オリー主で進むリリカルなのはシリーズ   作:鳥になりたい

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前回のあらすじ

主人公、ぼっち。





6 衝突、しかしそれは

平和が一番であると思う。

バイオテロが起きて街にゾンビが蔓延するのは勘弁して欲しいし、宇宙人がいきなり地球にやってきて侵略されたくもないし、核兵器によって世紀末になるのも勘弁願いたい。

無論、これらは現実に起きるかと言われれば答えに困るものばかりであるが、魔法があるので可能性がゼロとも言い切れない。

もっとも、魔導師の力があれば挙げた例の半分くらいは制圧できそうな気もするが、当然したくないのでしないし、その様な事にならないことを切に願う。

 

さて、魔法文化なんてものが無い地球ではあるが、実際魔法関連のものが見つかった場合は一体どうなるのだろうか。

地球に幾つの魔法文化所縁のものが流れ着いているのかは知らないが、ジュエルシードや闇の書が流れ着いていることを考えると探せば他にもロストロギア関連のものがあるのではないかと勘ぐってしまう。

それに、今回の鍵であるジュエルシードなどといったものが見つかった場合は大騒ぎになるのではないか?

闇の書みたいなものであれば逆に見つかろうとただの本にしか見えないだろうし、主人でなければ起動できないので見落とされるかもしれないが、ジュエルシードはとにかく派手で問題がありすぎる。

いや、本来のヤバさで言えば闇の書の方が圧倒的にヤバいのだが。

 

ジュエルシードは見た目だけ見れば綺麗な宝石に見えるし、手に持ってしまえば自分の願いが歪な形で叶えられようとしてしまう。

余程の事情でもなければ、大半の人物はこの見た目に惹かれて拾い、ジュエルシードを意図せずに暴走させてしまうのではないか、というのが俺の考えだ。

実際、原作ではサッカー少年がジュエルシードを拾って街中で暴走させるという大惨事を引き起こした。

 

が、こちらではその事件は起こっていない。

理由は単純。

暴走する前に盗った。

 

原作のサッカー少年の名前を知っていれば対策は楽だったのだが、残念ながらわからなかったため、彼女持ち或いは女の子にモテるサッカー少年を監視してジュエルシードを拾わないか覗き見させてもらった。

やはりというか、案の定なのか、イケメンのとあるサッカー少年が拾っていた。名前は聞いたけど忘れた。

そのままという訳にはいかないので、幻術を使ってちょいちょいと盗ませてもらった。

女の子に渡す予定だったらしく、ガッカリしていたが、そこは諦めてほしい。

街中で二人仲良く木になられたら周りが困るどころの騒ぎではないのだ。

誰かこのファインプレーを褒めて欲しい。

 

今回は未然に防げたから良い。

問題はこの先。

なのはとフェイトによる衝突で発生する次元震。

 

魔導師同士の衝突に巻き込まれれば、ジュエルシードによって次元震が発生する可能性があり、最悪、次元断層が発生して地球が壊れる。

原作ではプレシアによる中規模の次元震で海鳴市に地震を発生させ、次元間航路がしばらくの間不通となり、チートフェレットが帰れなくなるという問題があった。

どの程度の地震かはよくわからなかったが、地震を自然とは別に起こしてるだけで異常で、海に面してる海鳴市じゃ津波の可能性もある。

次元間航路は、別にいいや。

不通になろうとそこまで地球に問題ない……と思う。

 

次元断層はどうしようもない。

海鳴市に問題が起きる、というものだけでも大事件だというのに今度は地球規模ときた。

アニメなら問題が起こらないとストーリーが始まらないので深く考えてなかったけど、今、普通に考えると、地球の危機はすぐそこまで迫っている。

迫っているどころか、その次にも地球を壊滅させる危機が待ち構えているので最悪な状況だと言っていい。

はっきりいって誰かなんとかしてくれ、そのための管理局だというのにまだ到着すらしていない、なのはに頑張ってもらいたいけど実は彼女、精神はかなり大人びているけどまだ小学三年生、それもたった一人に地球の未来託すとか冷静に考えなくてもヤバい。

 

だから、今日も今日とて空き時間の全てを鍛錬と魔法関連の勉強に費やす。

 

