セイントシンフォギアXD   作:アンドロイドQ14

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88話 浦島伝説

ふらわー

 

 そして、翌朝になった。

 

響「おっはよー、みんな!」

 

未来「おはよう。今日も、よく晴れた1日になりそうだね」

 

クリス「やっと起きたか」

 

調「おはようございます」

 

切歌「おはようデース!」

 

おばちゃん「みんな、起きてきたね」

 

 ふと、クリスはクリシュナがいない事に気付いた。

 

クリス「クリシュナはどうしたんだ?」

 

おばちゃん「あの人なら、先に起きて朝食を食べてから修業してるよ。それじゃ朝食にしようか」

 

切歌「モーニングデス!朝の食事はパワーの源デスよ」

 

調「切ちゃん、テーブルに身を乗り出すのは、はしたないよ」

 

切歌「ご、ごめんなさいデスよ…」

 

響「今日のメニューは……トーストに、ハムエッグ、サラダ!うーん、いい匂い。いっただきまーす!」

 

 早速、響は朝食を食べ始めた。

 

響「おいしい!普段はご飯派だけど、これなら朝はパン派になってもいいかも!」

 

おばちゃん「喜んでもらえて嬉しいよ。たくさんおかわりもあるからね」

 

未来「ありがとうございます」

 

 響の食欲はいつもながら、猛烈だった。

 

切歌「見る間におかずが消えていくデス!?」

 

クリス「誰も盗らないから、もっと落ち着いて食べろ」

 

未来「クリスも、口の周りをこんなに汚して」

 

 未来はクリスの口の周りを拭いたのであった。

 

クリス「あ、ああ、わりー」

 

調「この献立で、そんなに汚すなんて……。さすが先輩……」

 

 そして、朝食は終わった。

 

響「よーし!それじゃあ、さっそく海で遊ぼう!」

 

切歌「賛成デース!」

 

未来「響。昨日の話、忘れたの?」

 

響「じょ、冗談だよ。冗談。やだなー、わかってるって」

 

調「切ちゃんもだよ。私達、まだ心象訓練終わってないんだから」

 

切歌「……あたしも冗談デスよ。もちろんわかってるデス」

 

響「えーと、私と未来とクリシュナさんは、魚人について調べるんだよね」

 

未来「聖遺物や他の何かが絡んでるかも知れないから、伝承とかについても聞き込みしたいよね」

 

クリス「おい。港の方で何か聞こえねーか……?」

 

 クリスが言った通り、何か聞こえた。

 

未来「また誰かの悲鳴!?」

 

響「まさか、また魚人が!?」

 

 

 

浜辺

 

 響達が着いた頃には、先に起きて修業をしていたクリシュナが大半の魚人を全滅させたために響達の出番はあまりなかった。

 

切歌「漁師のおじさん、助けられてよかったデスね」

 

調「うん、お陰でこうして送ってもらえたし……」

 

クリス「感謝されるのは気持ちいいもんだな」

 

切歌「魚人に襲われて、よほど怖かったんデスね。確かに、不気味で生臭い相手デス」

 

クリス「1体1体はともかく、数が集まるとやっかいになるかもな」

 

切歌「気は抜けないデス。でも、あれは一体なんなんデスかね……」

 

調「魚人…人魚っていうのかな?」

 

クリス「その呼び方はちょっとしたくない外見だな……。とにかく、相手が相手だし、お前らもギアの変化を急いだほうがよさそうだ」

 

切歌「もちろん頑張るデス!」

 

調「頑張ります」

 

クリス「それじゃ、心象訓練開始といくか!」

 

 

 

 

 響達は聞き込みをしていた。

 

響「クリスちゃん達は今頃、向こうの島で心象訓練の真っ最中かな」

 

未来「そうだね。一緒に行けなくて残念?」

 

響「未来と一緒だから、全然残念じゃないよ。それに、私達には、ほかにやるべき事があるし」

 

未来「そうだね」

 

クリシュナ「聞き込みの相手だが」

 

 そこへ、おばちゃんが来た。

 

おばちゃん「おや、何の話をしてるんだい?」

 

