セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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82話 嵐の前の静けさ

市街地

 

 フロンティア事変の真の黒幕がウェルではなく、ウェルを煽てて自分の思うように誘導したアリシアであった事、最後はウェルを粛清した事に一同は衝撃を受けた。

 

調「ドクターが黒幕だと思っていたのに…」

 

マリア「アリシアが…私達の計画を歪め、人類滅亡を企てていたなんて…」

 

アリシア「そう、全ては私とクリスを虐げた人間共とこの世界への報復のためよ!」

 

翼「アリシア、さては雪音を利用してアルモニカを起動させるつもりか!?」

 

アリシア「私の妹にそんな事をするわけないでしょ?シンフォギアに頼らずとも、アルモニカには封印さえ解けば私の小宇宙を注いで起動させればいいだけの事」

 

響「(こっちのアリシアさんは未来が言った通り、クリスちゃんを大切にしているんだ…)」

 

アリシア「作戦は失敗したから、退かせてもらうわ。クリスに纏わりつく害虫共、特に小日向未来、クリスと神獣鏡を私から奪っていったお前には死ぬより苦しい地獄を味あわせてぶっ殺すから覚悟しておきなさい!」

 

翼「待て!逃がすわけには」

 

 アリシアは冥衣の翼で空を飛び、退いたのであった。それと入れ替わるように星矢達も来た。

 

星矢「無事か、みんな!」

 

奏「ああ、アイスネフィリムを倒した直後にアリシアが来たが、あたし達と交戦せずに退いていった」

 

星矢「まさか、未来が出撃していたとはな。やっぱ、決心したのか?」

 

未来「はい。私も響やみんなの危機を救いたい一心で決意したんです」

 

氷河「これは出撃前に頼もしい助っ人が1人増えたな」

 

紫龍「一旦、帰還して今後の事を考えよう」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 アリシアの襲撃を退けた一同は帰還し、今後の事を考えていた。

 

弦十郎「なるほど。まさか、フロンティア事変の真の黒幕がウェル博士ではなく、アリシアだったとは…」

 

沙織「しかも、仮の姿を使って素性を隠し、表向きの黒幕に仕立て上げるためにウェル博士を煽てて自分の思うように誘導し、怒りを向けさせる事で自分への注意を逸らすとは…」

 

美衣「奏さんの世界のアリシアも報告で聞きましたが、こちらのアリシアも頭が切れるようですね」

 

弦十郎「ああ。しかも、錬金術師であった奏の世界のアリシアと違い、こっちは直接戦う事ができる黄金聖闘士クラスの実力の冥闘士である上、殺人に何の躊躇いもない動く特異災害なのだからな」

 

セレナ「人なのに特異災害扱いだなんて、私にはとても恐ろしい存在に感じます…」

 

 不安な様子のセレナの肩に奏は手を置いた。

 

奏「あんまり不安になるなよ、セレナ。あたしらや星矢達がいるじゃないか」

 

セレナ「奏さん…」

 

星矢「なんか、やけに奏とセレナは親しげだな…」

 

マリア「何でも、私と翼が不在時に出会った際に意気投合したそうよ」

 

翼「奏とセレナは色々と正反対だから衝突するかも知れないと思ったが、そうでもなかったみたいだ」

 

響「師匠、敵の本拠地はわかったんですか?」

 

弦十郎「今、緒川達諜報部に捜索させているところだ。報告が入ればすぐにわかるだろう」

 

 そこへ、エルフナインが来た。

 

瞬「どうしたんだい?エルフナイン」

 

エルフナイン「皆さんが持ち帰ったアイスネフィリムの破片を解析したのですが、やはりネフィリムの細胞と組み合わさっていたのは別の聖遺物でした。恐らく、これが…」

 

奏「ベルゲルミルの欠片のようだな」

 

翼「やはり、アイスネフィリムはネフィリムとベルゲルミルを掛け合わせて生み出したネフィリムだったのか…」

 

エルフナイン「それも、細胞の段階でベルゲルミルの破片と組み合わせたのだと推測されます」

 

