セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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84話 不死鳥対不死鳥

北極

 

 その頃、星矢達は異様にしぶとい冥闘士に手古摺ったものの、倒したのであった。

 

星矢「こいつら、しぶとかったな…」

 

氷河「下手をしたら、俺達以上かも知れない」

 

紫龍「よし、俺達も行くぞ!」

 

 星矢達は基地へ急いだ。複数のアイスネフィリム完全体もムウとアルデバランに倒されたのであった。

 

アルデバラン「最初に現れた奴等は終わりだな」

 

ムウ「ですが、まだいる可能性もあります」

 

アルデバラン「ムウ、さっきから攻撃的な小宇宙を感じるぞ」

 

ムウ「恐らく、彼が救援に来たのでしょう」

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 響達の洗脳を解除し、救援に駆け付けたのは一輝であった。

 

アリシア「貴様、何者だ!?」

 

一輝「貴様のような姉妹や親友同士を洗脳して殺し合わせ、クリスを泣かせる外道に名乗る名は持ち合わせていないが、名乗ろう。俺の名は、フェニックス一輝!」

 

アリシア「フェニックス…!?」

 

セレナ「一輝さん!」

 

瞬「兄さん、やっぱり来てくれたんだね!」

 

一輝「ああ、勿論だ」

 

 一輝は洗脳されたマリアと響に痛めつけられたセレナと未来、そして未来を庇ってまともに立てないクリスを抱え、倒れている瞬の近くに座らせた。

 

一輝「マリア、響、切歌、調は瞬達の傍にいてやってくれ。あのベヌウの冥闘士は俺が倒す!」

 

未来「一輝さん、ベヌウの冥闘士のアリシアは瞬さんのネビュラストームをまともに受けてもすぐに立ち上がるほどタフで強いので、気を付けてください」

 

一輝「ああ、わかった」

 

 一輝はアリシアと対峙したのであった。

 

アリシア「貴様があの噂のフェニックスの聖闘士か」

 

一輝「貴様とは意外な形での因縁もあるからな?」

 

アリシア「因縁?」

 

一輝「貴様は今のベヌウの冥闘士だが、俺の前世はベヌウの冥闘士らしい」

 

アリシア「ベヌウ?貴様が前世ではベヌウだとでも?」

 

一輝「互いに対面したのは初めてだが、意外な因縁があって、俺も驚いているぞ」

 

アリシア「御託はここまでだ。貴様も葬ってくれる!」

 

 フェニックスとベヌウ、不死鳥同士の対決が始まったのであった。最初に仕掛けたのはアリシアで、光速拳を仕掛けたが、一輝にかわされた。

 

一輝「(何という光速拳!ミーメの光速拳すら凌駕している!もし、これが本気でなければ…)とあああっ!」

 

 光速拳をかわしてから、返しの光速拳を一輝は放ったが、アリシアもかわし、次は互いに炎をぶつけ合った。

 

アリシア「なかなかやるな、フェニックス。双子座のサガ兄弟と渡り合い、アスガルドの勇者フォルケルの義理の息子ミーメ、三巨頭のアイアコスを葬っただけの事はある。だが、そいつらよりも私の方が上だ!」

 

 アリシアは光速拳の速度と威力をさらに上げた。

 

一輝「(やはり、ミーメの時と同様にまだ上がるか!)」

 

 それでも何とかかわしきり、アリシアに殴りかかった一輝であったが、既にアリシアは背後をとっていた。

 

一輝「(いつの間に!?)」

 

アリシア「アイアコスを倒したぐらいで私も倒せると思ったら大間違いだ!私は全冥闘士一のスピードを誇る。ましてや、今の私は三巨頭以上だ。アイアコスのスピードを見切ったぐらいで私に追いつけはしない!」

 

 そのままアリシアは至近距離から光速拳を放ち、一輝を吹っ飛ばした。

 

一輝「うわああああっ!!」

 

マリア「一輝!」

 

セレナ「一輝さん!」

 

 吹っ飛ばされた一輝は立ち上がる際、アリシアの異様な憎しみが気になっていた。

 