響「あ、おばちゃん。昨日襲ってきた魚の怪物……これまでに見た事あるかな?」

 

おばちゃん「あたしもこの島でずっとお店をしてるけど、あんな化け物を見たのは、昨日が初めてだよ。島の誰かが見たっていう話も聞いた事ないねえ……」

 

クリシュナ「(とすると、奴等が人前に現れたのは今回が初めてか…)」

 

響「さすがに、そんな簡単には有力な情報とかは入らないかー」

 

未来「今まではなかったってわかっただけでも前進だよ、ね?(……でも、それじゃあ、私達があの場所に行ったのがきっかけで、魚人たちは現れたのかな?)」

 

おばちゃん「ああ、考えてみたら……まるで、浦島伝説みたいだねえ」

 

響「え、浦島伝説って浦島太郎?」

 

おばちゃん「浦島太郎?浦島伝説は浦島伝説だよ。有名なおとぎ話じゃないか」

 

響「え?え?」

 

クリシュナ「(俺もそれについては初耳だな)」

 

未来「あの……ちょっとド忘れしちゃったんです。えっと、浦島伝説ってどんな話でしたっけ……?」

 

おばちゃん「浦島伝説ってのはね。昔々、この島の近くの海に、『裏島』と呼ばれる土地があったんだ。そこには人と異なる種族、魚人族が住んでいて、彼等を治める美しい姫と、姫の住む豪華絢爛な『竜宮城』があった。彼等は人と関わる事なく、人も彼等と関わる事なく、生きる時を住み分け、互いに平和に暮らしていた。けれど、ある時、その姫が人と関わってしまった。嵐の夜に船が難破して、多くの人間が波にのまれて溺れ死んだ。心優しい姫は禁を破って彼等の1人を助け、裏島へ連れて帰った。助けられた男は竜宮城で歓待を受けた。姫のお客であったから、下のも置かないもてなしぶりでね。地上の国では味わえぬ山海の珍味、豪華絢爛な竜宮城の様子に男はすっかり心奪われて、姫の歓待を心いくまで味わった。けれど、ある時、男は陸に帰りたいと申し出たんだ」

 

響「そんなに歓迎されていたのに?」

 

おばちゃん「男はとある国の皇子でね。竜宮城での日々があまりに楽しくて、つい時間が経つのを忘れていたが、国には彼の帰りを待つ民がいる。彼等を捨てるわけにはいかない。どうか、私を陸へと返してほしい。その告白に、姫は3日3晩泣き伏した。」

 

未来「それって、お姫様は……」

 

おばちゃん「そう、姫は男と恋に落ちていた。禁を破って男を迎え入れたが、男が帰ると言い出したなら、命を奪わねばならなかった。悩んだ末に姫は、再び禁を破って男を送り出した。国よりも恋に生きた……女だねえ。姫は別れ際、男に『箱』を授けた。それは竜宮城の秘宝である『玉手箱』だった。けれど、どんな願いでも叶うという宝を人に渡してしまった事で、姫と一族は海の神の怒りに触れてしまったのさ。そして、裏島は姫やそこに住む者達ごと、深い海の底へと沈められてしまった。一説によると、玉手箱の中に封じられてしまったとも言われてるね」

 

未来「不思議な話……」

 

響「何だか人魚姫と浦島太郎を足して割ったような話だよね……」

 

クリシュナ「(海の神というのは、ポセイドン様なのか…?)」

 

おばちゃん「浦島伝説って呼ばれているのは、言い伝えに出てくる裏島が、いつしか浦の島……浦島と呼ばれるようになったからだそうよ」

 

響「願いの叶う玉手箱…まさかね?」

 

未来「……でも、竜宮城ってやっぱりあの時の……?」

 

おばちゃん「それにしても……ただの言い伝えの類だと思ってたのに。まさか、本当にあんなのが現れるなんてねえ……」

 

クリシュナ「心配はいりません、魚人は現れ次第、我々が排除します」

 

おばちゃん「ごくたまにノイズが現れた時はいつもクリシュナさんにお世話になってるからね。2人も頼りにしてるよ」

 

