なんで、こんな事になったのかな。
ボクは、ただアスナにボクを覚えておいてもらいたかっただけなのに...
アスナと別れてからもう1週間経った。
ボクは、あれからスリーピングナイツの皆とも一切会わずに、独りで過ごしている。
ここが何処なのかも、良くわからないけれど、ずっと空を眺めて過ごしていた。
考えるのは、いつもあの事。アスナに拒絶されて、アスナの自殺も止められなかった。
先日、確かキリトの葬儀が行われていた日、アスナからメールが届いた。
もしかしたら、思い止まってくれたのかと喜んだけど、すぐにそれは絶望に変わった。
メールのタイトルは遺書。
どうやら、時限式で送られてきたもののようだった。
ボクは、怖くてメールを開くことができなかった。
もし、中身にボクへの恨みや罵詈雑言が書かれていたら...そう思うと怖い...
神様は、どうしてボクをそんなに嫌うのかな?
ボクは、それほどまでに罪深い存在なのだろうか。
長く生きる事もできず、ようやく見つけた生き甲斐も奪われ好きな人には厭われ...
ボクはなんの為に生まれたのだろう。どうして生きているんだろう...
ふいに、声がかけられた。
「探しましたよ。ユウキ。こんな所で、なにをしているんですか?」
シウネーだった。ボクを探しに来たらしい。
でも、ボクは誰とも話したくなかった。
だから...
「放っておいてよ。ボクはもう誰とも関わりたくないんだ。ボクがそばにいると、皆不幸になる。だから、もうボクに関わらないで。」
ボクは、ボクの仲間を拒絶した。
大切な仲間を不幸にするなら独りで良い。
大切な仲間に嫌われる位なら独りが良い。
でもシウネーは...
「お断りよ。」
ボクの拒絶を拒絶した。
「ユウキ、貴方が嫌がっても、私達は、貴方を独りになんてしてあげない。貴方は私達が不幸になると言うけれど、私達は貴方がいない事のほうが不幸だもの。」
...本当は、独りになんてなりたくなかった。
気がつくと、ボクはシウネーの胸に飛び込んでいた。
ボクは、弱虫だ自分から、独りを望んだのに独りは嫌なんて。
ボクはおもいきり、泣いた。
姉ちゃんが死んだ時と同じくらい泣いたかも知れない。
ボクが、泣き止むまでシウネーはボクを抱き締めてくれていた。
それから、どれ位そうしていただろう。
ボクが落ち着いた頃、シウネーがこう言った。
「ねえ、ユウキ。その様子じゃ、アスナさんの遺書、まだ読んでいないんでしょう?」
ボクは、自分の気持ちを素直に伝えた。
アスナに直接拒絶された事。遺書にボクへの恨み言が書いてある気がして、怖いこと。
その間シウネーは、黙って聞いてくれていた。
ボクが、心のうちを話終えると、シウネーはボクの手を握ると、
「ユウキ、貴方の知っているアスナさんは、本当に、人に恨み言を言う人間かしら?それに、仮に、貴方の言う通りの事が書いてあったとしても、私達は貴方の味方です。世界中の誰もが貴方を批判したとしても、私達は貴方を守ります。だから、勇気を出してください。」
そう、言ってくれたんだ。
「シウネーは強いね。なんで、そんなに強くいられるの?」
ボクが聞くと、
「この強さは、貴方が私にくれたものなのよ?」
ボクは驚いた。だって、ボクは何もしていない。
いつも、能天気に遊んでいただけだ。そう思っていた。
「私はね...ユウキ...貴方と出会っていなかったら、きっともう、とっくに死んでいたと思う。貴方も知っていると思うけど、私は、今の病を患って3年になるわ。その間、いろんな薬や治療を試したけど、副作用がかなり厳しくてね。何度も諦めようと思った。どうせなら、残り短くとも安らかに過ごしたい。そう思っていたわ...。」
「そんな...。」
はじめて聞く話だった。シウネーがそんな弱音を吐いた所を見たことは無かった。
「でもね、ユウキと会う度に諦めちゃダメだって、私よりずっと年下の貴方が15年も、同じ苦しみと戦っているのに、それでも笑顔を見せる貴方に、私が挫けてどうするんだって。そう思った。私は貴方の笑顔に勇気を、強さを貰ったの。」
「だから、ユウキ。今、貴方に勇気が足りないなら、私が貴方に勇気を上げる。貴方が、私にそうしてくれたように。」
ボクは、もう一度シウネーに抱きついた。
嬉しかった。
こんなボクが、誰かに何かを与えることが出来るのだとわかって。
嬉しかった。いつでもボクに寄り添ってくれる仲間がいることに気付けて。
シウネーから勇気をもらったボクは、アスナの遺書を読む事を決めた。
例え、アスナの恨み言を聞くことになるとしても、今のボクは受け止められる。そう思った。
...そこには、ボクへの恨み言なんて一言も書いてはいなかった。
そこに書かれていたのは、ボクへの謝罪と、ボクへの心配。そして、ボクへの感謝だった。
そう。あの時、仲間じゃないなんて言ったのは、ただの演技だったのだ。自殺を止められない為に言ったウソ。
酷い事を言ったと、謝り、酷い事を言われたボクへ心配、でも、ボク達との冒険は楽しかったと、そこにはそう書かれていた。
自殺をしたアスナは、やっぱり許せそうにない。
でも、アスナに嫌われていないとわかって、心が少し軽くなった。
我ながら、現金なものだなぁ。
アスナ、ボクは最後まで生きてみせるよ。
それが、ボクがキミに出来る精一杯の嫌味で、精一杯の感謝だ。
「シウネー、スリーピングナイツの皆の所に戻ろう。」
ボクは、一目散にホームを目指した。