「取り消せ...」
「ん?」
「うちはが大したこと無いだと?その言葉...取り消せ!」
ナルトに相手にもされないサスケは、その扱いに激昂する。
「サスケ君!駄目!」
そんなサスケを止めようとサクラが制止の声を上げるが、今のサスケには効果が無かった。
「うぉぉぉぉっ!」
ナルトに向かっていくサスケ。
まるで自分の存在を誇示するかのように、雄叫びを上げながら突き進む。
「ハァ...」
対してナルトは、ため息を一つ付いた。
「相手との力の差すら見抜けない程未熟なのか?うちはサスケ...」
向かって来るサスケを軽くかわす。
「なっ!?」
間違いなく、ナルトに向かっていたハズなのに、突如その姿を見失ったサスケ。
「この程度の動きすら見切れないのか?ご大層な眼を持っていても、所詮はその程度...俺らの敵じゃ無ぇってばよ。」
「!?ちっ...」
突如後ろから声をかけられ狼狽しながら、距離を取るサスケ。
普段のサスケなら、決して見切れぬスピードではない。しかし、激昂し己を見失っている今のサスケは、写輪眼を出してはいても、使いこなせてはいなかった。
『火遁 豪火球の術!』
距離を取りつつ印を結ぶとナルトに向かって術を放つサスケ。
『風遁 焔返し!』
しかし、ナルトはあくまで冷ややかな表情のまま、新たな術を発動する。
この術は、火遁のように重さの無い術を風の力で跳ね返す術だ。
「なっ!?」
ナルトに向かって放った術が、自分の方に戻って来る。
それは、サスケに避けられるタイミングでは無かった。
「サスケ君!!!」
とその時、サスケに向かっていく人影があった。
サスケのチームメートのサクラである。
サクラはサスケに体当たりをする様にして押し倒す。
「あうっ!」
そのお陰で、サスケは豪火の炎から逃れる事が出来た。
しかし、代わりにサクラの肩を豪火球が掠める。
「サクラッ!?」
「へぇ...あれに飛び込むとは...やるじゃねえか...そこの女の子...」
ナルトは、臆する事なく炎が向かうサスケのところに突っ込んでいったサクラに感心していた。
「それに比べて、うちはサスケ...お前は期待外れも良いところだってばよ。」
「くっ!」
先ほど、サクラが助けに来なければ、間違いなく豪火球の直撃を受けていただけに、言い返す事が出来ないサスケ。
「仕掛けてきたのは、お前だってばよ?覚悟は良いか?」
ナルトは、負傷するサクラを庇うように立つサスケに近づいていく。
(俺は何をやってるんだ!アイツに復讐するために今まで生きてきたってのに、こんな簡単に終わるってのか...)
サスケは、自分のプライドのせいで今の状況に陥っていることを後悔していた。
(終わりか...イタチ...結局俺は、あんたを殺す役目もこなせないんだな...)
サスケは全てを諦めたかのように目をつぶる。
「サス...ケ...君...逃げ...て...」
その時、肩の痛みを堪えてサクラが懸命にサスケに逃げる様に声をかけた。
「!?(サクラ...そうだ。サクラは俺のせいで負傷する事になったんだ。)」
「諦めてる場合じゃねえ。なんとしてもサクラは助けて見せる。」
サクラの声を聞き、諦めかけた心に再び炎が灯る。
その眼は、先ほどの怒りに染まった物ではなく、自分のやるべき事を見つけた男の眼だった。
「へぇ...」
ナルトはその眼を見るとニヤリと笑った。
しかし、それは決して馬鹿にしたものではなく、むしろ面白いとでも言うように感じた。
「そこの...ナルトって言ったな。」
「ああ...」
「戦う前に約束して欲しい。」
「ん?」
「俺とお前には純然たる力量差がある。それは認める。だから...一撃だ。一撃俺がお前に入れられたら、この場を見逃して欲しい。」
「それだと、俺にメリットが無いってばよ?」
「わかってる。その代わり俺が一撃も与えられずに倒れる事があったら、この巻物と...俺の命をやる。その代わり、俺以外のチームメイトの命だけは助けてくれ。頼む...」
「サスケ君!!!」
驚き声をあげるサクラ。
「虫の良い話だって事はわかってる。それでも、頼む...」
サスケは地面に膝を付くと頭を垂れた。
そう、土下座である。
今のサスケはプライドを捨ててでも、サクラや仲間の少年を助けようとしていた。
それまでプライドが邪魔をして、強くなるために師に教わる事さえしなかったサスケが、初めて他人に必死に頼み込んだ。
「.........わかった...お前のその姿に免じて、条件を飲んでやるってばよ。」
「すまない...。」
二人は互いに構えを取った。
「「行くぞ!!」」
戦いが始まった...
