中忍試験当日...
ナルト達は既に試験会場に来ていた。
幻術による試験会場の誤認には、当然引っ掛かってはいない。
「フワァ...まだ試験は始まんねぇのか...退屈だってばよ。」
欠伸をしながら呑気にのたまうナルト。
そんな緊張感の欠片もないナルトの態度を、周りの受験者達は忌々しそうに見ている。
そんな中、一組の小隊が扉を潜ってきた。
少年二人と少女一人と言う組み合わせ。
年齢もまだ若く、一目でアカデミーを卒業してそう時間も経ってない事が伺える。
その内の一人の少年を見たナルト。
「へえ...あいつが器候補のうちはサスケってヤツか?うちは一族だけあって、かなり強ぇんだろ?」
大蛇丸から聞かされていたターゲットであるサスケを見たナルトが呟く。
「ところが、そうでも無いみてぇだぞ?写輪眼もまだまだ使いこなせてねぇみたいだし、プライドが高いせいか、人に教わろうとしねえから、なかなか成長しねぇらしい。」
その言葉を否定する様に香燐が答えた。
「プライドだぁ?...はっ!?くだらねぇ。まあウチらはウチらの仕事をすりゃあいいさ。器候補の当て馬は既に用意されてるしな。」
多由也は香燐の言葉に呆れながら、サスケへの興味を無くす。
三人が、サスケを酷評していると、騒ぎが起こった。
ナルト達と同じ、音隠れの受験者...ドス、ザク、キンの一派がカブトに絡んだのだ。
「あいつらアホか...なんで同士討ちなんぞしてるんだってばよ。」
「あいつらは、カブトの事情を知らされてねぇんだろ?所詮下っぱ...いや...使い捨ての駒か...」
「なるほど、うちはサスケの当て馬か。しかし...所構わず暴れるのは、音の里の品性を疑われかねねぇ。ナルト...ちょっとアイツラ止めてこい。」
多由也の言葉に頷いた香燐。しかし、思い直すと、ナルトに止めてくる様に口にする。
「ええ!俺がか?」
「ったりめぇだ。ウチらを心配させた罰だな。」
「そりゃいい。ほらさっさと行け。ドカス。」
香燐も多由也も、先日のヒルゼンとの接触のことをまだ根に持っている様だった。
「わかったってばよ...」
肩を落としつつも、言う通りに騒ぎの場に近づくナルト。
「そこまでだ。お前ら...少しばっか、ウチの里をマイナー扱いされた程度で騒ぐんじゃねぇってばよ。」
「なんだと!って...ナルト!?」
ザクが止めに入ったナルトを怒鳴るが、誰を怒鳴ったか認識すると、途端に声が小さくなる。
「この程度で、騒ぐならその程度の里だと他里に思われるってばよ。ウチが新興の里なのも情報が少ないのも事実だろうが。」
「いや、けど...」
「黙れと言ったってばよ?」
尚も食い下がるザクに、いい加減面倒になってきたナルトは、ザクに向けてピンポイントの殺気を出した。
「わ、わかった。今回は引き下がる。」
その殺気を受けて、ザクたちはスゴスゴと引き返して行った。
「ああ...そこのメガネの人...ウチのバカどもが済まなかったってばよ。」
ザク達の攻撃を受けたカブトに向かい、微妙に言い辛そうに謝罪するナルト。
「いや、こっちこそ...君たちの里を貶めるような発言をして済まなかったね。」
カブトは、ダメージから復帰するとにこやかに謝罪を受け入れた。
と、その時...
