マザロザif 完結   作:アーク1

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マザロザif 外伝3 キリトとユイ その2

そうか...俺は...俺は死んだのか。

 

俺は、道路に飛び出してきた女の子を庇って、そのままトラックに轢かれて...

 

「その通りですよ。桐ヶ谷和人さん。貴方は死んだのです。」

 

目の前の女性は、そういった。

 

「それと、貴方が庇った子は無事ですよ?大変、勇気ある行動でした。」

 

「そうか、あの子は無事か。良かった...。」

 

そう言えば、ここはどこなんだ?そして、この人は誰だ?

 

そんな疑問を抱いていると、

 

「ここは...と言うか私の説明は後でしますが、先に貴方についているイレギュラーを解決してしまいましょう。」

 

そう言うと、女性は俺の額に手を触れる。すると、俺の体が光った。眩しさで目が開けていられない。

光が収まり目を開けると、そこにユイが立っていた。

 

「え?あれ?ここは?」

ユイは、混乱していた。どうやら、イレギュラーというのはユイの事だったらしい。

 

「パパ。良かった。生きてたんですね。」

俺に気付いたたユイはそう言って俺に抱きついてきた。

どういったものか...自分が死んだのは理解出来るが、それをこの娘に説明するのは憚れる。

 

すると、女性がその言葉を否定した。

「いえ、桐ヶ谷和人さんは亡くなりましたよ?」

正直、空気を読んで欲しかった。

 

「どういう事ですか?」

ユイが、女性に気付いて説明を求める。

 

女性は、ニコリと笑うと説明を始めた。

 

「ここは、天界。神々の世界。あなた方にとっては、死後の世界にあたります。

まずは、はじめまして。桐ヶ谷和人さん、MCHP試作1号 ユイさん。」

 

「私は、日本において若くして亡くなった方を導く女神アクア様に仕える天使です。」

 

そう言って、背中の翼を広げた。

 

「そんな、天使なんて非科学的です。」

 

流石に、ユイは信じないよな。何せ、もとが科学の結晶みたいなものだし。

 

「私達からすると、あなたの方が信じ難い存在なのですよ?ユイさん。」

 

天使は言った。

 

「先程も申し上げましたが、ここは死後の世界。つまり生ある存在が、その生涯を終えた時に訪れる場所です。ですがユイさん。貴方は人が作り出した人工知能。生ある存在では無かったはず。それなのに、ここにいる...と言うことは、貴方は生きていた。そう言う事になります。」

 

「我々としても、人工知能がここを訪れるというのは始めての出来事なのですよ。」

 

その言葉は、ユイが真に生きていた事の証明。

 

ユイも嬉しそうだ。でも、それはつまり、ここにいると言うことはユイも死んだということになる。

一体どうして?

 

「ユイさんが、亡くなった理由は私どもにはわかりかねますが、貴方の心臓が止まった瞬間に、ユイさんは亡くなりました。そして、貴方の魂が天界に送られる時に、ユイさんの魂がしがみついていた為に、同時にこちらへ来たのでしょう。」

 

「さて、現状の、説明はこれで終わりです。次は、これからの事について説明します。」

 

「では、桐ヶ谷和人さん、ユイさん。あなた方にはこれから選択肢を与えます。その選択肢は三つ。」

 

「一つは、人間として生まれ変わり、新たな人生を歩むこと。もう一つは、このまま天国へ行くこと。」

 

「そして、最後の一つはある異世界への転生です。そこは、魔王によって危機に瀕しているのです。その世界で死んだ方は、生まれ変わる事を拒否する方が多く、このままでは世界その物が滅亡してしまいます。そこで、こちらから希望者には、今の記憶を引き継いで向こうに転生させる事が神々の取り決めで決まりました。」

 

「本来であれば、これで説明を終えて、選択をしていただくのですが...桐ヶ谷和人さん。出来れば、貴方には異世界へ行ってもらいたいと私どもは考えています。」

 

天使は言い辛そうに話始める。

 

「実は、貴方の事はあのSAO事件を解決した英雄として、アクア様は注目なさっていました。もしこちらに来る事があれば、是非とも異世界に行って頂きたいと。」

 

「もちろん、だからと言って運命を操作して若くして亡くなってもらった訳では無いですよ?あくまでも、注目していただけです。」

 

「ですが、こうして今、貴方はここにいる。だから、どうか異世界に転生して下さいませんか?戦いの無い現代の日本において、6000人もの人々を救った貴方なら魔王を倒す事が出来る可能性が高いと私どもは考えています。」

 

俺は、悩んだ...それは明日奈の事だ。もし、異世界に行ったらどうなる?生まれ変わって来世で明日奈と出会う事も、出来なくなる。それは、俺にとってとても辛い事だ。例え死んだとしても、来世でまた一緒になろう。いつだったか、そう約束したんだ。

 

ーキリト君が、帰ってこなかったら、私自殺するよ。もう、生きてる意味無いし、ただ待ってた自分が許せないものー

 

