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射し込む朝日に眼が覚める。昨日の夜に焚いていた焚き火も消えており少しばかり煙を出している。ふと、立ち上がろうとした時、初めて太腿の重みに気付いた。セイバーが太腿を枕にして寝ていたのだ。起こさない様に頭を下ろし、立ち上がる。そして朝陽が顔に当たり手で遮る。
朝は嫌いだ。
自分が影に生きる者だからでもあるが、自分の全てを照らされて丸裸にされているような感覚を覚えるからだ。だがどうやっても太陽は昇る。誰にも止める事は出来ない。どうしようもない事に腹を立てても仕方がない。
気晴らしに散歩をすることにした。寝ているセイバーを置いて来てしまったが問題は無いだろう。襲われても自分の身は自分で守れる筈だ。
暫く歩いた所で空腹感を覚える。そういえば昨日晩食べていなかったな。
そう思案した所で口笛を吹き、シャドウを呼び出す。数秒後口元に小さな猪を咥えたシャドウが茂みから姿を現した。
「よくやった」
シャドウと目線を合わせながら頭を撫でる。シャドウは嬉しそうに眼を細め大人しくしている。そして思い出す。セイバーの朝食が無いことに。
「……子供の猪がいるという事は親も近くにいる筈だ。狩るぞ、シャドウ」
シャドウは直ぐに立ち上がりその姿を地面の中に溶け込ませていった。
頭部から伝わる硬い感触に目が覚める。身体を起こし辺りを見回すがマスターの姿は無い。確認した所で近くの茂みからマスターと子猪を持つトリ公、そして大きな猪を引き摺るシャドウが現れた。
「朝食にするぞ」
マスターの言葉に反応して腹の虫が大きな音を立てた。
「腹ペコセイバーチャン! 食料取ってキテやったんだからカンシャしろよ!」
次いでに腹も立った所で立ち上がる。そして子猪を受け取ると共にトリ公の脚を掴む。
「へ?」
「これはこれは、食料が自ら来てくれるとは。トリ公の奉公心も大したモノだな」
「ギャーッ! またこの流れカヨ!! 離しやがれーッ!」
「……グリフォン。少しは学習しろ」
掴んでいたトリ公が一瞬にしてマスターの身体に戻っていく。やはり昨日の一心同体の言葉に間違いはないようだ。
「食料は自分で取りに行かせるんじゃなかったのか?」
「お前だけならな。この食料は俺も食べる。軽い運動がてら狩りに赴いただけの事だ」
無造作に猪を置いたマスターは懐からナイフを取り出し、料理に取り掛かった。味は、やはり薄かった。
「それで、今日は何処に行く?」
最後の肉を完食し、積み上げられた骨へと棒を投げる。マスターはその様子を呆れた様に見ており、おもむろに杖を先程マスターが現れた茂みに指し示した。
「狩りの途中、道を見付けた。恐らく、軍隊か何かがあの街から撤退した時に使った道だろう。昨日見付けた廃墟の方角にも繋がっていた。反対方向に向かえば次の街に辿り着くはずだ」
マスターは立ち上がり焚き火の火を消す。そして私に顔を向けると新たな
「今から次の街へ向かう。戦闘になる可能性がある為準備はしておけ。接敵した場合、相手の戦力を鑑みて臨機応変に対応しろ」
「了解した」
私達は茂みを抜け道に出ると、マスターは変形したシャドウに乗って高速で移動を開始した。それを追う形で私も走り出した。
二日前
「お、お願いしますッ! どうか命だけはッ、おぉ、神よ、どうかお」
「あら、もう終わってしまいましたか」
命乞い空しくファヴニールによって潰されたこの街最後
神なんて存在しないのに。そんな不確かな存在に助けを求める人間がなんと滑稽か。何よりもこの惨状が示してくれている。
神を信じて走り続けた嘗ての自分に神は何もしてくれなかった。代わりに待っていたのは火刑という非業の死。
聖女と持て囃されていた女は魔女の烙印を押され、石を投げられ、罵倒を被った。
憎い。憎い憎い憎い憎い憎い。
私はフランスの為に戦ったのに! 神の為に戦ったのに!
