セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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85話 世界に響く平和の歌

日本

 

 世界規模の暴風雨は日本でも起こっていた。

 

弓美「ちょっと、なんて暴風雨よ!天気予報では晴れだったじゃない!」

 

創世「それだけど、さっきスマホで世界規模で暴風雨が発生してるって緊急メールが届いたの!」

 

詩織「それだと、数年前の大洪水のような事が起こっているのでしょうか?」

 

弓美「勘弁してほしいわ!あんなアニメみたいな事、また起こってほしくなかったのに!」

 

詩織「こんな時でも…」

 

創世「世界の命運はビッキー達に託されたみたい…」

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 クリスはアリシアを、世界中の人々を救うために唄う決意を固めたのであった。そこへ、慎次が来た。

 

翼「緒川さん!」

 

響「緒川さん、早速衛星の回線を使ってクリスちゃんの歌を」

 

慎次「そうしたかったのですが、怪物が出現した際にその装置が破損してそれができないんです!」

 

調「そんな!」

 

奏「くそっ、あたし達の時のようにはいかないのか…!」

 

 世界中へ歌を届ける手段がない中、未来はある事を思い出していた。

 

未来「クリス、歌姫型ギアで世界中の人々に歌を届ける事って、できるの?」

 

クリス「歌姫型ギア?急にそれがどうしたんだよ」

 

エルフナイン『まだ歌姫型ギアは機能の全貌がわかっていないんです。それができるのかどうか…』

 

未来「私と沙織さんと美衣さんは歌姫型ギアでクリス達が唄っている際に心に直接響いた感じで歌が聞こえたの。きっと、世界中の人々の心に直接歌を届ける事ができるかも知れない!」

 

エルフナイン『しかし…』

 

星矢「可能性があるのなら、それに賭けてみてもいいんじゃねえのか?そうだろ?弦十郎、沙織さん」

 

弦十郎『確かに、可能性があるのならばやる価値はある』

 

沙織『私もそうすべきです』

 

一輝「クリス、やると決めたのならば、歌で世界を、アリシアを救うのをやってみせろ!」

 

クリス「星矢、一輝…」

 

紫龍「クリス達が唄っている間、俺達が時間を稼ぐ!」

 

氷河「みんな、呼んでない客も来たようだ」

 

 氷河の呼んでない客というのは、衝撃で目覚め、共食いをして成長し、出てきたネフィリムやアイスネフィリムの群れであった。

 

奏「ここでネフィリムやアイスネフィリムまで出てくるのか…」

 

翼「ならば、私と奏も奴等の相手をする!」

 

瞬「だからクリス、君は世界中の人達に歌を届けるんだ!」

 

奏「ダンナ、聞こえてるなら、本部からこっちの機械を操作してとびっきりの演出はできないのか?」

 

弦十郎『こっちでやってみる』

 

 翼はイグナイトモジュールを、奏はブリーシンガメンを発動させ、アイスネフィリムとネフィリムの群れに向かい、星矢達は怪鳥に向かっていった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 S.O.N.G本部でもロイバルト北極基地のホールの部屋の機械を遠隔操作できないのか、朔也が試していた。

 

弦十郎「どうだ?藤尭。基地のホールの部屋の遠隔操作は可能か?」

 

朔也「はい、さっきハッキングに成功し、こちらでそのホールの部屋の機械類の操作がこちらで可能になりました」

 

慎次『細かい操作は僕に任せてください』

 

弦十郎「よし、クリス君の世界を救うライブを演出し、何としても成功させるぞ!クリス君の歌に世界の命運が託されたのだからな!」

 

朔也「任せてください!」

 

沙織「星矢達は何としても時間を稼いでください」

 

星矢『言われるまでもないぜ、沙織さん!』

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 星矢達が怪鳥と化したアリシアと戦い、翼と奏がネフィリムとアイスネフィリムの群れと戦う中、ホールとなっていた部屋のステージにクリス達は立った。

 

クリス「バカ達も唄うのか?」

 

響「一緒に唄うって言ったよ。それに、私と未来も明確な歌姫のイメージがあるんだ」

 

未来「明確な歌姫のイメージの手本となる人が傍にいるからね」

 

 その手本となる人とは、ツヴァイウイングの翼と奏の2人であった。

 

