リクエスト小説 ナルト×香燐の話 完結   作:アーク1

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後編 その二

ナルトは香燐、多由也を伴い木の葉の里の入り口。

門の前に来ていた。

 

無論、中忍試験を受ける為である。

 

ナルトが門番をしていた木の葉の忍に、通行許可書を見せる。

 

「なっ!?お前は...」

 

その名前を見た門番は、驚愕し目の前の人間が誰なのか理解すると共に警戒する。

 

「おいおい...木の葉の忍ってのは正式な通行許可書を見せて尚、敵意を見せるのか?それならなんのための許可書なんだってばよ。」

 

ナルトはこれ見よがしに、門番の忍を嘲笑しながら大声で言った。

 

そこには当然ナルトたち以外にも、木の葉に用事のあった商人や依頼にやって来た他国の人間、中忍試験に集まった忍たちもいた。

 

許可書を出され、尚且つその書類に不備は無い。

更に言えばナルトは、音隠れの里の額当てをしている。

 

つまり、正式に他里の忍である。

 

ナルトには木の葉を抜けた時から、指名手配がかかっていたが、罪状は追っ手を殺害した疑いがあると言う物。

 

そもそも、ナルト自身正式に木の葉の忍になっていた訳では無いため、里抜けと言っても大きな罪にはなり得ない。

 

ここで、他里の正式な忍であるナルトを捕まえる事は国際問題に発展しかねなかった。

 

結局門番は、内心苦苦しく思いながらも、ナルトを木の葉に招き入れた。

 

無論、ナルトが音隠れの忍として木の葉に来た事は、門番によってその日のうちにヒルゼンに報告されることになる。

 

その日の夜...

ナルトたちが泊まっている宿に、訪れる者がいた。

 

「やあ、君がうずまきナルト君だね。俺の名は、はたけカカシ。三代目火影様の代理として来た。」

 

その男はそう名乗った。

 

「知ってるってばよ。千の術をコピーしたと言われるコピー忍者。写輪眼のカカシだろ?」

 

ナルトは今回の任務に対し、当然要注意人物の名前は確認している。

 

中でも、目の前のカカシの実力は、音の中でも側近中の側近...薬師カブトと同程度との事だ。

油断できる相手ではない。

 

「そう警戒しなさんなって。ここでお前さんをどうにかしようなんて思っちゃいないよ。実は三代目がお前と話をしたいらしくてな。夜分ですまんが一緒に来てくれないか?」

 

「その言葉に頷ける程、俺は木の葉を信用しちゃいねぇってばよ?」

 

ナルトの言葉に、カカシは目を伏せる。

心当たりは山程あった。

 

「......まあ...そうかもな...。だが、三代目は信用してやってくれないか?お前が行方不明になった後も、三代目はずっとお前を気にかけていた...」

 

それでも、それだけは言いたかった。

 

「.........。わかった。仲間に伝えてくるから少し待っていてくれってばよ。」

 

ナルトも思う所があったのか、少し考えた後、そう言って頷くのだった。

 

「「危険すぎる。ウチは反対だ。」」

 

三代目に会う旨を香燐と多由也に伝えると、揃って反対されるナルト。

 

「三代目火影ってのは、歴代の火影の中でも最強と詠われた忍だ。歳を取って衰えているとは言え、本気を出せば未だ大蛇丸様に匹敵する強さだって話だぞ。」

 

「香燐の言う通りだ。それとも、木の葉に帰ってきて郷愁の念にでもかられたってのか?」

 

「そんなんじゃ無ぇってばよ。俺はただ、三代目に会って、三代目に対する気持ちを整理しておきたい...そう思ったんだってばよ。三代目は木の葉で唯一、俺の味方をしてくれていた大人だった。内心はどうあれな。だから直接会って、振り切って置きたいんだ。作戦に集中するためにも...」

 

「ナルト...」

 

周りが皆敵意を向ける中、唯一好意を向けてくれる相手...

 

それは、どんなに救いであっただろう。 

そんな人間と敵対することになる...

