不死の道標   作:成金ヤック

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半年?1年?いやもっとか…とりま再喝


紡ぐ意志

暫く火の前で座ってぼーっとしていた。もうこのままずっとここにいたかった…しかしここに居ても牢屋で過ごした日々と変わらなくなってしまう。そう思い決心を付けてその場からのそっと立ち上がる。少し休んだからがメンタルの方はだいぶ回復した。どこに進んでいいかも分からないがとりあえず下水らしき道をただ道なりに進んでいく。少し歩むと目の前には弓を持ったゾンビが佇んでいるのが見える。まさかこちらに向けて打ってくることは…

 

「ッ!?」

 

そう思った瞬間、奴は明確な殺意を持ってこちらに矢を放ってきた。元々唯の学生だった自分に回避する事など出来ず、ただ矢が胸に飲まれてくのを黙って受け入れる事しか出来なかった。何が起こったのか理解出来るわけも無く頭がチカチカする感覚が残る。混乱しながらも急いで、視界の端に見えた横穴に駆け込み、ズルズルとその場にへたり込む。息は整わずに荒くなり歯は恐怖でガチガチと鳴る。足は竦み経つことすらままならないと来たものだ。この世界については予備知識がある程度あるから序盤は簡単だとタカをくくっていた。甘かった。あぁ甘かったともこの世界について何一つ理解など出来ていなかった。これは現実だ、現実なのだ。ゲームなどと言う娯楽ではない、高難易度を進めて行くのに達成感などあったものでは無い。ひとまず震える腕で矢を引き抜く。痛みは不思議と無かった、出血すらないのは最早自分が人間ではないと言う事を暗に伝えられてる気がしてならなかった。伝えられてる気がしてならなかった。

 

息がある程度落ち着いた。先ず序盤のチュートリアルを思い出せ…チュートリアルどうりならばここら辺に盾があるはずだ…見つけた木の板だ。一先ずこれでいいだろう。壁に張り付きリーンしながら敵を見据える…奴はあれからあの場から1歩たりとも動いて居ない。いい意味でも悪い意味でもゲーム準拠である。そして道の真ん中に白い魂のような光…あれが武器のはずだ走りながら取ればそのまま攻撃に転じれる筈だ。ここはゲームによく似た現実だならば走りながら物を拾い装備することも出来る筈だ。

 

奴を倒す

 

気づいたら体は駆け出していた奴が矢を番えるより早く武器を拾い瞬時に装備するそのまま奴の左斜めに入り込み棍棒を勢いよく振りかざす。すると奴はヌルっと45どこちらに背を向ける形で反転した。自分はそのままやつのケツに棍棒を2発叩き込んで一回転。特に意識していない無意識の攻撃…本当にこの世界は良くも悪くもゲーム準拠である事を知らされる。地面にくたばり動かなくなったゾンビに片目をやりながら進む…初めて動く物を自らの意思で殺したと言うのに葛藤や迷いは存在しなかった殺らなきゃ殺られるし。敵には慈悲など無い。ならばこちらも慈悲など持ち合わせては成らないのだ。

 

道なりに進み階段を上がろうとすると鉄球が落ちてきて引き飛ばされ階段下に落ちてしまう。大したダメージでは無いが腹立たしい。階段を上がると先程の鉄球がどうやら壁を壊して突き進んでいったらしい。好奇心によるものなのか、はたまた運命と言うものなのだろうか。足は自然と鉄球の開けた穴へと向かっていた。そこで見たのは光に照らされ座り込む鍵を投げ入れてくれた騎士の姿だった。

 

「あぁ…君は…そうか無事に出ることが出来たんだな…それにまだ…亡者でもないんだな…良かった…」

 

亡者とは先程のゾンビ達の呼び名だろうか。

 

「私は…もうダメだ…もうすぐ死ぬ…死ねば正気も保つ事が出来なくなってしまう…だから君に願いがある…」

 

ここから出して暮れたのは間違いなく彼だ。できるだけ望みにも答えて上げたい。

 

「同じ不死の身なのだ…観念して聞いてくれよ」

 

「あぁ聞こう…貴方の願いは…」

 

「ふふっ…ありがとう…恥ずかしい話しだが…願いは私の使命なのだ…それを見ず知らずの君に託したい…私の家に伝わっている…不死とは使命の印である…その印が現れたものは不死院から王の地に至り目覚ましの鐘を鳴らし…不死の使命を知れ…と」

 

「不死の…使命」

 

「良く…聞いてくれた…これで希望を持って死ねるよ…あぁそれと…これも君に託して置くよ…不死の宝…エスト瓶だそれと…これも…」

 

彼はそう言い震える腕で僕に鍵を手渡して来た。

 

「ここの出口の鍵だ…君に…押し付ける形になってしまって済まない…しかしもう長くない…死んだ後…君を襲いたくは無い……そうだ…君にささやかだが旅の選別だ…」

 

彼はそう言い自らの剣を渡して来た。

 

「死する私には不要の代物だ…君に託そう…ここを出たら君は自由だ…私の言葉は最悪無視して貰っても構わない…だが…もし…君に少しでも気があるのなら…どう…か…」

 

彼はそれだけ言い残し意識を手放した…

 

こんな事言われたらやるしかないじゃないか…受け継いだ剣の柄を握りその場を後にする。穴を出かけたところで亡者を倒した時と同じ音がしたが振り返る事無く進む…まだ僕には倒さなければならない敵が残っている




故知らぬ騎士の直剣

不死院で使命を託した騎士の直剣。とても強い祝福が施されており使用者の『意志』によって攻撃力を増す。
故知らぬ彼が最後に託したこの剣は正しく彼の気高き『意志』そのものであろう。

フロムテキストって考えるの難しいっすねやっぱフロムはすっげぇや!(大尊敬)

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