◆ シカク視点
『シカマルは任務中、可能な限りリスクを取らず可能な限り安全策を選ぶ』
それが俺の見解だった
音のあの子を連れてくるまでは考え通りの戦い方だった
ある日、久々にあいつと将棋を指すと差し方が変わった事に気づいた
リスキーでありながらその分、返し手を間違えた手で返したなら
その局は負けるかもしれないという素晴らしい一手だった
最初はたまたまかと思ったが3局目から理解した
コイツはコイツの可能性を探っていると
その理由があの子である事も
アイツが無難な生き方を辞めたのはその辺りからだろう
シカマルは親父の兵法書を貸してくれと頼んできた
テメェの爺さんの話に興味を持たなかったコイツは何を言っているんだ?
そんなふうに思った
だが、気持ちは解る
親として忍びとして親父の兵法書を『快く』貸してやった
…まぁ意地が悪かったのは認める
だが俺はこの時シカマルに期待をした
【もしかしたら】と俺はシカマルの背中に自分の父を幻視した
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◆ 多由也視点
あの森での戦いは扇子女の横槍で有耶無耶になったが
あの時の結果、そのもしもを考える
あのまま続けていればシカマルは間違いなく私に殺されていただろう
それを嫌だと思うようになったのは私が甘くなったからだろう
アイツはいつの日か私に言った
『俺は男だからな、いつまでも立ち止まるわけにはいかねぇ』
『怯えて進まないなんて、もう許されねぇ』
『…迷惑かも知れねえけどな俺はお前により一層
生きていて欲しくなった』
……なんて我儘なんだろうと頭を悩ませた
シカマルはいつも我儘だ
敵である私を木の葉に連れ帰った
私の呪印を火影に頼み封印してもらい実家で監視下に置き
かつての主人、大蛇丸の研究施設の場所を聞き出し
それを小隊結成しひとつひとつと潰し回った
そのお陰で有能性を示せた事のみが、かつての私とシカマルが得た収穫だった
私は戻れば殺されることは理解していた
だから
『シカマルに協力した』
よくよく考えればあの森で私は詰んでいたのだろう
戻れば死が、捕虜になれば生き長らえる
その2択しかなかった
けどその2択で私は今という幸せを享受している
家族の温もりと安らぎ、愛おしさをここで思い出した
かつての私の家族と奈良家の家族は違うが
この気持ちは家族とでしか味わえない
そんな宝物なのだと思う
あの時、シカマルの手を取ったのはきっと必然だった
自分の中の本能に従った結果だったんだろうと今は思う
さて、そろそろシカマルが帰ってくる筈だ
アイツが与えた安寧な日々と退屈な時間の埋め合わせをして貰おう
「たでーま」と気の抜ける声が聞こえる
「おいお前がどれだけ修業しようと良いけどな?
お前は忘れてるかも知れねえからいうけどな…」
「?おうなんだよ?」
「ウチは外に1人じゃまともに出れねぇんだよ!
…つーわけでいまから暇潰しに付き合え!!」
「マジかよ…せめて飯の後にしねぇか?」
「ほー?そうか…ウチの自由を奪った事に対する
罪悪感なんてお前にはその程度なのか…」
「だー!!解ったよ!ただしだ!!お袋にキレられない程度に済ますからな!?」
「当たり前だろ?何言ってんだお前?常識がねぇのか?」
「今のお前に常識を語られたくねぇよ!!」
…こんな日々が私は好きだ
シカマルの優しさと温かいコイツの心が本当に好きなんだと思う
いつの日か平和な世になったら私はこの里を去ると決めている
その日はきっと近いのかも知れないと、私の心によぎる
だけど何故かそんな時でも私はここに居る
なにも根拠も無いのに何故かそう思ってしまった。