ゆるやかな坂道にある街【ルージオ】。
長のモラロさんは優しい
【フィクシオン派】は、商魂たくましく、世界でもっとも重要なのは “商売” であると考えている者達の事。あたいもモラロさんも商売人なのでこの【フィクシオン派】に分類されている。ま、あたいはお金を稼げてそれなりに良い暮らしが出来れば満足だと考える方なので、商魂は薄い方かしらね。
そんなあたいの名前は【ペルル】、小人族って馬鹿にしてくる人間もいる【キュール族】で、今は【ルージオ】で暮らしている。人間に比べれば小さいけれど、これでも身嗜みには気を使う大人なのよね。
「んぎぎ、髪が上手くまとまらない」
愛用のブラシで髪をとかし、いつものようにまとめ束ねようとしているが、今日は中々うまく出来ない。どんな髪型にしようか悩んでいるうちに長く伸びてしまった髪.....思いきって切ろうかしら。
「いよーう! 相棒!」
「ギャ!?」
髪に苦戦していると大声と共に家の扉を豪快に開き入ってくる人物が。あたいの朝は【ルージオ】に来てから騒がしい。正確にはこの人物と出会ってからだけど。
「もう! ビックリするじゃない! 毎日毎日そうやって家に来るのやめてちょうだい!」
「お、いつも通り朝ペルルはご機嫌ナナメだな」
「誰のせいだと思ってるのよ! それと、その朝ペルルって言うのもやめてちょうだい!」
「おーう? 朝からちょうだいちょうだいって、商売やめてクレクレになったのか? いや.....ちょうだいだから、ちょだちょだ?」
「誰がちょだちょだよっ!!」
この調子であたいのペースをいつも乱してくる人物は人間の女性で、冒険者。あたいに【ペルル】って名前をつけてくれた冒険者。
「ペルル朝ごはんまだっしょ? わたしもまだだから、はよ」
図々しく家に上がり込んでは毎朝こうして朝ごはんを要求してくるけど、悪い気はしない。もちろん、貰うものは確り貰うけれど。
「あたい今髪やってるの、たまにはラルムが作りなさいよ」
彼女の名前は【ラルム】で、この名前をつけたのはあたい。この街に来てすぐ出会ったもののお互い名前が無かった。そこでラルムが「名前つけあおう」と言いはじめてその流れに。あたいの名前はペルル、真珠って意味らしい。そしてラルムは目下にホクロがありそれが涙のようで、涙色のような髪色なのでそう名付けた。お互い自分の事を話さず聞かず、それでいて面倒な気遣いもないのでこの関係の居心地は良い。
「うげぇ、わたしが作んの? それなら今日半額な?」
「いいわよ、食べ物をちゃんと作れたね。言っとくけど材料もタダじゃないのよ!? 失敗したら2倍よ2倍」
「はっはん! 天才料理人と謳われるラルム様を前にしてよくそんな事言えたな!? 見せてやるぜ、わたしの料理!」
図々しくて、砕け散った口調で、あたいよりズルい。でもどこか憎めない。そんなラルムとあたいはパーティを組んでモンスターを倒したり、お宝を狙ったりして生活している。モンスター素材も物によっては高く売れてバカに出来ないし、着色アイテムを持ってるモンスターもいる。お宝は文字通りお宝。使えそうな代物は自分達のものにして、自分達には必要ないものを売りに出す。凄腕冒険者達はあたい達より、もっともっと稼いでいるけれど、その分危険も多い。あたい達はあたい達に出来るレベル帯で出来る事をする。そうやって一歩ずつ成長していけばいい。
「ペルルー? 髪終わったー?」
「んー? どしたの?」
髪はまだ終わってないけれど、とかし終えたし後は束ねるだけ。あたいの名前を呼んだって事はきっと手が足りないハズね。ここはキュール族の小さな手を貸した代金を頂くチャンスだとあたいの嗅覚は訴えている。
「もう、どしたのよ───わっ!?」
キッチンを覗きに行くと、そこには美味しそうな料理が並んでいた。お店で食べればあたい達の1日分の稼ぎがふっ飛ぶくらい美味しそうで綺麗な料理が。
「こ、これ、あんたが作ったの!? あんなに大きなお肉なんて家に無かったじゃない......どういう事!?」
「わたしの事は
驚いたなんてもんじゃない。本当に錬金術師で作り出したかのような.....そんな料理が。
「......あんた料理出来たのね」
「冒険者になる前は第1席の凄腕の料理人だったからな。人はわたしをレギュムの魔術師と呼んでいた」
「ん? あんた料理人だったの? 確かにそう言われればそんな雰囲気が.....」
「そんな雰囲気あるわけねーじゃん。今の話嘘だし」
「嘘!? ムキーッ! あんた本当いい加減にしなさいよね! この前も森狼が居たって嘘ついて!」
「いやあれは本当なんだって! つーか今日そこ行こうと思ってたから朝早く来たのに、ペルルちゃんは髪の毛が気になって気になってお家から出られない
「誰がおちびちゃんよ! すぐあたいの事馬鹿にして!」
「わーかったって、ごはん食べたら髪やったげっから落ち着け───って、お前フォークを武器にするのは卑怯だぞ! スプーンじゃ勝てないだろ!」
こんな感じであたいの1日が始まった。