リクエスト小説 ナルト×香燐の話 完結   作:アーク1

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後編はちょっと長め


後編 その一

ナルトが大蛇丸に拾われてから三年が経過した。

 

今では、ナルトも音隠れの忍として活動している。

 

その過程で多くの仲間たちにも恵まれ、極度の人間不振に陥っていた面影はそこには無かった。

 

それには、ナルトの世話役を任された香燐の努力があったことは間違いない。

 

香燐自身も、その境遇から人を簡単に信用出来るハズも無かったが、元々音隠れの里には、二人の境遇に近い人間が多くいたのだ。

 

人の信用を得るには、まず自分から信用しなければならない。

 

ナルトの為、香燐は自身のトラウマを我慢して相手を信用し、ナルトと共に多くの仲間を作っていったのだ。

 

そして、ナルトはと言えば、ようやく得た自分の居場所を守るため...何よりも香燐を守るために、文字通り必死に修行に明け暮れた。

 

元々、ナルトは忍としての才能はサスケに勝るとも劣らない程にあった。

 

うずまき一族として強大なチャクラを持つ母、そして四代目火影にまで登りつめ、綱手や自来也をして、あれほど忍の才能に恵まれた人間はいないと言わしめた父...

 

二人の子供であるナルトに、才能が無いと考える方が不自然だろう。

 

なのに、本来の歴史で落ちこぼれであったのは、九尾のチャクラが混じったことでチャクラを練るのが他の人間より遥かに難しかった事、そしてアカデミーの教師たちがナルトを指導してこなかったせいだ。

 

確かに授業はしていたが、化け物として見ているナルトを個人的に指導したいと考える人間はいなかった。

 

そんな境遇の中、それでも自分で努力してきたナルトではあるが、自己流での修行で出来る事などたかが知れている。

 

失敗しても、どこが悪いのか指摘する人間もいない。

 

その悪循環がナルトを落ちこぼれとしてきたのだ。

 

事実、ナルトの適正が高かったとは言え、本来上忍クラスの術である影分身を巻物に書かれていた事を実践しただけで、ほんの数時間で物にしてみせた。

 

そして、今のナルトは自身がどういう存在なのか、何故チャクラを練るのが下手なのか理解してる上に、誰よりも術に長けた大蛇丸や、他の忍たちが指導をした。

 

更に、ナルトと影分身の相性、そして影分身による経験値のフィードバックと言う反則技に早い段階で気付いた大蛇丸は、香燐にチャクラ補充を行わせつつ、影分身による修行を敢行すると言う方法を考え付いた。

 

その結果、今のナルトの実力は音隠れの里でも一、二を争う程に成長していた。

 

 

そして、物語は大きく動き出す。

 

その日もナルトは香燐と修行に明け暮れていた。

 

修行に一段落が付いた頃...

 

「ナルト、香燐。大蛇丸様がお呼びだ。」

 

ふいに声をかけられた。

 

「おお、多由也じゃねえか。随分と久しぶりだってばよ。」

 

「大蛇丸様が何の用だって?多由也。」

 

声を掛けてきた人物は、音隠れの里でも大蛇丸の近衛を任される四人衆の一人、多由也だった。

 

香燐は、用件を尋ねるが、

 

「さあな。ウチはお前らを呼んでくる様に言われただけだ。さっさと付いてきな。」

 

質問に答える事なく、それだけ言うと踵を返して歩き出す多由也。

 

「はぁ...ウチの里のくノ一は、どうしてこう口が悪いんだってばよ...」

 

深いため息を付くナルト。

 

「おい、ナルト...そりゃあ何か?ウチも入ってるのか?あぁん?」

 

ほとんど呟きに等しい声量にも関わらず、耳聡く聞き付けてナルトに詰め寄る香燐。

 

「奇遇だな。香燐。ウチもこのチ○カスヤローに聞きたい事が出来た...」

 

多由也もナルトに詰め寄る。

 

「いや、その...そ、そんな事より大蛇丸が呼んでるんだろ?さっさと行くってばよ。遅刻なんかしたら、側近連中に何言われるわからねぇってばよ?」

 

二人の少女に詰め寄られ焦るナルトは、なんとかその場を治めようと、話題を反らした。

 

「ちっ...確かにそうだな。」

 

多由也は納得したのか舌打ちしつつも、先を歩き出した。

 

「後で覚えてろよ?ナルト。」

 

(前々から思ってたけど、この二人...口の悪さと良い、口調と良いそっくりだってばよ...)

 

冷や汗を掻きつつも、そんな事を思うナルトであった。

 

 

会議室にて...

 

「木の葉崩し?」

 

「ええ、そうよ?私の手であのカビの生えた里を壊そうと思うの...五大国家の膠着状態...それは微妙なパワーバランスの上に成り立っているわ。」

 

「木の葉と言う、五大国の中でも特に大きな里が崩壊したら、どうなるのか...私は自分の手で歴史を動かしてみたいのよ...」

 

大蛇丸の今回の作戦は、今までに無い大規模な物だ。

 

これまでで、最も大きな任務は風影を暗殺すると言う物...

