リクエスト小説 ナルト×香燐の話 完結   作:アーク1

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後編 その五

「さて...これからどうするってばよ?簡単に巻物が揃っちまった訳だけど...」

 

思わぬ形...と言うよりも...向こうから巻物が転がり込んで来たような状況だが、あっさりと第二の試験のクリア条件を満たしてしまったナルトたち。

 

後はゴールに行くだけなのだが...

 

「もう試験をクリアしちまっても良いんじゃ無いか。ウチらの任務は目立った方が良いんだし。最速でクリアすれば、目立つだろ?」

 

香燐が言った。

 

「大蛇丸様が参加されていたのが気になる。或いはウチらの協力が必要な場面があるかもしれない。まずは大蛇丸様の真意を探るべきじゃないか?」

 

多由也は、すぐにゴールを目指すべきではないと主張する。

 

「うーん...」

 

少しの間悩むナルト...

 

「多由也の言う通り、取り敢えず大蛇丸の動向を探るか...最速でクリアしたところで、所詮は中忍試験...下忍が受ける程度なんだから、大した注目を集める事も出来ねぇだろうしな...注目って意味なら、既に三代目の目は俺に向いてるんだ...そう急ぐことも無いってばよ。」

 

「.........お前が言うなら良いけどよ...」

 

香燐は、自分の提案より多由也の提案が採用された事が不満なのか、少し顔をしかめて頷いた。

 

「さて...じゃあ大蛇丸を探すかな...」

 

ナルトはそう言うと術を発動する為に印を結ぶ...

 

「風遁 遠見の術!」

 

それはナルトのオリジナルの術だ。

 

風遁に適正のあったナルトは、風を使って出来ることを模索した。

 

香燐や仲間たちと話し合い、そうして風のメリットを理解する。

 

それはどこにでも存在するものであること...

 

ナルトは、その性質を使って作ったのが遠見の術である。

風に自らのチャクラを同化させる事で半径数キロに渡り、見渡す事が出来る。

 

索敵や情報収集で大いに活躍できる術である。

 

「見つけたってばよ。」

 

大蛇丸扮する草隠れの忍を見つけたナルト。

 

「...どうやら器候補を試しに来たみてぇだな。行き先は、うちはサスケのいる班だ。」

 

大蛇丸の進む先にサスケの姿を捉えたナルトは、そう判断した。

 

「ウチらの支援は必要か?」

 

多由也が聞く。

 

「そうだな...」

 

ナルトが考えていると...

 

ナルトが視認していた大蛇丸がふいに顔を向ける...そして、ニヤリと笑った。

 

「!?」

 

思わずゾッと背筋に冷や汗をかくナルト。

 

まさか、これ程離れた場所からの監視に気付いた...だけで無く会話すら聞かれていたのか?  

 

改めて大蛇丸の非常識さに戦慄を覚えながら...

 

「一応、行った方が良いみてぇだってばよ...」

 

チームメートの二人に答えたナルト。

 

その言葉で、おおよその事を悟った二人も頷いた。

 

場所は変わってサスケの班...

 

森に入ってから、何度か他の班の襲撃に会い、緊張の面持ちで辺りを警戒しながら進んでいると、突然突風が吹き荒れサスケたちを襲う...

 

風に吹き飛ばされ、一旦バラバラになるサスケたちだが、直ぐに集合出来た。

 

万が一に備え合言葉を決めていたサスケの機転もあって、サクラとサスケは互いを本物だと確信する。

そして、もう一人...

 

すらすらと合言葉を告げるチームメートの少年に、しかしサスケは攻撃を仕掛けた。

 

サスケのもう一人のチームメートの少年は、座学が大の苦手だった。

 

忍術はそれなりに出来た為、合格出来たが、たった一度...それも長い合言葉を覚えられるハズが無い。

 

サスケは、最初から襲撃者が近くで合言葉に関する会話に聞き耳を立てている事に気付いており、襲撃者を釣るためわざと、長い合言葉を用意したのだ。

 

大蛇丸は、サスケの機転に感心しつつ、その実力を探るため殺気を放つ。

 

その殺気に自らの死を予見させられた二人は、まるで金縛りにあったかのように動けなくなってしまった。

 

サクラに至っては涙を流しながら、失禁してしまう程に強烈な殺気...

 

(この程度なのか?うちはサスケってのは...)

 

現場に着いたナルトが見たのは、その光景であった。

 

大蛇丸の殺気に当てられただけで、震えて動けなくなる...

 

サスケの期待外れな光景を見て、がっかりするナルト。

 

大蛇丸は、動けないサスケとサクラにクナイを放つ。

 

(おいおい...器候補を殺す気か?)

 

大蛇丸の放ったクナイは、大蛇丸にしてみれば軽く投げたもの。

 

しかし、目標は動くことすら儘ならない...

 

クナイは正確に二人の額目掛けて飛んでいた。

 

死んだ...ナルトがそう思った時...