一輝「(アリシアの小宇宙は俺が今まで戦った敵以上に憎悪に満ちている上、どの冥闘士よりも邪悪な小宇宙だ…。それに、あの女を見てると、ミーメみたいに何かを隠しているように思える上、まるで昔の俺をそのまま鏡で見ているような気分だ…)」

 

アリシア「フェニックスとだけあって、多少は打たれ強いようだな。炎だけではあまり効果がないようだ。だからこそ、絶対零度の冷気で魂ごと凍てつくがいい!アブソリュート・ゼロ!」

 

 アリシアは絶対零度の凍気を放ったが、一輝はかわした。

 

一輝「(何という冷気だ!アリシアとアルデバランとの戦闘を偶然見た時もそうだったが、氷河にも匹敵する程だ)」

 

 攻撃を仕掛けようとした一輝であったが、足が動かしたくても動かない事に気付き、足元を見たら足が凍っていた。

 

一輝「足が凍っているだと!?では、さっきの凍結拳は…?」

 

アリシア「貴様の動きを封じるためだ。今の貴様は翼をもがれた不死鳥に等しい!これを受けて跡形もなく消え去るがいい!コロナ・ゼロ!」

 

 アリシアは片手に灼熱の炎を、もう片方の手に凄まじい凍気を発生させ、それを頭上で合わせてから振り下ろして猛烈な一撃が放たれた。

 

一輝「うわああああっ!!」

 

瞬「兄さん!」

 

 コロナ・ゼロを受けた一輝は聖衣を粉々に砕かれ、吹っ飛ばされたのであった。

 

調「そんな…」

 

切歌「一輝でも敵わないのデスか…?」

 

アリシア「牡牛座の黄金聖闘士と同じように身体は消し飛ばなかったか。それなりに私と張り合えた男はお前が初めてだ、フェニックス。アンドロメダよりも頑張ったな。だが、全ての人間を徹底的に憎み抜いている私に勝てるはずもあるまい」

 

一輝「ふっ…、やっぱり、貴様を見ていると昔の俺を鏡のように見ている気分だ…」

 

 一輝は倒れている状態で言った。

 

アリシア「昔の俺だと?」

 

一輝「かつての俺もお前のようだった。自らに課せられた宿命を呪い、この地上の全てを、神というものがいるなら、神すら敵と思い、憎んだ。だが、星矢達と出会い、友を信じ、未来に希望を託す事を。そのために戦う事を知ったのだ」

 

アリシア「ふふ、あははははははっ!友や未来はおろか、全てのものが信じられるものか!夢を失った私にとってただ一人、生き残った家族のクリスだけが全て!それ以外の人間、特にエゴにまみれた大人共は全て死ぬべきだ!」

 

一輝「……哀れだな、アリシア。貴様はエゴにまみれた大人が嫌いと言っておきながら、貴様自身は自分のエゴで最愛の妹のクリスを泣かしているのだぞ。今の貴様の姿こそ、貴様が最も嫌っている大人そのもの!それに、貴様の憎悪に満ちた小宇宙の底には怯えを感じる」

 

アリシア「何だと!?私はとっくに弱い自分を切り捨てた!怯えなど私の心には存在しない!それに、私は最愛の妹のクリスを愛している!」

 

一輝「…俺もかつて、全てに憎悪を燃やしていた時にこの拳をアテナはおろか、最愛の弟の瞬にすら向けた。だが、貴様はエゴでクリスから大切なものを奪おうとしているのだぞ!それはクリスに拳を向ける以上に最低の事だ!そして、貴様の言う愛は姉妹愛ではない、ただのクリスを独占したいというエゴだ!昔の俺の写し鏡ともいえる貴様には絶対に負けるわけにはいかない!」

 

 アリシアのエゴに怒る一輝は立ち上がり、小宇宙も更に燃えていた。

 

アリシア「(な、何だ…?フェニックスの小宇宙がさらに燃え上がっている?)エゴだと!?私のクリスへの愛情をエゴと愚弄するのか!?」

 

一輝「そうだ!」

 