未来「(クリシュナさんって、この辺りでは結構有名人みたい…)」

 

 

 

浜辺

 

 その頃、クリス達は……。

 

クリス「それで、調子はどうだ?」

 

切歌「うーん、やっぱり変わらないデス……」

 

調「難しい……」

 

クリス「まあ、簡単に変化できたら苦労はないよな……」

 

切歌「ところで、クリス先輩はどうやって変わったんデスか?」

 

クリス「あたしは、あの時……その、溺れかけて……、水の中で無我夢中に、自由に泳げたらって思ったら自然と……」

 

調「他の2人はどうだったんですか?」

 

クリス「先輩はあたしと同じタイミングだったな。あとは……あれ?どうだったかなー」

 

切歌「翼さんも溺れたんデスか!?海は怖いデス……」

 

クリス「先輩は、溺れかけたあたしを助けようとしたんだよ。そしたら変化したって感じだったな」

 

切歌「……そういう事だったデスか!謎が解けたデス!」

 

クリス「はあ?」

 

調「何が解けたの、切ちゃん」

 

切歌「水着型ギアを発現させるには、溺れたり助けようとしたりすればいいんデスよ!前へならえデス!」

 

調「それは……どうだろう。あと前へならえだと整列になっちゃうよ?」

 

クリス「先人にならえって言いたいんだろうな…。ま、必死さが足りてないって事なら、わからなくもないかもな」

 

切歌「ということで先輩、ちょっと沖で溺れてきてほしいデス!」

 

クリス「アホか!お断りだ!」

 

切歌「でもでも、そうすればきっと変化する……かもデスよ」

 

調「もう少し冷静になろう、切ちゃん」

 

 

 

 

 響達は夕方まで聞き込みを続けていたが、新たな手掛かりは見つからなかった。

 

響「色々な人に浦島伝説についての話を聞いてみたけど、新しい手掛かりはなかったね」

 

未来「裏島のお姫様と人間の悲しい恋、か」

 

響「私、おとぎ話でも悲しいのは苦手だな」

 

未来「私も。ハッピーエンドの方がいいよね」

 

響「……昨日落ちたあの場所が浦島だったのかな」

 

未来「玉手箱と竜宮城みたいなお城があったから、その可能性はあるかも」

 

クリシュナ「だが、そのお姫様とやらはいなかった。どこへ行ったのやら……」

 

響「うーん……」

 

未来「そろそろ日も暮れてきたし、おばちゃんの家へ戻ろう?クリス達も帰ってくる頃だろうし」

 

響「そうだね」

 

クリシュナ「俺は大物を獲ってくる。可能な限りリクエストには応えよう」

 

 響は獲ってきてほしい魚を言った後、クリシュナはそれを引き受けて海へ行った。そして、ちょうど猫がいるのを見た。

 

未来「あ、見て。猫が顔を洗ってる」

 

響「綺麗な黒猫だね。可愛いー……あっ!?」

 

 響に気付き、黒猫は逃げていった。

 

響「逃げていっちゃった……」

 

未来「響が驚かせるから」

 

響「悪い事しちゃったかな……」

 

未来「そういえば、猫が顔を洗うと、雨が降るって迷信があるよね」

 

響「それ、私も聞いた事ある。えっと、それからその翌日は晴れる、だっけ…あ、今額にポツンて」

 

 迷信通りに雨が降ったのであった。

 

未来「夕立!」

 

響「迷信じゃなかったー!?」

 

未来「すごい勢い……雨宿りできるところを探そう!」

 

響「あそこ…あの軒下へ!」

 

 急いで響と未来はある建物の軒下に来た。

 

響「ふう、助かったー」

 

未来「助かったのかな?服が全部水浸しになっちゃった……」

 

響「あはは……。でも、夏でよかったね。冬だったら凍えてるよ」

 

未来「うん、そうだね」

 

響「……」

 

未来「……雨、なかなかやまないね」

 

響「…うん」

 

未来「……ねえ、響」

 

響「ん?どうかした?」

 

未来「前々から思ってたんだけど……、響、頑張り過ぎじゃないかな」

 

