いろはのプロポーズ大作戦、ですっ!   作:しゃけ式

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更新遅かった言い訳タイムは本文の後!(白目)



キスなんて、絶対にさせませんよ!1

 喧騒が心地良い結婚式会場。さっきまでは、過去に飛ぶ前までは煩いムクドリの大群みたいに感じてたわたしだったけど、今は顔がによによして堪らない。

 

 ふふふ、なんたってこの時の先輩は花嫁の結衣先輩じゃなくてわたしに告白しようとしてたんだから……!

 

「い、いろは? 嬉しいのはわかるけど、顔が女の子のそれじゃないぞ……?」

「葉山先輩! 早く! 早く次の過去に飛ばしてください!」

「何年経っても、やっぱり相変わらずいろははいろはだね……」

 

 葉山先輩は苦笑いしながらちらっと先輩に目配せをする。わたしもつられて見ると、先輩はあっち向けと言わんばかりに目で葉山先輩を牽制した。

 

 何か二人にしか知らないことがあるのかな。仲良いイメージはないんだけど。

 

「さ、次の写真に切り替わったよ」

「何の写真ですか!?」

「落ち着いていろは。これは……」

「ああ、わたしが大学一年生の時に行ったサークル合宿ですね」

 

 二十人くらいが写った集合写真。みんな各々にピースや肩を組んだりと、仲の良さそうなサークル感が前面に押し出されている。

 

 中でも、先輩の左隣には結衣先輩が恥じらいながらも腕を組んでた。ちなみにわたしは反対の右隣で羨ましそうに唇を尖らせている。

 

「じゃあ時間を止めるよ」

 

 そう言って葉山先輩は指を鳴らす。パチンと音が響き渡った直後、水を打ったような静けさが辺りを支配した。

 

「……これ、多分結衣先輩が先輩にキスした時の後です」

「へえ。じゃあこの頃から付き合いだしたとか?」

「いえ。ただこの頃から距離が近付いたのは間違いないです」

 

 それもとびっきりベタな流れで。

 

「近付いたって言うと?」

「サークルの人が、結衣先輩を強引に連れ出したらしくて。それを助けたのがあの鈍感根暗ぼっちの先輩です」

「あはは、結構言うんだね……」

 

 そして先輩は()()()()()()()嫌われようとする。理由は勿論、少しでも結衣先輩へヘイトが向かないように。

 

「……結衣先輩、その人の目の前で先輩にキスしたそうです。しかも唇に」

「何となく想像はついたよ。比企谷がまた悪者になろうとしたけど、それを結衣が救ったんだね」

「ホント、都合良くそんなイベントに出くわすなんて運命で結ばれてんのかーって感じです」

 

 聞いた話だと、繋がった糸の最初は結衣先輩の飼ってる犬を身を呈して助けたからだとか。

 

 そんなの、本当に。

 

「ズルいですよね。じゃあ運命に選ばれなかったわたしには初めから勝機はないのかーなんて」

「同じことを、昔俺も思ったことがあるよ」

「雪乃先輩ですよね? わたし達みたいな運命に選ばれなかった負け組は、こうやって呪うことしか出来ないんです。運命なんてクソ喰らえですよ」

 

 負けヒロインなんて残酷な言葉、言われた方はたまったもんじゃない。

 

 わたしは眉をひそめながら写真を眺めて、嘆息する。

 

「あ、そうだいろは。次からは俺は過去に行かないし、この写真を撮ったタイミングで今に戻ってくるからね」

「何でです?」

「俺がこの合宿に行ってないからね。まあ大学がそもそも違うから当たり前なんだけど」

「そういうことですか。……じゃあ前みたいに告白の最中に戻されるなんてのは、ないってことですね」

「あれは本当に悪かったと思ってるよ……」

「良いです。これで決めれば良いだけですもんね」

 

 目指すはキス。先輩からしてくれたら嬉しいんだけど、それは無理そうだからわたしから。ひとまずの目標を決めて意気込む。

 

「じゃ、あの合言葉を言ってもらえる?」

「あれ絶妙に古臭くて恥ずかしいんですけど……」

「俺も引き継いだ時には同じことを思ったよ」

 

 妖精(笑)って引き継ぎ制なんだ。どうでも良いことを知っちゃった。

 

「……じゃあ、ハレルヤチャンス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──!」

「いろはちゃん、どうかした?」

 

 ぐらっと揺れる感覚がしたと思ったら、視界が一気に変わる。目の前に旅館が見えるのは、確か泊まる予定のところ。

 

 そして私に声を掛けてきたのは、白のコーデをモデルのように着こなす結衣先輩。さっきまで見てたウェディングドレスとどこか重なる。

 

「……何ですか結婚しますよアピールですかウェディングドレスみたいな着こなししちゃって」

「いろはちゃん何言ってるの!? ヒッキーと結婚なんて……そんなの……」

「先輩なんて言ってません葉山先輩って言ったんです!!!」

「言ってないよね!? 隼人君どこから出てきたの!?」

 

 当たり前のように先輩を出してくる結衣先輩にイラっとして適当な嘘をつく。この勝ちヒロインめ……!