思えば、ヴァリアントには事情を話して今後のことを相談してもいいのかもしれない。

既に己の半身と言っても過言ではない存在となっているヴァリアントだ、相談ついでに話すのは一考の価値がある。

少なくとも原作キャラ達にはこちらの事情なんて話せないんだし、絶対したくないし、例え話したところでこの特殊な生い立ちを信じてもらえそうにないのだから隠しきるしかない。

プレシアやスカリエッティといった研究者は俺の生い立ちに食いついてきそうではあるが、絶対に知られたくない。特にスカリエッティ。

やはり知られたくないと思うのならば、可能な限り情報を秘密にして、漏れる口を極限まで減らすしかないのかもしれない。

噂とは怖いもの、いつ、どこの誰がそれを広めるかわかったものではない。

 

思えば、ヴァリアントと私生活の話をするのは殆どなかった。

話すのはいかに効率の良い鍛錬をするか、どのような戦闘スタイルが合っているかなど、魔法関連の、それも荒事ばかりの会話しかしてこなかった。

学校や友人関係で相談なんてする必要性が感じられなかったし、趣味についての話などもってのほか。

初めての魔法以外の話。

彼女の性格からして周りに秘密を漏らす様な事はないとは思うが、彼女と出会ったばかりの頃の会話が引っかかる。

 

『私はいわば、乗り物なのです。単体では何も出来ず、人に使われてこそ本領を発揮します。つまり、人に使われなければ、私の存在する“意味”が無くなってしまうのです』

 

『使われず、大事にするという建前の言葉で飾り物に成り下がるなんて、嫌なのです。自分ひとりで戦うことも出来ない。使ってくれる相手もいない。それは、なんて地獄』

 

『もし、ご主人様と共に全力で戦い、その果てに壊れるのであれば、私は本望です』

 

この言葉にどのような意味が込められていたのか。

壊すほど使い込め、ではあるまい。壊れたら使うデバイスが無くなっちゃうし。

レイジングハートやバルディッシュも似たような考えを持っているのか凄く気になる。

恐らく、ヴァリアント特有の考えなのだろうが、これ以外のなにか深い意味を持たせた言葉だったりしたら、と思うと、どうもスルーできない。

そも、魔法文化のない地球でただの一般人の家庭であるはずのうちにあった、という点がもう怪しい。

闇の書みたいに流れ着いたロストロギアか?

それとも、誰かが両親に託したのか?

 

不思議に思い、その事についてヴァリアントに話を聞いても、答えはいつも同じ。

 

『該当データなし』

 

製作者を聞いても、何故うちにあったのかを聞いても、答えは全てがこれ。

いやに機械的だ。

まるで、これ関連の話の時はヴァリアントではない『ナニか』と話しているよう。

言えないようにそれ関連のデータにはプロテクトなりロックが掛かっているのか、或いは消去されているのか。

どちらにせよ、今の俺にそれを知ることは叶わない。

 

デバイスに表情はないため分からないが、表情が仮にあったのだとしたら、彼女の表情は恐らく無表情でいることだろう。

 

……また一つ、鬱屈としたものを飲み下す。

問題は、どうやら解決されそうにない。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

ヴァリアントが誰に造られようが何処で造られようが、別に俺のやるべき事に変わりはない。

学校から自宅へ寄り道せずに真っ直ぐに帰り、部屋にこもってイメトレをしつつ、時折休息がてらにヴァリアントと共に魔法の勉強をする……。

部屋でたった一人、癒しなど全くない時を過ごしながら、ふと今回介入する件を思う。

 

魔導師二人とその使い魔二匹?……二匹と表現していいのかわからないが、彼等による衝突。

今までの小競り合いに近い衝突とは少し違うぶつかり合い。

そう、アースラメンバーが来る契機にもなった、次元震を発生させるぶつかり合い。

元々、アースラが地球に急行したのはユーノ・スクライアが呼んだから……ではない。

ユーノも地球に来る前に管理局に連絡したらしいが、残念ながらその時に管理局が対応することはなかった。

彼等が地球に来たのは定時巡回中に高エネルギー反応を関知した為であり、『パトロール中に騒ぎがあったから駆けつけた』という程度の動機だったりする。

 