マリア「セレナも明確なイメージはある?」

 

セレナ「私にもあるから、絶対にできるよ」

 

切歌「武者ノイズの世界ではできなかった、クリス先輩と一緒に唄うライブができるのデス!」

 

調「でも、このライブの主役はあくまでもクリス先輩だよ」

 

クリス「お前ら、行くぞ!」

 

 7人揃って歌姫のイメージを頭の中に描きながら、歌姫型ギアに変化させたのであった。クリスと切歌、調は前と同じ結果だが、響とマリアは色以外は奏の、未来とセレナは色以外は翼のステージ衣装となった。

 

響「おぉ、私とマリアさんは色以外は奏さんとそっくりの衣装になったよ!」

 

未来「私とセレナちゃんは色以外は翼さんとお揃いだよ」

 

マリア「さあ、唄うわよ!そして、この世界とアリシアを救うライブの主役はクリス、あなたなのよ!」

 

クリス「ああ、わかってる!」

 

切歌「司令、演出をお願いするデス!」

 

弦十郎『ああ、藤尭がやってくれるぞ!』

 

調「頼みます!」

 

クリス「7人用にした先輩達の歌、唄わせてもらうぞ!」

 

翼「ああ。雪音の歌声、世界中の人々に響かせるんだ!」

 

 S.O.N.G本部からの遠隔操作でまず、ステージの照明が消えてから、慎次が現場でステージの照明の細かい操作を行い、逆光のフリューゲルを7人編成に仕上げた曲、『七色のフリューゲル』を唄い出した。一方の星矢達は怪鳥の猛攻に晒されながらも、屈してはいなかった。

 

氷河「体内のベルゲルミルが暴走して、鳥の化け物と化したアリシアは途方もなく強い…!」

 

紫龍「もはや、完全体を凌駕して究極体とも言うべきだ…!だが、このような逆境は何度も潜り抜けてきた!」

 

一輝「友や仲間、そして世界中の人々を護るために」

 

星矢「俺達は負けられないんだ!」

 

 意気込む星矢達に歌声が届いたのであった。

 

瞬「兄さん、みんな、クリス達が唄い出したみたいだよ!何だか、この歌声は普通じゃなくて、ソレントの笛の音のように耳を塞いでも聞こえてくるようなんだ」

 

一輝「そうだな。確かに、この歌声は直接心に響いてくるようだ」

 

 歌声が響いた途端、怪鳥と化したアリシアは苦しみだした。

 

アリシア『や、やめろ!私は、私は歌が、歌が大嫌いだ!歌を聴かせるなぁ~~~~っ!!』

 

氷河「さっき、アリシアの声がしなかったか?」

 

紫龍「確かにしたぞ」

 

クリス「(以前のあたしと同じような事を…)」

 

一輝「唄うのをやめるな、唄い続けろ!」

 

クリス「あ、ああ!」

 

 アリシアが言った「歌は大嫌いだ」に反応したクリスは思わず唄うのを止めてしまったが、一輝に一喝されて唄い続けた。

 

アリシア『歌は嫌いだ、耳障りだ!消えろ~!』

 

 怪鳥は狙いをクリス達に定め、青い炎を口から吐いた。

 

調「こっちに発射した!?」

 

切歌「これだと」

 

 しかし、壁のようなものに反射されたのであった。その壁、クリスタルウォールを作り出したのはムウであった。

 

ムウ「間一髪で間に合いましたね」

 

星矢「ムウ!」

 

紫龍「おいしい所で現れたな」

 

ムウ「アイスネフィリムの完全体は片付いたので、こっちに来ました。装者達は私が護ります。なので、あなた達は戦闘に専念してください」

 

氷河「そうさせてもらう!」

 

 装者達の防衛はムウに任せ、星矢達は再び怪鳥と化したアリシアへ向かっていった。クリス達が唄い出す前は星矢達は怪鳥に圧倒されていたが、唄い出してからは次第に力が湧いてくるような感覚になっていた。

 

星矢「力が…湧いてくる…!」

 

紫龍「並行世界でのアリシア一味との戦いの時と同じだ」

 

氷河「歌が…、俺達に力をくれる…!」

 

瞬「例え逆境に追い込まれても、何度でも立ち上がれる!」

 

