なんだか、ほんの少しシリアスな気がしますが、基本はカニファン時空なんであまり気にしないでください
「じ、爺さん……なんでここに?」
「キリツグ、何故ここにいるのです?」
俺は立ったまま、目の前にいる人物、いる筈のない人物――衛宮切嗣に問いかける。セイバーも同様。
「……大きくなったね、士郎」
しかし、切嗣はそう懐かしむように、嬉しそうに呟く。って、あれ? セイバーに見向きもしてないような……?
「ハァ……」
セイバーは何を悟ったのか、俺の後ろに隠れる。なんだか、とても疲れた顔をしているような。
「おい、セイバー……?」
「いえ、大丈夫です。ですから、シロウは話を続けてください」
「お、おう……」
もう1度、切嗣に向き直り、再度問いかける。
「その……どうしてここに?」
「それがどうも僕では、分からなくてね。気が付いたら大空洞にいたんだ」
切嗣はいつもの落ち着いた口調で話し始める。
「大空洞に?」
「あぁ。それで、どうすればいいか困ってね。冬木というのは分かったんだが、今が何年か、状況確認しながらここに来たわけだ。ま、それでも何も分かってないんだけどね」
今、衛宮切嗣はここにいる。死んだ筈の人間だ。何か、魔術の類いなのか。死人が生き返るようなこと……サーヴァントじゃあるまいし。うん? 死人? ……あれ? 確認しないと。
「じ、じゃあ、その……爺さんの最後の記憶って何だ?」
「士郎に、僕の夢を話したところかな」
「…………っ!」
それは……切嗣が死ぬ直前の記憶だ。俺の生き方を決定付けたあの月の夜。
イリヤたち3人みたいに平行世界がどうのじゃなくて、どうやら本当に死人が蘇っているのか……?
どう返せばいいか、頭の整理が追い付かない。正直、一気に色々起きすぎだ。まだ混乱している。切嗣は俺の言葉を待っている。それなのに、俺は……言葉が出ない。
「は?」
「え?」
すると、突然、俺の横から誰かが飛び出した。誰も反応できずに――
「――――おりゃああぁぁ!!!」
イリヤがそれは見事な飛び蹴りを切嗣の腹にかました。それこそライダーキックみたいに。
…………え? イリヤ? 何してるの? ていうか、イリヤあんな動きできたんだ。初めて見たぞ。
「ぐほっ……い、イリヤ?」
「キリツグ殺す! マジで殺す!!」
あまりにも急な出来事に呆気をのられ腹をさする切嗣に、イリヤはめちゃくちゃ声を荒げる。何事??
「殺るわよ、バーサー――」
「――――ちょ、ちょちょ。落ち着け、イリヤ!」
「何よシロ……んーっ! ん――――っ!」
すぐに駆け寄りイリヤの口を塞ぐ。このままだと、衛宮家が瓦礫の山へと変わってしまう。バーサーカーが暴れるのは勘弁。この面子だと止めれるかもしれないけど、それは流石にマズい。
「な、何するのよ、シロウ!」
とりあえずイリヤを羽交い締めして抑える。
「いきなり、どうしてバーサーカーを呼び出そうとするんだ。爺さんが危ないだろ!」
「ふん、理由なんて、そんなの簡単よ。ここにいるのがキリツグだからよ!」
「えっ、イリヤ……そんなぁ。遂に反抗期きちゃったかぁ」
「――反抗期ちゃうわ!! このクソ親父……あー、もうマジで殺す! シロウ離してー! このままじゃ、キリツグ殺せないー!」
「よく分かんないけど、落ち着け。な?」
か、カオスだ。どうすればいいんだ。セイバーは関わりたくないのかそっぽ向いてるし。
「士郎さん、どうしたんですか!?」
「先輩……と、どちら様ですか?」
そんな俺たちを心配したのか、ダダッと足音をたてて、もう1人のイリヤと桜が居間に来た。
「ちょっとなによー、そんなに騒いじゃって。近所迷惑よ」
「どうかしましたか?」
「うるさいわね。全くー。で、誰なのよ、来客って?」
「はぁ…………。正直、こうなる気はしていたのだが……やはりか」
クロと美遊、遠坂とアーチャーは対照的にのんびりとやって来た。特にアーチャーは頭を抱えている。
『おやおや~、この人は確かイリヤさんの』
『これは……どうなっているのですか?』
ルビーとサファイアまで来ちゃったよ。
「……え?」
切嗣は居間に揃ったメンバーを見つめる。チラッと顔を確認すると、驚きと困惑の表情が入り交じっている状態。
「士郎。これは…………どうなっているんだい?」
まだ暴れるイリヤを羽交い締めしながら思う。
――――お願いだから、誰か助けて…………。
――――――
「――――と、いうわけがあってだな」
あれから30分後。テーブルに並んで座った俺たちは、桜たちの自己紹介とことのあらましを切嗣に説明する。
周りはすんなりと話を聞く体制になったが、イリヤを宥めるのが大変だった。今は俺が胡座しているスペースに座っている。途中、まだ機嫌が悪くなるから、頭を撫でながら説明した。
俺はまだ切嗣がここにいることに疑問を持っているが、何かしらの反応を確認する度に、目の前にいる人物は衛宮切嗣だと認識する。本当にどうなっている……?
