきりしらコンビにもひけをとらないばかりか、ユニゾンまでも一発成功してしまうのを描いたのは、XD本編のギャラルホルン編序章で響と未来がきりしらコンビにも匹敵する連携を見せたのならば、ユニゾンもできるのではと思ったからです。ユニゾン技の名前は未来の技の法則を取り入れました。
アルデバランとアリシアの再度の戦いはロストキャンバスのアルデバランと輝火の戦いを意識して描きました。
今小説のフロンティア事変の真の黒幕をウェルではなくアリシアにしたのは、星矢達が相手ではウェルは非常に力不足だと思ったからです。
次の話は敵の本拠地の戦いのための準備になりますが、AXZ編に先駆け、アリシアの回想でソーニャとステファンが先行登場します。

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