「静かにしやがれ!どぐされヤローどもが!」
煙幕が室内を立ち込める。
煙が晴れた時、そこに第一次試験の試験官...森乃イビキと、その他の監視役たちが現れた。
イビキは、ザクたちに勝手に暴れると失格にすると脅しをかけつつ、席に着くように命じた。
「えと...よろしくお願いします。」
「ん?」
ナルトが席に着くと、隣になったくノ一の少女から挨拶される。
「その...あの...」
「隣同士だな。俺はうずまきナルトだ。さっき暴れた音隠れの連中の同僚になるんだが...ま、今回の試験の間はよろしく頼むってばよ。」
目の前の少女が挨拶を交わしたいのだと察したナルトは、言い淀むヒナタに自分から挨拶をした。
(上がり性なのか?忍が上がり性とか...どうなんだ?木の葉はこれで良くこの子を中忍試験に受けさせたってばよ。)
ナルトは目の前の少女の態度に若干呆れながら、内心呟く。
「う、うん。よろしくねナルト君。私は日向ヒナタって言います。」
「へぇ...日向って言ったら...木の葉でも名門の一族だったよな。」
『日向』の名前が出たことで、目の前の少女に少し興味を抱くナルト。
「うん...でも、私は落ちこぼれで...そんな自分を変えたくて、中忍試験に参加しようって思ったの。(なんでだろ...なんか、この人には何でも話せる気がする...)」
誰にも打ち明ける事がなかった、中忍試験に参加する動機...何故かヒナタは、初めてあったばかりの目の前の少年に話していた。
引っ込み思案な自分にとって、それは自分でも驚くべきことだった。
「良いんじゃねぇか?別に...」
「え?」
てっきり、笑われると思った。
中忍試験とは、忍の中でも一握りがなれるエリートへの第一歩。
ほとんどの忍が下忍のまま生涯を終える中、中忍試験に参加する事は、多くの忍にとって、文字通りその生涯を賭けて参加する。
決して遊び感覚で参加するものではないし、ヒナタのように、自分を変えたいと言う動機で参加する者など皆無だろう。
たが、ナルトはヒナタの動機を肯定した。
その事に驚き、思わず聞き返すヒナタ。
「良いじゃねぇか。どんな理由で中忍試験に参加したって。それに、俺ってば、お前のその動機...嫌いじゃ無ぇってばよ。」
ナルトにとって、自分を変えたい...環境を変えたいと言うのは、あの里抜けの行為を思い出させる。
里の大人たちに疎まれてきたナルト...
そんな自分が嫌で、反発してきたが効果は無かった。
そして意を決して里を抜けたナルト。
その行為のお陰で自分の居場所を見つけ、かけがえの無い仲間たちにも巡り会えた。
「大事なのは、行動する事だってばよ。自分を...周りを変えたいってヤツは多くいる。その中で、ちゃんと行動に移せるヤツは少ねぇ...少なくともお前は、自分を変える為に中忍試験に参加した。だったらきっと、変われるさ。だから...頑張れよ?ヒナタ。」
ナルトはそう言うと、ニカッと笑いかけた。
「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!」
その笑顔に真っ赤になって俯くヒナタ。
「殺すぞ、あのクソ野郎。」
「何やってやがる。あのバカ。」
そんな二人の様子を見て、ナルトに向けてとてつもない殺気を込めて睨み付ける赤毛の少女二人...
そんなカオスな中、イビキが第一の試験の内容を説明する。
筆記試験...そして減点方式...さらに連帯責任...
内容を聞いたナルトは、その陰湿さに辟易しつつ、しかしその試験の裏に隠されている答えをすぐに理解する。
当然、香燐や多由也も問題無く、それぞれがそれぞれの方法で答えを知る者を見つけ出し、解答欄を埋めていく。
最後の問題...イビキにより、間違えれば一生中忍試験を受けられないと言う脅し、そのプレッシャーにより、受験生たちが次々と脱落したが、ナルトたちは当然のごとく残った。
一定時間が過ぎた頃...
「ここに残った全員に第一の試験の合格を伝える。」
イビキは、残った受験生たちに合格を伝える。
驚く受験生たちに、雰囲気を和らげたイビキがその理由を告げた。
その雰囲気の変化に、またも驚かされつつも、合格したことを実感し始めた受験者たち。
喜びを噛みしめる一同...と、その時...
窓を割って、飛び込んで来た女性がいた。
その女性は自らをみたらしアンコと名乗り、次の試験の試験官であると告げるのだった。