織斑一夏の裏家業   作:アイバユウ

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一夏と簪と銃

 

まったくこれだからお子様困るものだと俺は思っていた。

世の中そんなきれいごとでは生き残れない事を分かっていない

それに殺した女は悪事をやり過ぎた。だからターゲットにされた。つまり死を持って償ったという事になる

それを理解できないのは事実を知らないからだろう

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ。真実を知ればお前も俺と同じことをしただろうな。あの女は犯罪者なのだからな」

 

そう言うと彼女はますます表情を怒りモードに持っていったようだ

あんな女のどこが良いのか。俺はひとまずこの場で携帯電話である人物に連絡した

 

「悪いんだが、来てもらえると助かる。楯無」

 

楯無はどうして私がそっちに行かないといけないのよといった感じの返答だったが

ドイツ代表候補生を殺しても良いなら来なくてもいいぞと言うと仕方がないといった感じの声ですぐに向かうと伝えてきた

意外とすぐにやってきた楯無はどういう事情なのか説明を求めてきた

 

「俺が殺した女について恨んでいるらしい。悪いが学園内での揉め事は生徒会で対処してくれ。俺は外部との警備だからな」

 

「あなたって、人使いが荒いわね」

 

「立っている者は親でも使えというだろうが」

 

とにかくあとは任せたといって俺はその場から去っていった

俺はその後、いつものように巡回をしていた。外部から侵入された痕跡がないかどうかなど徹底的に調べた

今のところ異常は確認されていない。元々治外法権の場所だし本土とは半分隔離みたいな学園だ

出入すれば何かしら痕跡が残る

 

「一夏さん」

 

突然声をかけられたが、誰かの姉妹であることはよくわかった。あの楯無の妹だ

 

「どうかしたか?」

 

「1つだけ聞いても良いですか?」

 

「かまわないが」

 

「どうやったら強くなれますか」

 

ココさんから渡された資料にあった。コンプレックスを抱えていると。さすがはヘクマティアルの情報網だ

暗部の内部にも流出元がいるのだろう

 

「ならちょうどいい。これから銃の訓練する所だ。付き合うか?」

 

「はい」

 

俺は昨日言った射撃訓練室に行くとホルスターに入れている銃を抜いた

 

「撃ったことは?」

 

「ありません」

 

「楯無も妹に人殺しさせた事はないだろうな。俺と違って」

 

すると彼女はこう問いかけてきた。どうしてそんなに簡単に割り切れるんですかと

そんなものは簡単だ。相手を人間だと思うから戦えないのだと。

自分に向かって殺そうとしてくる敵だと思えば自然と体が反応するようになると言った

事実なのだから仕方がない。相手が人間だと思えば誰だって抵抗がある

だがそうでなければためらいもなく撃つことは比較的容易だ。俺はいつもそうやって仕事をしている。

俺は予備の拳銃を渡して撃ってみるかと聞くと良いんですかと逆に聞き返してきた

 

「別に構わない。予備だからな。そっちは」

 

彼女は慎重に銃を構えると発砲するが、初弾は少し中心から外れた

だが、初めて撃ったわりには上出来の部類だ。

 

「外れました」

 

「だが筋は良い。鍛えれば良い腕の狙撃手になるだろうな」

 

だが俺みたいになるなよと言った。俺がいる世界は汚れ切っている。

綺麗事だけでは生きていけないのが現実なのだから

今度は俺の番だ。俺はターゲットにいつものように頭と胸にそれぞれ発砲した

 

「すごい」

 

「俺みたいになるなよ」

 

「でも強いですよね」

 

それはそうだが、俺の場合は必要に迫られたからだ。こうでもしなければ生きていけなかったのだから

 

「俺のような生き方をしていると長生きはできないぞ。ただ言える事は常に自分の信念は捨てない事だ。そうすればいづれは」

 

俺は銃を返してもらうと訓練施設を出ていった

 


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