「……なるほど。これはまた、随分と厄介な状況になっているんだね」
「確かにそうだけれど、今のところ、特に大きな影響はなさそうだけれどね」
俺たちが話し終えるまで黙って聞いていた切嗣が苦笑しながらそんな言葉を漏らす。それに対し、クロは平然と何てことない、ということを答える。ま、クロの言う通りなんだけど、この先どうなるか分からないんだよ。
が、呑気なクロとは違い、切嗣はクロを見つめ、どこか悲しい表情になり、
「クロエといったね。……その、君には申し訳ないことをしてしまったようだ」
「あー、別に気にしないでいいわよ。あれは私の知ってる貴方じゃないんだから。そんなに気負わなくてといいの。……それより、クロって呼んでちょうだいな」
「あぁ……。よろしく、クロ」
それと、と言いながら今度は美遊の方を向く。
「君にも、僕のせいでどうやら苦労をかけたみたいだね」
美遊は首を振る。
「ううん。その……確かに大変な思いはしたけど、それ以上にお兄ちゃんと……皆と出会えたから。あの時は言えなかったけど……私を連れ出してくれて、ありがとうございます、切嗣さん」
感謝の微笑みを見せる美遊と同時に、俺の又に座っているイリヤが声を上げる。
「ちょっとキリツグ! 私には何もないの!?」
「えーっと……そのー、ごめんね?」
「謝罪が軽いわ! そんなんで許すと思っとんのか!」
「あれぇー!?」
…………イリヤ、お前キャラ変わってないか?
「っていうか、キリツグはいるのにお母さまはいないの?」
「それは……本当に分からないんだ。アイリがいるのか、まだこの状況を把握しきれてないかね。そもそも、僕がなんでここにいるのかすらはっきりしてないんだ」
アイリ……? 確かその人はイリヤの母親で、切嗣の奥さんだよな。ということは、俺の義理の母親ってことか。どんな人かは、イリヤの口からしか聞いたことないけど。
「そういや、遠坂。お前ルビーたちのこと調べたんだろ? 何か分かったのか?」
「なーんにも。とりあえず、コイツらが第二魔法を発動してないってことくらいかしら」
『お力になれず、申し訳ないですねぇ……』
「ほぇ? これってルビーのせいじゃないの?」
『イリヤさん、毎度毎度トラブルが起きる度に私を疑うの止めてくださいよ~』
「だって、前科がたくさんあるもん。そもそも、風呂場にいきなり突撃してきたのはルビーじゃん」
『イリヤさん。姉さんだって、恐らく反省はしていると思います……多分』
『ものスゴい曖昧な擁護ありがとうございます、サファイアちゃん』
うーむ。あのステッキたちはいつでも元気だな。
「でしたら、何か外部の影響ということですか?」
「そういうことになるかしらね。って、あれ? 桜、ライダーは? 帰りまで一緒にいたわよね?」
「あ、霊体化して、外の様子を見張ってくれています」
遠坂と桜が何やら話している間、部屋の隅へと視線を動かす。部屋の隅には、綺麗な姿勢で正座しているセイバーがいる。何故かこっちに来ない。俺らが説明している時も一切喋らなかったな。
「とりあえず、晩めし作るよ。セイバーは洗濯物取り込んでくれ」
「……はい、分かりました」
機嫌が悪いわけではないのか。そこまで切嗣と前回の聖杯戦争で上手くいってなかったのか。
「あ、先輩。私も手伝います」
「ありがと、桜。……って、ありゃ。材料足りないな」
まさか切嗣がいるとはこれっぽっちも思わず、見事に1人分不足している。
「士郎。でしたら、私の分は構いません」
いつの間にか居間に戻っていたライダーが特に問題なしという口調で言う。その手には洗濯物のカゴがあるから、セイバーの手伝いでもしてたのか。
「そういうわけにもいかないだろ。アーチャー、ちょっと買い出し行ってくるから適当に進めておいてくれ」
「いいだろう。……む? 衛宮士郎、見たところ材料は充分にあると思うが、これ以上必要なのか。これだけあれば事足りるだろう」
「セイバーで2人前、多ければ3人前の計算だ。それに、こんだけ人いるんだから多いにこしたことはない。余ったら明日の朝にでも回すよ」
「……貴様、セイバーに甘くないか?」
「し、シロウ。あまりそういうことは……!」
ドドドッ……! という音をたてながら、急ダッシュでこっちに戻ってきたセイバーは顔を赤らめ、恥ずかしそうだ。若干息も切れている。あれ、聞こえてたか。まだセイバーは庭にいたはずなのに……地獄耳か。
「実際そうなんだからさ。セイバーもいっぱい食べたいだろ?」
「それはそうですが……」
と、セイバーの視線が切嗣の方に動く。なんだ?
