リクエスト小説 ナルト×香燐の話 完結   作:アーク1

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後編 その四

室内の空気が固まる中、アンコは次の試験場に行くよう、受験生達を促した。

 

「57人!?...イビキ...19チームも残したの?...今回の第一の試験...甘かったのね。」

 

残った受験生の数を見たアンコは、そう評した。

 

「今回は優秀そうなのが多くてな...」

 

しかしイビキは、動じることなくニヤリと笑いながら答えた。

 

「...ふん...まあ良いわ。次の第二の試験では半分以下にしてやるわよ。...ああ...ぞくぞくするわ...詳しい説明は場所を移してからやるからついてらっしゃい。」

 

ドSの顔を覗かせながら、そう宣言したアンコに受験生たちは、冷や汗を流しながら試験場を後にする。  

 

場所は、木の葉の第44演習場...『死の森』の入り口。

 

そこでアンコは第二の試験の説明を始めた。

 

チームそれぞれに天と地、どちらかの巻物が配布され、他のチームから持っていない巻物を奪い、揃えてゴールで開く。

 

確かにこの試験を突破できるのは半分以下になるのは間違いなかった。

 

「なあ、ヒナタ...第44演習場とか言ってたけど...木の葉にはこんな演習場が沢山あるのか?」

 

そんな中、ナルトはアンコの説明を軽く聞き流しながら、第一の試験で仲良くなったヒナタに聞いた。

 

「え?うん。そうだよ。木の葉隠れの里は、その名前の通り、広大な森に囲まれてるから...」

 

「ふーん...ヒナタのチームは、こういうの得意そうだな。」

 

森に視線を向けながら話すナルト。

 

「え?う、うん。私のチームは五感に優れた犬塚家のキバ君や、蟲使いとして万能な油目家のシノ君がいるから...」

 

「それだけじゃ無ぇだろ?白眼使いのヒナタがいるってばよ。こう言う視界の狭い場所じゃあ、白眼ってのは圧倒的に有利に働くってばよ。」

 

「う、うん...」

 

ナルトの言葉を受けたヒナタは、しかし喜ぶよりむしろ気落ちしていた。

 

「ヒナタ...白眼で...人を傷つけるのが嫌か?」

 

会ってまだ間も無いが、ヒナタがどんな性格をしているか、なんとなく理解したナルトは、そう聞いた。

 

「.........。」

 

「白眼って...面白い能力だよな...」

 

「え?」

 

「敵対したら、相手を殺すのが当たり前なのが俺たち忍者だってばよ。敵を生かしたまま無力化する...なんてのは圧倒的な実力差が無けりゃ、まず無理だってばよ。...でも白眼と、その眼を利用した柔拳使いなら話は別だ。相手のチャクラを練れなくしたり、あるいは休止の点穴を付いたりすれば、簡単に...相手を殺すこと無く戦いを終わらせる事が出来る...。ひょっとしたら、柔拳を創った日向家の祖は、ヒナタみたいなヤツだったのかも知れねえな...」

 

「ナルト君!?」

 

ナルトの言葉は、力そのものを忌避していたヒナタにとって、想像すらしなかったものだ。

 

これまで人を傷つける力...ただそれだけが目に付き、ただ日向家に生まれたから...その義務で修行をしていた。

 

しかし、その性格から当主の座を争う妹との勝負で勝てるハズの試合を、妹を傷つけたくないが為に戸惑い、負けてしまった。

 

それ以降は、周りから落ちこぼれのレッテルを貼られ、自分の気弱な性格も相まって人を避ける様に過ごしてきた。

 

そんな自分を変えたくて、この中忍試験に参加したヒナタ。

 

そのヒナタは、ナルトとの出会い、そして言葉で、自分の忍として目指す道を示された気がした。

 

「人が試験の説明をしている時に...ナンパなんてしてるんじゃない!!!」

 

そんなナルトの様子を見かねたのか、アンコは笑顔のままクナイを数本投げつける。

 

「危ないな...何すんだってばよ。」

 

しかしナルトは、投げつけられたクナイを一本目は首を傾けて避け、残りは指の隙間で挟むことで止めてしまった。

 

「!?(私の投げたクナイをこうも簡単に止めるとはね)...今は試験中よ。ちゃんと聞きなさい。」

 

「すみません。ウチのバカが失礼しました!」

「お前はウチらのチームだろ。さっさと来いこのチン○ス野郎が!」

 

ナルトのチームと思われるくノ一の二人が強引にナルトを引っ張っていく。

 

「痛い痛い痛いってばよ。香燐、多由也...耳を引っ張るんじゃねえってばよ。」

 

二人に耳を引っ張られて連行されるナルト。

 

「!?」

 

アンコは半ばギャグの様な光景に呆れていると、不意に後ろに強烈な殺気を感じた。

 

「クナイ...お返ししますわ...」

「ありがとう...でも私の後ろに殺気を持って立たないでね?」

 

簡単に後ろを取られた動揺を押さえながら、自身もクナイを突き付け、背後のくノ一に告げるアンコ。

 

「フフ...ごめんなさい。私の自慢の髪が切られたもので、興奮してしまって...」

 

そのまま何事もなく離れる二人...