許さない。赦さない。
壊してやる、このフランスを。殺してやる、この地にいる全ての人間を。そしているのなら、神だって燃やし尽くしてやる。
「マスター、鏖殺は終わった。次はどうする」
自らのサーヴァントの声によって思考が呼び戻される。もうこの街には人間はいないだろう。ならば次だ。この街を襲撃した時に真っ先に逃亡した軍隊がいた筈だ。それを辿れば次の街へと向かえる。更なる鏖殺が行える。更なる復讐が出来る。
「逃げたフランス軍を追いましょう。彼等の行きつく先は街の筈です。そこで更なる鏖殺を行いましょう」
笑う、狂気的に。嗤う、嗜虐的に。
「はぐれの討伐に向かわせたアーチャーはどうするの?」
「現状維持です。彼女がやられればそこに向かい、敵を一網打尽にする。作戦は変わりません」
ファブニールが飛び立つ。更なる血を求め、更なる肉を求めて。
「マスター、止まれ」
突如前に躍り出たセイバーによって進行が止まる。彼女の直感は侮れない。故に止まる。
セイバーは前方を睨む。そして痺れを切らし言葉を発した。
「……ふっ、出てこい。獣は臭いで解るぞ」
セイバーの挑発に応えたのは、矢の雨だった。
直ぐ様シャドウをドーム状に展開し矢を弾く。外ではセイバーが自力で矢を弾いていた。
やがて弾幕は鳴りを潜めそれと同時に矢の飛んで来た前方へ飛び出す。
今の攻撃で敵がアーチャーだと解った以上、距離を離しておくのは悪手だ。いくらセイバーといえど、接近しなければその力は発揮できない。
即興の作戦の思考をセイバーに送る。セイバーは了解と一言だけ残し俺の前で迫り来る矢を迎撃する。その間にシャドウを出現させ杖を渡し、茂みに散開させる。
敵の具体的な居場所は判っていない。手掛かりとなるのは飛んで来た矢の方向だけ。グリフォンを出現させ上空からの索敵も考えたが、アーチャーのサーヴァントにとっては只の的でしかない。結果は徒労に終わるだろう。
だが、手掛かりはそれだけで十分だ。
「距離を詰めるぞ、セイバー」
移動の速度が上がり、脚の回転が早くなる。この状態で走るのはあまり得意では無いが、戦いという高揚で息切れというものとは縁遠くなっている。
そしてセイバーに第二の
「セイバー、相手を挑発しろ」
先程から見ていたが、攻撃が妙に荒々しい。恐らく先程のセイバーの挑発が琴線に触れたのだろう。だが腐っても英雄、百戦錬磨の戦士だ。此方が近付けば相手もまた後方へ下がる。だから挑発で足止めを行い、出来るだけ距離を詰める。既にシャドウは200メートル先にいるが敵を確認できていない。
「出来るだけキツイ挑発をして足止めをしろ。その間にシャドウが見付ける」
「了解した」
走り俺を守りながら相手に挑発する。受肉しスタミナという概念と切っても切り離せない状況になっても、セイバーは俺の無茶苦茶なオーダーに対応している。現在俺の力でブーストを施しているがいつスタミナ切れを起こしてもおかしく無い。
セイバーの限界は見積もって3分。3分で見付けきれなければ俺達の負けだ。逃走するにもアーチャー相手に逃げ切れる要素がない。つまり、後がない。せめてアーチャーでなければ俺でも戦えた。
シャドウから痕跡の情報の報告があった。獣の臭い、と言ったが実際には作り物の狂気の匂いだったみたいだ。あとはどれだけ足止めを出来るかが肝になる。
セイバーに挑発の材料を伝達する。
敵は狂化を施されている。見敵必殺の如く俺達を襲った事。昨日の廃墟に矢があった事。これを加味し、敵サーヴァントは恐らく元凶が召喚したサーヴァント。はぐれならばこんな殺意の籠った攻撃を最初からしてくるというのは考えられにくい。
以上の事を伝達し、セイバーは口を開く。
「無様だな。英雄としての誇りは無いのか? まるで理性の無い獣、無辜の民に手を掛け、施された狂気によがり狂っているようだな。ハンッ、冴えが無くなって来てるぞ? 図星と来たか」
明らかに攻撃が雑になっている。だが威力が増し、セイバーの剣から火花が多く散る。終わりが近い、だがもう少しだ。もう少しで見付かる。
「子供にも手を掛けていたな。それが英雄のすることか?」
決定打。向かって来た矢を見てそう確信した。恐らく最大威力の矢。今のセイバーでは弾き返す事も出来ない程のだ。
神経が研ぎ澄まされ、景色が遅延する。やがて凶矢がセイバーに近付き、それをセイバーが迎撃しようとした瞬間。
起死回生の機会が舞い込んだ。
中途半端だけどここまで。