アースラメンバーはこれ以降、ジュエルシードに関する事件の全権を持った。

その後は高町なのはやユーノ・スクライアは、民間協力者としてアースラのメンバー、主にクロノと行動を共にすることになるのだ。

本来なら現地人であるなのはや嘱託魔導師ではないユーノは、ジュエルシードの件からは離れるべきであったのだろうが、二人の魔導師としての強さやフェイト・テスタロッサへの思いにより、協力していくことになる。

 

何を言いたいのか、を一言に纏めるならば。

次元震が起きないとアースラが来ない。

 

別に次元震は起きないのが一番だし、何も起こらないのであればそれに越したことはない。

ただ、アースラが来なかった場合、これ以降、俺やなのは達だけで事件を解決に導く事ができるのか、という話。

勿論、自分一人で解決できる、フェイトもプレシアも止めてみせる、なんて自惚れはしていない。

していないが、アースラが来ないならやらなければならない可能性が出てくる。

 

はっきり言って無理ゲーである。

 

プレシアを止めるという事は、時の庭園の場所をなんらかの手段で突き止め、暴走寸前のジュエルシードを複数個を封印、かつ、時の庭園の駆動路の暴走も止め、その後にプレシアを倒す、ないし、プレシアがアリシアを蘇生しようとするのを阻止しなければならない。

ましてや、時の庭園には防衛のために傀儡兵を配置している。

これら全てを個人で対処するのは不可能に近い。

アースラをこちらに呼ぼうにも連絡手段はなく、仮にあったとしても、今度はこちらの身バレの危険性が出てくる。

勿論、状況によっては身バレなど気にせずに動くが、バレないに越したことはない。

個人個人の管理局員の善性を信じることはできる、アースラのメンバーやこの先関わるであろう人達は皆が尊敬できる人物だが、関わらないで済むのであれば、できるだけ関わりたくない。

トップである三脳によって生み出されたスカリエッティしかり、最高評議会とそれに通じる地上本局の人物が自分たちの望む秩序の為と戦力確保の為、違法研究である人造魔導師や戦闘機人の研究をしているのだ。

転生……なんて、マッドからしたらこれ以上にない玩具の様な身体なのだ、狂気をこちらに向けられない保証は一切無い

 

俺は困っている人全てを助けたい、悲しみや不幸を減らす、なんていう殊勝な考えを持っている訳ではない。

少なくとも、今回の事件は地球が舞台だから戦っているが、これが遠くの世界であったとしたら放置していた事だろう。

けれど、舞台は地球、ここには父さんと母さんが居る。

それに……フェイトの境遇を知っている以上、可能であればなんとかしてあげたい、とも思っている。

 

できるかどうかはわからない。

全てが無駄になるかもしれない。

……それでも、動かなければならない。

それが辛いことでも、嫌なことだとしても。

望む結果を出したいのであれば、たとえ可能性が低かろうと、始まる前から諦めるわけにはいかないのだから。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

と、いうわけで街へ。

幸い、原作知識のおかげでジュエルシードの大まかな位置は把握している。

把握はしているのだが……夕方から探しているにもかかわらず、未だにジュエルシードを見つけることができていない。

反応が微弱なせいでサーチにも引っかからないせいで、ヴァリアントも必死になって探してくれているのだが未だに成果なし。

 

人が多い街中で魔力を撃ち込んで見つける、なんて荒技を使うのわけにもいかないし、生憎と俺は結界といったサポート系の魔法に適性がなさすぎて、ユーノが使っていた広域結界などでカバーすることができない。

砲撃魔法も適性なくて、結界といったサポート系もなし。

砲撃はともかく、結界を自分で張れないのがまぁ痛い。

こうしてみると、なのはとユーノの組み合わせはベストマッチであったのだと改めて思い知らされる。

自分に出来ない事を仲間に任せ、仲間に出来ない事を自分がやる、これぞチームワーク。

俺はボッチだから無理だけど。

 