「……さすがは英雄様だね」
切嗣がほくそ笑む。
「キリツグ、どうしたの?」
「いいや、何でもないよ」
…………やっぱり仲悪いんだ。前回の聖杯戦争で何かお互い気に障るような致命的な会話でもしたのか……?
「くっ……」
セイバーもセイバーで悔しそうだ。
こんな感じで大人数の時はビュッフェ形式……みたいな感じの料理を作るから、セイバーがかなり食う。それに、切嗣がいるんだ。何て言うか……無性に張り切りたくなる。
「じゃ、皆。大人しくしとけよ」
それだけ言い残してから、自転車に跨がり、商店街の近くにあるスーパーへと走る。
――20分後。スーパーで色々と買い足した食材をアーチャーに代わって料理する。たった20分でかなり進めてくれたな。助かる。
居間では、皆が思い思いに談笑している。中にはライダーみたいに静かにしている人もいる。まぁ、ライダーはイリヤたちと切嗣とあまり関わりないからな。
他には……切嗣とイリヤとイリヤが話しているな。うーん、自分で言っててややこしい。こっちのイリヤはまだ怒っている様子で、向こうのイリヤは焦りながら宥めている。
あ、クロとアーチャーも何か会話している。というより、クロがアーチャーにちょっかいかけてる感じか。確か、クロの元になっている英雄は……。話している内容は聞こえないな。火を使っていると、音はそれなりにシャットアウトされる。
「…………」
――――なんだか口元が緩みそうになる。
こうして眺めていると、安直かもしれないけど――――自分のことみたいにとても嬉しいと感じる。
何がどうなって、こんな状況になっているかは分からないけど、夢みたいだ。夢ならいつかは覚めるのだろう。だけど……しばらくは続いてほしい。そう願う。
「どうしました、先輩?」
「あぁいや、何でもない。ちゃちゃっと終わらせよう」
「はいっ。美遊さんも頑張りましょう」
「了解です、桜さん」
桜と美遊も打ち解けたみたいだ。料理が上手だったりと何か共通する部分でもあったのだろうか。
そして、夕食が完成した。
唐揚げ、ハンバーグ、サラダや煮物など色々作った。それらを並べ終え、いただきますの号令と共に、皆が食べ始める。これだけ人が多いと、テーブルはそこそこキツいが、何とか座れている。
「……お、士郎。腕が上がったね」
「そりゃ、爺さんがいなくなってからかなり経ってるからな」
切嗣の微笑みに思わずこっちが照れくさくなる。
「ところで、士郎」
「なんだよ」
「いや、敢えて言わなかったんだけど……僕がいなくなってから、随分とこの家に女性が増えたんだね」
……ホントどうしてだろうな。
「男友だちはいる?」
「いるって」
「それは良かったけど……」
けど?