響「ええっ!?突然、何?でも、その……私、宿題とか全然やってないのに!」

 

未来「そうじゃなくて……S.O.N.Gの任務の事とか」

 

響「……でも、S.O.N.Gの任務は誰かを救う任務だから」

 

未来「それは、そうだけど…。たまには……少しだけでいいから、休んでもいいんじゃないかな。その、今度の任務とか」

 

響「今度のって、海外に行くやつだよね」

 

未来「私も正式な装者になったから、私と交代していいんだよ…」

 

響「心配してくれてありがとう。でも、私は大丈夫!」

 

未来「そうじゃ…なくて……」

 

響「うん?」

 

未来「せっかくの夏休みなのに5日間も…」

 

 話している間に雨が止んだのであった。

 

響「あ、晴れたよ!よかったー」

 

未来「……」

 

響「それで、、未来。さっき何か言いかけてなかった?」

 

未来「何でもない。それよりも、早く帰ろう。クリス達の方が先に戻ってるかも」

 

響「うん。ねえ、未来、手繋いでいい?」

 

未来「急にどうしたの?」

 

響「別に、なんとなーく」

 

 響は未来と手を繋いだ。

 

未来「響の手は相変わらず温かいね」

 

響「未来の手は、小さくて、つるつるしてて、気持ちいい」

 

未来「……はあ、まあ、いっか」

 

 途中、悲鳴が聞こえたが、大物を獲ってから帰ってきたクリシュナがその魚人を全滅させたために響と未来の出番はなかった。

 

 

 

ふらわー

 

 一同は帰ってきた。

 

クリシュナ「大物を獲って帰ってくる最中、港を襲う魚人がいた」

 

クリス「また魚人か。あいつらは一体何なんだ…?」

 

調「何なんだろう…」

 

切歌「何なんデスかね……」

 

未来「みんな、夕食ができたみたいだよ」

 

切歌「おーっ!今夜のスペシャルなお夕食はなんデスか!?」

 

おばちゃん「今夜はジャンボハンバーグとクリシュナさんが獲ってきたシイラをふんだんに使ったメニューだよ。あんな大物を獲ってくるなんて思ってもいなかったよ」

 

 シイラを使ったメニューを見て、響達は目を輝かせていた。

 

響「うわー、おいしそう!」

 

未来「こんな大物を獲ってきてくれたなんて!」

 

クリシュナ「響達の食欲を満たすには、マグロとかのような大物でなくてはな」

 

おばちゃん「若いんだから、たくさん食べて栄養つけな。特にあんた達は、あんなのと戦っているんだから、たっぷり食べとかないと。せっかくだし、デザートも用意しようかね。楽しみにしてておくれ」

 

響「おおっ!おばちゃん、太っ腹!」

 

切歌「楽しみデース!」

 

響「いやあ、いいよねー。おいしいお魚と白いご飯、最高の組み合わせだよ!」

 

クリス「パン派になるんじゃなかったのか?」

 

響「ご飯は殿堂入りだから!」

 

調「それで、魚人を追い返した以外で何かありましたか?」

 

未来「うん……浦島伝説の話を聞いてきたよ。もしかしたらあの魚人達に関係あるかも知れないの」

 

クリス「浦島伝説?浦島太郎じゃないのか?」

 

切歌「カメを助けた浦島太郎が老人にされる世知辛いお話しデスよね」

 

クリス「間違っちゃいねーけど、それだとカメが恩を仇で返したみたいになってるぞ……」

 

響「ううん、そうじゃなくて。なんか私達の知ってる浦島太郎とは違うんだよね」

 

 響と未来は浦島伝説を説明した。

 

調「それが、この世界の浦島太郎なんですね……」

 

クリス「お姫様が宝を人間に渡してしまった事で、神の怒りに触れて封じられてしまった。なんつーか、堅苦しいおとぎ話だな」

 

切歌「あたしはお姫様より、願いを叶える玉手箱に興味があるデス!ジャンボハンバーグ100年分をお願いしたいデース!」

 

クリシュナ「食べ終わる前に腐るぞ…」

 

クリス「……ん?そういえば、前に箱がどうとか言ってなかったか?」

 