が、独りだからこそ出来ることもある。

が、それはそれとして、焦りが募る。

理由はフェイト。

俺がフェイトとアルフからジュエルシードを奪っているせいで恐らくだが、彼女達の所持数はゼロのはず。

プレシアへの定期報告を考えると、いや、報告云々かかわらずに今回は絶対に取るのだとと意気込んでいる筈だから、早いとこジュエルシードを見つけてずらかりたい。

もしジュエルシードを見つけるタイミングが被ってしまえば彼女らとの戦闘は絶対に避けられないし、そうなった場合は二対一。

まさに数の不利。

なのは達が合流してくれれば一応は数の不利はなくなるけれど、正直、仲間とカウントしていいのかわからないので期待はしない。

 

やっぱり数の不利は消えないと思う。最悪だ。

どうしようとヴァリアントに相談したら、気合いで頑張りましょうと言ってくれた。

根性論を出してくるあたり、ヴァリアントもなかなかにいい性格をするようになってきた。

良い傾向だ。

この調子で製作者をゲロってくれ。

気合いで吐け。

それはともかくとして。

 

「とっとと見つけて、家に帰るぞ」

 

『勿論です、ご主人様』

 

最悪の事態が起こらぬよう祈りながら、改めて帽子を深く被り、できるだけ自分の顔を隠す。

まだ身バレしていないとはいえ、ジュエルシードを探して歩いているなのは達に会った時用に顔は隠す。

何事も用心が大事なのだ。

なのはからすれば、たまたまクラスメイトに会ったから挨拶してきただけなのかもしれないが、こちらとしては彼女に声を掛けられただけで精神がすり減ってしまう。

そうならない為にも会わないのが一番いいのだが、お互いが同じ物を探しているからには会う可能性はどうして高い。

会いたくないけれど、まぁ、会ったらその時はその時だ。

人間、なるようにしかならないのである。

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

海鳴市、午後八時六分。

ビルの屋上にて。

フェイト・テスタロッサと彼女の使い魔、アルフが佇んでいた。

 

アルフは人型ではなく、本来の彼女の姿である狼の姿。

フェイトは既にバリアジャケットを身に纏い、バルディッシュを待機状態からアックスフォームへ。

 

二人がいるビルの下には、帰宅途中の会社員や遊び途中の学生、買い出しの主婦など多くの老若男女。

しかし、彼女達の目的はそんな人達を眺めることではなく、ロストロギアであるジュエルシードを見つけること。

大まかな位置は掴めているものの、まだ目的の物を見つけるには至っていない。

 

「この辺りだね。乱暴な方法だけど、魔力流を撃ち込んで強制発動させよう」

 

「アイツらが近くにいたら見つけられちゃうかもしれないよ?」

 

「大丈夫。その時は私の方が先に封印するし、邪魔するなら手加減しないから……」

 

「ん、じゃああたしが魔力流を撃ち込むよ」

 

「大丈夫? 結構疲れるけど……」

 

アルフからの提案はフェイトにとっては嬉しいことではあったのだが、それと同時に心配でもあった。

ジュエルシードの大まかな位置はわかるものの、正確な位置がわからない為、魔力流を撃ち込もうものなら、広範囲かつ大量に流し込まなければならない。

全力で魔力を撃ち込む、というわけではないが、仮にそのまま戦闘に移行して問題ないかと問われれば、ある。

 

「フッ、このあたしを一体誰の使い魔だと?」

 

アルフがフェイトを見返した。

 

「こんなの屁でもないよ」

 

仮面の魔導師にジュエルシードを奪われっぱなしだったせいで、心の余裕がなくなってきていたフェイトは、アルフの言葉のおかげで少し和む思いがして、「ありがとう……」と笑って応じた。

 

「そんじゃー……」

 

魔力流が撃ち込まれ、空高くに魔力の柱が昇る。

多少空は曇ってはいたものの、雷雲というわけでもなかったはずなのに空は黒く染まり、ゴロゴロという音と同時に雷が鳴り響く。

そこから、雷は鳴り響くだけにとどまらず、自然現象ではありえないほど大量に地上に落ち出す。

雷が大量に落ちるという、明らかな異常気象に通行人は騒めき、いや、いつ近くに落ちてもおかしくない状況に怯えだす。

 