一輝「今まで歌とは無縁だったが、歌も悪くないものだな」

 

 更に小宇宙が燃え上がり、星矢達は向かっていった。翼と奏の方もクリス達の歌に感心していた。

 

奏「今度はあたしらが戦う力をもらってる感じだな」

 

翼「そうだね、奏。雪音の歌は力をくれる」

 

奏「絶対にあのライブを成功させないとな!」

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 クリス達の歌声は本部にも届いていた。

 

朔也「司令、歌声が聞こえてきますよ!」

 

あおい「しかも、何だか耳を塞いでも心に直接響くような感じです」

 

美衣「この現象は前にも私と未来さんと沙織様は経験しました」

 

弦十郎「心に直接響く歌声だと?」

 

エルフナイン「まだ確定したわけではないのですが、歌姫型ギアの本当の力は、歌声をテレパシーにしてそれを伝えるのではないでしょうか?」

 

沙織「そう考えるのが妥当だと思います」

 

 

 

バルベルデ

 

 バルベルデでも暴風雨が発生しており、ステファンの村では川の氾濫により、村人たちは避難していた。

 

ソーニャ「こんな暴風雨、いつまで続くのかしら…?」

 

ステファン「いつまでも続く暴風雨なんかがあるわけがない、きっと必ず終わるが来る!」

 

 避難している最中、逃げ遅れて今にも氾濫している川の激流で決壊しそうな橋に取り残された子供を見つけた。

 

村人A「誰か、あの子を助けてください!」

 

村人B「助けてあげたいのはやまやまだが…」

 

ステファン「俺が行きます!」

 

ソーニャ「ちょっと、ステファン!」

 

 暴風雨の中でもステファンは怯まずに決壊しそうな橋を渡り、子供のところへ来た。

 

ステファン「泣くなよ。俺が手を引くから、急いで橋を渡るぞ!」

 

 子供の手を引き、対岸まで子供を送ったステファンだったが、自身が対岸に足を踏み込む直前に橋が決壊した。決壊する前にステファンはかろうじて橋の一部に掴まれたものの、激流の勢いは激しいため、ステファン1人ではとても川から出られない状態だった。

 

ステファン「うわあああっ!」

 

ソーニャ「ステファン!」

 

 自然の猛威は途方もないため、あっという間にステファンの体力は限界に近づき、大人達が間に合うかどうかわからなくなっていた。

 

ステファン「(なんて激流なんだ…!?このままじゃ俺、流されてしまう…)」

 

 ステファンが諦めかけたその時、心に直接響く歌声が聞こえてきた。

 

ステファン「(何だ?この歌声は…。こんな状況でも希望が湧いてくる…!)」

 

ソーニャ「ステファン、今引き上げるわよ!」

 

 聞こえてきた歌声で何とかステファンは持ち堪え、ソーニャと大人達数人に引き上げてもらったのであった。

 

ソーニャ「なんて無茶をするのよ、ステファン!」

 

ステファン「それより姉ちゃん、みんな、歌声が聞こえてこない?」

 

ソーニャ「(言われてみれば、歌声が聞こえる…。この声って…)」

 

 ソーニャには聞き覚えのある声であった。

 

村人A「なんて歌声なんだ?」

 

村人B「こんな中でも元気や勇気に希望が湧いてくる…!」

 

 クリス達の歌で勇気付けられた人達から、奏の世界のブラックアウト事件の時のようにフォニックゲインが溢れたのであった。

 

 

 

日本

 

 日本でも、クリス達の歌声はテレパシーという形で届いていた。

 

創世「この歌声、ビッキー達のじゃない?」

 

詩織「心に直接響く感じですわ」

 

弓美「まるで、アニメとかに出てくるテレパシーみたいよ!この歌声を聞いてると、あんな暴風雨の中でも勇気や希望が湧いてくるわ!」

 

 日本に限らず、世界中の人達がクリス達の歌によって暴風雨の中でも勇気付けられ、世界のあちこちからフォニックゲインが溢れた。

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 フォニックゲインが溢れている様子は星矢達も感じ取っていた。そして、歌のボルテージが上がるのと同時にフォニックゲインも高まっていった。

 

瞬「これは…」

 