紫龍「だが、肝心のベルゲルミルは姿を現さなかったな」

 

切歌「きっと、まだ起動できていないのデス」

 

ムウ「それはわかりませんよ。一応、完全聖遺物は膨大な小宇宙を注いでも起動させる事ができます」

 

星矢「けど、それでもアリシアがベルゲルミルを投入しない理由がどうなのかがわかんねえぞ」

 

ムウ「それもそうですね」

 

アルデバラン「アリシアの小宇宙を注げばすぐに起動できるのに、ベルゲルミルが姿を現さない…。これはどういう事なんだろうな…?」

 

奏「とりあえず、あたしはギアの調整も兼ねて一旦戻る事にする。そのついででどうしてこっちのアリシアがベルゲルミルを投入しないのかを向こうのダンナに推測してもらってくる」

 

瞬「実際にベルゲルミルが出た向こうなら、何かわかるかも知れないよ」

 

弦十郎「敵の本拠地がわかるまでは各自、休養をとって英気を養ってくれ。奏とセレナ君は報告等も兼ねて一旦、元の世界に帰って万全の状態にして戻ってきてくれ」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 早速、奏は翼の世界のアリシア一味との戦いに備え、ギアの調整も兼ねて一旦戻る事にした。

 

了子「あら、奏ちゃん。送迎の割にはやけに遅かったわね」

 

奏「それは……」

 

 奏はアリシアが翼達の世界にもいた事などを話した。

 

弦十郎「まさか、可能性は察していたが、アリシアが向こうの世界にもいたとは……」

 

了子「それも、弦十郎君が思った通り、本気で世界を滅ぼそうとしているなんてね。しかも、アルモニカ以外にも人間を根絶させるためのプランを複数立てていたのは驚きよ」

 

奏「それに、奴はベルゲルミルの破片をネフィリムっていう完全聖遺物の細胞と組み合わせて生み出したアイスネフィリムを投入して来たのに、ベルゲルミル本体は出してこないんだ。ダンナなら、何かわかるか?」

 

弦十郎「切り札を温存しておくためという線もあり得るが…、もう少し考えさせてほしい。今はゆっくり休むんだ」

 

 アイスネフィリムとの戦いがあったのもあり、奏は休む事にした。

 

あおい「向こうのアリシアはどうしてベルゲルミルを出さなかったのでしょうか?」

 

朔也「きっと、フォニックゲインが足りないから出したくても出せなかったのでは?」

 

了子「フォニックゲインが足りないから出せないというのは早計よ。完全聖遺物は膨大な小宇宙でも起動させる事が可能なの。それに、向こう側のアリシアは冥闘士っていう、冥王ハーデスの配下の戦士らしいのよ」

 

朔也「となれば、フォニックゲインの代わりに膨大な小宇宙でベルゲルミルを起動できるじゃないですか!」

 

了子「でも、奏ちゃんが言った通り、エネルギーが十分あるのにも関わらず、ベルゲルミルを投入しないのは不自然ね」

 

弦十郎「(確かに不自然だ。切り札を温存するという考えでも、向こうのアリシアが黄金聖闘士クラスの実力ならばベルゲルミルは切り札にはならないはずだ。どういう意図でベルゲルミルを出さない…?)」

 

 考え事をする弦十郎は定期的に向こう側から渡されたデータを了子が参照しているのを見た。

 

弦十郎「確か、これは向こう側のデータだったな」

 

了子「こっちにはない、融合症例というのもあるわね。人と聖遺物の融合。絶唱などの負荷が抑えられる一方で浸食が悪化すると命に関わるなどの致命的なデメリットもそれなりにあるわ」

 

弦十郎「人と聖遺物の融合か…。ん?」

 

 ふと、まだ確証は持てないものの、弦十郎にはある事が閃いた。

 

弦十郎「了子君、人の身体に聖遺物を隠す事はできるのか?」

 

了子「聖遺物にもよるけど、そんな事をしたらシンフォギアに適合しようとしていた頃の奏ちゃんみたいに拒絶反応が起こる危険だって高いのよ。急にどうしたの?」

 