 

その時も、暗殺と言うこちら側に限りなく有利な状況にも関わらず、流石は影の一人だけあり、多くの犠牲者を出した。

 

しかし、今回は相手のホームに乗り込んで、奇襲とは言え全面戦争を仕掛ける様な物だ。

 

「勝機はあるのですか?」

 

側近の一人が、思わず大蛇丸に口を出す。

途端に、四人衆を初めとした多くの人間が口出しをした側近に殺気をぶつける。

 

ここにいる者たちの多くが大蛇丸に救われ、大蛇丸を信奉している者たちだ。

 

大蛇丸の為に命を捧げる事を喜びと感じている者すらいる。

 

口を出した側近は、針の筵の様な殺気を浴びて縮み上がった。

 

「落ち着きなさい。彼の言うことも最もね。失敗すれば、音隠れの里がまずい立場に立たされる可能性があるものね。」

 

「でも、心配は無いわ。木の葉のトップ...三代目火影を殺してしまえば、内政はしばらく麻痺する。それに木の葉の上層部にも協力者はいる。失敗したとしても、直ぐに家の里がどうこうなる訳では無いわ...どの道、木の葉はその力を大きく落とす事になる。他の五里を警戒する必要がある以上、何も出来はしないわ。」

 

「...差し出がましい事を言いました。」

 

大蛇丸の言葉を聞いた側近は、素直に謝罪する。

 

「さて、それじゃあ詳しい説明を始めるわよ?」

 

作戦会議が始まった。

 

「説明は以上よ。各員の健闘を祈るわ。」

 

大蛇丸からの作戦の目標と大まかな概要の説明は終わり、その言葉で会議は締め括られた。

 

「ああ、それからナルトと香燐、それに四人衆は残って頂戴。」

 

会議に参加していた忍達が席を立つ中、大蛇丸がナルト達を呼び止める。

 

「なんだってばよ。一体。」

 

「貴方たちには、作戦の間他の忍たちとは違う役目を頼みたいのよ。まず、四人衆。貴方たちは三代目と私の戦いの間、他の木の葉の連中が手出し出来ない様に、結界を張ってもらうわ。」

 

「わかりました。」

 

四人衆に指示を出した大蛇丸は、次にナルトを見る。

 

「それから、ナルト。貴方には香燐と一緒に中忍試験に出てもらうわ。」

 

「はっ?」

 

「だから、中忍試験に出てもらうの。」

 

「な!それってまさか...」

 

大蛇丸の言葉の理由に気付いた香燐が血相を変える。

 

「ああ、つまり囮になれって事か?」

 

遅れて気付いたナルトが、聞き返す。

 

「ええ。貴方は木の葉を抜けた人間。ましてや人柱力よ。里の人間の目を引くのには最適だわ。」

 

「ま、待ってください...そんなの危険すぎる。いくらナルトが強くても...」

 

慌てて大蛇丸に食って掛かる香燐だったが、

 

「香燐。大丈夫だってばよ。俺はお前や里の仲間たちを残して死んだりしねぇから。」

 

ナルトの笑顔に、それ以上口に出来なかった。

 

「ふふ...ああ、それからもう一つ。今回の木の葉崩しとは別に、私には目的があるのよ。器候補の力を見定めるって言うね...」

 

そうして、ナルトと香燐は自分たちの任務の詳細を確認する。

 

「さて、後は中忍試験に出るのにメンバーを揃えないとね。」

 

「ん?どういう事だってばよ。」

 

「中忍試験は、三人一組でないと参加出来ないのよ。」

 

「大蛇丸様、それならウチが参加します。」

 

多由也が立候補する。

 

「はあ?なんでお前がでしゃばってくるんだ。」

 

香燐がいかにも嫌そうな顔をして答える。

 

「バランスの問題だ。ナルトは多くの術を使いこなすが、基本は近接タイプの忍だ。お前は回復がメインのサポートタイプだろ?そして、ウチは幻術メインの遠距離タイプだ。中忍試験は、謂わば前座。木の葉崩しがメインなんだ。それまでに万が一があったら困るだろ?どんな状況にも対処出来るようにしとくのは、当然だろうが。」

 

「ぐっ...」

 

言い負かされて何も言えなくなる香燐。

 

「とは言え、ウチのメインの任務は木の葉崩しの際の結界を張ること。あまり消耗はしたくねぇんだ。だから...」

 

多由也はそう言ってナルトの肩を叩くと、

 

「しっかりとウチの事を守ってくれよな。」

 

若干、頬を赤くしてそう言った。

 

「ああ。てめぇ...それが目的だな。ふざけんな。ナルトはウチを守るって約束したんだ。大体、てめぇが一緒だとどっちがどっちのセリフが読者がわからねぇだろう!」

 

「何を訳のわからねぇ事を言ってやがるクソビッチ。ウチだってたまには守られる乙女を経験してもいいだろうが!」

 

言い争う二人を尻目に一人ため息をつくナルトは、

 

(三年ぶりの木の葉か...今さら、あそこがどうなろうと構わねぇ。せいぜい引っ掻き回してやるってばよ。)

 

これから始まる作戦に、思いを馳せるのだった。


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