 

「!?」

 

金縛りから抜け出たサスケが、サクラを連れてクナイをかわす。

 

「へぇ...自分のクナイで身体を傷つけて、痛みで金縛りを解いた...か...」

 

「大蛇丸様の殺気に当てられて、その動きが出来ただけ評価出来るかもな...」

 

「まあ、器候補としては及第点は取れるか?」

 

ナルトたちは、サスケの評価を少しだけ上げた。

 

そのまま、逃げに徹するサスケ。

 

その判断は正しい。ただし、逃げるのにも相応の実力がいる。

 

まるでホラーさながらの逃亡劇...

一瞬たりとも気を抜く事が出来ず、気を抜いた時に大蛇丸が姿を表す...

 

「大蛇丸のやつ...絶対遊んでるってばよ...」

「サスケってやつと...あのくノ一...可愛そうにな...」

 

ナルトと香燐はサスケたちに同情した。

 

「はんっ!あの程度で情けねぇ...男ならもっとしっかりしやがれってんだ。」

 

多由也は辛辣だった。

 

大蛇丸に追い詰められる二人。

と、そこにサスケたちの仲間が合流する...

しかしその仲間はあっさりと気絶させられた。

 

サスケはこの場をなんとかすべく、巻物を差し出すことで逃げさせてもらうよう提案する。

 

しかし、その交渉は意味をなさない。

巻物など、殺してから奪えば良い...

 

大蛇丸の言葉に、いよいよ八方塞がりのサスケ。

 

ふと、大蛇丸が視線を反らす。

 

(ああ...そう言う事か...)

 

その視線の先にはナルトたちがいた。

 

大蛇丸の視線の意味を理解したナルトは、姿を表す。

 

「よう...楽しそうな事してるじゃ無ぇか...」

 

「!?お前は...」

 

「あら...また新たな獲物の登場ね...」

 

ナルトの姿に驚くサスケと、笑う大蛇丸。

 

「よく言うってばよ。俺がいることなんて、最初から気付いてたんだろ?」

 

「さあ...どうかしらね?」

 

大蛇丸は相変わらず笑みを絶やさない。

 

「まあ、俺は噂の『うちは』に興味があって見学してただけなんだが...見逃してくんねぇかな?」

 

「ふふ...面白い事を言うわね...そんな提案を受けると思うかしら?」

 

「いや?言ってみただけだってばよ...」

 

「あなた...確かうずまきナルトって言ったわよね...」

 

「ああ...」

 

「面白いわね...気に入ったわ...少しだけ遊んであげる。」

 

先程から、大蛇丸はナルトに向けて殺気を放っていた。

サスケたちに向けたものよりも、遥かに巨大な殺気...

 

現に、自分に向けられたものでは無いのに、サスケはまた動けないでいた。

 

そんな濃密な殺気を受けてなお、ナルトは平然としている。

 

(こいつは一体なんなんだ。)

 

うずまきナルト...

この中忍試験で然程目立っていた訳ではない。

 

せいぜい音忍の暴走を止めたり、あるいは日向ヒナタと仲良くしていたり...別段注目してはいなかった。

 

この第二の試験の教官...アンコの放ったクナイを受け止めた技量には目を見張ったが...それだけだった。

 

しかし、今この場で大蛇丸と対峙しているナルトを見て、その実力を大きく量り間違えていた事に気づいた。

 

もしかすれば、目の前の大蛇丸と同等クラスの存在...

 

自分たちとは、格が違う実力を持っているのではないか...

 

そして、それは確信に変わる。

 

大蛇丸とナルト...二人の動きは写輪眼を持つサスケを持ってしても、追いきれないほどに早かった。

 

「風遁 風手裏剣の術」

「土遁 土流壁」

 

「風遁 空圧掌」

「くっ!」

 

二人の術がぶつかり合う。

最初にナルトが放った風の手裏剣を、土遁の壁で防いだ大蛇丸。

 

しかし、ナルトは防がれるのを承知で次の準備に移る。  

 

掌に空気を圧縮したような塊を作ると、それを土の壁に向かって当てた。

 

その空気の塊は、土の壁を軽々と破壊する。

 

その威力に、大蛇丸の顔から余裕が消える。

 

「なあ...もう良いんじゃねえか?」

「...どういう意味かしら?」

 

「うちはの班から巻物は貰ったんだろ?」

 

「ええ...」

 

「所詮まだ二次試験...まだ先があるのに、消耗戦をするのは、お互い本意じゃ無いだろ?」

 

「そうね...貴方と戦うとなると、こちらも手傷を追わされかねないはね。」

 

「だから、ここでお互い手打ちにしねえか?」

「.........。」

 

「いいわ...」

 

「俺としても、噂の『うちは』が大したこと無いってのはわかったし、お前みたいな要注意人物の存在を確認出来た。充分だってばよ。」

 

「なにっ!」

 

ナルトの言葉に、サスケは露骨に反応する。

『うちは』は木の葉でも特別な血統だ。

あの惨劇から木の葉の唯一のうちはとなったサスケを誰もが特別視していた。

 

そしてサスケもまた、周りの期待に応えるように優秀な成績を残していた。

 

そんなサスケにとって...とるに足らない存在と言われた事は、初めてであった。

 

それは、自分を殺そうとしていた大蛇丸...

その人物よりも遥かに許せない存在...

 

「取り消せ...」

 

「ん?」

 

「うちはが大したこと無いだと?その言葉...取り消せ!」

「サスケ君!駄目!」


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