至る所に雷が落ちる。

魔力の消費が大きく性質上どうしても目立つ荒技ではあるが、位置のわからないジュエルシードを探す効率を考えれば、決して悪くない手段である。

だが、この手段は魔力消費が多い、他人の目に触れるだけでなく、無関係な人への被害が出やすい。

ジュエルシードの近くに人がいないとは限らない。

強制発動をした時に近くに人がいれば、当然それに巻き込まれる。

だが、それを気にしていられるほどの余裕は、焦りに心を蝕まれたフェイトにはなかった。

眼下に見える人々は誰一人としてこの事態がなんなのか知る由もないことに、心の中でごめんなさいと、フェイトは胸中で謝り続けた。

 

「これって……! ユーノ君!!」

 

「わかってる!」

 

だが、この異常事態になのはとユーノが気づない筈がない。

少し離れた場所では、雲海を貫いて空と地を走る雷をフェレットに変身したままのユーノが愕然とした面持ちで眺めていた。

探し物であるジュエルシードと、もう一つの目的である、会って話がしたい少女が見つかって、なのはが動き出さないわけがない。

 

そして、気づくのはなのはやユーノだけではない。

辺りを探していた仮面の魔導師もまた思わぬ事態に、これはいったいなんの冗談なのかとばかりに、慄然と凍りついていた。

 

「こんな魔力流の撃ち方……正気か!?」

 

しかし、それも束の間、本能的に不味いと察したらしい仮面の魔導師は、ジュエルシードを見つけることができなかった焦燥を心の隅へと追いやり、何をすべきかを考えた。

 

「アイツら、自分のやってることわかってんのか……!」

 

『フェイト・テスタロッサ及び使い魔の捕捉、できています』

 

仮面の魔導師は自身に認識阻害の幻術をかけつつ、ヴァリアントを待機状態からジャベリンフォームへと変化させ臨戦態勢に転じた。

フェイトのジュエルシードの収集状況からして焦っているであろうことはわかっていた。

しかし、いくらフェイトが焦っているとはいえ、街中で結界も張らずにこんな乱暴に仕掛けてくるとは思いもよらなかったのだ。

このままでは怪我人が出る、そう思った矢先、街中から人々の姿が消え、その空間に結界が張られた。

 

『結界魔法の発動を確認。ジュエルシードの発動もまた……』

 

「ユーノか!」

 

いいタイミングだ、と胸中で呟きながら急いでフェイトとアルフ……いや、ジュエルシードの方へと飛翔する。

結界が張られたからといって安全になったわけではない、謂わば応急処置、このままでは何が起こるか予想できたものではない。

しかし、ジュエルシードを確保しようにも仮面の魔導師の位置は一番遠い場所となっており、フェイトとなのはの方がジュエルシードに近い。

建物の関係でジュエルシードを目視することもできず、

 

「間に合わないっ!?」

 

雷鳴のごとき閃光と轟音を響かせながら、ジュエルシードは封印された。

封印に成功したのであれば、この先に起きうるのはジュエルシードを巡っての戦闘。

なのはとフェイトが今ここでぶつかり合えば、ジュエルシードはその余波に影響されて脈打ち始め、それに気づいた彼女達によって確保しようとして、そして……。

 

そして今、少女達はぶつかり合っている。

 

『疾風』

 

最悪の展開を回避すべく、ごう、と、渦巻く風を纏いながら彼女達へと急ぐ。

目的のためにぶつかり合ったり競い合ったりすることは仕方のないことかもしれない。

けれど、今回だけは……次元震、もしかすれば次元断層が起きるかもしれないコレだけは見逃せないのだ。

誰かが怪我をする、では済まされない規模の事が起きるのがコレだ。

 

止めなくてはいけない。

起こさせてはいけない。

それが彼の目的。

その為だけに手に入れた力。

それを胸に、仮面の魔導師はその過剰な速さでビルの間を抜け、デバイスで斬りかかった。

 

「くっ」

 

魔力を炎を纏ったデバイスを一気に押し込み、疾風の速さも相まって仮面の魔導師の圧倒的な膂力に押されながら、フェイトは地面へと墜落していく。

彼から攻め寄せる圧倒的な力に、フェイトは堪らず叫びをあげた。

 

「フェイトッ!」

 