奏「あの時と同じだ…!」

 

翼「世界中からフォニックゲインが溢れている…!」

 

アリシア『な、何だ!?この異様なフォニックゲインは!?あり得ない、あり得ないあり得ない!腐った人間共からこんな希望に溢れた力が湧いてくるはずがない!!』

 

星矢「わからないのか、アリシア!人間は無限の可能性を秘めているんだ!」

 

紫龍「そして、歌は世界を変える力を持っている!妹のクリスがそれをやっているのが理解できないのか!?」

 

アリシア『黙れ黙れ!これは嘘だ、まやかしだ!』

 

 憎悪と聖遺物の破壊衝動に完全に憑りつかれたアリシアはそれの赴くがままに暴れ続けたのであった。

 

 

 

S.O.N.G潜水艦

 

 そして、フォニックゲインの高まりとともに装者達からある反応が検知されたのであった。

 

あおい「フォニックゲインの上昇と共に装者達からフォニックゲインとは別のエネルギー反応を検知しました!」

 

朔也「この反応は…小宇宙です!」

 

弦十郎「小宇宙だと!?」

 

沙織「このタイミングで小宇宙が目覚めたのであれば…」

 

エルフナイン「もしかすると、コスモドライブが使えるかも知れません」

 

 

 

ロイバルト北極基地

 

 フォニックゲインの高まりに反応したためか、唄っているクリス達や翼と奏の小宇宙が目覚めたのであった。

 

奏「な、何だ!?この感じた事もない湧いてくる力は?」

 

セレナ「こんな力が溢れたのは初めてです。まるで、宇宙を感じるような…」

 

マリア「これが小宇宙よ」

 

セレナ「小宇宙って、一輝さん達が使っている力ですよね?私達にもあるんですか?」

 

調「そうだよ、セレナ。小宇宙は人間の誰もが持っている潜在的な力。聖闘士はそれを引き出すための訓練をして、引き出しているの」

 

切歌「あたし達は聖闘士と違って自由に使えないけど、以前、目覚めた事があったのデス!」

 

奏「こりゃあ、驚きだな」

 

 そこへ、エルフナインから通信が入った。

 

エルフナイン『皆さん、小宇宙が目覚めたのであれば、シンフォギアの新しい機能を使う事ができます!』

 

響「新しい機能?」

 

クリス「いつの間にそんなもんを組み込んだんだよ!」

 

未来「どうすればその機能を使えるの?」

 

響「フォニックゲインと一緒にみんなの小宇宙を束ねれば使えると思うよ。マリアさん、セレナちゃん!」

 

マリア「ええ。調律したフォニックゲインの再構築は私とセレナに任せておきなさい!」

 

セレナ「マリア姉さん、小宇宙はどうすれば…」

 

マリア「大丈夫よ、セレナ。小宇宙は理屈で考えるものじゃない、感じたままに使う力よ。さあ、行くわよ!」

 

セレナ「うん!」

 

 響を中心に未来、マリア姉妹、切歌、調は手を繋いだ。

 

奏「あたしらも繋ごうか」

 

翼「うん。雪音も繋ごう」

 

クリス「ああ!」

 

 クリスと奏と翼も手を繋いだ。

 

響達「はああああああっ!!」

 

 響達は膨大なフォニックゲインだけでなく、心を重ねて小宇宙を燃やした。すると、燃え上がる小宇宙に変化が生じた。

 

ムウ「これは…?今まで見た事もない小宇宙の変化だ……。もしや、これがΩの片鱗…」

 

 そして、それに呼応するかのように装者達のギアが変化したのであった。

 

マリア「これって…」

 

 響のガングニールは乙女座の聖衣と融合したような黄金のギアとなり、未来の神獣鏡は琴座の聖衣と融合して紫と銀色のギアに、クリスはイチイバルと冠座の聖衣が融合したギアに、翼と奏はそれぞれのギアと聖衣が融合して片方の羽だけ大きいギアに、マリアはアガートラームとカシオペア座の聖衣が融合したギアに、セレナはアガートラームとアンドロメダ座の聖衣が融合したギアに、切歌と調はそれぞれのギアと聖衣が融合したギアとなった。

 

クリス「まるで…、エクスドライブモードのシンフォギアと聖衣が合わさったようなもんだ…」

 

