星の漂流者   作:4j

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はじめまして。投稿頻度は多くないですが、のんびり楽しんでもらえたら嬉しいです。


序章

 凶報を受け、女は険しい顔でチョコボを走らせていた。現在地から距離があることが非常に悔やまれる。

 目指す国の方角からは濛々(もうもう)と立ち上る黒煙が確認できる。無傷ではないだろうことが容易に察せられた。

 しかし、今は被害が小さいことを祈る他ない。

 

「…急ぐよ」

 

 声に反応したチョコボが鳴く。それに続くように追従する白魔道士も首肯する。

 女はぐっと前傾姿勢を取り、脚でチョコボの脇を締め地を駆けた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 事の次第は数時間前に遡る。

 魔法国家ミシディアでは、試練の山の異変を察知していた。

 以前より死霊やアンデッドの巣窟と化してはいたが、突如山の頂上に暗雲が立ち込めたのである。

 瞬く間に山の中腹まで暗闇に飲み込まれた。そこから淀んだ魔力が放出され、ミシディアで観測出来る程に強大かつ禍々しいものと成ったのだった。

 穢れた魔力は大地を侵食し、生態系を崩壊させる。それを恐れた長老、ミンウは原因究明と打開を指示した。

 

 試練の山は聖騎士を目指す屈強な武人が幾人も挑み、殆どが望み半ばに力尽きゆく過酷な大地。足を踏み入れるだけならまだしも、異常事態である以上、実力ある者に絞られた。

 そこで浮上したのがミシディアに居候する旅人、ヴァレンシア・クレシェンドである。

 日頃より用心棒やミシディア周辺に出没する魔物の討伐も担っていた彼女ならばと白羽の矢が立った。

 

 その指示に彼女は首肯し、浄化の力を有する白魔道士を連れて試練の山を登ることとなる。

 

 

 その試練の山にて、至るところで出現する魔物は従来確認している数を大幅に越えていた。

 以前にも浄化のため山を訪れていた白魔道士は首を傾げる。

 元より死霊の類が多く集まるこの山は、ミシディアの魔道士によって定期的に祓われ清められるのが慣例となっていた。

 既知を大きく上回る出現数。山の生態すら狂わせる異常と判断するには容易かった。

 千切っては投げ、千切っては投げて一掃した地に魔方陣を描いて浄めていく。とうに数を数えることは諦めた。

 一通りの浄化を終えて一息ついた時だった。

 

「!!」

 

 パキリと 音がすぐ近くで鳴った。

 驚き首から下げていた魔石を取るとそれはひび割れ、光沢は消え失せていた。見つめている間にそれはさらに音をたてて破裂し砕け落ちた。

 これはもしもの時にと渡されていた、謂わば御守りである。二対で意味を成し、互いの安全を示すもの。それが砕けるということは。

 

 あちら側(ミシディア)良くないこと(不測の事態)が発生したことを意味する。

 

 急ぎ伏せていた顔を上げ山上よりミシディアを確認する。

 ミシディア周辺で立ち上る黒煙と赤い帆をはためかせた船が去って行くのを視認出来た。

 その特徴ある船に白魔道士は言葉を失った。

 同盟国であるはずの、バロンの飛空挺以外の何物でもなかったのだから。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

 漸く到着したミシディアは煙と火薬の臭いが充満していた。建物は倒壊しているものもある。出発時と見違える光景だが、思っていたほどの激しい損壊ではなかった。

 里の中での爆撃は最小限に抑えられ、どちらかといえば里を囲む森林地帯に多く被害を見受けられた。

 

「里への攻撃が目的ではないのか」

「そのようですね、でなければミシディアは壊滅していたでしょう」

 

 互いの見解を述べると同時に一帯を観察する。

 そこらで怪我人が呻き声をあげて(うずくま)っており、その傍らで白魔道士が治療を施している。

 軽症の者は一ヶ所に固まってポーションを受け取り、応急処置を終えた重傷人は浮遊魔法で浮かせ、怪我を労りながら祈りの館へゆっくりと移動させていく。

 