アルフの呼びかける声がフェイトの耳に届く。

邪魔が入ることは予感していたが、やはりわかっていても忌々しいものだとアルフは舌打ちする。

目的の物であるジュエルシード目の前だというのに、あと少しだったというのに、どうしてこのタイミングで邪魔が入るのかと思わずにはいられなかった。

 

「コイツはあたしが止める! フェイトはジュエルシードを!!」

 

魔力で強化した拳を全力で打ち込み、仮面の魔導師はビルの壁を抉りながら地面へと吹き飛ばされる。

地面にめり込むように倒れながらも、彼はデバイスを握りしめたまま耐えた。

そして、急いでフェイトを止めようと再び飛行魔法を発動させようとするが、アルフは魔力を拳に集中させて、声を発した。

 

「行かせないってんだよ!」

 

「クソっ!」

 

展開されたシールドにひたすら拳を打ち込むアルフ。

彼女の戦闘スタイルを表すならば、己の拳で肉弾戦を挑む豪腕タイプ。

狼を素体とした使い魔であるアルフは主人であるフェイトとは違い、速さではなく力に趣を置いている。

生半可な防御魔法であれば一撃で破壊するほどの威力であると、師であるリニスから太鼓判を押されたほどだ。

一瞬の隙を見てシールドを解除し砲撃槍で大砲の如き拳を受け流す。

見えない程の速さでもなく、格闘家のそれのように洗練された殴り方をしている訳でもない。

だからこそ受け流す事ができた。

だが、シールドで受けて感じたその拳の重さに思わず息を飲む。

受けるべきではない攻撃だ、少なくとも、これ以上は耐えきれない。

拳を受け流した動きの延長で、アルフの背を蹴って距離を離す。

 

アルフが仮面の魔導師を睨みつけたまま、じり、じり、と歩きながら間合いを詰めていき。

仮面の魔導師は炎を纏う砲撃槍を腰だめに構え、隙を探る。

瞬間、二人に緑のバインドが絡みつく。

 

「バインド!?」

 

第三者――ユーノによる拘束により、二人は一時的に身動きが取れなくなる。

 

「黒い魔導師の使い魔に仮面の魔導師……! なんで君たちはジュエルシードを集める!? アレは危険なものなんだ!」

 

「ごちゃごちゃうるさいよ! クソッ、なんて硬いバインドなんだ……」

 

仮面の魔導師の乱入に一時呆気に取られていたユーノであったが、なのはがフェイトの方へ向かったので、なのはの邪魔させないよう二人の足止めをすることを選んだ。

防御や結界生成・解析、回復や捕縛、転送等の後方支援魔法に高いスペックを誇るユーノが使用するバインドは、あのナハトヴァールに通用するほど。

二人の動きを止めることなど造作もない。

 

「馬鹿っ! 俺たちなんかより早くジュエルシードを確保しろ! 次元震が起こるかもしれないんだぞ!」

 

「え」

 

エネルギー結晶体――ジュエルシードはその性質上、流し込まれた魔力を媒体として何かを引き起こすものであるとユーノは推測していたが、その何かが次元震だとすれば……。

だが、何故目の前の仮面の魔導師がそれを知っているのか。

そう疑念を抱いたユーノの集中力は削がれ、二人をを縛っていたバインドは僅かではあるが緩んだ。

その隙を見逃さず、仮面の魔導師はバリアジャケットをパージすることによって己を縛っていたバインドから逃れた。

 

「あ、待って!」

 

「ジュエルシードなら後でくれてやる! 今はあの二人を止めないと!」

 

再び独自の移動魔法である疾風を発動させ、最速でなのはとフェイトの方へと飛翔する。

ジュエルシード近くでは既に二人による戦闘行動が開始されており、このままではジュエルシードに衝撃を加えられるのも時間の問題。

 

フェイトは仮面の魔導師が向かってくるのを予期していたらしく、その進路上にフォトンランサーを設置、迎撃の態勢へと移行していた。

しかし、仮面の魔導師はフォトンランサーを避けるでも防ぐでもなく、炎の刃で斬り裂いてみせた。

そして、フォトンランサーを斬ると同時にデバイスをフェイトに向かって投擲した。

 

「なっ!?」

 