しかし、その戦闘は予想通り一方的な展開となっていた。
押してるのはナルト。
当然だ...チャクラ量、スピード、力、術...凡そ戦闘に必要なほとんどの物でナルトが上回っていたのだから。
それでも、致命傷を追うことなく戦いを長引かせていたのは、ひとえにサスケの眼にある写輪眼のおかげであった。
完全に使いこなせてはいないまでも、その眼で動きを追い、先を読み、行動する。
例え、完全にかわすことは出来なくとも、戦いを長引かせることで、ナルトの隙を伺う。
そして、その時は来た。
「...たく...さっさとくたばりやがれってばよ。」
ナルトが、しつこく食らいつくサスケにいい加減面倒くさくなり、勝負を決めようと大技を繰り出そうとした。
「この時を待ってたぜ!」
と、それはサスケの望む展開。
サスケは手裏剣を投擲する。
当然ナルトに避けられる...が...
その避けた先に仕掛けがあった。
「火遁 龍火の術!」
「これは!?」
ナルトの周りをワイヤーが覆いそれを伝って炎が迫る。
避ける隙間は無かった。
「うおおおおおおおおおおおおおお!」
ナルトが炎に包まれながら叫ぶ。
「はぁ...はぁ...はぁ...やった...か?」
「サスケ君!凄い...あんなヤツに勝っちゃうなんて...」
油断せず、炎の中を探るサスケ。
そして、サスケを讃えるサクラ。
大蛇丸は静かに見守る。しかし、その目に焦りの色は無かった。
自身の里でも最強クラスの忍の危機だと言うのに、まるで動じた様子は無い。
その理由は...
突如炎が空に向かって昇っていった。
炎を風が吹き飛ばす。
大蛇丸はニヤリと笑った。
「あっはっはっはっは...いやー...やられたやられた...まさか、本当に俺に一撃入れるなんてな...驚いたってばよ。」
そう、ナルトは大したダメージも負わず、そこにいた。
その身体には、物質化するほどに高密度のチャクラが纏われていた。
これは、ナルトの中に封印された九尾のチャクラである。
ある時、ナルトは里の中で九尾の力を暴走させ、里を窮地にたたせた事があった。
誰もが諦めるなか、唯一...香燐だけはナルトを信じ、そして暴走するナルトの前に立ち塞がった。
当然、暴走するナルトは、香燐を殺そうとする。
しかし...
ナルトは己の全てを懸けて九尾に抗った。
ナルトにとって、絶対に譲れない大事なもの...
ナルトはその時、はっきりと理解した。
その思いが、憎しみに染まった九尾のチャクラを押し退ける光となり、ナルトの暴走は収まることになる。
以来、ナルトはその思いを要にすることで、九尾のチャクラをコントロールすることに成功したのだった。
そのチャクラを纏い、炎を防ぎきったナルト。
「さて、約束は約束だ。一撃を入れられたんだ。俺は退かせてもらうってばよ。」
「本当か!」
「なんだ?俺が約束を破ると思ってたのか?そりゃ心外だってばよ。」
「い、いや...そんなことは...」
「ああ。そう言えば...そこのピンク髪の子。」
「私?」
ナルトはサクラに声をかけると、何かを放り投げる。
「これは?」
「薬だってばよ。肩の傷に塗ればそこそこ回復するハズだ。ま、俺を信用するならだけどな。」
「信用するわ。貴方がその気なら簡単に私たちを殺せるんだもの。メリットが無いわ。」
「あっはっはっは。本当に面白いな。お前。」
「サクラよ。春野サクラ。」
「そうか。サクラちゃん。それにサスケ...まあ、リタイアしねぇように頑張れってばよ?」
ナルトは大蛇丸に意味ありげに視線を送るとそこを立ち去った。
「ふぅ...」
一息着くサスケだったが...
「息を抜く暇なんてあるのかしら?」
「!?」
「勘違いしないでもらいたいのだけど、貴方が約束したのは、彼だけで私ではないわ。私が退くつもりだったのは、彼がいたから。その彼がいなくなった以上、どうなるか...わかるわよね。」
(しまった!)
サスケは完全に大蛇丸の事を失念していた。
ナルトがこの場所を去った以上、大蛇丸を止める人間はいない。
そして、サスケにはほとんど余力は無かった。
焦るサスケだったが...
「ふふ...とは言え、面白い勝負を見せて貰ったし、今回は殺すのは止めにしてあげるわ。」
大蛇丸は、笑ってそういった。
「代わりに...貴方にプレゼントを挙げましょう。きっと気に入ってくれると思うわ。」
そう言った瞬間、大蛇丸の首が延び、サスケの首筋を噛んだ。
「ぐああああっ!!!」
サスケの身体を焼け付くような痛みが襲う。
「サスケ君。しっかりして。」
サクラはサスケを案じ、声をかけるしか出来なかった。
その様子を、ナルトとチームの二人が眺めていた。
「さて、サスケのヤツは生き残れるかな?まあ、俺を当て馬にして、サスケを成長させようってのが、今回の大蛇丸の計画だったってのは、理解したけど...あの呪印から生き残れるかは、サスケ次第だからな。」
「知らねぇよ。あんなクソ雑魚ヤロー。それよりも、ナルト。あんなのに一撃貰うってのは腑抜けてんじゃねえか?」
多由也の容赦無いコメントにちょっぴり傷つくナルト。
「んな事よりさっさとウチに噛みつけ。チャクラを回復したら、さっさとゴールを目指すぞ?」
ツンデレな香燐に苦笑するナルトであった。