弦十郎「ふと、融合症例を見て思っただけだ」

 

了子「……でも、融合してしまう可能性も否定はできないわね。そもそも、融合症例のデータは響ちゃんのだし」

 

弦十郎「(敵がどう探しても見つからない場所に隠したという可能性もあるな。どう探しても見つからない場所といったら……)」

 

 融合症例のデータを参照した事で推測ではあるものの、どう探しても見つからない場所というのがわかった。

 

弦十郎「ありがとう、了子君。融合症例のデータを参照したお陰で向こうのアリシアがベルゲルミルを投入せず、どこに隠したのかがわかった」

 

了子「本当にわかったの?」

 

弦十郎「ああ。推測ではあるのだがな」

 

 

 

???

 

 アジトに帰還したアリシアは発作に苦しんでいた。

 

アリシア「ぐっ、ぐあああああっ!!(前よりも発作がひどくなっている…!)」

 

 そこへ、クリスが来たのであった。

 

クリス「アリシア、どうしたんだよ!?」

 

アリシア「な、何でもないの(何とか、発作の方は収まったみたい…)」

 

クリス「(やっぱり変だ。アリシアは時々苦しんでいるその様子は…、まるで融合症例の時のバカみたいだ。まさか…そんな訳、ないよな…?)」

 

 何もないと必死にひた隠しにしているアリシアの苦しむ様子にクリスは融合症例が悪化していた時期の響と重なって見えたのであった。そして、医務室で医者の錬金術師にアリシアは自分の身体を診てもらっていた

 

医者「もうアリシア様の身体は限界にきています。立花響の浸食具合を遥かに超えている状態なので、本当はいつ死んでもおかしくない状態なんですよ」

 

アリシア「それでもいいわ。こんな私自身の命なんて、非常に軽いものよ」

 

医者「何をおっしゃっているのですか!私は医者として身体を診なくてはなりません!そもそも、例の聖遺物をアリシア様の身体に埋め込む事自体、私は反対だったのです!そんな事をしたから」

 

アリシア「どうせ私なんて生きてる価値はないのよ。夢を叶えられないなら、クリス以外の人間を皆殺しにして死んだほうがよっぽどマシだわ!」

 

 そう言ってアリシアは部屋を出たのであった。

 

医者「アリシア様…、自分をもっと大切にしてください…。あなたが思っているほど、命の価値は軽くないんですから…」

 

 その後、アリシアはクリスの元に来た。

 

アリシア「クリス、今から買い出しに行くから一緒についてくる?建物の中でずっと過ごすのもつまらないでしょ?」

 

クリス「あ、ああ……」

 

 食料品の買い出しも兼ねてアリシアはクリスを連れて外出したのであった。

 

 

 

市街地

 

 その頃、連絡があるまで休息をとって英気を養うように言われたため、響と未来は買い物をしていた。

 

未来「響、話したい事があるんだけど…」

 

響「何?」

 

未来「響は帰るべき存在の私が隣で一緒に戦うのって……嫌?」

 

響「う~ん……。よくわかんないなぁ(未来はまだ戦いになれてないし、素直には言えないなぁ…)」

 

未来「ちゃんとはっきり言ってよ」

 

響「そう言われても……。でも、他のみんなとは違う感じだったよ。未来が隣にいるだけで力が湧いてくる感じがしたから…」

 

未来「私も、美衣さんとの訓練の時よりも動けているような気がしたんだよ」

 

響「そうなんだ。私と未来って、切歌ちゃんと調ちゃんのような連携の才能があるんじゃないかな?」

 

未来「そうかな…?」

 

???「もっと自信を持てよ、未来」

 

 星矢が来たのであった。

 

響「星矢さん!」

 

星矢「響と未来の連携は弦十郎や沙織さん達も驚いてたんだぞ。練習もなしにぶっつけ本番で響との流れるような連携はおろか、未来の神獣鏡は響とのガングニールとの相性はいいとはいえない上、ダインスレイフが組み込まれていないのに響とのユニゾンまでできちまったんだ。十分凄いじゃないか」