「それで、士郎。本命はどの子なんだい?」
その言葉を発した瞬間――――
「…………」
――――ピシャリと部屋の空気が固まった。
「ちょ……いきなり何なんだよ!!」
「ははっ、もう士郎もいい年じゃないか。いくら何でも、気になる人くらいいるだろう?」
「え、えーっと……」
そーっと、女性陣の顔を覗き込む。
遠坂は少し顔を赤くしており、そっぽを向く。桜は……前髪に隠れて表情が見えない。ただ、「ふふっ……」と不気味そうに笑っているのが怖い。セイバーは動揺しているのか視線が泳いでいて、ライダーは我関せずとご飯を食べている。
向こうのイリヤとクロと美遊はどうなるのか見守っているような顔だ。特にクロはこの状況を面白がっているのか笑いを堪えきれてない。
――と。
「――――シロウは私と結婚するんだから、悩まなくてもいいのよ」
そこで、唐突なイリヤの爆弾発言が投下された。それに誰より驚いたのが…………
「い、イリヤ! ちょっと、それはどういうことだい!? お父さん聞いてないよ!!」
…………切嗣だった。
荒ぶりすぎだろ。
「いいじゃない。シロウは私の弟だけど、義理なんだから結婚できるでしょ?」
「そうかもしれないけど……で、でも相手を決めるのは早くない?」
「何よ、焦っちゃって。私が誰を選ぼうか私の自由じゃない。お母さまだってキリツグを選んだんだから」
「なっ……!」
その言い方は、少し切嗣をバカにしているような気が……。ほ、ほら、切嗣ショック受けてるよ。その会話の横で、セイバーの肩が震えているのを俺は見逃さなかったぞ。
「うん――この話は止めにしよう」
と、勝手に話を振っておいて、勝手に話を終わりにした。
もうさっきの話はなしにするためにか、切嗣は話題を変えてきた。
「そういえば、大河ちゃんは元気かい?」
「藤ねぇか。めちゃくちゃ元気だよ」
「へぇ……。大河ちゃん、女っぽくなったのかな」
そう感慨深そうに呟く切嗣だが――――俺たちはそうはいかない。
「アッハハハ! 藤村先生が? ないない!」
遠坂が爆笑し、
「……………………ふふっ」
桜はテーブルに突っ伏して笑いを懸命に堪えようとする。
「ふふっ。タイガが? それはないわ。キリツグも珍しく冗談言うのね」
イリヤも可笑しそうに笑う。
その他の皆も……クロたちも藤ねぇを知ってるのか、勢いよく笑ったり、桜みたいに笑いを我慢しようとしたりと三者三様の反応を見せる。
かく言う俺も、頑張って笑わないようにしている。
「え、なになに?」
呆然としている切嗣にあの猛獣の現状を説明する。
「藤ねぇは女性って感じより、今や肉食獣になっているよ」
普段はいい先生だよ。ただ、変なテンションの時との振れ幅があまりにも大きいっていうか……。
「あれぇ? 本当に? あの大河ちゃんが?」
「ああ。そりゃもう機嫌が悪いなんて、手が付けられないくらいな」
「お、可笑しいな。どうしてなんだろう……。で、その大河ちゃんは今どこに?」
そういえばいつもならトラブルのど真ん中にいそうな人なのに。確かにここ数日見ていない。と、ここで桜が。
「藤村先生なら、仕事が忙しいからしばらくは先輩の家に行けないって言ってましたよ」
「あ、そうなのか」
「はい。土曜日、部活の時に聞きました。ごめんなさい、伝えるの忘れてましたね」
「桜が謝ることじゃない。こっにだって色々あったんだから」
それに、今ここに藤ねぇがいるとこれ以上に面倒なことになりそうだ。切嗣がいる+イリヤが2人とかどう説明すればいいのやら。藤ねぇには悪いけど、暫しの間……ウチには寄らないでくれたまえ。
「いやー、士郎のお父さんには笑わせてもらったわ」
「全くよ。タイガが女っぽくなるなら、せめて生まれ変わらないといけないわ」
「イリヤスフィール。いくら大河でもそこまでは……」
「そうかしら? まぁ、それはともかくとして、もっと落ち着きがあればいい人だとは思うわ」
「藤村先生、イリヤさんより子供っぽいとこありますから」
「その割りには妙にしっかりしているとこもあるのよね」
「凛、あれでも教師だからじゃない?」
「まぁそうよね」
遠坂たち3人の会話を聞いていると、今度はクロが。
「どこにいようとも、藤村先生は変わらないのね」
「あら、そっちでも先生は先生なの?」
遠坂の問いに、向こうのイリヤがアハハ……、と頬を掻き、
「まぁ……そうですね。いつも騒がしくて、クラスのみんなを巻き込んでますよ」
「うん、運動会は大変だった……」
美遊もどことなく疲れた声だ。少し窶れている気がするのは気のせいか。
「らしいわね。その時はまだ私はいなかったけど」
「高級肉のために、あんな紛らわしい態度をして……!」
…………その運動会で一体どんなトラブルが起きたのか。
「えぇー……。大河ちゃんに何があったの」
切嗣の心底納得がいかない声。
そんな様子を皆で和気あいあいと楽しみながら夕食の時間はあっという間に過ぎていった。
あのあと、風呂に入ったり片付けをしたりとしている内にもう夜中になっていた。
俺はもう寝ようと自分の部屋に移動している。プールにも行って疲れたからな。それに切嗣とも会った。思ってる以上に体も精神も疲れている。
「…………ん?」
――――その途中。縁側を通り過ぎようとしたら、庭に誰かが立っていた。
「あれは切嗣と……アーチャー?」
そういや、夕食の時には消えていたな。「私は特に腹など減っていないのでね」ということを言って、居間から離れていた。
切嗣から声をかけたのか、偶然会ったのかは分からない。って、アーチャーが切嗣を案内したと玄関で言っていたな。その時、居心地が悪い的なことを漏らしていたけど……。
――――あの2人は、何を話すのだろう。
訂正、疑問点があれば教えてください。
感想、高評価などよろしくお願いします。