次の日、明日奈は学校に登校して来なかった。
昨日、クラインにあんな事言われたら、そりゃあ落ち込んで来れるわけないか。
朝の出席確認でそんなことを考えていた。
時間は経ってお昼休み。シリカとランチをしていると、昨日の話になった。
「そう言えばリズさん、昨日は結局エギルさんのところに行けたんですか?アスナさんから話しは聞き出せました?」
シリカの質問に、私は、昨日あった顛末を伝えた。
シリカは、少し考え込みながら、
「クラインさんが、怒るのもわかります。もしかしたら、私もその場にいたら、アスナさんに詰めよっていたかもしれません。」
クラインに、同意するような事を言うが、しかし、
「でも...アスナさんは辛いですよね。自分の行動によっては、キリトさんを救えたかも知れないなんて...」
アスナの気持ちを考え、悲しそうに言った。
私は、その言葉を聞いた時、ここ二日のアスナの様子を思い出して、おかしいと思った。
そうだ、明日奈は誰よりも辛いハズなんだ。
自分の恋人が...それも、アスナの全てとも言えるキリトが亡くなって、辛くないハズがない。
確かに、悲しんではいた。落ち込んでもいた。それは間違いないだろう...
でも、私に『微笑んで』大丈夫だと言っていた。
おかしいじゃないか。私の知っている明日奈なら微笑む余裕なんてあるはずがない。
それこそ、取り乱して自殺してもおかしくない.........く...ら...い...っっっっ!!!
まさか...!?
そういうことか...。
そういうつもりだったのか...。
私は、血の気が引いていくのを感じた。
シリカが、私の異変に驚いているが、今はそれどころじゃない。
私は、慌てて明日奈に電話をかけるが何度電話をかけても繋がらない。
嫌な予感がする。私は、いても立ってもいられず、学校を早退して明日奈の家に向かった。
明日奈、早まっちゃダメだよ。あんたの死なんて、キリトは望んじゃいない。
明日奈の家に着くと、ハウスキーパーの女性が顔を出した。私の事は、明日奈の友人ということを覚えてくれていたようだ。
そこで、明日奈の所在を尋ねた。
今は、部屋にいるとのことだった。
私は、急いで部屋へ向かった。私の様子にただ事じゃないと感じたのか、ハウスキーパーの女性も後に続く。
部屋に入ると、明日奈がアミュスフィアを付けて、横になっていた。
私は、安堵した。
でも、すぐに異変に気付いた。
机の上に、薬の空ビンが置かれている。
睡眠薬?
まさか!?
明日奈に視線を戻すと、明日奈は息をしていないように見えた。
ウソ...慌てて駆け寄ると、アミュスフィアの電源を切って、明日奈に声をかけるが反応がない。
脈を図ろうと明日奈の手を持つと...驚くほど冷たい...
...明日奈は、亡くなっていた...
それから、救急車を呼んだが蘇生はできなかった。
ハウスキーパーの人が明日奈の家族に連絡し、警察が捜査に入った。私は、第一発見者と言うことで、状況を詳しく聴かれたけど、捜査で明日奈の遺書が見つかり、自殺と断定された。
明日奈の家族がやってきた。
皆、悲しみ暮れていた。明日奈のお母さんも、明日奈が言うほど冷たい人間には見えなかった。
明日奈の遺書は、家族宛だったので、私は見てないが、明日奈のお母さんは、一番動揺しているように見えた。
それから、SAOでの仲間達や直葉に明日奈の訃報を伝えた。
皆、驚きと悲しみで一杯だったと思う。
クラインなんて、昨日あんな事言ったからだって、自分を強く責めていたけど、私は、違うと思った。
あの娘は、最初からこうするつもりだったんだって。
アスナならキリトを追って死ぬ事くらいやる。
そういう人間だって知っていたんだから。
私は、あの娘の一番の親友だったのに、気付くのが遅すぎた。
悲しみにうちひしがれながら数日が過ぎ、今日はキリトの葬儀の日。
葬儀には、学校の友人だけでなく、どこから聞きつけて来たのか、SAOでキリトに助けられた大勢の人が弔問に駆けつけてくれた。
キリトは、自分の事を誉められるようね人間じゃないって否定していたけれど、あんたの死を悼んでくれる人がこんなにいるんだよ?
あんたは、人に誇れるような立派な人だったんだ。
そう、キリトに言いたかった。
キリトの葬儀が終わると、図ったかのようにメールが届いた。
明日奈から?
それは、明日奈が親しい人それぞれに宛てた遺書だった。
律儀だね。ホントに。
リズへ。
このメールが届いた時、私はもう死んでいる事でしょう。
私の初めての親友であるリズに相談もせずにこんなことをして、ホントにごめんなさい。
私は、キリト君のいない世界で生きる事ができない。そう思いました。
私の行動で、大勢の人に迷惑を書けることになると思います。
でも、この気持ちだけは裏切りたくないから...
私は、キリト君の元へ行きます。
でも、これだけは信じてください。私は絶望して死ぬ訳じゃないんだって事を。
来世で...またキリト君に出会うために。そのために、私はキリト君を追いかけるの。
リズや皆に会えた事、とても嬉しかったし楽しかった。
私の大好きな親友のリズ。私は、貴方に会えて本当に良かったです。
最後に、来世で会ったらまたら友達になってくれると嬉しいな。
それでは、お元気で。
結城明日奈
周りを見れば、シリカも直葉、シノンも、エギルやクラインも泣いていた。
皆が、私に近寄ってきた。
「リズさん、今、アスナさんから...」
シリカが声を掛けてきた。
「わかってる。私にも来たもの。こんな時にまで律儀だね、あの娘は。」
勝手に死んだアスナに恨みごとが無いわけじゃない...
でも...
アスナ...キリトと仲良くね。
私は、ここ何日かの悲しみを振り払うように宣言した。
「私は、私はあの二人の後を追ったりしない。私の命は、あの城で、あの二人が命を懸けて救ってくれたものだもの。精一杯生きて、幸せになって、そして...あの二人を悔しがらせてやるんだから」
まだ、声が震えているけど元気一杯に宣言してやった。
でも、来世では私がキリトと恋人になってやる。
そこは覚悟してなさいアスナ...