デバイスとは魔導師が使う杖であり、魔法を使う際の補助として用いる道具で、杖なしに魔法が使えないわけではないが、それが無ければ戦力が低下するのは明白。

そんな魔導師にとっての最大の剣であり盾であるデバイスを投げる、という愚かな行為に虚を突かれたものの、フェイトはバルディッシュで投げられたデバイスを上へと弾いた。

 

「デバイスを投げるなんて……え、あの人は!?」

 

弾いたのはいいものの、先程までいた仮面の魔導師の姿が見当たらない。

何故、という疑問がフェイトの思考を埋め尽くす。

だが、実際に起きたことは単純だ。

フェイトがデバイスを弾いた瞬間、上だと理解した仮面の魔導師はその場から跳躍。

遥か上へと跳躍し、大剣(・・)へと変形したデバイスを手にとっていたのだ。

彼女が過ちに気付いたのは、その体を貫く衝撃を受ける直前。

まるで絶対零度にいるような寒気、次いで感じるのは体を焼く熱とそれに伴う激痛だ。

フェイトは、その体を落下させながら袈裟懸けにばっさりと斬り付けられていた。

 

「チッ、浅いか」

 

バルディッシュによる自動詠唱による防御魔法、ディフェンサーによって寸前のところで軌道をずらすことができた。

体勢は崩れたものの、僅かな時間で立て直すだろう。

 

だが、体勢を立て直す僅かな時間、確実に隙が生まれる。

その隙は、こと速さを競う今においては致命的。

 

「白い魔導師っ、早くジュエルシードを!」

 

「え、あ!」

 

なのはは一瞬迷ったものの、脈打ち始めたジュエルシードの方へと飛んでいく。

そして、仮面の魔導師もまたジュエルシードへと向かっていく。

 

脈打つジュエルシード。

先程までなのはとフェイトの流れ弾による魔力の意図せぬ流し込み。

辺りに充満する魔力。

最悪を起こす条件は満たされている。

 

仮面の魔導師が裸で吹雪の中に立ち尽くす様な寒気を感じたのは、そのすぐ後だ。

後ろを振り返ると、そこには砲撃魔法を放つ体勢へと入ったフェイト。

その射線上には、仮面の魔導師、高町なのは、そして……ジュエルシード。

 

「まさか」

 

最大出力のサンダースマッシャーが放たれたのだった。

 

 

 

 

 




○盗聴と窃盗に慣れすぎてて息を吐くようにリア充相手にやっちゃうマン
実はサッカー少年からも盗っていたので、所持するジュエルシードはなんと三つ
これは発動していたらヤバい案件だけど、発動しなきゃ正直一番楽なところなんじゃなかろうか
ジュエルシードの持ち主は、サッカークラブに所属している、好きな相手、もしくは既に恋人がいる奴って判明してるからこれを特定してあとは幻術とか使ってちょいちょいって盗めばいいだけよ、楽勝楽勝
サッカー少年からジュエルシードを盗んだ後、少年が女の子と翠屋でケーキを二人で美味しそうに食べているのを見てほっこりした
ちなみにサウンドステージであったプール回には、主人公は介入してません
サーチャーで覗いてただけです
後付けじゃないよ?
だってそもそもなのは達とプールに行くって流れに絶対ならないし、ボッチでプールに行くってありえないとは思うのだが、読者様の中に一人でプールに遊びに行ったことがあるという経験をお持ちの方がいればお知らせください
ヴァリアントとは普段、鍛錬の話について熱心にお話して、私生活などの話、報告は一切無し
バルディッシュさんがいっぱい喋っただけでフェイトそんが驚いてたし、多分みんな話してない
そういう話は友達とかにしようね
友達、あっ……(察し)
事件の解決が最優先だけど、困ってる人がいたらなんとかしてあげたいと思う程度には良い人だけど、フェイトの境遇を考えてなんとかしたいって思ってるけど互いに目的があってぶつかり合ってるからしょうがないんやで
じゃあ良い人の定義とはなんぞやってなるけど、窃盗とか盗聴といった犯罪行為をしない人ってのは間違いない
アルフとの戦闘中にチートフェレットにバインドされても邪魔されて怒るのではなく早くジュエルシードを取れ、と言えるぐらいには物事の優先順位がつけられてる
次元震とか次元断層が起きたらたまったもんじゃないしね
実は転生者ですって中々言えないもんだけど、上手く伏せるなりして多少なりとも話さないとこのままだと自己完結して勝手に介入していくだけだから理解者得られないけど大丈夫?
逆に全部ベラベラ喋ったらスカさんと仲良く脳みそ実験ルートだけど
実際そのルートを書くとは言っていない
アルフの相手したりユーノに言いくるめ?したりフェイトと戦ったりなのはとジュエルシードを取りに行ったり忙しい子
こいつが言いくるめロールとか自動失敗しそうだけどジュエルシードの知識のおかげで成功
言いくるめロールする前にこぶしを振らなかったやっぱり良い子なのでは?
今回もジュエルシードもろたで工藤!

