私が私を見つめてました
ある日の昼下がり。衛宮家の庭にて。
「…………悪いな、アーチャー。屋根の修理手伝ってもらって」
「気にすることはない。マスターの尻拭いをするのもサーヴァントの役目というものだ」
そう、今の衛宮家の屋根にはポッカリと穴が空いている。昨日、遠坂がリビングでダラダラしていたら空を飛んでいた虫に驚き、その拍子にガンドを天井に向けて3発くらいぶっぱなしたのだ。その結果、見事に天井が破損した。
アーチャーが自ら修理の手伝いをするとは思わなかったが、正直1人じゃ大変だろうし、ありがたいセイバーとかはあまり修理は詳しくないからな。
「ところで、衛宮士郎。脚立や金槌等はどこにある?」
「それなら土蔵のどっかにある。俺が取ってこようか?」
「いや、私が行こう。そろそろ凛が帰ってくる頃だろう」
遠坂はホームセンターで屋根の修理に使う木材とかを買ってきてもらっている。
「じゃ、頼んだ」
アーチャーが土蔵へと歩いていったのを見送り、俺は玄関へと足を運ぶ。
そこで暫くジッとしていると――
「あ、士郎。戻ったわよー」
木材やらを抱えた遠坂が帰ってきた。
「お帰り、遠坂」
「ただいまー。あー、おっもいわー…………」
庭まで荷物を運び、下ろした遠坂は腕をプルプルさせそう言う。
「だからセイバーも連れていった方が良いって言ったのに」
「さすがに今回は私が悪いもの。セイバーに頼るのもなんだか違う気がするし。セイバーと桜はまだ?」
「あぁ。もうしばらくかかるんじゃないかな?」
セイバーと桜は今買い物に行っている。
「凛、戻ったか」
「えぇ。はいコレ」
脚立や工具箱を背負ったアーチャーに遠坂は荷物を手渡す。
「ご苦労。マスターを使いに行かせてすまない」
「だから今回は全面的に私の責任だってば」
「それもそうだな。…………ふむ。これならどうにかなるだろう」
アーチャーは投影した剣で木材を斬り始める。そんなことでわざわざ魔術を使うのか。あれ? だったら工具とか投影した方が早くないか? 気分の問題かな。
よし、修理開始!
「ねー、シロウ。つまんなーい。遊ぼー」
しばらく遠坂とアーチャーと修理をしていると、さっきから縁側で俺たちの様子を見てたイリヤがとうとう愚痴を漏らした。
「はいはい、修理が終わってからな。後でいくらでも付き合ってやるよ」
「ほ、ホント!?」
「もちろん」
「じゃあ、一緒にプールに行こうよ!」
「おう、いいぞー」
「絶対だからね!!」
「分かったって。危ないから大人しくしとけよ」
「はーい」
イリヤは納得してくれた様子。
「凛、そこの木材を取ってくれ」
「これ?」
「あぁ」
「ほい」
「助かる」
遠坂とアーチャーは息ぴったりだな。……っと、玄関が開いた音がした。
「シロウ、ただいま戻りました」
「先輩、お疲れ様です」
セイバーと桜が帰ってきた。
「2人ともお帰り」
「修理の具合はどうですか?」
「まずまずだな」
桜の問いに答える。
「一度、お昼にしましょう」
次にセイバーがそう言う。
「俺はそれでいいが……アーチャー、どうする?」
屋根の上にいるアーチャーに聞く。
「私もいただこう」
「はい。じゃあ、お昼ご飯作ってきますね」
「俺も手伝うよ。遠坂にアーチャー、しばらく任せていいか?」
「大丈夫よー」
「無論だ」
よし、2人にその場を任せて桜と一緒に台所に移動する。
「暇だし私もそっちに行くー」
俺らが修理している間、少し寝ていたイリヤも付いてきた。
「シロウ、私は洗濯物を取り込んでおきます」
「おう」
と、昼ご飯を食べ、順調に屋根の修理は進んだ。
「…………このくらいでいいだろう」
3時頃、無事に修理は完了した。むしろ前よりも頑丈になったくらいだ。
「助かった。ありがとな、アーチャー。にしても、かなり本格的にやってくれたな」
「おぉ、流石アーチャー。けっこう綺麗に直ったわねー」
俺と遠坂は思い思いに感想を述べる。
「凛、これに懲りたらもう慌ててガンドを乱発しないことだ。魔術師がその程度で動揺してどうする」
「うっ……わ、悪かったわね。でも、いきなり目の前に蛾が現れたの。びっくりしたのよ……」
「それは分からんでもないが……遠坂、一応ここ俺んちだから」
「ホントごめんね、士郎」
「気を付けてくれよ」
「皆さん、お疲れ様です。おやつありますよ」
と、桜がどら焼を持ってきてくれた。セイバーもいる……ていうか、もうどら焼食べてる。まぁ、セイバーは俺らが修理している間、別の家事を任せきりだったからな。
「んー……美味しいわね、このどら焼」
「そうでしょう、イリヤスフィール。ここのどら焼は絶品です」
イリヤも食べ始めた。
「ありがとー。早速いただきます」
遠坂が飛び付いたが、アーチャーは諫めるように。
「私は片付けてからにする。凛、手はきちと洗ってから食べなさい」
「はいはい、アンタは母親かっての。士郎、洗面所借りるわね」
「俺も片付けするよ」
「だったら、廃材を処分してくれ」
「はいよ」
アーチャーは土蔵に、遠坂は洗面所に向かう瞬間――――
「これは……!?」
「うそっ、魔力反応……!?」
俺と遠坂がいきなりの事に声をあげる。
庭の中央からとてつもない魔力を感じる。なんでいきなり!?
眼を凝らしてみると、正体の分からない魔方陣が刻まれている。そこから光が溢れていて、かなりの眩しさだ。
セイバーもアーチャーもイリヤも瞬時に警戒体勢に入る。イリヤは縁側から降りて俺の真横に立つ。
「桜は下がってください」
「う、うん……」
セイバーは桜を庇う立ち位置で剣を構える。
「何、あの魔方陣?」
「さぁな。私にも分からない」
あれが何なのか、イリヤやアーチャーでも分からないのか。俺も何が起きてもいいように投影の準備だけはしておく。
そしてようやく魔方陣からの光が収まる。
魔方陣から現れたのは――――
「いてて…………。ちょっとルビー! いきなり何なのよ!?」
『うぅー……すみません、イリヤさん。これは私にもさっぱりです』
『美遊様、ご無事ですか?』
「う、うん……。一体どうなっているの? クロ、ここがどこか分かる?」
「そんなの、私が聞きたいわよ。あれ? ここって…………」
――――まるでテレビに出てくる魔法少女みたいな格好をしている3人組であった。
「うそ……どうして?」
その3人を見た遠坂は驚きのあまり呆然と呟いている。
「あれは……!」
「まさかな」
セイバーとアーチャーも同様だ。
「……………ッ」
俺も声がでない。
着ている服装や雰囲気は違うが、その中央にいる人物は、小柄な少女で綺麗な銀髪、そして朱色の眼をしている。
そう、あれは紛れもなく――
「………………私?」
俺の隣にいる少女が言葉を漏らす。
そう、あの少女は――――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだ。
感想、評価ドンドンお願いします!
好評でしたら続きを書こうと思います。断言できませんけど、シリアスにはならないはずです!! 作者が苦手っていうのもありますが……