 

確かに、そのままでは作戦に集中出来ないかも知れない。

 

「わかった...」

「香燐!?」

 

香燐が了承したことに驚く多由也。

何よりもナルトを優先する香燐が敵地の...それもトップに一人で会いに行かせる事を了承するとは思っていなかったのだ。

 

だが、香燐だからこそナルトの考えに賛同したのだ。

 

ナルトと似たような境遇で幼少期を過ごした香燐。

周りは皆、自分たちを道具としてしか見ていなかった。

 

唯一母といる時だけが、香燐と言う一人の人間でいられた。

 

ナルトに取って、三代目火影は香燐にとっての母と同じ存在なのだと思う。

 

ならば、ここは行かせるべきだ。

はっきりと、木の葉と決別する為にも必要な儀式だと思えた。

 

ちなみに、ナルトが木の葉に懐柔されると言う選択肢ははじめから疑っていない。

 

今さら、ナルトが木の葉に従う理由が無いからだ。

 

だから香燐はナルトを送り出すことにした。

 

他の人間は止めるであろうこの話を、ナルトの過去をナルトの口から直接聞いている香燐だけは、その気持ちに共感した。

 

「良かったのか?香燐。」

「ああ、アイツは必ずウチの元に戻ってくるさ。」

 

(無事に帰って来いよ?ナルト...)

 

遠ざかるナルトの背中を見つめながら、香燐はそれだけを祈った。

 

 

そして、ナルトは今、カカシと共に火影室に来ていた。

 

「久しぶりじゃな...ナルトよ。」

 

「じいちゃん...」

 

そこに三代目火影...猿飛ヒルゼンはいた。

ナルトの記憶と変わらない姿で、ナルトを向かい入れる。

 

「カカシ...ご苦労じゃった。」

 

「はっ!」

 

ヒルゼンはカカシを労い下がらせる。

 

「さて、ナルトよ。色々と聞きたいことはあるが...まずは...」

 

ヒルゼンはそう言うと、そこで言葉を切り...

 

「すまんかった。」

 

思い切り頭を下げた。

 

「なんのつもりだってばよ?」

 

頭を下げるヒルゼンを目を細めて見つめながら、その行動の真意を聞き返すナルト。

 

「お主を木の葉から抜けさせる程に追い詰めたこと...そして、抜けたお前に抹殺命令が下されていた事に気づかなかったこと...全てワシに責任がある。」

 

「.........。やっぱり、あの時俺を殺す命令が出ていたんだな?」

 

「ワシはお主を保護するよう指示を出した。しかし、途中でその指示が抹殺と言う命令に換えられておったのじゃ。気付いた時には遅かった...。お主を追っていたある小隊は全滅。お前も行方不明...その小隊はお前に返り討ちにあったと考えられた。結果、木の葉においてお前はS級指名手配を受けておる。」

 

「よく、それで中忍試験の書類審査に通ったな...」 

 

ヒルゼンからあの日の真実と、現状を聞いたナルトは半ば呆れながら呟いた。

 

「お前の名前を見つけた時、ワシは驚愕したもんじゃ。まさか、音隠れの里の一員になっておったとはの。しかし、ワシはもう一度とお前と話がしたかった。公私混同になるがの。」

 

「で?話ってのはなんだってばよ。」

 

「...何故、ワシに相談せんかった?」

 

ヒルゼンは、苦しい胸の内を吐き出すように、重い口を開く。

 

「?なんの事だってばよ?」

 

「何故、ワシに一言の相談もなく里を出たのじゃ?」

 

「なんだ...そんなことか...」

 

何を話すかと思えば...ナルトは内心呆れていた。

 

「不満があったのは理解しておる。里の者たちは、お前を目の敵にしておったことも...。じゃがワシは違う。お前を家族として...孫の一人として接してきたつもりじゃ。」

 

どうしても聞いておきたかった。自分はそれほどに信用されていなかったのかと...

