気が付くと、そこは石造りの街並みだった。
本当に異世界に来たんだな。VRではなくて。
少しの間、周りをぼーっと見渡していた俺は、ユイがいない事に気が付いた。
ユイも一緒に来ているはず。
「ユイ、どこだ?」
俺は、慌ててユイを探した。
「私は、ここです。」
頭の上から、声が聞こえた。
どうやら、ピクシーの姿で頭の上に乗っていた様だ。
俺は、安堵の溜め息を付くと、今後の方針を決める為に、ユイと相談する事にした。
「ユイ、これからどうするかを決める為にも、まずは情報収集をしなきゃな。ユイは、天使に情報検索能力をもらってたよな?色々と聞きたいんだが、大丈夫か?」
「ちょっと、待ってください。」
そう言ってユイは、自身の両耳に手をかざして目を閉じた。
「問題無く、使えるようです。やり方もALOの時と同じで良いようです。」
「まず、この街についてですが、ここは、駆け出し冒険者の街『アクセル』と言うようです。」
俺は、少し考え込むと、口を開いた。
「駆け出し冒険者の街か。ここに転移してきたって事は、まずは冒険者になれって事なんだろうな。」
「恐らく、その通りだと思われます。現在、魔王軍の侵攻を食い止めているのは国家に属する軍ですが、国家に属さない冒険者には、魔王軍の幹部やモンスターに賞金を懸ける事で討伐を促しているようです。パパの最終目標は魔王の討伐になりますから、国と繋がりのないパパは、冒険者になるのがセオリーになるでしょう。」
「冒険者になるのに、条件はあるのか?」
「基本的には、冒険者ギルドに行って、登録料を払えば誰でもなれるようですね。例外として、前科のある犯罪者は厳しい審査が入るようですね。」
「登録料?でも俺は、お金なんて持ってないぞ?」
「パパ、SAOの要領でメニュー画面を開いてみてください。」
俺は、言われた通り右手を上げて、降り下ろしてみる。すると、慣れ親しんだメニュー画面が出た。
ステータスは、記憶にある数値よりかなり低い。レベルが1だからか?
でも、スキルはかなりあるな。
二刀流のようなエクストラスキルからバトルヒーリングのようなパッシブスキル。
スキルについては、記憶通り...か高い熟練度のものもあった。恐らくSAOかALOで同じフォーマットの物はどちらか高い方のものになっているようだ。
ソードスキルは使えるだろうか...これは後で実験が必要だな。
アイテムは...
武器にエリュシデータとエクスキャリバー?
SAOで持っていた最強武器とALOの最強武器...二刀流の為にこれも用意してくれたのか...
でも、今の筋力じゃこれを使うのは無理だな。要求STLにまるで足りない。
後は、SAO で装備していた防具のコートオブミッドナイトか。
他のアイテムは...無いな。
ん?金が1000コル入ってるな。これは?
その時メールが来た。
『桐ヶ谷和人さん。転生おめでとうございます。まずは、冒険者になってください。その街にある冒険者ギルドで登録することで冒険者になれますよ。登録料を贈っておくので使ってください。ちなみにその世界の通貨はエリスです。それでは、頑張って下さい。天使より。』
至れり尽くせりだな...
「なあ、ユイ。金は入っていたんだが、どうやって使うんだ?自動で引き落とされるのか?」
「いえ、パパが使っているメニュー画面のようなシステムはこの世界には存在しません。ですから、お金も物質化されたものでやり取りします。パパ...アイテムをオブジェクト化する要領で、お金を出してみて下さい。」
言われた通りにすると、金貨が二枚、俺の手に握られていた。
これが、ここでの金か。二枚って事は、1枚で500エリスになるのか?
「パパ、一度オブジェクト化したものは二度とアイテムストレージに入れる事は出来ません。メニュー画面やアイテムストレージのようなものは本来、こちらの世界には存在しないものなので。」
オブジェクト化した時点で、この世界の物質になるからってことか?
それなら、武器のオブジェクト化はまだしない方が良いな。今のステータスじゃ装備出来ないし、邪魔になるだけだ。
「今の、俺のステータスはこの世界ではどの位の強さになるんだ?」
「えーと、そうですね。レベル1としては破格のステータスだと思われます。ほぼ全てにおいて、平均を大きく超えていますね。特に、筋力と敏捷が高いようです。逆に魔力は平均より少し低めです。恐らく、SAOとALOのステータスの内、高い方を参照して、それをレベル1のステータスにフォーマットしたものと推測されます。」
「それから、冒険者に登録すると、職業を選ぶ事になります。パパのステータスなら、魔法職や回復職以外なら、最初から上級職も選べますよ?」
...これは、もうビーターと言うよりチーターだな...って初めてALOをやった時にも言ったっけ...
まあ、今さら悩んでいても仕方ないか。
なるようになるさ。
「ユイ、冒険者ギルドまで案内頼めるか?」
「はい、任せてください。」
俺は、この世界での第一歩を踏み出した。