未来「うん。昨日、私達が地底湖に落ちた時、おかしな箱があったの」

 

調「箱に触れた直後、豪華絢爛なお城が現れたんですよね?」

 

切歌「おおっ!その箱が玉手箱デスよ!きっと!」

 

クリス「早とちりするな。可能性は高いかも知れないけど、まだわからないだろ」

 

調「でも、そうだとしたらどうして魚人が……?」

 

切歌「魚人に会いたいって願ったんじゃないデスか?」

 

未来「流石にそんな事は思わないよ」

 

クリシュナ「(妙だな、あの時、その美しい姫が見当たらなかった…。もしかすると…、何らかの理由で姫は既に外へ出てしまっているのでは…?)」

 

響「何の得があるのかわからないし……。そういえば、心象訓練はうまくいった?それと、何か変わった事とか」

 

クリス「……特におかしな事はない」

 

切歌「嘘はダメデスよ」

 

クリス「嘘なんてついてねー!」

 

調「水着……」

 

クリス「うっ!」

 

響「水着……って何かあったの?」

 

切歌「デス!誰かを助けるという強い想いがあれば、心象変化を起こせるんじゃないかと考えてデスね!」

 

未来「うん」

 

調「切ちゃんのアイデアに、クリス先輩が一肌脱いでくれました」

 

切歌「助けられる役をしてくれる事になったんデス!必要なのはリアリティ、そして臨場感デス!という事で先輩はおっかなびっくり沖へ出て、いざチャレンジと思ったら」

 

響「思ったら?」

 

切歌「突然大きな波がざぶーんしたデス!自然の力は恐ろしいデス……」

 

未来「恐ろしい?」

 

調「その時、クリス先輩の水着がさらわれていったんです」

 

響「おお、さすが、クリスちゃんだね」

 

クリス「なにが、流石なんだよ!」

 

響「でも、さらわれたって…もしかして、上下両方!?」

 

クリス「ぽんぽんすーなわけないだろ!上だけだ!」

 

切歌「そういえば、死んだアリシアもクリス先輩の裸の写真を何枚も遺品として遺していたデス!」

 

調「それに入っていた遺書には、クリス先輩の美しさや胸の大きさをとても褒め称えていたし…」

 

クリス「お前ら…余計なもんまで見てるんじゃねえ!!」

 

 

 

回想

 

 それは、ロイバルト北極基地にいた時の事だった。

 

クリス「あたしの裸の写真を撮らせろだと!?」

 

アリシア「クリスの裸は宝石でさえ輝きを失うほど美しいのよ。だから、写真を撮らせて」

 

クリス「ふざけんな!裸で写真を撮らせろとか、風呂に入る時とかにあたしの胸を揉むとか、長い事会ってねえ間に変な趣味ができちまったのかよ!?」

 

アリシア「誰にも見せないから、クリスの何よりも美しい裸を撮らせて。ね?お願い」

 

 アリシアの頼みには逆らえず、渋々クリスは裸で写真撮影に応じたのであった。アリシアの配下の中には、クリスの裸を見て死にかけた者も少なくなかったが。

 

 

 

クリス「(あんな恥ずかしい写真を見られちまったなんて……)」

 

未来「クリス、落ち着いて」

 

クリス「お、おう……」

 

切歌「あのアクシデントのせいで、助ける以前に驚いて訓練にならなかったデス。なので、明日こそは上手く溺れてほしいデス」

 

調「今度はちゃんと2人で助けようね」

 

クリス「うまく溺れるって何だよ!?もうごめんだからな!」

 

 そして、夕食を食べ終わったのであった。

 

響「おばちゃんのご飯がおいしすぎて、食べすぎちゃった。もうお腹パンパンだよー」

 

未来「ふふ、響のお腹、狸みたいになってる」

 

響「ううー、未来、今はお腹押さえちゃダメ……」

 

未来「でも本当に美味しいご飯だから、食が進み過ぎて困るよね。……油断しないようにしないと」

 

切歌「そ・れ・よ・り・も……せっかくお泊まりで海に来たんデス!ここは遊ばないとダメデス!」

 