 

「確かにじいちゃんには感謝してるってばよ?けどな、あの時...俺はじいちゃんすら信用出来ない程に追い詰められていた。じいちゃんから勧められたアカデミーでの生活...それすら悪意と敵意にまみれていた...じいちゃんにわかるか?自分が唯一信頼していた人の勧めで入った場所から悪意を受ける辛さが...」

 

「それは...」

 

「裏切られた...そう思ったんだってばよ。じいちゃんも結局他の連中と変わらねぇ...。心の拠り所を失なった俺は、もう木の葉を抜ける以外に選択肢が無かった。じいちゃんに相談できるはずが無ぇだろ?」

 

「.........。」

 

「俺を追ってきた連中な...知ってるか?じいちゃん...あの連中はな...笑いながら俺に手裏剣を投げつけたんだってばよ?」

 

「そ、それは本当か!?」

 

確かに忍は命のやり取りを行う。しかし、それは任務の遂行のために仕方なく行うもの。

 

ましてや、相手の命を軽んじ、笑うなどあってはならない。しかも、その相手は年端もいかぬ少年だった。許せるものではない。

 

「気を失った俺を、音の長が助けてくれたんだってばよ。そこで俺が木の葉に疎まれる原因も聞いた。今はもう、自分がどんな存在なのか理解してる。」

 

「...そうか...」

 

その言葉から、ナルトが自分の中に九尾が封印されていることを知っていると理解したヒルゼン。

 

「ならば、最後にもう一つだけ...」

 

「???」

 

「木の葉に戻ってきてはくれないか?お前の居場所はワシが必ず用意して見せる。じゃからもう一度、木の葉の一員として生きてはくれまいか。」

 

そう言って、ヒルゼンはナルトに頭を下げた。

 

「.........。」

 

そのヒルゼンを見ながら、ナルトは心が急激に冷めて行くのを感じた。

 

「今さら、勝手だと思わねぇか?じいちゃん...」

 

「わかっておる。じゃがそれでも、ワシはお前に...木の葉の人間として、もう一度生きて欲しいのだ。お前の両親のためにも...」

 

このままナルトを引き留めない事は、どうしても出来なかった。

何よりも、ナルトの両親の溜めにも...

 

「その両親が俺に九尾を封印したせいで、こんなことになってるのにか?」

 

「!?知っておったのか...」

 

「俺は、自分の事を理解してる...そう言ったハズだってばよ?」

 

「.........。どうしても、ダメかの?」

 

なんとか食い下がるヒルゼン。

それに対してナルトは、

 

「久しぶりに木の葉に来て、俺が最初に感じた事は...『変わってない』だったってばよ。でも、不思議と帰ってきたって言う感情は浮かばなかった。何故かわかるか?」

 

「.........。」

 

「今の俺にとって故郷ってのは、俺を受け入れてくれて、大切な仲間たちがいる音隠れの忍里であってここじゃない。今さら木の葉の一員になるつもりは無いってばよ。」

 

「.........そうか...わかった。中忍試験...頑張るんじゃぞ?」

 

ヒルゼンは、何を言ってもナルトを引き留める事は出来ない事を悟り、そう言って話を切り上げる。

 

「三代目...良かったのですか?」

 

ナルトがいなくなったのを見計らい、カカシが姿を表す。

 

「仕方あるまい。ナルトと話していてわかった。アヤツはもはや木の葉になんの期待も信頼もしておらん。憎しみすら抱いていない様子じゃった。もう、ナルトは木の葉を見限っておるのじゃろうな。」

 

「...そうですか...」

 

「ミナトのヤツには申し訳も立たぬが、ここに至っては、もうナルトの幸せを願う事しかワシらにはできぬ。」

 

「先生...」

 

二人は今は亡きナルトの父...四代目火影、波風ミナトの写真を見ながら、過去を悔やむのだった。

 

一方、宿に戻ったナルトはと言うと...

 

「遅ぇぞ。ナルト。ウチも多由也も飯も食わずに待ってたんだぞ!」

 

「そうだ。ウチらを心配させて罰として、お前は飯抜きな!」

 

「いや、それは酷いってばよ。」

 

二人の少女に文句を言われていた。

 

(まあ、これで里の目は俺に向くだろう。俺の任務は囮だからな。せいぜい派手に暴れてやるってばよ。)

 

内心、そんな事を考えながら、どうにか食事にありつくために必死に二人の説得を試みるのだった。


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