アリシア「だが、聖衣を失った貴様など私の敵ではない!これを受けて消し飛べ!コロナブラスト!」

 

 アリシアは青い炎を放ち、一輝はそれに飲み込まれた。

 

セレナ「一輝さん!」

 

アリシア「あははははははっ!これでフェニックスは終わりよ!」

 

 ところが、青い炎は赤く変わり、不死鳥の形へと変わった。

 

未来「炎が…」

 

響「変化した?」

 

アリシア「な、なにが起こった!?」

 

 炎の形が変わった後、その場には再びフェニックスの聖衣を纏った一輝の姿があった。

 

セレナ「一輝さんの聖衣が元通りになった!」

 

マリア「どうなってるの?」

 

アリシア「どういう事だ!?粉々になった聖衣が蘇るには大量の血が必要なはず!」

 

一輝「ふっ、フェニックスの聖衣は普通の聖衣だと思ったら大間違いだ。この聖衣は俺の小宇宙が燃え続ける限り、例え粉々に砕かれようとも、灰になろうとも、何度でも蘇る!」

 

アリシア「なんて強力な自己修復能力なんだ!?」

 

一輝「アリシア、貴様は自分が妹を泣かせている事がなぜわからん!?」

 

アリシア「私がクリスを泣かせているだと!?そんな事はない!全てはクリスに纏わりつく害虫共が悪い!」

 

一輝「貴様は怯えはないと言っていたが、その自分の間違いを認められないというのが怯えではないのか?」

 

アリシア「黙れ!私に怯えはない!ここまで私をバカにしたからには、貴様を洗脳して弟や害虫共を殺させてやる!マインドクラッシャー!」

 

 怒り狂ったアリシアはマインドクラッシャーを放った。

 

響「一輝さん!」

 

マリア「まずいわ、あれを一輝が受けたら…!」

 

一輝「待っていたぞ、この時を!そして、お前の本当の心の中を見せてやろう!鳳凰幻魔拳!」

 

 アリシアがマインドクラッシャーを放つ瞬間を待っていた一輝は鳳凰幻魔拳を放ち、マインドクラッシャーを掻き消してアリシアに打ち込んだ。

 

アリシア「…ふふふ、私に幻覚の技を打ち込むとは。私はマインドクラッシャーが使えるのだから、幻惑されないのだぞ。それを知ってて打ち込むとは、愚かな。まやかし如きで私を惑わすなど」

 

 しかし、目の当たりにした光景を見て衝撃を受けたのであった。

 

 

 

回想

 

 それは、ブリル協会の被験体の頃の事であった。

 

アリシア「お父さん…お母さん…楽団のみんな…、怖いよ…助けてよ……」

 

 ブリル協会に拉致されたアリシアは大人達に怯え、亡き両親や楽団のメンバーに助けを求めていたのであった。

 

 

 

アリシア「な、何だ!?この幼い頃の私が怯えている幻覚は!?私は両親や楽団のみんながブリル協会のゴミ共に殺されてから、ずっと奴等を憎んでいたのだぞ!これはただのまやかしだ!そんなものに誤魔化されなど」

 

一輝「一つだけ言っておく。それは幻覚などではない、お前の心の底に眠る確かな記憶だ!」

 

アリシア「な、何っ!?」

 

 

 

回想

 

 ブリル協会の人間を皆殺しにした際、アリシアは恐怖で震えていた。

 

アリシア「こ、怖い…。何もかもが怖い…。恐いよ…」

 

 何もかもが怖いと思っている中、アリシアはその恐怖を克服する方法を思いついた。

 

アリシア「そうだ…、私自身の記憶を、人格をいじればいいんだ…。そうすれば、私は恐怖で怯える事はなくなる…。恐怖で震える弱い自分を捨てて、強い自分になれる…!」

 

 早速、アリシアはマインドクラッシャーを自分に打ち込み、大人達に怯えていた時の記憶をずっと憎み続けていた記憶へ、そして人格を冷酷非道な人格へと書き換えたのであった。

 

 

 

アリシア「私が怯えていただと!?や、やめろ!!そんなバカな事があってたまるか!!」

 