 

未来「あ、あれはたまたまできただけで…」

 

星矢「本当にユニゾンができたのはたまたまかもしれないけど、それができたのは響と未来の友情のお陰だ。もっと訓練や実戦での経験を積めば、切歌と調の2人を超えられるかも知れないコンビになるぞ」

 

未来「星矢さん、私達が切歌ちゃんと調ちゃんを超えるコンビになるなんて…」

 

響「いやぁ、星矢さんからお墨付きをもらうとほんとにできちゃうかも知れないなぁ」

 

未来「響、調子に乗らない!」

 

 星矢にお墨付きをもらい、調子に乗っていた響に未来の雷が落ちた。

 

響「そ、そんなに言わなくても…」

 

星矢「未来の雷が落ちてしまったなぁ…」

 

 

 

公園

 

 買い出し等が終わった後、ヨーロッパ辺りの公園でアリシアはクリスと共に空を眺めていた。

 

アリシア「(思えば、家族を失ってからこんなに幸せな時が訪れたのは初めてね…。ベヌウの冥衣を手に入れても、色々とあったし…)」

 

 

 

回想

 

 アリシアは魔星に目覚め、冥界に来た時の事を思い出していた。

 

パンドラ「何!?命令が聞けないとでもいうのか!?」

 

アリシア「何者か知らないけど、勝手に私に命令しないでくれる?私は命令されるのが大嫌いだから」

 

パンドラ「貴様はハーデス様への忠誠心に厚きベヌウの冥闘士が纏っていた冥衣を纏っておきながら、私の命令に背くとは!私の命令に背く事はハーデス様への反逆と同じ!反逆者には死を!」

 

 槍を向けようとしたパンドラだったが、すぐにアリシアはパンドラに接近し、放り投げたのであった。

 

アリシア「いちいち、ハーデス様ハーデス様とうるさい女ね!そのハーデスって奴に逆らわなければ、私がどうしようと勝手でしょ?」

 

パンドラ「おのれ、ベヌウの冥闘士でありながら、ハーデス様を呼び捨てにするとは!」

 

???『2人共やめよ!』

 

 制止をかけたのはハーデスであった。

 

パンドラ「申し訳ありません、ハーデス様。しかし、新たなベヌウの冥闘士は命令を聞かないばかりか、ハーデス様に無礼な口を叩いたのです!どうか、処罰を!」

 

ハーデス『その新たなベヌウの言う通り、余は反逆しなければ何もせぬ。そもそも、これまでベヌウの冥闘士は群れるのを好まなかったりする傾向にある。それであれば、好きにさせる方がよかろう』

 

アリシア「寛大な対応をしてくださって、ありがとうございます」

 

ハーデス『命令されるのが嫌と言っていたな。ならば、頼みという形ならば聞けるか?』

 

アリシア「それでしたら、聞けますよ」

 

ハーデス『そなたは人間を皆殺しにしようと思っているそうだな。ならば、グレイテストエクリップスが万一、失敗した場合の保険も兼ねて人間根絶プランとやらを準備してほしい』

 

アリシア「わかりました。それと気になったのですが…、私とあなたは立場が違うのに、人間が嫌いというのは同じなのが奇遇ですね」

 

ハーデス『そうだな。余もそなたほど人間を憎んでいる人間は見た事がない』

 

 意気投合し、親しげに接しているアリシアとハーデスにパンドラや三巨頭は衝撃を受けていた。

 

アイアコス「ハーデス様があんなにベヌウの女と意気投合しただと…!?」

 

ミーノス「信じられません…。ハーデス様を呼び捨てにしておきながら、あんなに気に入られた上、特権まで与えられるとは…」

 

ラダマンティス「パンドラ様に反逆する度胸も凄いな…。あいつが敵にならなくて何よりだ…」

 

 

 

クリス「アリシア、何をボーッとしてんだ?」

 