 

「...(おい...あれってば、大蛇丸だよな...)」

「(ああ...なんでこんな所にいるんだ?作戦には無かったろ...)」

「(大方、自分の目で器候補を見ておきたいと思ったんだろ。気まぐれな方だからな。)」

 

三人は、今アンコと揉めた忍が大蛇丸であることを看破する。

 

「まあ、俺らのやることは変わらねぇってばよ...」

 

大蛇丸の意図はどうであれ、自分たちは既に任務を進行中だ。

任務に専念することこそ、優先される。

 

三人はお互いに頷いた。

 

そうして、第二の試験では始まった。

 

それぞれのチームが、指定された入り口から死の森へと入っていった。

 

ナルトたちはと言えば...

 

「さて、ようやくウチらだけになったな。」

「ああ...さて...それじゃナルト...」

 

「ん?」

 

「「一発殴らせろ!!!」」

 

「うわぁ!何すんだってばよ。」

 

突然チームメイトの二人に殴りかかられたナルト。

その攻撃を避けつつ、ある意味当然の抗議をする。

 

「ちっ!避けるんじゃねぇ。クソヤローが!」

 

「無茶言うな!」

 

「任務中に他の女ナンパするヤツには仕置きが必要だろうが!」

 

「何の事だってばよ...」

 

「ヒナタってヤツと、随分仲良さそうだったじゃねえか?」

 

「ヒナタ?...ああ...ヒナタか。アイツは良いヤツだからな。」

 

ナルトは本気で理解していなかった。

 

(おい...どう思う?)

(ナルトのヤツに恋愛感情は無えみてぇだが...油断はできねえ...)

 

ナルトの予想外の反応に、香燐と多由也は小声で話し合う。

 

「ちっ...仕方無ぇ...取り敢えず保留にしておく。」

 

香燐は、取り敢えず矛を納める事にした。

 

と、その時...

 

「死ぬ可能性のある試験中に痴話喧嘩とは...こいつはラッキーだぜ!」

 

草隠れの受験者(大蛇丸扮する忍のチームではない)の一人が現れ、香燐を人質にしようと間合いを詰めてきた。

 

「ラッキー?ソイツは違うぜ?」

 

香燐はニヤリと嗤う。

自分に向けられた拳...しかしそれは自分に当たる事は無い...

 

何故なら...

 

「汚ねぇ手で、香燐に触れるんじゃねぇ!」

 

ナルトがその拳を止めていた。そして...

 

「ぎゃあーーーっ!!!」

 

あり得ない程の力で、拳ごと握り潰されてしまった。

 

「ふんっ...ちょうど良い。おい...そこのクソ雑魚。てめえらの仲間の所に案内しな。」

 

多由也は、ナルトの行動に動じず、蹲る草隠れの受験者に命令した。

 

「ううっ...」

 

返事も出来ない草隠れの受験者だったが...

 

「ここで死ぬか、仲間の元へ案内するか...さっさと決めるってばよ...」

 

「ヒィッ...わ、わかった...」

 

ナルトの低い声に我を取り戻し、案内する。

 

 

そして...

 

「な、なんで...目的は巻物だろ...何も殺す必要無いだろ!」

 

草隠れの受験者は、案内した人間を除いて、二人とも殺された。

 

呆然とする草隠れの受験者。

 

「別に良いだろ?この試験は死んでも文句は言えねえんだ。殺してから巻物を奪えば、取り返しに来る事も無ぇ...だから...」

 

ナルトはそこで、残った草隠れの受験者を見る。

 

「ま、まさか...案内すれば助けてくれるんじゃ...」

 

ナルトが何をしようとしてるのか理解した草隠れの受験者。

 

「そんなこと言った覚えは無えってばよ。あそこで死ぬか、案内するか選べ...そう言っただけだ。それに...」

 

ナルトはそこで一度切ると、香燐の方を見て...

 

「てめえら草隠れの忍には、殺す機会がある時には容赦する気は無えんだってばよ。」

 

そう言った。

 

「お前は...」

 

香燐を見た草隠れの受験者は、香燐に見覚えがあった事に気付いた。

 

それは、数年前まで自分の里で奴隷のように扱われていた親子...

 

草隠れの受験者は、そこまで思い出した所で、闇に落ちた。

 

ナルトがその手に、もった刀で首を切り落としたのだ。

 

「今さら、ウチは気にして無いんだがな...」

 

香燐はナルトにそう言ったが、

 

「良いんだってばよ。これは俺がそうしたいからそうしてるんだから。」

 

ナルトは、意に返す事なくそう言うと香燐に微笑んだ。


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