一輝「アリシア、貴様は弱い自分を憎むあまり、強くなるために弱い自分に目を背け、自分の人格と記憶を書き換えただけに過ぎん。だが、そうしていても貴様はまだ怯えが残っているのだ。そして、貴様の強大な憎しみはその怯えからくるものだ!」

 

アリシア「違う、これは幻だ!現実であってたまるか!!」

 

一輝「言ったはずだ。貴様は自分の人格と記憶を書き換えただけだと。自分に嘘はつけんぞ、アリシア」

 

アリシア「貴様ァ!私のクリスへの愛をエゴと言うばかりか、こんな幻まで私に見せてただで済むと思うな!!心も身体も完全に打ち砕いて殺してやる!!」

 

一輝「かつての俺以上に性根が腐っているようだな、アリシア。俺もここからが本番だ!我が弟と未来達へ仕掛けた苦痛を何倍にもして返してやるぞ!」

 

アリシア「苦痛を何倍にもだとぉ!?ふざけるなぁ!!」

 

 アリシアは激怒し、殴りかかってきた。

 

一輝「これは響と未来が貴様によって互いを傷つけさせられた心と身体の痛みだぁ!!」

 

 アリシアのパンチをかわし、自身のパンチでアリシアを殴り飛ばした。

 

アリシア「うわああああっ!」

 

一輝「これは切歌と調の苦痛だぁ!」

 

 次はキックで蹴り飛ばした。

 

アリシア「ぐああああっ!!」

 

一輝「これは貴様によって殺し合わされたマリアとセレナの悲しみだぁ!」

 

 今度はアッパーでアリシアを上に殴り飛ばした。

 

アリシア「ぐはっ!」

 

一輝「そして最愛の我が弟、瞬を殺そうとしたのと貴様の最愛の妹、クリスを泣かせた罪は一番重い!」

 

アリシア「クリスを泣かせた罪が一番重い!?貴様のような男がクリスの名を口にするな!!コロナ・ゼロ!」

 

 頭に血が上ったアリシアは負担も顧みず、コロナ・ゼロを放ったが、一輝は軽々とかわした。

 

一輝「バカめ、聖闘士に一度見た技は通用しないのだ!?もっとも、さっきは足を凍らされて再び見ても完全に見切れなかったがな」

 

アリシア「再びだと!?まさか、さっきコロナ・ゼロを受けても身体が残ったのは」

 

一輝「間一髪で直撃を避ける事ができたからだ。俺は貴様とアルデバランが戦っているのを偶然、目の当たりにして技を見せてもらった。コロナ・ゼロは灼熱拳と凍結拳、相反する二つの拳をそれぞれ最大にまで高めて組み合わせ、その反発による凄まじい威力のエネルギーを放出する技。だが、凄まじい負担がかかる。それを2回も使った貴様は限界だ!」

 

アリシア「まだ、まだ私は」

 

一輝「さらばだ、アリシア。自分のエゴで妹を泣かせ、未来達の心の痛みを地獄で償え!そして、星をも砕くフェニックスの羽ばたきを受けよ!鳳翼天翔!!」

 

アリシア「コロナ・ゼロ!!」

 

 一輝は鳳翼天翔を放ち、アリシアはコロナ・ゼロを放ったが、アリシアへの怒りで小宇宙が高まった一輝の鳳翼天翔がコロナ・ゼロを打ち破り、アリシアを吹っ飛ばしたのであった。

 

アリシア「うわああああっ!!」

 

一輝「終わったか」

 

 吹っ飛ばされたアリシアはアルモニカと激突してアルモニカは破損し、アリシアは頭から地面に叩きつけられて倒れた。しかし、ほどなくしてフラフラながらも立ち上がった。

 

一輝「まだ戦えるとでもいうのか?こうなれば…」

 

クリス「もうやめてくれ…もうやめてくれ!一輝、アリシア!」

 

 2人に戦いをやめてほしいクリスの悲痛な叫びが響いた。

 

一輝「クリス…」

 

