皆さんが納得するような内容に出来たか不安でびくびくしています。感想、待ってます。
Side立香
レフが消えていく。そしてそれを意にも介さず読書に耽るVと呼ばれた男。あの男は見覚えがあった。私が居眠りでオルガマリー所長に管制室から追い出された時、ふと目に付いたのが彼だった。彼の周りの人間はそれは個性的で眼を引く人達であったがそれでも尚、印象に残っていた。それは何故か。
寝ていたのだ、彼だけ。あの緊迫していた管制室で悠々と寝ていたのだ。私はシミュレーションの副作用で眠くなっていたが彼はガン寝だった。
「Vさん! ご無事だったんですか!?」
マシュが彼に駆け寄る。知り合いみたいだ。私もマシュを追いかけVに近付く。
私達が近寄るとVさんは読書を止め、本をマシュに手渡して来た。
「落とし物だ」
マシュに手渡された本は表紙に大きく『V』と印刷されており、それだけではどんな本なのかは分からなかった。だが、それを手渡されたマシュはとても大事そうに本を受け取っていた。
「そういえば、Vさん。貴方は爆発の中心に近かった筈です。どうやってあの場から脱出を?」
マシュの意見は尤もだと思う。私は管制室から出ていたから被害は免れた。そもそも私が管制室に駆けつけた時には、マシュ意外は見るも無惨な姿になっていた。
「見えるもの全てが、真実とは限らない。覚えておく事だな」
Vさんの言葉に私とマシュは首を傾げる。彼が何を言っているのか、真意が分からなかったからだ。
「お前は藤丸立香、だったな」
「は、はい!」
突然声を掛けられた事に驚く。私とVさんに接点は無い。ましてや何故Vさんが私の事を知っているのかが不思議だ。気持ちを身構えてVさんの言葉を待つ。
「良く、気付いたな」
「へ?」
思わず呆ける。何に? 思い当たる節はない。深く考えようとした矢先、洞窟内が揺れ、天井から瓦礫が落ちてくる。
「先輩! もうすぐ特異点が崩壊します! レフ教授を倒した今、レイシフトが開始される筈です! 持ちこたえて下さい!」
マシュが叫んだと同時に通信が回復しドクターの声が聞こえる。
『こちら管制室、聞こえるかい!? そっちの特異点は既に崩壊し始めている! もうすぐレイシフトを開始されるからなんとか持ちこたえるんだ!』
ドクターがそう言った瞬間、意識が引っ張られる感覚と共に目の前景色が消えて行った。そして私はいつの間にか意識を失っていた。
Side『V』
それは突然の出来事だった。魔術師達がレイシフトのコフィンに入り、オルガマリーが開始の宣言をした直後。中央管制室は炎に包まれた。
「くッ━━━!!」
腹部に刺さった破片を引き抜く。凄まじい痛みが伴うがそのままにしていれば別の症状が発症する。
辺りを見回す。管制室内は火の海で、まだ辛うじて生きているであろう生存者は瓦礫の下敷きになっている。我ながら居眠りで一命をとり留めた事に自嘲する。
『レイシフトを開始します』
気がつけばレイシフトが自動的に開始されていた。意識が引っ張られる事に不馴れな感覚を抱きながらも流れに身を任せていった。
目を開けると火の海だった。管制室と変わらない景色にため息をつきながらも立ち上がる。腹の傷が痛むが動けない程ではない。
「フー、久しぶりの外だ。あっちにいたときはユキばっかだったケド、こっちは炎ばっかダゼ」
いつの間にか出ていたグリフォンを無視し、建物が無いか探す。辺りは瓦礫だらけだが、現代の看板や電柱などが確認出来た為、2014年とそう離れた年ではないだろう。
「オイ、V! アッチにまだ燃えてない家屋があるゼ! もしかしたら包帯とかあるかも知れネェ!」
「よくやった。ではそちらに向かうとしよう」
いつの間にか索敵と散策を終えていたグリフォンに感謝の言葉を述べる。コイツはうるさいのが玉に傷だが、有能だ。
家屋に侵入し物を物色する。結論から言うと何とか最低限の治療道具は確保できた。今出来る処置を患部に施し一息をつく。
「これからドウスルヨ。サーヴァントと戦おうにもサシじゃ勝てねぇゼ?」
「わかっている。……状況を打破するには元凶を叩く方が早いか」
先程から南北の方角から大きな魔力を感じる。ここまで大きい反応は現世では初めてだ。恐らくこの地を特異点足らしめているモノがソレだろう。
「イイネェ、勝負は速攻に限るゼ」
だが、正面から勝負を挑むつもりはない。それは無謀という物だ。今の戦力なら奇襲を仕掛け暗殺するのが賢明だ。敵を欺くのは得意だからな。
細心の注意を払い街の中を進む。辺りは瓦礫だらけで足元が覚束ないが音を立てぬ様に注意する。
「ン? どうした?」
進んでいる途中、突然Vがその歩みを止め、物陰に隠れ、進む先の様子を見始めた。グリフォンはVの見ている物を見るために物陰から顔を覗かせる。
「ン~? ありゃあレフじゃねぇカ。何で此処にィ!?」
お喋りが止まらないグリフォンをVは杖で制する。そしてグリフォンに静かにするようにサインを送った。
「何故ヤツが此処に……」
レフ・ラノイールは爆発が起こった時に中央管制室にいた筈だ。あのとき爆発はオルガマリーの真下とレフの近くで二回起こった。運良くその二つから離れていた俺は軽症で済んだが爆心地の近くにいたヤツが外傷一つ無しに生きているとは考えづらい。
(ならば可能性は二つか)
一つは奇跡的に生き残っていた可能性。はっきり言ってこれは現実的ではない。それに今あそこにいるレフは外傷一つ、ましてや服にも傷や汚れが見受けられない。
そして二つ、ヤツが爆発を起こした張本人である可能性。俺が疑っているのがコレだ。
(尾行するか)
幸いヤツは此方に気付いていない。後をつければ自ずと真実は解るだろう。
レフが離れていく。その足取りは軽やかで迷いがない。そして彼が向かう先はこの特異点の元凶がいるであろう方角だった。
辿り着いたのは洞窟だった。レフは尾行の確認もせず洞窟内へ臆せず入っていく。つい先程までこの洞窟からは凄まじい魔力の濁流が洩れていたが今は収まっている。となるとこの洞窟の先に元凶がいるというわけだ。
「アイツ尾行なんかこれっぽっちも警戒していなかったナ」
「それだけ心に余裕があるのだろう。……ん?」
洞窟の入り口を眺めていると少し進んだ先に本が落ちているのを見つけた。その本を拾い表紙を確認する。
「コレ、お前が嬢チャンにあげたヤツじゃネェか」
ウィリアム・ブレイクの詩集。かつては肌身放さず持っていたが数年前にマシュ・キリエライトへと贈ったものだ。それ以来、彼女も肌身放さずこの本を持っていた。
「生きていたか」
思わず口角が上がる。この本が此処にあると言うことは彼女が此処にいたという事。それにマシュを含め三人の残留魔力が確認出来る。
「行くぞ。さっさと黒幕を倒して帰るとしよう」
「ソウダナ、早く帰ってポップコーンが食いたいゼ」
洞窟内へと足を踏み込む。こうしてV達はレフの撃退に挑むのであった。
Vの性格をちゃんと表現出来たか不安です。ですが自分的には納得して書けたと思います。設定は近々出すと思います。