アリシア「あ、ちょっと考え事をしてたの!それに、クリスと一緒の買い出しは楽しかったわ。幼い頃に2人でお遣いをしていた時みたいで」

 

クリス「そ、そうだな…。アリシア、お前のあの途方もないお金、どこから手に入れたんだ?」

 

アリシア「もちろん、他のテロリストやマフィアを皆殺しにしたり、国を滅ぼした際にありったけ奪って手に入れたものよ」

 

クリス「それって…、盗んだ金になるじゃねえか!」

 

アリシア「そうなるわね。でも、食費等が必要だから手に入れたとはいえ、私はお金への執着がないし、基地の維持費や生活費とか以外にどう使えばいいのかわからなかったの。ちょうどあなたが来てくれたから、使い道がようやく見つかったのよ」

 

クリス「まさか、あたしに合う服をたくさん買ってくれたのも…」

 

アリシア「あなたのためよ。私はクリスのためなら、何だってしてあげる。クリスが憎いと思っている奴を殺すのも、クリスを苦しめたこんな世界を滅ぼす事だって。クリスはあの女の事が今でも許せないんでしょ?」

 

クリス「あの女って、まさか…!」

 

 アリシアの言葉に、クリスは思い出したくない過去を思い出してしまった。

 

 

 

回想

 

 それは、クリスの両親の死と、それを招いてしまったバルベルデでの賛同者、ソーニャの事であった。

 

クリス「パパ、ママ!離してよ、ソーニャ!」

 

ソーニャ「ダメ、危ないわ!」

 

クリス「ソーニャのせいだ!」

 

 その言葉にソーニャは何も言えなかった。

 

 

 

クリス「アリシア、お前はどうしてそれを…」

 

アリシア「当然じゃない。元はといえば、クリスが不幸になる原因を作ったのはあの女よ!私にとっても本当の両親のような人だったおじ様とおば様が死ぬ原因を作ったあの女を私が許せるわけないでしょ!?殺害予告も兼ねて、1年程前に会ってきたの」

 

 

 

回想

 

 ちょうどルナアタック事変辺りの頃、アリシアはソーニャのいる村に来て、ソーニャと遭遇した。

 

アリシア「久しぶりね、ソーニャ」

 

ソーニャ「どなたなのでしょ」

 

 アリシアを見たソーニャは驚愕した上、アリシアの冷たい視線と威圧感に押されて恐怖で動けなくなった。

 

ソーニャ「まさか…アリシア!?」

 

アリシア「そうよ」

 

ソーニャ「(何なの…?昔のアリシアは優しさに溢れていたのに、今のアリシアはまるで殺人鬼そのもの…。それに…あの冷たい視線に見つめられると身体中が凍ったように動けない…)」

 

アリシア「あなた、おじ様とおば様が死んだときの事、覚えてる?」

 

ソーニャ「おじ様とおば様?まさか……」

 

アリシア「覚えていたようね。私にとっても本当の両親のようだったのよ。その2人を死なせ、クリスを不幸にしたお前を私が許せるものか!今の活動もその罪の意識から逃れるためのものでしょ!?そんな事をしたって、お前の罪は消える事はない!」

 

 凄まじいアリシアの殺気と憎しみに恐怖し、動いて逃げる事さえできないソーニャだったが…

 

???「姉ちゃん、何があったんだ!?」

 

 1人の少年が駆け付けたのであった。

 

ソーニャ「ステファン、来ちゃダメ!あの女は」

 

アリシア「あいつは家族みたいね。だったら、そいつを殺してクリスが味わった悲しみをお前にも味あわせてやる!」

 

ソーニャ「逃げて、ステファン!殺されるわ!」

 

ステファン「お前、姉ちゃんの知り合いみたいだけど、大切な人が殺されたからって、その人の家族を殺して何になるんだよ!そんな事をしてお前の心は救われるのか!?」

 

 ステファンもアリシアの冷たい視線と凄まじい殺気に恐怖で震えていた。しかし、勇気を出してアリシアに反論したのであった。

 

アリシア「何…?」

 