クリス「一輝、アリシアに止めを刺すのはやめてくれ…。アリシアは…アリシアは融合症例なんだ!」

 

 その事実に一輝はおろか、響達でさえ驚いた。

 

響「融合…症例…?」

 

未来「クリス、それは本当なの!?」

 

クリス「アリシアを診ていた医者から聞いた。アリシアは自分の体内に埋め込まれた完全聖遺物のベルゲルミル本体と融合しているって。あいつの浸食は既にバカを遥かに超えていて、いつ死んでもおかしくないんだよ…」

 

マリア「(ベルゲルミルが出てこないからおかしいと思ったけど、まさかアリシアが自らベルゲルミルとの融合症例になっていたなんて…)」

 

一輝「(アリシアの凍結拳はどこかおかしいと思っていたが、まさか聖遺物の力だったとは…)」

 

アリシア「たとえこの命が尽きようとも、世界中の人間を皆殺しにするまでは」

 

クリス「もうやめてくれ、アリシア!自分の命を削ってまで世界中の人間を皆殺しにするなんておかしいじゃねえか!そんなムダな事はやめてくれ!」

 

 クリスに自分の復讐を否定された事にアリシアは途方もなショックを受けた。

 

アリシア「…ムダな事…?そんな…、クリスまで…クリスまで私を捨てるなんて…」

 

クリス「アリシア、何を言って」

 

アリシア「ずっとクリスを愛していたのに、クリスまで私を捨てて1人にするなんて…。うわ、うわああああっ!!」

 

 そして、アリシアは再び発作に襲われた。

 

クリス「発作!?」

 

アリシア「うわ、うわああああっ!ぐああああっ!!」

 

 しかし、その発作は時々起こる発作ではなかった。発作で苦しむアリシアは暴走した響のように黒いものに覆われたのであった。

 

未来「暴走!?」

 

一輝「だが、響の暴走とは違うようだ」

 

 一輝が言った通り、黒いものに覆われたアリシアは凄まじい冷気と熱気の嵐が起こる中でみるみる姿を変えていき、最終的には炎と氷のドラゴンのような頭を持った巨大な鳥へと姿を変えた。

 

マリア「アリシアが…」

 

瞬「氷と炎の巨大な鳥になった…」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 その反応は本部もキャッチしていた。

 

朔也「ロイバルト北極基地に高エネルギー反応を確認!」

 

あおい「これは…信じられません!奏さん経由で向こうの世界から送られたベルゲルミルの完全体を遥かに超えた強大な反応が検知されています!」

 

弦十郎「何だとっ!?」

 

沙織「完全体のベルゲルミルをも凌駕しているとは…」

 

朔也「どこかのデジタルのモンスターみたいに究極体なのでは…?」

 

あおい「しかも、超高温と超低温が同居しています!こんな事は信じられません!」

 

弦十郎「一体、向こうで何が起こっているんだ…?」

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 巨大な氷と炎の鳥と化したアリシアに一同は衝撃を受けていた。

 

切歌「アリシアが急に巨大な鳥の化け物になるなんて、どうなってるのデスか!?」

 

調「わからない…」

 

マリア「でも、これは恐ろしい事が起こる事に変わりはないわ!」

 

怪鳥「シャアアアアアッ!!」

 

 怪鳥は口から光線を発射した。その光線は壁に命中すると一気に氷結して貫通し、どこかへ飛んでいった。

 

セレナ「どこへ飛んだのでしょうか…?」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 冷凍光線の飛んだ先にS.O.N.Gの本部では衝撃が走っていた。

 

あおい「あの光線の温度は-10000℃です!」

 

沙織「何ですって!?」

 

弦十郎「さっきの光線はどこへ飛んでいった!?」

 

朔也「光線が飛んでいった先は……アフリカ大陸のサハラ砂漠です!しかも、さっきの光線でサハラ砂漠全域が完全な氷の世界に変わってしまいました!」

 

弦十郎「何だと!?」

 

あおい「しかも、超冷凍光線で広い範囲で急に冷やされた結果、大気の状態が不安定になって世界規模で雷を伴った激しい暴風雨が発生しています!」

 