響「あ、私も賛成!」

 

未来「響ったら。さっきまでうんうん唸ってたのにもう立ち上がって。現金なんだから……」

 

調「切ちゃん、明日も訓練で朝早いんだよ」

 

切歌「わかってるデース!だから、ちょっとだけ」

 

調「仕方がないなぁ…」

 

クリス「お前ら……その前に何か忘れてないか?」

 

未来「そうだね。響も忘れてる事、あるよね?」

 

 未来が持っているものに響は気付いた。

 

響「み、未来……その手に持っているのは、まさか……」

 

未来「参考書だけど?」

 

調「それは、つまり……」

 

響「しゅ、宿題……」

 

切歌「デデデデース。最強の敵が……」

 

クリス「逃げようったって、そうは問屋が卸すか!」

 

響「ひいぃ、お願い、未来……どうかお慈悲をーっ!」

 

未来「響、ちゃんと宿題はやるって言ったよね」

 

切歌「ああ、さようなら、楽しいお泊り旅行……」

 

調「うん、短い間だったけど、いい思い出になった」

 

クリス「うだうだ言ってないで、とっとと始めるぞ」

 

 宿題をやる響達をクリシュナはただ、静かに見つめるだけだった。

 

 

 

 

 そして、夜になった。

 

響「はあー、外の空気が気持ちーっ!」

 

未来「ノルマご苦労様。この調子で、明日も頑張ろう」

 

響「えーっ!やっぱり明日も、こんな……」

 

未来「毎日きっちり終わらせていかないと、宿題が片付かなくて、また先生に怒られちゃうよ?私達はS.O.N.Gの任務もあって、使える時間が限られているんだから」

 

響「ううー、ノイズよりも夕方の魚人よりも強敵だったよ」

 

未来「そんな強敵でも今日は勝てたじゃない」

 

響「明日も勝てるといいなあ……」

 

未来「響なら大丈夫。それにしても、夜は静かだね。波の音がここまで聞こえる……」

 

響「うーん、風が気持ちいいー!宿題のおかげで、頭が熱暴走寸前だったのが冷えていくよ」

 

未来「もう、大袈裟なんだから!」

 

 2人は浜辺の景色を眺めた。

 

響「うっわーっ!ここからだと、星がすっごく綺麗だね」

 

未来「うん、本当にすごいね。星が今にも落ちてきそう」

 

響「都会だと見られない景色だよね」

 

未来「ちょっとだけ変な事に巻き込まれている気もするけど、響と一緒にキレイな海に来れてよかったって思うよ」

 

響「それは、私も同じだよ。未来と一緒に来たいって思ってたから」

 

未来「ずっと……」

 

響「え?何?」

 

未来「ずっと、こうやって響といられたらなぁ……って」

 

響「いられるに、決まってるよ。私はどこへも行かない。未来だって正式な装者になったから、任務も一緒に行けるんだよ。これも沙織さんのお陰だよ」

 

未来「そうだね。そろそろ寝よっか」

 

 2人はふらわーに戻り、寝る事にした。

 

 

 

ふらわー

 

 そして、翌朝…?

 

響「ふあー、もう朝か、まだ寝足りない気分だよ。今日もいい天気だなあ。未来、おはよー」

 

未来「おはよう、響。起きたなら、顔洗っておいで」

 

響「それじゃあ……」

 

 顔洗いに行こうとした途端、響は何かに気付いた。

 

響「あれ、この時計?」

 

未来「どうしたの?」

 

響「……壊れちゃってるのかな、時計。日付が進んでないんだよね」

 

未来「本当だ。電池が切れちゃったのかな」

 

 そこへ、クリシュナが来た。

 

クリシュナ「電池切れではないようだ」

 

 それは、新たな謎の始まりであった。

 

 




これで今回の話は終わりです。
今回はふらわーのおばちゃんから浦島伝説について語られるところを描いています。
XD本編では箱に閉じ込められた姫と皇子のその後が描かれていないため、独自の解釈で姫と皇子のその後を描こうと思います。
次は今回の話の最後にあった異変について描かれていきます。

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