エルフナイン『これこそが、エクスドライブを超えた新たなる決戦機能、コスモドライブモードです』

 

響「いつの間にそんな機能を!?」

 

未来「でも、この力があればアリシアを救えるかも知れない!」

 

ムウ「ならば、その力を使ってアリシアを助け出すのです」

 

 再び目覚めた響達の小宇宙を戦っている最中の星矢達と怪鳥と化したアリシアは感じ取ったのであった。

 

星矢「これは、あの時の響達の小宇宙だ!」

 

響「私達と星矢さん達の頑張りで奇跡を起こせました!」

 

クリス「後はあたし達がアリシアを救う!」

 

 コスモドライブを発動させたクリス達が前に出てきた。

 

アリシア『何だ!?そのシンフォギアは!?や、やめろ!私をその光で照らすなぁ!』

 

響「響き合う心と心は!」

 

未来「みんなで紡ぐ一つの歌は!」

 

響と未来「無限の力を引き出す事ができるんだぁあーーっ!!」

 

 響のパンチと未来のビームに怪鳥は大きく吹っ飛ばされた。

 

アリシア『ぐああああっ!わ、私が圧倒されるだと!?一体、何なんだ!?この異常なフォニックゲインと小宇宙は!?これがシンフォギアの…奇跡の力だというのか!?認めてなるものか…、奇跡も、愛も、希望も全て!ずっと愛していたのにクリスまでも私を捨てたこの世界にそんなものが存在するものか!!みんな殺してやる、殺してやる!!』

 

クリス「アリシア…あたしはお前を嫌いになんかなってねえよ!もうこれ以上、お前に人を殺してほしくないんだよ!昔の歌が大好きな優しいアリシアに戻ってくれ!」

 

アリシア『ああああっ!歌なんか嫌いだ、大嫌いだ!私を捨てたクリスも大嫌いだ!人間はみんな殺してやる!こんな世界も全て壊す、壊す!』

 

調「この…わからず屋!!」

 

 暴走する憎しみと破壊衝動に呑まれ、身勝手な事ばかり言うアリシアに激怒した調と切歌は合体技で怪鳥を吹っ飛ばした。

 

切歌「クリス先輩はアリシアの事が大好きなのデス!なんでアリシアはクリス先輩の気持ちがわからないのデスか!?」

 

アリシア『黙れ、黙れ黙れ!!家族と楽団のみんなを失った私の悲しみが、孤独が、それを奪い、私を捨てた奴等への怒りが、憎しみが貴様らにわかってたまるか!!』

 

クリス「(アリシア…お前は家族と楽団のみんなを失い、悲しみを受け止めてくれる人と出会えなかったせいで寂しがり屋なところがここまで歪んでしまってたのか…)」

 

マリア「いいえ、私達にも家族を失った悲しみは痛い程わかるわ!」

 

セレナ「ですが、例え悲しくても前を向いて生きていかないといけないんです!」

 

アリシア『ふざけるな!!この悲しみと怒り、憎しみが消えるものか!!それが消えるときは、人間共を皆殺しにした時だけだ!!』

 

クリス「だったら、そうなる前にあたしらがそれを受け止める!」

 

 暴走して小宇宙を燃やす怪鳥に対し、クリスは七色のフリューゲルとは別の歌を唄い出した。

 

瞬「この歌は…?」

 

一輝「今まで聞いた事もない歌だ。だが、確かな力強さを感じる…」

 

慎次「皆さん、衛星回線へ流す制御装置の応急処置が終わりました!」

 

 タイミングよく制御装置の応急処置が終わったため、クリスが新たに唄い出した歌が世界中に流され、さらに人々が反応したのであった。

 

アリシア『この歌は…!』

 

クリス「そうだ、この歌はあたしが子供の頃、アリシアが慰めるために唄ってくれた歌だ!あたしはパパとママ、そしてアリシアの家族と楽団のみんなの想いを、夢を受け継いで唄う!歌で世界を平和にするために!そして……アリシア、お前を救うために!!」

 

 いざ、アリシアを救うために戦おうとしたクリス達であったが、突如としてネフィリム完全体よりも二回り大きい半分は赤、もう半分は青のネフィリムや完全体のネフィリムと完全体のアイスネフィリムの大群が出てきたのであった。