弦十郎「世界規模での暴風雨だと!?これでは、ポセイドンが引き起こした洪水にも匹敵する災害ではないか!」

 

朔也「反応があった時点で通信妨害機能は破壊されたようです」

 

弦十郎「よし、急いで装者達にこの事を伝えるんだ!緒川も至急、基地へ向かってくれ!」

 

慎次「はい!」

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 早速、本部からの連絡が来た。

 

あおい『皆さん、聞こえますか!?』

 

響「どうしたのですか?」

 

朔也『さっき、放たれた冷凍光線でアフリカのサハラ砂漠全域が氷の世界になってしまったんだ!』

 

未来「サハラ砂漠が…氷の世界に!?」

 

あおい『しかも、急激に気温が下がったせいで大気の状態が不安定になって世界規模で暴風が発生しているのよ!』

 

セレナ「世界中でそんな事が…!?」

 

マリア「さっきの鳥の化け物が放った冷凍光線にそんな威力があったなんて…」

 

弦十郎『鳥の化け物だと!?』

 

瞬「兄さんとの戦いの際にアリシアが暴走して、鳥の化け物になってしまったんです」

 

弦十郎『その反応はこっちでも検知した。あと少しでこっちでも把握できる。何とかしてあの鳥の化け物を止めるんだ!』

 

 変わり果てた姉を止めようとクリスは前に出た。

 

クリス「アリシア、もうこれ以上暴れるのはやめてくれ!」

 

 しかし、怪鳥と化したアリシアはクリスにも容赦なく青い炎を吐いてきた。しかし、これは一輝がすぐにクリスを抱えてかわしたのであった。

 

クリス「アリシア、あたしがわかんねえのかよ!?」

 

一輝「もうアリシアは言葉の通じない、完全な化け物と化したようだ。ならば俺のとる手段は一つ、奴を倒すだけだ!」

 

クリス「一輝、アリシアを殺すのはやめてくれ!」

 

一輝「そのままにしておけば、化け物と化した奴は世界中の人間を皆殺しにするのだぞ!そうやって手をこまねいているのなら、俺は奴の息の根を止める!それが嫌なら、お前自身がアリシアを救うための方法を考え、救ってみせろ!」

 

 クリスを突き放し、一輝は怪鳥へ向かっていった。

 

一輝「行くぞ、鳳翼天翔!」

 

 一輝は怪鳥目掛けて鳳翼天翔を放ったが、怪鳥は羽ばたきによる青い炎の熱風だけで鳳翼天翔を破り、一輝を吹っ飛ばした。

 

一輝「ぐああああっ!」

 

瞬「兄さん!」

 

 吹っ飛ばされた一輝は地面に激突した。

 

一輝「口からの炎や冷凍光線だけでなく、羽ばたきまでもが奴の武器とは…!」

 

 ちょうどその時に星矢達も駆け付けた。

 

星矢「一輝、みんな、大丈夫か!?」

 

氷河「それより何だ!?あの巨大な鳥の化け物は!」

 

一輝「あの巨大な鳥はアリシアの体内の完全聖遺物が暴走し、アリシアが変貌した姿だ」

 

紫龍「だとすると、アリシアは融合症例という事になる!」

 

氷河「しかも、融合している完全聖遺物はベルゲルミルとみて間違いないだろう」

 

星矢「よし、俺達も行くぞ!」

 

クリス「待ってくれ、アリシアを」

 

 星矢達も向かっていった。

 

星矢「アトミックサンダーボルト!」

 

紫龍「廬山昇龍覇!」

 

氷河「オーロラエクスキューション!」

 

 星矢達は必殺技を放ったが、怪鳥は炎と氷の相反するエネルギーを組み合わせた破壊光線を発射して一蹴し、星矢達を吹っ飛ばした。

 

星矢達「うわあああっ!」

 

 吹っ飛ばされ、地面に激突した星矢達だが、すぐに起き上がった。

 

星矢「なんの、勝負はまだ始まったばかりだ!」

 

紫龍「たとえこの身が砕け散ろうとも」

 

