IF.あり得たかもしれないシカマルと多由也   作:清水縁

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空想、想像、夢幻

 

 

忍界大戦

 

木の葉だけの忍達の力だけではなく

 

砂、岩、霧、雲、雨、鉄

 

それら全てが同盟を組み戦う壮大な戦争

 

うちはマダラを倒す、ただそれだけのための戦い

 

だが、何よりも困難な戦いだった

 

穢土転生の忍はまだ何とかなった

 

だけど終盤、うちはマダラとの戦闘では

 

…結局、俺はまるで役に立てなかった

 

ナルトの援護にまわるのが最善の行いだったとは思う

 

あれだけ努力しても救えない命があった

 

多くの仲間が死に親父も死んだ

 

掛け替えの無いものを多く失い

 

俺の頭の中は何もかも絶望に向かっていった

 

ナルトがヒナタに叱咤されて立ち直ったように

 

あの時、多由也に叱咤されなければきっと

 

あの場所から俺は動けず無力さを味わいながら

 

ただ無意味に死んだだろう

 

そう思った

 

あの時、俺は心の底から救われた

 

もっと先へ

 

せめてナルトが戦いやすいように

 

俺は戦場を駆け抜けた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

いつか親父さんが言っていた

 

『多由也ちゃん、アイツ…シカマルの本質は臆病でな?有効でも安全を第一に考える』

 

『存外、気づかれてないつもりなんだろうが負けたく無い、失いたく無いと心から思ってる』

 

……なぜそんな事を私に言うのかと尋ねた

 

『ん?そりゃ俺が死ぬかもしれないからさ』

 

『作戦本部とは言え死ぬ可能性はある、俺なら頭から叩くしな』

 

『だから俺がいなくなったらあの未熟者を頼む』

 

『君にしか、できない事だからね』

 

……本当に殺されてどうするんだよシカクさん

 

シカクさんが発案した最期の策は上手くいった

 

だけどアイツは私からみれば此処で死んだ方が楽だと言う顔をしていた

 

苦しくて、辛くて、泣きたくて、だけど泣いても帰ってこないから泣かない

 

いや、泣けないって顔だった

 

前に進まなければ許されない、そんな顔をしていた

 

少なくとも私にはそう見えた

 

気持ちは理解できた

 

怒りも苦しみもその分、アイツに言葉にしなければいけなかった

 

何を言ったかは覚えていない

 

ただ前に進むための後押しを

 

だから生きる為の一押しを怒鳴りつけるように語った

 

シカマルに生きていて欲しいから

 

私は必死に喉が潰れるくらいに声を張り上げて

 

感じたことを、思ったことを私なりの言葉にして

 

シカマルが立ち上がれるように言葉を伝えた

 

それが効いたかはわからないが

 

死んだ目は生き返り

 

アイツは安心したような、決意が決まり覚悟を決めた顔をして

 

敵を見据えナルトをひたすらに援護した

 

可能な限り進むために

 

私もアイツも希望にかけてみた

 

みんなで勝とうと必死になった

 

無限月詠なんて反則技が出るまでは

 

ーーーーーーーーーー

 

 

明るくて心地良い場所にいた

 

場所の名前までは覚えていなかったが

 

ここが木の葉隠れの里にある

 

あのお気に入りの場所だと気付いたのはすぐだった

 

ふと気づくとシカマルが私の隣を歩いていた

 

「なにぼんやりしてんだよ」と揶揄うように笑いながら

 

シカマルは少し今より歳をとって顔つきも少し変わっていて

 

なかなか男前って感じの面構えになっていた

 

そして私の好きな綺麗な景色と

 

美味しいご飯と鳥の声

 

そして

 

私の『幼い頃にそっくりな少女』とシカマルと私で食事をとっていた

 

この子は誰だろう?と私が考えていると少女は口を開けて聞いてきた

 

「お母さんどうかしたの?」

 

……は?お母さん?つまり私の娘?

 

「お父さん~お母さんがいつもより変だよ?」

 

「だからな?母親に変とか言うなよ…お前の事を産んでくれたんだぞ?」

 

「でも調子が悪いのか多由也?なんかお前、少し怖い顔してるぞ?」

 

まるで昔みたいなとシカマルは私に話しかけてきた

 

…コイツの言う昔とはいつだろう?

 

「いや、なんでもねぇよ」

 

「それよりも飯をさっさと食べようぜ?『縁』」

 

私は驚いた自然と口から出た言葉に

 

縁とは誰だ?この少女の名前か?

 

なぜ私はこの少女の名前を知っている?

 

なぜ違和感を感じない?

 

まるでこれはかつて私が望んだ…家族との温かさで

 

『惚れた男の子供を産んで幸せな家庭を作る』

 

これは私にはもう望むことは許されず

 

とうの昔に諦めた願望だった筈なのに

 

「おりゃー!!」

 

「痛え!?」

 

「こら!!多由也をなんで急に殴った!?というかなんで避けねぇんだよ!?」

 

「なんか顔が赤くてムカついたから!!」

 

…赤いのか私の顔

 

「いや、理由になってないからな?そこに正座」

 

「嫌です」

 

「なら心から謝罪な」

 

「………」

 

「謝罪な?」

 

「…怒ってる?」

 

「もちろん怒ってる、家族を殴る時は道を間違えた時だ」

 

「…解った謝る、お母さん御免なさい…」

 

「…はぁ、今回はお父さんに免じて許してやるよ」

 

この子の気質を理解できた気がする

 

「全くこのファザコン娘が」と小声で話す

 

「私はファザコンじゃないです!お父さんが好きなだけです!!」

 

娘は器用に小声で叫ぶ

 

「何話してんだ?」と聞いてくる

 

私の『旦那』には誤魔化すように何でもないと笑う

 

「…いつかお父さんは私が貰いますからね!」

 

小声で私に話す『娘』が愛おしくて

 

「できるものならやってみな」と

 

私は不敵な笑みを浮かべながら愛しの娘に伝えた

 

最初に感じていたふとした違和感など

 

既に感じなくなっていた事には気がつかなかった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

…ここは?