 

「お前ら何してんだよ……」

「ヒッキー! いいい、今の聞いてた!?」

「は、何が」

「聞いてませんよねーだって先輩はわたしと結婚するんですもんねー」

「「!?」」

 

 私の言葉に二人して目を丸くする。こんな時まで息を合わせちゃって、ホントにもう……!

 

 三人でわちゃわちゃとしていると、サークルの幹部の人達がパンパンと手を叩いてこれからの動きを説明する。とりあえず荷物を置いてきて、それからもう一度ここに集合するらしい。

 

 私の部屋ってどこなんだっけ。キャリーじゃない手提げバッグの方に予定表とか入ってるかな。

 

「いろはちゃん、あたし達も部屋に行こ!」

 

 ……そう言えば、同じ高校だったからって結衣先輩が無理やりわたしと同じ部屋にしたんだったっけ。男子達の大部屋で雑魚寝とは違って、女子は二人か三人の小部屋。段々思い出してきた。

 

「んじゃ俺も荷物置いてくるわ」

 

 先輩はそう言って一人旅館の中へ入っていく。

 

 ふふっ、そう言えば先輩だけ何故か個室なんだったっけ。男子の人数が丁度十一人で、大部屋が十人部屋だからって先輩だけシングルの部屋に通されるんだよね。ホントいつも通り過ぎて笑えてきちゃう。

 

「ヒッキー一人部屋なんだよね。先輩も別に一人くらい入れてあげても良いのに」

「先輩が嫌がったんじゃないです? 雑魚寝なんて一番嫌がりそう」

「それはそうだけど」

「さ、わたし達も早く行きましょう。部屋どこです?」

「えっとねー確か……」

「結衣ちゃん達は二〇五だよ」

 

 後ろから声を掛けてきたのは幹部連中の一人の三年生。葉山先輩と系統が同じイケメンで、フレッシュを入れたコーヒーみたいな大学生然とした淡い茶髪の先輩。心の中で偽葉山って呼んでたのを覚えてる。

 

 そしてこの人が夜に結衣先輩に無理やり迫る、クソ男だ。

 

 結衣先輩はそうだったと呟いて、偽葉山に向き直った。

 

「ありがとうございます! じゃあいろはちゃん、行こっか!」

「結衣ちゃん、荷物大丈夫? 重かったら持とうか?」

「大丈夫です! いろはちゃん行こっか!」

「オレの部屋三階なんだよなー。つっても大部屋だけどさ!」

「そうなんですか! いろはちゃん行こっか!」

 

 露骨すぎませんか結衣先輩。そう口に出さなかったのを褒めて欲しいレベルで結衣先輩は偽葉山を躱そうとする。

 

 男子の視線って正直全部わかるんだよね。わたしがサークルに入った時から偽葉山はずっと結衣先輩を狙ってたし、何なら五秒に一回は結衣先輩の胸の膨らみをチラ見する。気付かれてないと思ったら大違いなんだから。

 

 そろそろどっちも可哀想になってきたので、わたしは助け舟を出す。

 

「わたし達部屋に荷物置いてきますので、偽葉山も部屋に置いてきてください! 心配しなくともまたここに戻ってきますので!」

「ぶふっ!」

「偽葉山……? よくわからないけど、ならまた後でね」

 

 不思議そうな顔をしながら、偽葉山は観念してわたし達のもとを後にする。これで一安心。

 

「い、いろはちゃん偽葉山って……!」

「えー? だって明らかに葉山先輩の劣化じゃないですかー」

「あはははっ! だ、ダメだよそんなこと言っちゃ!」

「……まあ、わたし的には結衣先輩が偽葉山とくっついてくれれば万々歳なんですけどね」

「!?」

「それで先輩はわたしのものに。知ってます? 先輩の卒業式の日、わたし先輩と生徒会室で……。……さ! 荷物置いてきましょう!」

「いろはちゃん!? 何今の話!?」

「行きますよー結衣先輩ー」

「ちょっといろはちゃん!? ちょっと、ちょっと待ってってか歩くのめっちゃ速い!」

 

 あなたは将来先輩と結婚するんですから、これくらいの意地悪は大目に見てくださいよ。

 

 わたしは心の中で舌をべーっと出しながら、すたすたと歩いた。

 

 




更新が遅れた理由は特に無いです。息抜きって割り切ってたら半年の月日が流れていました()

それはそうと評価や感想めっちゃありがたいです!
書き手の一番のモチベは感想です。これは書き手に共通するマジ中のマジですので、例えばエタってる作品なんかに感想送ったら連載再開とか余裕でありえます。マジで(しつこい)
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