氷河「世界中の人間を皆殺しになんかさせはしない!」

 

 暴走状態になり、炎と氷の怪鳥と化したアリシアには星矢達は大苦戦したのであった。

 

クリス「ちくしょう…、ちくしょう!!アリシアを止められないばかりか、何もできないなんて…ちくしょう!!」

 

 アリシアが暴走して怪物と化した挙句、自分の事もわからなくなり、何もできない自分にクリスは涙を流していた。

 

セレナ「マリア姉さん、どうすれば止められるの?」

 

マリア「わからない…(これまでポセイドンやハーデスといった神さえ倒した星矢達が奇跡を起こせば、怪物と化したアリシアを倒す事はできるかも知れない。だけど…、それだとクリスは両親に続き、姉を失って家族を失う悲しみを再び味わう事になる…。助ける方法はないの…?)」

 

 泣いているクリスの元へ響と未来が来た。

 

響「クリスちゃん、アリシアさんを助けよう!」

 

クリス「助けるって言ったって、あたし達には何もできねえし、アリシアはもうあたしの事がわからねえんだよ!」

 

未来「だからと言って放っておけば、星矢さん達がアリシアを殺さないといけなくなるのよ!それはクリスも嫌なんでしょ?」

 

クリス「嫌に決まってるだろ!だけど…だけど……」

 

響「私達1人1人の力は弱くても、力を合わせればきっとアリシアさんを救う事はできる!」

 

未来「一輝さんが言ったはずだよ、『お前が救う方法を考え、救ってみせろ』って。だからクリス、立ち上がってアリシアを助けよう!」

 

クリス「言葉も通じなくなったアリシアを救う方法なんて…」

 

???「それはお前の歌だけだ、雪音!」

 

 遅れて翼と奏も来た。

 

響「翼さん、奏さん!」

 

奏「アルカノイズの数が多くて遅くなってすまねえ!」

 

翼「たとえ言葉が通じなくても歌がある。歌は世界を変えられる!無限の力があるんだ!」

 

クリス「先輩…」

 

奏「この世界のアリシアはあたしらとは接点がないから、あたし達の歌では救えない」

 

翼「だからこそ、この世界のアリシアが強く執着している雪音の歌でなければ救えないんだ!雪音、アリシアに歌を聴かせて救うんだ!」

 

クリス「あたしの歌で…、アリシアを…?」

 

 不安そうにしているクリスの手を響と未来が握ってくれた。

 

響「1人で唄うのが不安なら、私達も一緒に唄うよ」

 

未来「それだけじゃないよ、暴風雨で不安になっている人達の心も救わないと!」

 

 そして、マリア達も来た。

 

マリア「クリス、私達も手伝うわ」

 

セレナ「私と暁さんと月読さんはアリシアの事は許せないのですけど…、家族を失う悲しみを雪音さんにさせたくないんです」

 

切歌「化け物と化したアリシアを殺したら、先輩が悲しむのデス…」

 

調「だから、私達も救ってあげたい」

 

クリス「……みんな、ありがとう。あたし、アリシアを、世界中の人を救うために唄う!」

 

 響達に励まされ、クリスは立ち上がり、唄う決意をしたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は一輝とアリシアの戦いとアリシアの暴走を描きました。
フェニックスとベヌウの不死鳥対決は前々から描きたかった戦いであり、一輝とアリシアの戦いはミーメ戦とカーサ戦を合わせたような感じで進めました。
どこかのデジタルのモンスターというのは、デジモンのネタであり、究極体もデジモンのネタです。
アリシアの体内のベルゲルミルが暴走し、アリシアが変貌した巨大怪鳥はスイートプリキュアのノイズの完全復活したドラゴンっぽい姿が元ネタであり、スイプリのノイズ戦とは逆で巨大怪物形態が最後の形態となっています。
星矢達が怪物と化したアリシアに大苦戦しているのは、メタ的な事を言えばアリシアは救うべき敵であり、倒してはいけない敵であるからです。
次の話はクリスがアリシアを救うために唄い、その歌が思わぬ奇跡を起こします。

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