 

響「完全体のネフィリムがいっぱい出たよ!」

 

紫龍「ネフィリムは俺達に任せて、お前達はアリシアを救う事に専念しろ!」

 

 すぐに怪鳥と化したアリシアは羽ばたいて基地を破壊して外へ出たため、クリス達はそれを追いかけた。

 

翼「奏は行かないの?」

 

奏「あたしらはあたしの世界で存分に活躍したからな。だから、この世界のアリシアの事は任せて、あたしらはネフィリムの群れを何とかするぞ!」

 

翼「そうだね!」

 

 残ったメンバーはネフィリムの群れと交戦した。

 

 

 

北極

 

 雪と氷に覆われた北極海で怪鳥とクリス達の激戦は繰り広げられていた。

 

アリシア『死ねぇ!!』

 

 怪鳥は-10000℃の冷凍光線を放ったが、クリス達は回避し、響が怪鳥の攻撃後の隙を突く形で突っ込んで来た。

 

響「オーム!」

 

 パイルバンカーの要領で腕のアーマーを引き、小宇宙を高めた。

 

響「天魔降伏!!」

 

 高めた小宇宙を拳に込め、響は怪鳥にパンチを打ち込んだ。その溜められたすさまじい衝撃で怪鳥は盛大に吹っ飛ばされた。

 

アリシア『ぐああああっ!!』

 

 氷の大地をゴリゴリと削りながら吹っ飛ばされたが、すぐに立ち上がって羽ばたいた。

 

アリシア『舐めるなぁ!』

 

 怪鳥は反撃のために羽ばたき、無数の氷柱を装者達に向けて飛ばしてきた。

 

未来「クリス!」

 

クリス「ああ!」

 

響「カーン!」

 

セレナ「ローリングディフェンス!」

 

 クリスと未来は互いのギアの力を合わせて反射するリフレクターで、響はカーンで氷柱を跳ね返し、セレナはエクスドライブ時のバインダーと合体したネビュラチェーンで自分やマリア達を護った。

 

調「行くよ、切ちゃん!」

 

切歌「オッケーデス!」

 

 今度は切歌と調の合体技、禁合β式・Zあ破刃惨無uうnNNを放ったが、即座に怪鳥は青い炎で相殺させた。

 

アリシア『そんな技で』

 

 しかし、怪鳥はネビュラチェーンと竪琴の弦に縛られたのであった。

 

セレナ「隙だらけです!」

 

未来「ストリンガーレクイエム!」

 

 琴座の聖衣は魔を祓う神獣鏡との相性もよいためか、未来が奏でるストリンガーレクイエムは着々と縛っている怪鳥にダメージを与えていった。

 

マリア「アリシアが動けないうちに巨大な一発を入れるわよ、クリス!」

 

クリス「ああ!いっちょ、持っていけ!」

 

 クリスとマリアは合体技の巨大なビーム砲でビームを発射し、怪鳥を吹っ飛ばした。

 

アリシア『うわあああっ!』

 

 即座に未来は竪琴を左肩にかけ、右肩にかけていたアームドギアを手にしてから鏡に変形させて怪鳥の背後目掛けて投げ、その鏡から放つ技、天光を放った。

 

アリシア『ぐあああっ!』

 

 流石に小宇宙が込められた神獣鏡のギアの攻撃は怪鳥にもかなり効いたのであった。

 

アリシア『おのれ、おのれぇ!!』

 

マリア「私達の攻撃の中では神獣鏡がもっともアリシアに効いているようね!」

 

アリシア『人間共は目障りだ!歌も耳障りだ!そんなのは全て消してやる!!』

 

 暴走状態である上にヤケになったせいで怪鳥は超冷凍光線や青い炎を吐きまくった。

 

 

 

宇宙

 

 怪鳥とクリス達の戦いは熾烈を極め、いつの間にか宇宙へと出ていた。

 

調「生半可な攻撃じゃ、再生してしまう!」

 

切歌「それに、普通の攻撃ではアリシアは救えないのデス!」

 