 同伴していた白魔道士もヴァレンシアに一礼の後、怪我人の元へ駆け出した。

 直後不意に視界を横切った小さな影を見つけ、声をかける。

 

「ポロム」

 

 声を受けて小さな白魔道士は足を止めた。

 

「ヴァレンシアさん!ご無事で!!」

 

 とてとてと駆け寄って来た少女は、ほっとしたように顔をくしゃくしゃにして笑う。

 幼い少女の顔には既に疲労が見えた。

 

「怪我はない?」

「はい、私は何ともありません。けれど、あちこちに怪我人がいて治療が追い付かないのです」

 

 見上げるままでは首が辛かろうとヴァレンシアはその場にしゃがみ様子を聞くも、予想出来る状況にあるようだった。

 この幼くも優秀な白魔道士も駆り出されている。それだけでおおよそ事態は読めていた。

 

 長老の居場所を問えば、祈りの館とポロムは答えた。

 傍らからポーションとエーテルを取り出しポロムに手渡す。

 頭を一撫でして小さき魔道士を送り出した後。

 ぎゅっと眉を寄せ、足早に館へ向かった。

 

 

 ミンウは館の一室で祈りを捧げていた。

 部屋には何人もの怪我人が横たわっている。

 重傷者が集められているが、中には既に息を引き取り布を被せられた者もいる。

 

 怪我の様子を観察すると、裂傷が殆どを占めていた。

 その傷跡は致命傷に至るものは多くないが、相手の動きを停止させるために腱や急所を掠めているものも散見出来る。

 細かい傷は少なく、剣での戦闘に経験のある人間による太刀筋であった。

 

 ヴァレンシアは足取り重くミンウへと近付いた。

 

「手酷くやられたようですね」

「ええ、」

 

 ミンウは祈りをそこそこにヴァレンシアと向き合った。

 この事態に非常に心を痛めた長老は悲しげに笑う。

 

「被害状況はどのような?」

「死者は幸いにも多くはない。怪我人多数で人手が追い付かんよ。数人を人質に奪われてしまったのも手痛い。加えて……」

 

 そこまで口にして、ミンウは顔を曇らせる。

 まだあるのか。

 聞く限り被害は甚大である。それ以上に何があるのか。

固唾を飲んで待ち、ミンウは重い口を開いた。

 

「風のクリスタルを………奪われたのじゃ」

 

 ヴァレンシアは絶句した。

 

「クリスタルを!?」

「ああ、クリスタルをな。当初、クリスタルを渡せば何もしないとバロンは言っておった。じゃが、あれはそう容易く渡していいものではない。あれは……世界の秩序じゃ」

 

 四大国家であるミシディア、ダムシアン、トロイア、ファブールが有する聖石はその地に豊穣を与えた。

 

 かねてより、青き星は実り豊かな星であったという。

しかしクリスタルに秘められた膨大なエネルギーは凄まじく、それを巡って争いが絶えなかったという。

 国家が誕生し、均等に分け与えられてから紛争は沈静していたが。

それを今、()()()()が略奪するということは。

 

「世界征服を目論んでいるのやもしれぬ」

 

 頭が痛くなる話だ。

 それを考えるもののやることなど、たかが知れている。

ましてや、クリスタルを狙うなど。

 

「他国家も狙われるでしょうか」

「恐らくは。ほぼ断定して良かろう」

「ならば…回避しなければなりませんね、最悪の未来を」

「ああ、我らのクリスタルは奪われてしまったが、この危機を伝えねばならぬ。あやつらの目論見を、阻むために」

 

 長と女は嘆息した。

 

 女は一礼し、踵を返す。

 立ち止まっている暇はない。この襲撃が、世界大戦の序章とならぬように。

 

 

 

 

 




追伸
当初の内容からちょっとだけ内容修正しました!
文字表記の統一とか表現足したりとかですけど…。
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