ステファン「お前のやろうとしている事は誰も救われる事なんかない!殺された人の家族だって、お前自身だって幸せにはならないんだよ!」

 

アリシア「誰も救われない?私に説教するなんていい度胸じゃない。すぐにぶっ殺してやりたいぐらいよ!」

 

 アリシアの逆鱗に触れてステファンが殺されると思ったソーニャだったが、意外にもアリシアは背を向けた。

 

アリシア「興が削がれた。今日は殺害予告程度にしておくわ。でも、人類根絶計画を実行する時が来たら、最初に滅ぼすのはバルベルデよ!それも、お前らも含め、バルベルデの人間全員を皆殺しにする形でね!」

 

 そう言ってアリシアは去って行ったのであった。

 

 

 

クリス「バルベルデの人間を…みんな殺すだって!?」

 

アリシア「ええ。どの道、人間はクリス以外、全員殺す。アルモニカの封印を解いてから一番最初に皆殺しになるのがバルベルデの人間というだけよ。さ、帰るわよ」

 

 

 

???

 

 帰った後、アリシアが用意してくれた自室でクリスはアリシアが変貌してしまった事に落ち込んでいたのであった。

 

クリス「(アリシア…)くそっ、どうしたらいいんだよ!?このままだと、アリシアは本当に世界中の人を皆殺しにしてしまう…。あたしにできる事は…ないのかよ……」

 

 同じ頃、アリシアもアルモニカがあるホールみたいな部屋である事で沈んでいたのであった。

 

アリシア「(クリス…、買い出しにも連れていったのに、どうして笑顔を見せてくれないの…?昔はいつも笑い合っていたのに…。クリスが私に笑顔を見せてくれなくなったのは、全部あいつらよ!あいつらさえいなければ…!)」

 

 クリスが笑顔を見せないのは未来達のせいだとアリシアは考えていたのであった。ふと、アリシアは発作に襲われたのであった。

 

アリシア「ぐっ、ぐああああっ!!(もう私に残された時間は少ない…。一刻も早く、皆殺しにしなければ…)」

 

 それから、アリシアの度々苦しむ様子が気になったクリスは医務室に来た。

 

クリス「(絶対にアリシアのあの様子は変だ。きっと、何か隠しているに違いない。となれば、ここにしか手掛かりはない)」

 

 医務室へ入ると、医者がいたのであった。

 

医者「これはクリス様じゃないですか」

 

クリス「へ?あたしを様付けって、どういう事だ!」

 

医者「アリシア様は妹のクリス様を大層可愛がっているのです。自分の悪口よりクリス様への悪口に非常に敏感だったりするので、アリシア様のような接し方をしないといけないのですから。ところで、どのようなご用件で?」

 

クリス「あんたに聞きたい事がある。あんた、医者なんだろ?アリシアのあの発作について知ってるのか?」

 

医者「……クリス様には隠すわけにはいかないようですね。わかりました、資料も見せて話しましょう」

 

 医者はレントゲンを持ってきて、アリシアの身体がどうなっているのかをクリスに説明した。

 

クリス「嘘だろ…?そうかも知れないとは思ってたけど、アリシアがあのバカと同じ融合症例だって!?おまけにバカの時とは比べ物にならないぐらいひどいじゃねえか!」

 

医者「その通りです。アリシア様は完全聖遺物、ベルゲルミルと融合しており、浸食の具合も立花響よりのさらにひどい状態で、いつ死んでもおかしくないんです」

 

クリス「てめえ、アリシアを実験体として使ったのか!?」

 

医者「いえ、アリシア様自らそれを望んだのです。私は反対でしたが、アリシア様が『ベルゲルミルを埋め込まなければ殺す』と脅し、やむなく私は自分の錬金術で小さくしたベルゲルミルをアリシア様に埋め込んだのです…」

 

 その事実にクリスはショックを受けたのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして、数日後…。

 

八紘『結局、弦はアリシア一味と戦うというのか…』

 

賢仁『正直言って、これまでの連中よりもかなりやばいぞ。下手をしたら、逆に返り討ちに遭って皆殺しになるのはS.O.N.Gの方になっちまう』

 