未来「だったら、アリシアの体内のベルゲルミルを神獣鏡で完全に消滅させるしかないよ!(そう、小宇宙で神獣鏡の力を無力化しているのなら、シャカさんが言った通りにそれ以上の小宇宙を込めれば完全にベルゲルミルを消滅させる事ができる!それに、神獣鏡が魔を祓うのなら、邪悪な小宇宙にも効果はあるはず!)」

 

 未来は十二宮での訓練の際、シャカから言われた事を思い出していた。

 

マリア「ええ、それしかないわ!」

 

響「私達の小宇宙を束ねれば、あの状態のアリシアさんを救う事ができる!」

 

クリス「アリシア、今からお前を憎しみから解き放つ!」

 

アリシア『ほざけ!何もかも消し飛ばしてやる!!』

 

 怪鳥は超高温と超低温を組み合わせた消滅光線をフルパワーで発射しようとし、響と未来とクリスが中心になって一同は手を繋ぎ、小宇宙とフォニックゲインを束ね、未来のアームドギアが中核となって各装者のアームドギアが合体し、巨大なビーム砲となった。

 

アリシア『消し飛べ~~~ッ!!』

 

未来「アリシア、あなたを怒りと悲しみと憎しみから解放するっ!!」

 

 怪鳥はフルパワーの消滅光線を放ち、未来は仲間達と力を合わせて放つ技、『創世』をビーム砲から放った。消滅光線は神獣鏡の聖遺物殺しの特性を持つビームの創世とも競り合っていたのであった。

 

クリス達「はああああああっ!!」

 

 クリス達が力を入れ続けると、創世が消滅光線を押していき、怪鳥は創世に呑まれていった。

 

アリシア『わ、私が負けるのはゴキブリが遺していった遺産のせいだったとでもいうのか!?こ、こんな事が!こんな事がぁああああっ!!』

 

 怪鳥はそのまま創世を受け、地球へ落下していった。

 

未来「クリス、そのまま行ってアリシアを助けて!」

 

クリス「当たり前だろ!血は繋がってなくても、アリシアはあたしの姉さんなんだ!」

 

 すぐにクリスは落下していった怪鳥を追いかけた。

 

調と調「最速で!」

 

マリアとセレナ「最短で!!」

 

響と未来「真っ直ぐに!!」

 

響達「一直線にぃいいいいっ!!!」

 

 言葉通り、クリスは最速で最短で真っ直ぐに、一直線に怪鳥を追って大気圏に突入した。

 

 

 

上空

 

 創世を受けた怪鳥は体が分解されて元のアリシアに戻り、アリシアの体内のベルゲルミルはおろか、纏っていたベヌウの冥衣までもが分解されて落下していた。

 

アリシア「消えていく…、私の怒りが…憎しみが……」

 

???「アリシア~~~ッ!!!」

 

 落下する自分の名を呼んだのは追いかけてきたクリスであった。

 

クリス「アリシア、お前はあたしに拒絶されたと思ってるけど、あたしは今だってお前の事が大好きなんだ!だから…、だから生まれたままの心を隠さないでくれ!そして、勇気を出して手を伸ばしてくれ!」

 

アリシア「クリス……」

 

 クリスが自分の事を嫌いになっていなかった事にアリシアは涙を流し、クリスへ手を伸ばし、クリスはアリシアを抱きしめて北極の氷の大地に降り立ったのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はクリス達の歌が起こした奇跡で響達が新たな決戦機能、コスモドライブを初めて起動させるのと、アリシアとの決着を描きました。
歌姫型ギアの機能は地獄先生ぬ~べ~で出た人魚の速魚の能力を参考に考えました。
コスモドライブ時の姿は各ギアのエクスドライブと聖衣が融合したような感じで、響や未来のギアのコスモドライブは纏っていた聖衣が本編世界では実力者が纏っていたために元の聖衣としての面影も結構残っている感じで、逆にきりしらコンビのコスモドライブはあまり聖衣の面影がない感じです。
最後に装者達が力を合わせて放った技の創世は形はガンダムSEEDで登場したトラウマ最終兵器、ジェネシスをイメージして描きました。
過去の回想でアリシアが唄い、怪物化したアリシアとの戦いの時にクリスが唄った歌は2期目のOPにして、2期最終話の挿入歌にもなったVitalizationです。
次の話は事件終結とその後日談ですが、悲しい結末となります。

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