その日の夜...
ナルトは宿にて正座をさせられていた。
させたのは勿論、香燐と多由也の二人。
「おい、ナルト...」
「はい...」
いかにも不機嫌そうにナルトを呼ぶ香燐に、小さな声で返事をするナルト。
「なんでお前まで、予選落ちしてんだ?」
「.........。」
「ウチらは、元々第三の試験には参加しなねぇ...これは予定通りだよな?」
「...はい。」
「もともとウチは、人数合わせ。この後が本番なんだ。チャクラを温存しとかなきゃなんねぇ以上、あそこで降りとくのは当然だ。香燐は直接戦闘には不向きな能力だし、あまり大っぴらにして良い能力でも無いからな。香燐もあそこで降りとくべきだろ?」
多由也が後を引き継ぐ。
「.........はい。」
「でも、お前は違うよな?大蛇丸様が動くまでの囮。あくまでお前は、本番が始まるまでの引き付け役だろ。お前は受からなきゃならなかったんじゃねえのか?」
「うぅ...」
「はぁ...ナルト...なんでお前は、いつも考えなしに行動するんだ?あんな事すれば、失格になるのは当たり前だろ?」
「そうだ。それにあの時、お前本気で動いたろ。下忍の枠を大きく超えたあの動き...もしかしたら木の葉に警戒されたかも知れねぇ...」
二人は散々ナルトを責めた後、一度深呼吸をするとお互いに頷き合い、
「「それとも、何か?あ、あのヒナタって小娘に、ほ、惚れたのか?」」
全く同じタイミングで、同じ質問をした。
「はっ?いや、そんな訳ねぇってばよ。」
「だったらなんで、危険を犯してまであの娘を助けにいったんだ。」
「そうだ!別にお前が乱入しなくても、木の葉の上忍連中がなんとかしたハズだろ。」
「そ、それは...その...」
ナルトは言いづらそうに一度目を背ける。
やがて、観念したのか、ぼそぼそと話始めた。
「あのネジってヤツの言いぶんが気にくわなかったんだってばよ。」
「えっ?」
「アイツの言い分って要するに運命は変えられねぇから、抗うだけ無駄。だから受け入れるしかねぇって事だろ?」
「まあ、そうだな。」
「けどよ...アイツの言い分通りにしてたら、今の俺はいねえんだってばよ。アイツの言うように、運命を受け入れるしかねぇなら、今も俺は木の葉にいて、木の葉の連中に白い目で見られながら生活してたのかもしんねぇ...」
「.........。」
「俺は、運命ってやつに負ける気はねぇってばよ。だからあの時行動を起こした。そのお陰で、俺は大蛇丸に拾ってもらって、お前達にも出会えた...」
「ナルト...」
「俺は今の俺を気に入ってるってばよ?ただいまを言えば帰ればお帰りと言ってくれる居場所があって、俺を気にかけてくれる仲間達もいる。もちろん香燐や多由也も好きだってばよ?だからアイツの言葉は受け入れられなかったんだってばよ。」
「す、好きってお前、なに言ってんだ、バカ!」
「そうだ、そう言うのはもっとこう...雰囲気のあるところでだな...」
ナルトの言葉を聞いた二人は、何を勘違いしたのか、赤面しながら露骨に慌て出す。
「ふふ...仲が良いのは良いけど、そこまでにしなさい。」
と、そこに第三者の言葉が入る。
「お、大蛇丸様!」
突然の乱入者...それは大蛇丸その人であった。
「さて、三人とも...まずは中忍選抜試験...お疲れ様...」
「............(ゾ~ッ!!!)」
ナルトたちは、てっきり任務半ばで全員が第3の試験に進めなかった事を詰問されると覚悟していた。
しかし、大蛇丸の第一声は労いの言葉だった。
普通に怒られるよりも、恐ろしかった。
「フフッ...そう警戒しなくても良いわよ?今回の貴方たちの役目は、あくまでも木の葉崩しまでの陽動...その意味では、十分その役目は果たしたと私は判断するわ。」
「そ、それじゃあ...」
任務失敗では無い以上、罰もない...と喜ぶナルトたちだったが...
「でも、音隠れの里...それもトップクラスの忍が揃って第3の試験に進めなかった...これは私たち音隠れの里の面子に関わるものよねぇ...」
「うっ...」
「と言うことで、罰を与えるわ。まずナルト...多由也と香燐はともかく、貴方が第3の試験に進めなかったのは予想外なのは確かね...と言うことで、貴方への罰は今後一月の間、ラーメンを食べるの禁止ね?」
「へっ?」
一瞬、何を言われたのか理解できなかったナルト。
「だから、ラーメン禁止...」
「そ、それってば...明日から?」
「いえ...今からよ...」
大量の汗がナルトの身体から発せられる。
ナルトにとって、ラーメンを食べるのは生きる原動力と言って良い。
それが上手いラーメンなら尚、素晴らしい。
この任務での一番の楽しみは一楽のラーメンを食べることだった...
今日はもう無理でも、明日にでも行くつもりだったナルトにとって、大蛇丸から言い渡された罰は、大変酷なものだった。
「の...のぉぉぉぉぉ!!!!」
この世の終わりと言った表情を浮かべ、固まるナルト...
ただのバカである...
そんなナルトを呆れの眼差しで見つめる香燐たち。
「そこで固まってるナルトは放っておくとして、二人にも罰を与えるわ。」
「「はい!」」
チームのミスの責任はチームで取る。
当然、二人にも罰はある。二人とも覚悟を決めていたかのように頷いた。
「二人にはナルトの食事を作ってもらおうかしら...」
「「えっ!?」」
「二人も知っていると思うけど、ナルトの生活力はあの通り...食事は三食カップラーメンとまあ、呆れる私生活を送ってるわけだけど...」
「ほっといてくれってばよ。」
「一月ラーメンを禁止したら、この子...確実に餓死するわね。」
「そ、そんなこと無いってばよ...」
「なら、貴方が出来る料理を言ってみなさい?」
「えっと...カップラーメンとインスタントラーメン...それから...あ~...え~...」
「と、言うわけで二人にはこのまま木の葉崩しの時まで、ナルトの世話を命じるわ。」
「「はい。必ずややり遂げてみせます。」」
ナルトの私生活について、多少は知っていたが、予想を超える惨状に自分が何とかしなければと、強い使命感を感じた二人は強く頷いた。
「さて...じゃあ三人とも...第3の試験までは自由にして良いわ。その代わり、一月後には存分に働いてもらうからそのつもりでいなさい?」
「「「了解!」」」
大蛇丸は、言いたいことを言うとその場から文字通り消えた。
おそらくは影分身だったのだろう。
「...はぁ...緊張したぜ。」
大蛇丸のプレッシャーから解放された多由也は一人ごちる。
四人衆の一角として、音隠れの里でも大蛇丸に近い存在なだけに、余計に緊張したのだろう。
「ナルト...そう落ち込むな...お前の食事はちゃんとウチらが用意するから...」
「うぅっ...香燐...そう言う問題じゃ無いってばよ...こうなったら...一楽だけはなんとしても死守するってばよ。」
「あぁん?そりゃウチの飯は食えないってぇのか?」
「ぎゃあ...耳を引っ張るなってばよ。痛ぇ痛ぇ...ごめんってばぁ...」
ナルトと香燐は漫才を繰り広げていた。
とにかく中忍試験に出ると言う任務は終わった。
そして、本番はこれから...
三人は、一月の間修行に、任務にといつものように過ごし時を待つ。
そして一月後...中忍選抜試験第3の試験が始まろうとしていた。