弦十郎「ああ。奴は人類を根絶しようとしている。例え手出し無用の特異災害に認定されていたとしても、それを見過ごすわけにはいかない」

 

沙織「各国首脳や国連上層部に対しては、私が説得して響さん達をアリシア一味との本格的な戦いに出撃させる事ができるようにしておきました」

 

八紘『流石は光政翁の孫娘だ』

 

弦十郎「八紘兄貴は日本政府の説得を頼む」

 

八紘『ああ。そして弦、翼や他の装者達の命、お前に預けたからな』

 

賢仁『言ったからには、絶対に勝て!いいな?』

 

 八紘と賢仁は通信を切った。

 

慎次「アリシア一味の本拠地は並行世界のアリシアが拠点にしていたという、ロイバルト北極基地で間違いありません」

 

弦十郎「同じであれば話は早い。後は、装者や聖闘士達が来るのを待つだけだ」

 

 

 

研究所

 

 マリアはセレナの世界へ行き、セレナを戦いに参加せる事をナスターシャ教授に伝えた。

 

ナスターシャ「そうですか。わかりました、セレナの事を頼みましたよ」

 

マリア「わかってるわ、マム」

 

セレナ「姉さんの世界の危機を放っておけない」

 

パルティータ「セレナが不在の間は私がここに滞在しておくわ。2人とも行ってらっしゃい」

 

 ナスターシャはパルティータと共にマリア姉妹を見送ったのであった。

 

ナスターシャ「まるで、私達は子供を送り出す親のようでしたね」

 

パルティータ「ええ。私達はあの子達が無事に帰ってくるのを待ちましょうか」

 

 

 

特異災害対策機動部二課

 

 奏の世界の方へは、翼が迎えに来ていた。

 

翼「奏、ギアの調整は大丈夫?」

 

奏「ああ、了子さんがコンディションを整えてくれたから大丈夫さ」

 

弦十郎「だいたいの事は奏から聞いた。まさか、俺の推測通り本気で世界を滅ぼそうとしているアリシアが向こうにいたとは…」

 

了子「向こうのアルモニカは聖遺物の封印というカギがかかってているけど、向こうのアリシアは本気だし、封印が解かれた時点で向こうの世界は終わりだから、絶対に起動させないように」

 

弦十郎「俺達にしてやれる事はギアの調整を万全にしておくぐらいだ。後は、仲間達と共にブラックアウト事件を向こうで起こしてはならない」

 

了子「向こうの世界の命運はあなた達にかかっているわ。絶対に阻止してくるのよ」

 

翼「了解しました」

 

奏「さ、行こうか!」

 

 奏は翼と共に世界を渡ったのであった。

 

あおい「行ってしまいましたね…」

 

朔也「流石に今回はアルモニカを起動さえる事なく事件を解決できるんじゃないですか?」

 

弦十郎「そうしてくれた方がいいのだが…、俺にはどうもブラックアウト事件とは比較にならない恐ろしい事態が起こりそうな予感がする」

 

了子「恐ろしい事態?」

 

弦十郎「無論、これは俺の予感に過ぎない。杞憂であればいいが…」




これで今回の話は終わりです。
今回は大きな戦いの前の準備やアリシアが融合症例である事が判明する他、回想でソーニャとステファンが先行登場するのを描きました。
アリシア一味は武装組織フィーネとは逆で、国やテロ組織、マフィアを滅ぼした際に手に入れた金がたくさんあるため、食事などに困っていないどころか、アリシア自身はお金への執着さえないために食費等以外のお金の使い道に困っている様子を描きました。
AXZ本編と違ってアリシアと対面した際のステファンは震えていましたが、ステファンだってどんなに勇敢でも決して恐怖を感じないわけではないという弱さを描くと共に、それでもきちんとアリシアに反論する勇気や正義感の強さも描きました。
次の話はアリシア一味の本拠地でアリシアと戦う事になりますが、下手な精神攻撃よりもえげつなくて卑劣な手段をアリシアは使ってきます。

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