 

なんで俺は実家にいる?

 

うちはマダラはどうなった?十尾は?

 

「おい、なに腑抜けた面してるシカマル」

 

親父…?いや親父は死んだ筈だ

 

「…?なんだよ幽霊でも出たような顔しやがって」

 

…なんだこれは

 

「それより早く多由也ちゃんの所に行ってやれ、母ちゃんに怒られるぞ?」

 

笑いながら去っていく親父を見送り

 

なにか違和感を感じた

 

親父はあそこまで老けていたか?

 

いや…もう親父も結構な歳だ

 

なら『白髪が生えててもおかしくはない筈だろう』

 

目の前にある将棋盤の駒を片付け

 

『お袋と多由也に呼ばれた場所を目指す』

 

ふと違和感を覚える

 

なぜ俺は『2人に呼ばれたんだったか』と

 

「遅い!!なにやってたのボンクラ息子!!」

 

「義母さん無駄です、コイツは集中したら延々とそれに没頭しますから」

 

「…どうせ待ってる間に縁側で詰将棋でも指してたんだろ?」

 

そんな軽口を叩きながら多由也はほんのりと顔を赤らめている

 

お袋は頭を抱えながら

 

あんたって子は…と頭を押さえながら小声で呟いている

 

…聞こえてるからな?

 

「それで?」と多由也は聞いてきた

 

「何がだよ?」と俺は返す

 

「似合ってるかどうかだよ!」と怒りながら拗ねる様子を見せる

 

多由也に言う言葉は決まっていた

 

「そりゃ似合ってるよ」これは間違いなく俺の本心

 

…だけどこの頭によぎる違和感はなんだろうか?

 

お袋が『え…?いやそれだけ?』と言いたげな顔をしている

 

似合っているし綺麗だとは心の底から思う

 

ただ『白無垢』なのかは理解できない

 

まるで祝言でもあげるような…そんな格好と雰囲気

 

ふと玄関から物音がした

 

イノとサクラ、ヒナタが入ってくる

 

女が3人揃うと姦しいと言うが…確かにやかましい

 

まぁヒナタを除けばいつもの光景だ

 

良かったね!とサクラが言う

 

本当にアレでいいの?もっといい男居ると思うよ?

 

イノは揶揄うように言う

 

ヒナタはおめでとう!!と嬉しそうに微笑んでいる

 

「あー少しいいか?ソイツと結婚できないなら生涯独身のつもりだ」

 

だから水を差すのをやめろと暗に伝えるよう

 

『多由也が皆んなに向かって言う』

 

…正直なところこの状況に理解は追いつかない

 

ただ…何故か納得している自分がいる

 

その事も不思議だ

 

だけど俺は次の瞬間に自分の口から出た言葉に俺は驚いた

 

それは俺には永遠に伝えられないだろうと思っていた言葉だったから

 

「俺もお前と結婚出来ないならよ、生涯独身のつもりだ」

 

「それに惚れた女は大切にする、俺の覚悟は甘くねぇよ」

 

その言葉は本心から来るものだった

 

偽りのない本音だった

 

そうだ俺の覚悟はとうに決まっている

 

そのために柄にも無い努力をして護るための力をつけた

 

いつの日か思った願い

 

『俺は多由也と人生を添い遂げたい』

 

そのために俺は多由也と出会った

 

甘ったれてたガキの頃からひたすら努力した

 

そして目に見える人を助けられる、護れる力が欲しかった

 

俺は些か欲張りになってきたなと笑った覚えがある

 

既にあの森から、あの任務から帰ってきた時から

 

『雲になりたい』なんて思わなくなっていた

 

だから喧しくしている大切な友人達に告げた

 

「心配すんな、だけど俺がコイツを不幸にするような真似をしたらぶん殴って目を覚まさせてくれ」

 

まあ、その前に多由也にぶっ飛ばされるだろうけどなと

 

少し揶揄うように笑いながら皆んなに言った

 

…俺は決してコイツを不幸になんてさせない

 

「ずっと笑っていて欲しいし、誰よりも幸せでいて欲しいからさ」

 

だから頼むと頭を下げ、古くからの友人達にそう言った

 

まったく…人任せかーと笑いながら言うイノや

 

惚気かい…しゃんなろーと苦笑いをするサクラ

 

うん!任せて!!と意気込むヒナタ

 

「そこにいるお前らもだからな?」

 

「殴ってでも目を覚まさせてくれよ」と少し前から襖を覗くダチ達に言う

 

…いや全員何も言わず親指を立てるなよ

 

しかも打ち合わせをしたかのように同時にするな

 

おいキバお前のそれはくたばれって意味のハンドサインだろうが!

 

…本当、良い友人達だよ全く

 

俺は幸せ者だなと笑っていた

 

俺はそんな幸せを享受した

 

最初の違和感なんて既に何処にも無かった

 

そこにあるのは『叶うことを夢見た景色』

 

それだけだった

 

 

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