「多由也ちゃんウチのシカマルを貰ってくれない?」
……はい?と硬直した私は悪くない
いきなりの発言と好きな男を勧めてこられたのだ
硬直しなかっただけマシだろうと思った
「あの子もそろそろ良い年なのに決まった女を連れて来ないから少し不安でね…」
…どうやらヨシノさんは知らないらしい
アイツ、奈良シカマルは存外モテているという事を
仲間に優しく細かな配慮ができる
大人になって顔も良い面構えになってきた
これでモテないとなれば周りの見る目がないか
その気が全くないという事だろう
好きな女が居るのか、それとも忘れられない女が居るのか
そのどちらかだろうと踏んでいる
砂のテマリとか言う女が良く木の葉に来る
使者としてだが気があるのかもしれない
それどころか『自称』彼女が沢山いる
自称とはシカマルが全くその気が無く
興味のかけらも無いのに関わらず
私は奈良シカマルの彼女だと言いふらした奴らの事だ
それに対して『変な噂を流すのは辞めてくれねぇか?』と言った
そこまでアイツが言うのなら何かしら理由があるのだろうと踏むのが普通だ
自称彼女達は捨てられたれとか言いふらしたそうだが
お節介なサクラやイノにテンテン
気弱なヒナタまで参戦し巫山戯るな!!と怒鳴り散らしたそうだ
…まあ誰も信じていなかった上に同情されたのはシカマルだったらしいが…
シカマルの友人は人を陥れるような行いを嫌う
実に不愉快だったのだろう
それはシカマルも
不本意ながら私もそうだった
まあ私が不本意だったのは別の理由もあったからだが
「…シカマルならそれなりにモテてますよ?それこそ職場の奴等からチョコとか貰ってるみたいですし」
「それとコレは違う話よ?選り好みで時期を逃すのはね…」
「選り好みをしているなら好きな奴がいるんじゃないんですか?」
チクリと胸が痛む
「そうかもしれないけど…」
「アイツの人生です好きなヤツと結婚して欲しいと思います」
「多由也ちゃんはシカマルの事は嫌いなの?なら諦めるけど…」
ヨシノさんは私の痛いところをついてくる
「嫌いではありませんよ」
ただ
「アイツが私を好きだとは思えないんです」
アイツのためにお洒落をした
料理の修行も裁縫も花嫁修行をした
だけどそのたびにアイツは寂しそうに見ていた
まるで父親のようなそんな視線が悲しかった
大声でお前のためにやってるんだぞ!と言いたくなるほどに
だけど言う事はできず
ただアイツのそんな顔を見ながら
私は努力した
アイツと共に居たいと思っている
それでも怖いのだ
拒絶も今の関係が壊れるのも
心地よい居場所に居られなくなるリスクを恐れて前に進めない
愛して欲しくて
愛をささやいて欲しくて
愛を捧げたいのに
ただただ恐ろしいのだ
アイツからの拒絶という可能性が
「どうしたの多由也ちゃん?顔色悪いわよ?」
ああ恐ろしい事を思ったからだろう
「大丈夫ですよ、それより食事の支度をしませんか?」
もう日が暮れ始めた
大袈裟なリアクションを取ってヨシノさんは準備を始めた
アイツの嫁になってくれないか?か…願ったり叶ったりな事なんだがな
それはアイツに告げる事が出来たら考えよう
それまではこの気持ちは閉まっておこう
それが私の出した答えだった。