○フェイトちゃん
ジュエルシードの所持数がゼロなので周りへの被害を気にせず動いてしまうほど心の余裕がない
魔力流を撃ち込むのは原作通りの流れだけど、範囲と出力が段違いで簡単に言えば落ちた雷に当たれば怪我では済まぬ
お願い、誰も当たらないで……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいって感じで心の中では謝っているので、本当は心優しい少女なのだ
プレシアから虐待同然の酷い仕打ちを受けながらもここまで懸命に尽くそうとするなど、強い意志の持ち主であると同時に依存しているような気もするので被虐待症候群かなって思う
だから虐待があるかもって思っても必ずプレシアの元へ帰るよ!
でも今のところ戦果無しだよ!
つまりは虐待が待っている!
せやかて工藤!
手加減しないって言ったから今回はいけるかもしれへんで!
背中を見せるのがあかんのやで、その背中に全力サンダースマッシャーや!
これならいけるな! ほなな!
周りへの被害がこれを機に凄い勢いで増えていくけど裁判を担当するクロノ君は頑張ってね
できるだけ無罪に近づけないとA'sに間に合わなくなるから……
このSSはストーリーを追っていく目的として書かれているが、主人公という異物がいて基本思いつきを書いている超即興物なので後の事なんて考えてはいけない
プロットはどうしたとかも言ってはいけない

○なのはちゃん
フェイトちゃと話そうと思って戦ってたのにいきなり乱入されてとっても迷惑
でもちゃんと見えないところで自己紹介と目的話したからギリチョンセーフ
影が薄い気がしなくもないけど原作A'sでもバトル描写除くと序盤くらいしか彼女の出番がないという主人公か疑われる展開なので問題ない
まだ無印だけどな!
ユーノに出逢ってしまったのでこれから思いも寄らない世界や戦いへと導かれていく事になるけど結果的に見れば闇の書事件に一般人の身で巻き込まれずに済んだので、『結果的』には良かったのかもしれない

○アルフさん
狼形態が意外と好き
人間形態の見た目的にフェイトより歳上に見えそうだけど、出会った当初はアルフの方が小さかったりする
動物の年齢を人間に換算するとややこしくなるから詳しくは知らんけど
戦闘スタイルはひたすら殴るスタイルなので隙あらば殴るけど、土手で殴り合って友情を育んだりはしない
主人公的には最終的にプレシアと敵対するアルフと戦うメリットは実はあんまなかったりする

○ユーノくん
なのはとベストマッチなやつ
なのはの火力とユーノの防御兼サポート、強い(確信)
結界はれたりめっちゃ硬いバインドしたりとマジで優秀なサポーターやな
アルフと主人公が戦ってるのを見てどっちもバインドで縛ったけど、正直ユーノからしたらどっちも同じに見えるから正しい
疑わしきは罰せよの精神

こんだけジュエルシードが取られてるんだから、フェイトがなりふり構わず動く、みたいなシチュを書きたくて書いてみたけどどうでしょう
どうでしょうと言いながらも不評だろうともう書いたのでもう変えたりはしないけど
フェイトの焦りを書いたつもりですけど、焦ってるように見えました?
見えなくてもそれはそれ!
思いつき、その時の自分の流行り、たまたま見たアニメに影響されて書いていくので、プロットなんてものは消えた、我は悲しい
思いつき次第なので気長にお待ち下されば幸いです

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