トーラム オンライン ~ペルル ラルム~   作:雨雲 陽

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◆森狼と四ツ葉◆
ストラム街道~マルバロの森


 

 朝食を終えたあたい【ペルル】と相棒の冒険者【ラルム】は後片付けを済ませ冒険の準備のため家を出た。

 中央が円形で坂道や階段が多い【ルージオ】の街。土地の形状が形状なだけに、あたいの家は少し下にある。扉を開き外へ出るとまずは数段の階段。それを登ると坂道が現れる。お世辞にも広い街とは言えないけれど、住み心地は悪くない。

 

「おっ、今日も女神像の近くには冒険者がいっぱいいるなー! いいね」

 

 ラルムは愛用品でもある大きな帽子に手を置き、街の象徴とも言える女神像付近を見て楽しげに言った。

 

「いいねって、あたい達に傭兵を雇う余裕なんてないわよ?」

 

「んや、あーゆうの見ると何かワクワクすんじゃん? わたしもいつか女神像の下で強そうな装備で声かけられるの待ってみたいもんだぜ」

 

「それは.....わからなくもないわね。やっぱり頼られる瞬間が自分の価値を自分で確認出来る瞬間だもんね」

 

「そゆこと。頼りにしてるぜ、未来のオオアキンドさん!」

 

 あたいの頭へポンポンと手を乗せ、ニッと笑うラルム。この冒険者は本当に調子がいい.....でもやっぱり、頼られるのは悪い気がしない。

 

「んで、今日は噂の森狼.....フォレストウルフを狙うのよね?」

 

「そそ。場所は......マップ開くわ」

 

「あたいもカバン出そっと」

 

 お互い同時にポーチから薄板のような機械を取り出す。このアイテムは今や誰もが知っている、科学魔法の産物とも言えるアイテム。4派のうちのひとつ、魔法で機械を動かしたり武器として機械を使ったりする科学魔法を軸に活動している【テクニスタ派】が産み出した魔法端末【フォン】だ。マップデータやクエスト情報だけではなく、物質をデータ化し収納出来るビックリ機能を持つアイテム。データ化した物質は取り出す事も出来て、限界値まで収納しても重さは変わらない。まだまだ発展途上だと聞いたけど、今のままでも十二分に役立つ代物。

 でもあたいは、大きなカバンを背負う旧スタイルが好き。【フォン】も使うけれど、可能な限りカバンを使いたいし、これからも使うだろう。

 

「あーっと、マップデータ送るわ。ペルルが見た方早いし」

 

「そんな事言ってどうせマップ読めないんでしょ?」

 

「は? 読めすぎて逆に読めない、みたいな感じだし」

 

「........あっそ」

 

 あたいは受け取ったマップデータを開き、現在地と目的地を繋げルートを確認する。その間ラルムは【装備】を整え【ベルトポーチ】の回復薬などを調整していた。便利なアイテムに思える【フォン】でも、不便な点は確かにある。それが、アイテムを取り出す作業。なんて事ない状況ならサクサク取り出せて不満はないけれど、例えばモンスターと戦闘している時に怪我を負った時などは【フォン】から薬品を取り出すよりも【ベルトポーチ】から取り出した方が何倍も早い。収納力は少ないもののやはり【ベルトポーチ】は手放せないアイテム。あたいも使っているし。

 

「この街からまずは、ストラム街道に出て、その奥にマルバロの森っていうのがあるみたいね。そこに噂の森狼が生息してるらしいわ」

 

「そー! その森は滝もあっていい感じだったぜ。モンスターもそんなにうるさくないし、気楽に行きマソ」

 

「まずはストラム街道ね。あんたアイテム補充とかいいの?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

「........あっそ」

 

 

 ラルムのキラーパスは拾うと大変な事になりそうだと、あたいの嗅覚が唸っている。だからこうして流すのがパターン化している。毎日毎日、元気がいいのはこっちも助かるけど、少しうるさすぎるのよね。ま、そこがラルムの良さでもあってあたいも少なからず元気を貰ってるからあんまり文句は言わないけれど。

 【ルージオ】の街の坂を登り、ゲートアーチを抜けるとすぐに【ストラム街道】に出る。大きくひらけた道で、岩が橋のようになり上下で道が違う。【ルージオ】は上で目的地の森は下なので、あたい達は岩の橋を下り進む。途中何度かモンスターに遭遇したものの、好戦的なモンスターではなかったので戦闘する事なくやり過ごし、あたい達は【ストラム街道】を進み抜けた。元々緑が多い街道だったけれど、更に緑が増し、木々の葉が楽しげに囀ずる。

 

「ここがマルバロの森ね! 綺麗な緑の匂いがしていいわね」

 

「はぁ? 緑って色だから匂いなんてないぞ? ペルル、鼻にキュウリでも詰まってんじゃないの?」

 

「キュウリなんて詰まってないわよ! あたい達キュール族は鼻がいいのよ!」

 

「ん? なんて? キュウリ族?」

 

「ムキーッ! あんたのそういうトコ本っっっ当に腹立つ! 次言ったら鼻にキュウリ詰めてやるわよ!」

 

「わかったわかった、悪かったってば───!? ペルル、一旦終わりだ」

 

 あたいをからかい騒いでいたラルムは一瞬で声質を鋭く尖らせ、前方を睨み剣へ手を伸ばした。

 

「あれは───フォレストウルフ!?」

 

「せいかーい。でも前はもっと奥に居たハズなんだけど.....散歩でもしてたのか?」

 

「ちょ、ちょっと! 想像してたよりも大きなモンスターじゃないの! 逃げた方いいわよ!?」

 

「逃げたら意味ねーじゃん! アイツの角は結構いい素材になるらしいんだ」

 

「───え? それってつまり、高く売れるって事?」

 

 フォレストウルフは想像より大型で怖い。でも素材が高値で取引されるとなれば、あたいも尻尾を巻いて逃げるワケにもいかない。それに噂では聞いた事ある程度のモンスター.....つまり、中々遭遇、発見出来ないモンスターって事よね? それなら、少し無茶をしても元が取れる。

 

「あたいもサポートするわ!」

 

「頼むぜ、ペルルハンマーで角へし折ってくれ」

 

「なにそのダサい名前! ってそういう話は後ね」

 

 

 あたい達は武器を手に、フォレストウルフと睨みあった。木々の囀ずりが遠くなるような、不思議な感じがした。

 

 

 

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