唐突に、アスナの言葉を思い出した。

冷や汗が止まらなかった...これは...マズイ。

 

近い内に、明日奈はここに来る。俺はそう確信した。

 

普通なら自意識過剰だと思う。

いや...俺だって昔の俺なら鼻で笑っていただろう。

 

でも俺は知っている...愛する人が死んでしまった時の喪失感を。

 

俺と明日奈の関係は、共依存に限りなく近い。

 

そしてアスナの方は、俺以上に依存度が高い。

 

俺のバイタル情報を見て、安心する...等と言うのはその最たるものだろう。

 

それが異常だと、理解しながら俺自身も嬉しいと感じていた。

 

二人が一緒にいるなら、それでも構わなかった...

でも、こうして俺は、明日奈を一人残して死んでしまった...

 

明日奈は、きっと追いかけてくるだろう...

そう思った。

 

「あの、天使様。幾つか質問をしたいんですが。良いでしょうか?」

 

この質問によっては、異世界行きに条件を付ける。

 

「ここへは、若くして死んだ日本人は皆来るんですか?」

 

「いえ、全員ではありません。ここへ来るのはアクア様が注目していた者か、もしくは幸運により選ばれた者だけです。そうでも無ければ、こんなに呑気に話してる余裕はありませんよ?」

 

それはそうだろう。1日にどれだけの人が亡くなっているか...それを考えればこうして話している間にも次の死者の魂がここに来ても可笑しくない。

 

「では、死因はどうでしょう。自殺でも、関係なく来られるのですか?」

 

「いえ、自殺の場合は別です。自殺とは、我々が最も厭うものです。その場合、選択肢も与えず問答無用で来世に転生させます。」

 

やはり、そうか。

 

「天使様、もし条件を飲んで頂けるなら、異世界に行くことを了承します。」

 

「それは?」

 

「近い内に、結城明日奈という女の子が自殺する可能性があります。もし、そうなった時に彼女にも、選択肢を与えて欲しい。それが、条件です。」

 

そうならなければ、その方が良いのかも知れない。

それでも、もし追いかけてきて...来世へ転生したとしても、そこに俺はいない...

 

取り越し苦労なら、それで良いが最悪は想定しておく方が良い。

 

「結城明日奈さんとは、貴方の恋人でSAO事件解決の立役者の一人と認識していますが、間違いないですか?」

 

俺は、黙って頷いた。

 

天使は、しばらく悩んでいた様だが、

 

「わかりました。結城明日奈さんも、アクア様が注目していた人の一人です。本来は許されない事ですが、彼女の功績に免じ選択肢を与える事とします。」

 

良かった。もし、自殺してここへ来るなら、多分アスナは、俺を追って異世界に来るだろう。 

 

「それでは、天使様。俺は、異世界行きを選びます。」

 

「パパが行くなら、私も行きます。」

 

ユイが同行を宣言した。

 

「では、桐ヶ谷和人さん。ユイさん。異世界に一つだけ持って行けるものを選んでもらえますか?才能でも、強力な武器でも一つだけ持って行くことを許可します。」

 

「天使様。これから行く世界の事をもう少し教えてもらいたいのですが。」

 

情報は大事だ。それを聞いてから選んだって良いだろう。

 

俺は、それから異世界の平均的な人の強さや、モンスターの強さ、武器の能力や魔法について簡単に教えてもらった。

 

俺は悩んだ。ここにある武器やスキルは破格のものだろう。

 

でも...俺はある考えがあった...

 

「天使様...異世界に持っていけるのは、ここにあるものしか、選択はできませんか?」

 

俺の質問に、

 

「それは、物によります。その人の選択を上が受理すれば可能ですね。貴方の前にも、提示された物以外を選択した方がいらっしゃいましたし...」  

 

天使は、ちょっと笑いそうになりながら答えた。

何がそんなに可笑しかったのかはわからないが...

 

そして、決めた。

 

「では、天使様。俺が持っていくのは、俺のSAOとALOの最終的なアバターデータを持って行くことにします。」

 

ユイは、

 

「私は、ALOでの私の能力、世界への情報検索とピクシーに変身する能力を持っていきます。」

 

俺たちが宣言すると、間もなくして、

 

「あなた方の選択は受理されました。」

 

天使が、そう言うと俺たちの足元に、青く魔方陣が現れた。

 

「桐ヶ谷和人さん、ユイさん。あなた方をこれから、異世界へと送ります。魔王討伐の勇者候補として。もし、魔王を倒した暁には、神々から贈り物を授けましょう」

 

「そう、世界を救った偉業に見合った贈り物。どんな願いでも、たった一つだけ叶えて差し上げましょう。」

 

「さあ、勇者よ。願わくば、数多の勇者候補の中から、貴方達が魔王を打ち倒す事を願っています。さあ、旅立ちなさい。」

 

そして、俺たちは、明るい光に包まれた...

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